お好きな処刑用BGMを流しながらお楽しみください。
お楽しみ頂けたら幸いです。
綺麗な星空に月が見えるいい夜だ。風も心地よく吹いており過ごしやすい。
コック長は空に手を伸ばすように腕を伸ばし硬く拳を握る。眼下に迫る瓦屋根に足がつく前に叩きつける。
瓦が砕ける音と屋根の木材がバキバキと砕ける。ズドンと音を立てて落下がおさまる。埃や木材が漂う中にコック長は片膝と片手をついて着地した姿勢をとっている。
足の下からは巻き込んだのか何人かの呻き声が聞こえる。
「てめえ!!何してんのかわかってるのか!!」
豪華な瀬戸物が飾られ、鷲の剥製なんかも飾られる豪華な和室。そんな中に組長以下数十名が酒宴を開いていたようだ。
若頭が組長の前に出て他の手下も懐に手を入れて得物を握る。手に持つ拳銃やドス、ナイフそれらを佇むコック長に向ける。
「何処の組みのもんだ!!黙ってねぇでなんとか言いやがれ!!」
殺気が渦巻く渦中でゆっくりと立ち上がるコック長。普段はおちゃらける事が多く暑苦しい笑顔で苦笑を届けるコック長だがその顔は無表情であった。
「涼しい顔しやがって!!後悔させてやる」
痺れを切らした手下2人がドスを構えて斬りかかる。
コック長は虫でも払うように近づく手下の胴を腕で払う。手下はそのまま壁に叩きつけられ意識を失う。
「俺は!!トレセン学園コック長!!この度は御注文いただきました品を届けにまいりました」
一旦区切り邪悪な笑顔で言う。
「たーんと召し上がれ!!トレセン学園コック長!!特製鉄拳デリバリーだぁ!!」
啖呵を切り、身体が2回り大きくなる。怒気による圧力が組の連中の殺気を飲み込み迫力が増す。ここに戦端は開かれた。
これはコック長が突撃する日の朝。
コック長を含む4人は中央興業がある町に来ていた。勿論、理事長に数日空ける旨を伝えてから。
「取り敢えず、ウララとライスの居場所を見つける必要があるんだが検討はついてるか?」
「流石に会社に居るって事もないでしょうが確認の為行って見ましょうか」
コック長の問いに答えるコックAの提案を受け入れる。
程なくしてコンクリートで出来た高いビル製の社屋につく。高い建造物が少ない町の中では目立つビルに大きな駐車場にはトラックや重機が数十台見える。
コックCが気づく。
「この香りは!!仄かな甘い香りに清楚な清涼感を感じさせる匂い。更に春を思わせる芳醇な花の香りにかすかな汗の香りに土の匂い。ライスとウララの匂いだ」
はっとしたコックCはくんくんと一台のトラックに近づく。
「コック長このトラックが犯行に使われたやつですね」
一目散に近づくコックCとは違い周りを警戒しながらトラックの物陰に集まる3人。
「馬鹿野郎、無警戒に近づくんじゃねぇよ」
コックAが声を潜めて怒る。
「すまねぇ、興奮しちまって」
「それって見つけて嬉しくなってて事だよなぁ」
「えっ、あっ、も、もちろんそうだよ。テガカリガミツカッテヨカッタナー」
視線を逸らすコックCに溜息を漏らすその他。
ナンバープレートや車体を写真に収めて撤収した。
取り敢えず宿に戻りBが付近の監視カメラやNシステムにハッキングしトラックが何処を走ったかの情報を集めた。
トラックは中央興業の支店の一つに向かった事がわかった。その後、町1番の中央興業社長の屋敷を経由して会社の駐車場へ戻ったようだ。
その2箇所を確認すると何方にも匂いが感じられたが、社長宅は薄く支店の方ははっきりとした匂いと気配を感じた。
今すぐ突撃したい気持ちを抑えて一旦宿に戻る。その途中で
「流石は私の弟だ、ここに辿り着くとはな」
「姉貴!!」
ふふんとドヤ顔を決める女医が現れた。
「なんかツヤツヤしてねぇか?」
「んふふ、なぁに例のレースに出ていたウマ娘達に誠心誠意聞き取りを行っただけさ」
恍惚とした表情を浮かべる女医。
「それで?」
突っ込む事を放棄して聞く
「ここの社長は度々ウマ娘を違法レースに無理矢理出場させてるらしくてな。その時に支店にある牢屋に入れられる事があるみたいなんだ」
すっと真面目な表情となった。
全員身体に力が入る。
2人が牢屋に入れられているであろう現実に怒りを覚える。
「今夜だ。今夜ケリをつける準備しろ」
全員が頷き準備を行った。
作戦はコック長が会長宅を襲撃し囮となり、その他が支店を襲撃しウララとライスを救出。その後は用意した車にて逃走し警察に事実を伝える。
二手に分かれる。
そしてコック長は跳んだ。
「化け物が!!ぶっ殺せ!!」
若頭の掛け声で次々と手下が向かっていく。
ドスを手にした数人は鉄拳一撃。肩や肘、腕を一撃で砕かれて戦意を喪失し痛みでのたうち回る。
「肉叩きは得意なんだよ」
邪悪に微笑むコック長は一歩一歩と近づいてくる。
「コック風情が!!撃て撃ち殺せ!!」
拳銃を構えて一斉に発砲する。
コック長は撃たれる前にゴリラの様に両手で地面を叩くと射線場の畳が衝撃で何枚も捲れ盾となる。
捲れ上がった畳を掴むと発砲した者に投げつけ重症を負わせる。
「組長、奴は化け物です。ここで時間を稼ぎますので増援の手配をお願いします」
「あ、ああ」
余りに現実味の無い出来事に放心する組長を外に出し増援を頼む若頭。
「おい化け物!!俺が相手だ!!」
手下はコック長を囲み、若頭が対峙する。
「コックなら包丁の一つでも持って来るべきじゃ無いのか?」
若頭は挑発する。
「俺の調理器具はウマ娘達を笑顔にする道具なんだよ。貴様らに使うなんてあり得ない。コイツで充分だ」
拳を握り見せつけるコック長。
「そうかよ」
若頭は両腕を軽く構えて拳を握り半身になりながらステップを踏んでいる。
コック長は構えを取らないノーガードであり、若頭は素早くジャブを繰り出すがコック長はノーリアクションで受ける。
余りに無防備だっため、そのまま左右とワンツーを身体にたたみ込むが余りに硬くダメージを負ったのは若頭の方だった。
(俺は何を叩いているんだ!?)
僅かにコック長の身体が揺れ周りの手下は歓声をあげる。
「流石!!若頭!!やっちまってください!!」
「そんなクソコックやっちまえー!!」
盛り上がる外野は若頭の内心を読み取れない。
コック長が振るう裏拳をかわすが直感で貰ってはいけない威力があると冷や汗をかく。
(なんだあの裏拳は鋭さが段違いだ)
風を切る音が聞こえるコック長の拳は正に一撃必殺。その威力を意識する事で更に迫力が増した様に感じてしまう。
「お、お前ら援護しろ確実に仕留めるぞ」
1人では勝てないと確信し指示を飛ばす。
手下も刃物を構えてジリジリと近づく。
若頭がジャブを顔に当てストレートが綺麗に頬に当たる。よろけるコック長に手下が飛びかかる。
「引け!!罠だ!!」
手応えの無さを感じた若頭が叫ぶが遅い。コック長の拳が向かって来た手下の骨を砕き、掴まれ叩きつけられる。
残ったのは若頭のみとなった。
「さぁ、観念してウララとライスを返しな」
圧倒的な力でねじ伏せ君臨するコック長に畏怖する若頭だが
「なんの事だ」
精一杯の虚勢を張り答える。
コック長が止めを刺そうとした時に壁が突き破られる。
「若頭!!」
コック長と若頭の間に解体用重機のアームが突き刺さる。
そして、ぞろぞろと武装した男達が入って来る。
「お前ら、あのクソ野郎をぶち殺せ!!」
組長の号令と共に男達がコック長に殺到する。
「組長!!」
若頭は組長の元に駆け寄る。
「間に合った様やな。しかしエライ被害や」
「奴の狙いはウマ娘です。ここで引きつけますから、今のうちに別の場所に移送してください。もしかしたら仲間が救出に来てるかもしれません」
「わかった。町中に召集かけて増援を送ったる。奴を仕留めぇ」
組長は走っていった。
若頭がコック長の方へ向くと、殺到していた手下がコック長を中心にして波紋が広がるように吹き飛ばされていた。
「本当に化け物だな」
体制を立て直す手下達の中で佇むコック長がズボンから何かを出した。
嫌な予感がする。
「そいつを取り上げろ!!」
(タキオン頼むぜ)
ゴクリと青色の液体を飲むと変化は現れた。
先程迄は正にゴリラという様な筋骨隆々の大男が本来のサイズに戻った。しかし、肩や拳が青や緑に発光している。口からも発光し開いた目までライトの様に光っている。
そして獣は解き放たれた。
拳が当たった者はその勢いを殺せず宙を高速で回転しながら吹き飛び。抑え込もうとタックルする者は車に撥ねられたように吹き飛ばされる。しかも先程迄とは比べ物にならないスピードで縦横無尽に駆け回る。その為コック長にぶつかった者は例外なく弾かれる。
広い和室で数を活かせる筈が被害は増すばかり。コック長が早すぎるのと同士討ちを恐れて銃器は使えない。
かろうじて目で追える若頭が重機を操る。
解体用のアームを進路上に構えなんとかコック長が止まる。コック長がアームを手で抑える事で動きが止まった。
「今だ!!ヤレーー!!」
重機から叫ぶ若頭。
手下は選択を誤った。
確実に仕留めようと刀やドスを構えてコック長に殺到した。
若頭に誤射するのを恐れた事が一つの要因。
重機により身動きが取れない事で生じた僅かな油断。
今のコック長は化け物なのだ。
2人の泣く顔が浮かぶ。助けてと叫んでいる。怒りが大きくなる敵は誰だコイツらだ。
倒れて良いのか?否!!否!!鉄槌を下すのは誰だ!!俺だ!!
(ウララとライスが今も不安でいる。護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねば護らねばあぁぁぁぁぁぁあ」
目と口から天をつく様な光を放ちながら全身に力を入れる。
鋼鉄のアームから軋む音がする。そして若頭は浮遊感を覚えた。
アームを掴むコック長はそのまま体を捻り重機を放り投げた。
背中に迫っていた手下達も慌てて逃げる。
重機が落下し土煙を上げる中、若頭は衝撃で意識を手放した。
「こんな化け物勝てるわけねぇ!逃げろ!逃げろ!」
パニックになり出口に向かおうとする手下達。
しかし、コック長からは逃げられない。
一瞬で出口に陣取ったコック長に絶望する手下達。彼らの悪夢は終わらない。
「下拵えは入念にしなくちゃなぁ」
悪魔は微笑み発光する。