あの子もこの子も出したいと改めてアニメを見て
ゲームをやり込んでます。
お楽しみいただけたら幸いです。
「これが終わったら飯にしよう」
コック長はフラフラになりながら歩いていた。金船つけ麺杯が終わり溜まりに溜まった事務仕事をようやく片付ける事が出来た。ゴルシに付き纏われた3日間が、そもそも月で1番多く事務仕事が立て込む時期の出来事であった。更に金船つけ麺杯の特別発注がかさんだのだ。材料費、機器レンタル、外注費等、請求書に不備がないかのチェックが加わった。更にトゥインクル交流会スペシャル号の取材に日々の業務、睡眠時間を削り何とか完了したのだ。
(眠い〜腹減った〜体が重い〜)
なんとか書類をたづなさんに提出し、緊張が解けたのだろう事務所に戻る途中で力尽きた。
「マックイーンは何食べるの?」
「悩んでますの、新作も捨てがたいですが季節のフルーツパフェ、ショートケーキにワッフル悩みますわ〜」
幸せそうに悩むマックイーンは味を思い出してか期待してなのか恍惚とした笑みを浮かべている。
「うひゃ〜キラキラしてるなぁ、ネイチャさんにはこんな表情できないですよ〜」
「大丈夫だ、このゴルシちゃん特製からしクリームで粉砕してやるぜ」
「いや、ゴルシが粉砕される未来しか見えないんだけど・・・」
わいわいとカフェを目指す3人が廊下の曲がり角を曲がるとコック長が倒れている所に遭遇した。
「ちょっと!!コック長大丈夫ですの!!」
「あわわ、これやばいんじゃ!!」
「こんなとこで寝てると風邪ひくぞー」
メジロマックイーンとナイスネイチャは慌ててコック長に近づき容体を確認する。
はっきりと見える隈と青い顔で唸っている。
目立った外傷は見当たらない。
「流石にここに寝かせとくわけにも」
「すぐそこにコック長の事務所があるから運ぶか、でっけーソファあるし」
「そうしましょう、ゴールドシップお願いします」
「ったくしょーがねぇ〜なぁコック長」
よっと、軽くコック長を持ち上げ事務所まで運ぶゴールドシップ。
「いや〜やっぱ凄いですね〜そんな軽々と」
大柄なコック長をものともしないゴールドシップの力に少し驚くナイスネイチャだった。
ソファに寝かせ、置いてあった布団を被せる。
「とりあえず、保険医さん呼んでくるね。戻ってくるまで見てて」
「わかりました」
「おう」
ナイスネイチャが出ようとした時、呻き声と共に盛大にお腹が鳴った。
微妙な空気になる室内
「過労と空腹で倒れてたのかな?」
「その可能性が高い気がしますわ」
「そういえば、ここ最近、書類整理やら何やらで寝る暇も無いって言ってたな。後、事務仕事させてくれって泣いてた。無視したけど」
「ちょ!!」
「あなたという人は全く!!」
「だって美少女ゴルシちゃんの方がそんな紙切れより重要に決まってるだろ、まぁ悪かったと思うけど」
なんだかんだとウマ娘には甘いコック長は、結局ゴールドシップの相手もしながら仕事をしていたのだろう。容易に想像できる2人はため息を吐いた。
「一応、保険医さん呼んでくる」
「お願いします」
程なくして保険医が駆けつけ触診をした。
過労からくる失神だろうとの事でコック長を運ぶ為の準備をしてくると一旦戻っていった。
「とりあえず一安心ですわ」
「ネイチャのやつ何処行ったんだ?」
「確かに、一緒じゃありませんでしたね」
戻らないナイスネイチャに疑問を感じつつコック長を見ている2人だった。
「こんな所で倒れてしまうとは情けない、ウリ、ウリ」
「ちょっとやめなさい起きてしまいますでしょう」
コック長のほっぺをツンツンするゴールドシップを止めようとメジロマックイーンが肩を掴むと
「んぁ!!ふごっ!!」
ビクッと顔が上がり、マックイーンにより軌道のズレたゴールドシップの指はコック長の鼻に突き刺さった。
「きったね!!マックイーン何しやがる!!」
「あ、あなたが悪戯してるのが悪いんでしょう!!」
「ゴルシ、上着で拭くんじゃねぇティッシュ使えティッシュ!!」
一瞬で騒がしくなった部屋にナイスネイチャが戻ってきた。
「なんか騒がしいじゃん、コック長起きたんだ」
「おお、寝てたみたいだ」
「アタシが運んだんだからなコック長」
「倒れてたの見た時はビックリしたんですのよ」
「そうなのか?すまなかったな、ありがとう、後ネイチャはクロッシュなんて持ってきてどうしたんだ?」
「あぁ、この蓋そういう名前なんだ厨房で持ってく時に被せてくれたのだけど、まぁ、その、あれですよ・・・、出てく時あんなに盛大な腹の虫を鳴かせてたんだから・・・えっと、ネイチャさんが、ちゃ・・チャーハン作ったわけです、はい」
パタンと耳が倒れ顔を真っ赤にしながら伏し目がちにお盆を出してきたナイスネイチャ
目を閉じてソファに倒れるようにもたれたコック長
(かわいい)
昇天するような安らかな顔だった。
「んん??俺に!!?」
ガバッと立ち上がるコック長
「そう言ってんじゃん、まぁ、味の保証はしませんけどね!!」
(天使や)
また安らかな顔で力が抜けるのをすぐに立ち直す。
「い、忙しい方ですのね」
「あはははは!!」
昇天と、覚醒を繰り返すコック長に呆れるメジロマックイーンと爆笑するゴールドシップ。
席につきクロッシュを開けると、中からは、刻まれたオレンジのニンジンと緑のピーマンで彩った卵により黄金にコーティングされたチャーハンが湯気を立てていた。
コック長は手を合わせて
「いただきます!!」
「め、召し上がれ」
スプーンを入れるとパラリと崩れるチャーハンは一粒一粒が玉でコーティングされている。
口に含むとハムの素朴な味とニンジンの甘味、ピーマンのほんのりとした苦味を卵が包み込む。塩で整えられた味に胡椒の香りが鼻をつく。
「うまい、うまい」
「良かった」
ほっとするナイスネイチャを他所にコック長は止まらなかった。
スプーンが動きチャーハンの山が瞬く間に削られていく。満面の笑みで食べていくコック長はスプーンを加えるたびハフハフと歓喜の吐息が漏れる。
最後のチャーハンを口に含むとコック長は立ち上がるり
「う〜ま〜い〜ぞー!!」
全身から眩い光を出し叫んだ。
※光は幻覚です。
叫びながらコック長の全身は2周りほどパンプアップされ筋骨隆々の姿になっている。
「なんですの!!なんですの!!」
「ちょっ、予想外すぎて処理が追いつかない」
「すげぇ、コック長!!すげぇ!!」
オロオロ狼狽えるメジロマックイーンと呆然とするナイスネイチャ、目を爛々に輝かせるゴールドシップ三者三様な反応を見せる。
「どっどうしたんですか!!」
保険医が数人を引き連れて部屋に入ってきた。
「コック長、あなた倒れたんですよ!!早く医務室に」
いつもと違う様子のコック長に物怖じせず腕を掴む保険医
「ダイジョウブ、ダイジョウブ、フン!!」
保険医の肩に手を置き、上半身に力を入れると上着が勢い良く弾け飛んだ。勢いよく膨れ上がった筋肉はなんのこともなく上着を破り更なるパンプアップを果たすコック長。
「・・・」
「もう、もう」
「あひゃー」
「ウヒョー!!」
絶句する保険医。
目を手で覆いイヤイヤと首を振るメジロマックイーン。
現実逃避し声が漏れるナイスネイチャ。
歓喜で興奮するゴールドシップ。
「オレ、ウマムスメ、ヨロコバス、リョウリ、ツクル」
部屋に来た人を置き去りにコック長は歩を進める。ドチュ、ドチュと足音を響かせ肩をゆらしながら。
そんな怪事件があった翌日。
「ネイチャ、居るんだろ早く出てこーい、壁ぶち破るぞ!!」
ドンドンと部屋のドアが叩かれ起きるナイスネイチャ。
「うるさい!!まだ日も登ってないじゃない!!なんなのよ!!」
「よう、いくぞ」
そこにはメジロマックイーンを小脇に抱えたゴールドシップがいた。
「えっ?ちょちょちょーー!?」
片手で持ち上げられ、ガシっと小脇に抱えられた。ゴールドシップは絶叫するナイスネイチャと抵抗する気力を奪われたメジロマックイーンを抱えながら爆走する。
「食堂?」
「ふぎっ?!」
降ろされた所は食堂だった。
「ちょっとゴールドシップ!!」
「まぁまぁ、あっち行ってみ」
指刺す方は厨房の近く。
メジロマックイーンとナイスネイチャは互いを見てから歩を進める。
(寒い?)
近づくにつれて冷気を感じる。
そこにはコック長がイビキをかきながら寝ており。
少し離れたところには氷の壁があった。
「ちょっと、ええぇ!何これ!?」
「美しいですわ」
氷の壁に囲まれた中央には、純白の翼を背中に携える女神像。
美しい女神は明らかにナイスネイチャを象っていた。
「これはマックイーンと、ふふゴルシか」
女神の前には祈りを捧げるウマ娘と鎌を持つウマ娘。こちらは茶色と漆黒である。前者がメジロマックイーン、後者がゴールドシップ。
「この香り、チョコレートですの!!」
目を一瞬で輝かせるメジロマックイーン。
それを、聞いて驚くナイスネイチャ。
「チョコ!!コック長半端ないわぁ、しかも女神がアタシとかないわぁ〜」
「昨日、チャーハンを作ってくれたのが嬉しかったのでしょう。本当に美味しそうに食べてましたし・・・その後の奇行はともかく」
「ありがとう、コック長」
眠ってるコック長に感謝の言葉を告げるナイスネイチャはとても優しい顔をしていた。彫像とは比べられないくらいに
ゴールドシップの爆走により起きた数人から飛火してこの後騒ぎになるのだがそれはまた別の機会で。
※おまけ
女神ナイスネイチャ事件の翌日、乙名史記者はコック長の奇行を目撃したコックに取材をしていた。
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは、当日のコック長についてお聞かせください」
「あの日はそうですね。朝見たコック長はいつもより陰があり倒れそうだったんですよ」
朝礼で見たコック長の印象を伝えるコックA
「聞いた話とは大分違いますね」
「はい、金船つけ麺杯で日に日に弱っていたコック長だったんですがあの日が1番でしたね。でも驚きましたよ。そんな人がですよ、咆哮を上げながら厨房に入ってきたんですよ。しかも、しかもですよ、別人かってくらい大きいんです!!」
コックAは両手で大きさを表現しようと大きく広げた。
「大きく?ですか?」
「乙名史さんも知ってますよねコック長。ただでさえ大柄なんですが、ムキムキで3いや4回りは大きかったですね」
「は、はあ」
「コホン、興奮してしまいました。まぁ、そんな別人になったコック長が「オレ、リョウリ、ツクル」って片言で中華鍋ふるい出したんですよ」
またヒートアップするコックA
「実は、コック長はあんまり昼食とか夕食の定期的な調理はしないんですよ。仕込みや指導はしてくますけど後は私たちに任せてくれて、1着取った娘とか気落ちした子とか、とにかく特別な料理を作るんです」
「なんか意外な気がしますね」
「コック長いわく「俺が居なくてもウマ娘に美味しい料理を食べて貰いたい」って事らしいです。話しがそれましたね。それで中華鍋をふるいながら、天ぷらを揚げて、キャベツの千切りをしてたんですよ!!」
「ん?高速に別々にという事でしょうか?」
「違います!!同時にです!!私には三人に見えました!!いやぁ真似出来ませんね!!私もまだまだです!!」
「えぇぇぇ」
うんうんと頷くコックAに驚く乙名史記者であった。