トレセン学園コック長   作:ブランチランチ

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ペアならこの2人がダントツで好きです。
お楽しみいただけたら幸いです。


シャーベットお待ち!!

「コック長この通り頼むよ」

 

コック長が事務室で納品リストの確認と申請許可の事務仕事をしていると、スピカのトレーナーが入ってくるなり両手を合わせて頼み込んできた。

 

「頼むと言われても、まぁ、内容を教えてください」

 

椅子に腰掛けたトレーナーから話を聞くとこういうことらしい。

 

1.ダイワスカーレットとウオッカにレースで1着取ったご褒美にオシャレなレストランに連れて行ってやると約束(別々に約束)

 

2.トレーナーは何方とも忘れていた。

(二人とも予約してるから期間が空いたと思っていた。)

 

3.二人に聞かれて思い出す、しかし財布には小銭しか無い

 

4.助けてコック長!!

 

「とりあえず、二人には土下座してください。まぁ、なんとかしましょう料理は俺が作っても良いかの確認をお願いします。」

 

「ありがとう!!コック長、二人にはちゃんと聞いてくる」

 

バタバタと出て行くトレーナーを見送りある場所へと電話をかけるコック長であった。

 

 

 

 

青を基調としたパーティドレスに身を包んだダイワスカーレットと黒のジャケットに黄色のシャツとデニムにシルバーアクセサリーに身を包んだウオッカが車で目的地に移動している。

 

女性らしさが際立つダイワスカーレットに対してカジュアルでボーイッシュなウオッカという感じだ。

 

「ここが目的地だ。二人とも機嫌直してくれよぉ」

 

車を止めて出てきた二人に声をかけるトレーナーは情けない声をあげる。

 

「まぁ、数日で用意した事に免じて忘れてたのは許してあげる。でも満足出来なかったら改めて連れてってもらうわよ」

 

「オレもスカーレットと同じだ、まぁ期待してるぜ」

 

エレベーターから出て扉を開けると落ち着いた雰囲気のバーだった。

 

二人を迎えたバーテンダーは奥のカウンター席へ誘う。

 

「あれ、コック長じゃねぇか!?」

「嘘、全然雰囲気違うじゃない!?」

 

驚く二人に、にこりと笑うバーテンダーはコック長なのだが、いつもの暑苦しかったり、ウザかったりする笑顔ではなく控えめで爽やかな微笑をしているのだ。

 

唖然とする二人にコック長はスッと二つのグラスを二人の前に置いた。

 

「こちらウェルカムドリンクになります」

 

鮮やかな黄色の液体が入っているグラス、縁にはオレンジが添えられていた。

 

少し躊躇いながら飲んでみると爽やかなオレンジとパインの酸味にレモンの香りが絡む爽やかな味わいをしていた。

 

「お出しするドリンクはノンアルコールカクテルですので安心してお楽しみください」

 

恐る恐る飲んでる二人を安心させる為に補足するコック長。

 

 

「さ、流石にお酒じゃないと思ってたけど緊張したわ」

 

「オ、オレは気づいてたけどな」

 

「こちらは鯛のカルパッチョになります。

次はツナマヨと明太子のディップをバケットにのせました。」

 

白いお皿にベビーリーフを敷き綺麗な白身の鯛を並べ、プチトマトを刻んで出汁醤油とオリーブオイルとレモン汁で味を整えたソースを乗せ刻んだ青葉をちらした見た目も美しいものとなっている。

 

もう一つは一口サイズに切られたバケットにベビーリーフをのせツナマヨと明太子を混ぜたピンク色のディップを乗せてプチトマトが添えられている。

 

「こちらはモヒートになります」

 

二人は無言でカルパッチョに箸を向ける。

白身の鯛がトマトの酸味とオリーブの香りをまとい、ベビーリーフのわずかな苦味がアクセントとなり旨味となる。

 

次にバケットを口に入れると小麦の香りが広がりツナマヨと明太子の塩気がトマトの酸味で一体となりまた口に運びたくなるスナックの様な気軽さを覚える。

 

酸味と塩気で潤いを求める口にモヒートを流し込めば、ミントの香りと炭酸のシュワシュワが口の中を洗浄し、仄かな蜂蜜の甘さを感じた後には口の中はリセットされている。

 

 

「すげぇ、モヒートでまた一から美味しく食べ始められるぜ」

 

「カルパッチョ気に入ったわ」

 

あっという間に空になったグラスとお皿を下げて次のお皿を置く。

 

「カプレーゼとローストビーフになります。

ソースはオニオン、ベリー、わさびとなっております。そしてサングリアになります。」

 

前菜により胃袋が適度に刺激された後に出された肉、二人は生唾を飲み込みローストビーフに箸を進めた。

 

塊から切り分けられたローストビーフにウオッカはオニオンソースをかけて口に運ぶ。

玉ねぎの甘さと醤油の塩気による甘ジョッパイというコンボは牛肉とマッチして濃厚な味となる。

 

対してダイワスカーレットはベリーソース。

酸味の強いフルーティな味わいは甘酸っぱく牛肉をあっさりとしたものに変え食が進む。

 

そして二人は止まった。

 

「わさびって、あのツーンってする奴よね」

 

「あぁ、ゴールドシップ先輩にチューブわさびで悪戯されたがやばかったなぁ」

 

ツーンときて痛みを覚える薄緑のそれに余り良い印象は無かった。殆どゴールドシップによる悪戯の所為ではある。それに二人は魚に使うイメージはあったが肉料理に使うイメージがなかった。

 

「月並みな話ですが、いいわさびは辛く無いんです。それにお肉との相性は抜群です。騙されたと思って多目にのせてみてください。」

 

「や、やるわ」

 

わさびを箸で摘みお肉の中心におき巻き込んだ。一瞬箸が止まるが勢いで口に入れる。

 

「だ、大丈夫か?」

 

心配し顔を覗き込むウオッカに対して

モグ、モグと確かめるように口を動かすダイワスカーレット。

 

「辛くない!?全く無いわけじゃないけど、わさびの香りが鼻に抜けてローストビーフの味わいがさっきと違う!!おいしいじゃない!!ウオッカも食べてみなさいよ」

 

「お、おう」

 

ダイワスカーレットと同じようにしてみると

 

「なんだよこれ同じわさびか?あん時は痛いだけだったのに」

 

「これは本わさびでチューブわさびとは違い混じりけのない、わさび本来の味になります」

 

 

出されたものを空にするとコック長が一枚の紙を渡してきた。

 

「ふぅー、取り敢えず雰囲気つくってそれっぽくしたのは全部出したぞ。お前ら場にのまれてカチカチじゃねぇか、ここに書いてるのなら出せるから好きなの頼みな」

 

息を吐いたコック長はいつもの調子に戻して言った。

 

「あ〜、いつものコック長に戻った!」

「コック長の違和感凄かったもんなぁ」

 

「いや、なんか料理を美味しく食べてくれてるのはわかってるんだけど、肩肘張ってるのが目に見えてよ。言ってなかったがここは貸切にしてるんだぜ」

 

「嘘!?だって何人かお客さんだって・・・」

 

「そうだぜ!いくらなんでも・・・」

 

辺りを見渡すとそれぞれシャキッとした服装でお酒や料理を食べている。しかし、よく見るとトレセン学園で見たことある事務員だったりトレーナーだった。なんならスピカのトレーナーはおハナさんとご飯を食べてるようだった。

 

「エキストラさ、でも気づかないくらい店にのまれちまったのさ。知ってる顔だ、もっとはっちゃけなよyou!!」

 

変顔で指をさされたがいつものコック長に安心を覚えた。若干の苛立ちもだが

 

「おっしゃ!!片っ端から食って飲んでやる」

 

「ちょっと、アタシにも見せなさいよ」

 

 

その後は、ワイワイと周りを巻き込んでのドンチャン騒ぎであった。途中調子にのって酒に手を出したスピカトレーナーはコック長とおハナさんのクロス◯ンバーで沈み、その連携に場内が沸いた。

 

 

 

最初の席に戻り余韻に浸ってる中、ウオッカがポツリと呟いた。

 

「なんか・・・焦ってたのかもなぁ、スペ先輩とかスズカ先輩とかすげぇし。1着取れたオレはもっと強くなったんだってオレも負けてないって」

 

「アタシもそうかも、強くて大人になったって思ってたのよ」

 

二人は凄い先輩や周りに焦りを感じてしまったのだろう。だから必死に背伸びをして大きく見せようとした。しかし、そんな事をしなくても引けを取らない実力がある事はここにいる全員がわかっていた。

 

「そんな二人に魔法をかけてやろう」

 

コック長はスッと二人の前にグラスを置いた。

 

「これって」

 

「これは、ウェルカムドリンクとして出したシンデレラっていうノンアルコールカクテルを俺なりにシャーベットにしたものさ」

 

二人はコック長の話しを聞く。

 

「このカクテルには物語のシンデレラにあやかってお酒の飲めない人でもパーティが楽しめますようにっていう願い・・・いや、魔法がかかってるのさ」

 

二人は話を聞きながらグラスをジッと見つめる。

 

「だからオレはこれに、お前たちが凄いウマ娘になるって魔法をかけて作った特別製だ。

このままだと、このシャーベットの魔法はとけちまう。食べてくれるか?」

 

二人に問いかけるコック長にニカっと笑ってグラスを手に取る。

 

「当たり前じゃない、アタシは1番のウマ娘になるんだから!!」

 

「はん!!スカーレットの方は効かないかもな1番になるのはオレだ!!」

 

二人は互いに持ったグラスをチンッと合わせてから食べ始めた。

 

 

二人とスピカトレーナーはオハナさんが責任を持ってトレセン学園に送って行ってくれた。コック長は後片付けを終わらせてある人たちと今日の成果を確認していた。

 

「いい記事書けそうですか乙名史さん」

 

「最高のものが書けそうです!!」

 

興奮する乙名史さんは今日の出来事にテンションが上がりっぱなしである。

 

「それは良かった、貸切で店を提供したかいがありました」

 

今回最大の協力者であるマスターも胸を撫で下ろす。トレーナーとコック長は乙名史さんにダイワスカーレットとウォッカの記事を出さないかと打診しその際に会場の広告もしてもらえるように頼んだのだ。これによりマスターを説得し一晩をタダ同然の値段で貸切にさせてもらった。

 

「それにこれ見てくださいよ!!長くウマ娘さん達の写真を撮ってましたが中々こんなにいい表情のもの無いですよ!!」

 

興奮して話すのは乙名史さんに無理を言って連れてきてもらった隠し撮りの上手いカメラマンだ。

 

彼が見せる写真は最後のシャーベットのグラスを合わせている所だ。二人の表情は自信に満ちたもので、お互いから負けないという闘志を読み取れる。それでいて讃えあっているような仲の良さも感じる。

 

「いいライバルって感じとも取れるし、戦友を讃える様にも見えてイイね」

 

ボソリとコック長が

 

「なんかカップルみたいじゃね?」

 

盛り上がる周りには聞こえなかったが、女性らしさが強調されたダイワスカーレットとボーイッシュで決まっているウオッカは良きパートナー同士に見えてしまったコック長であった。

 

後日、ダイワスカーレットとウオッカ二人に了解をとり掲載された月間トゥインクルは即日完売となり、男性と女性ファンは二人の魅力に取り憑かれたのだった。

マスターも嬉しい悲鳴をあげコック長にヘルプを出すのであった。

 

 

 

 

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