英雄譚
(作者名不明の為記載せず 王都印刷より)
『コルト村の厄災』からもう10年が過ぎた。
嵐龍の出現により地図上から消えたこの村の出来事を、近隣の村々は日々の仕事で忙忘しようとしている。
今から一年前、王都で便利業を営んでいた私の元に一通の調査依頼が届いた。
宛先はあるが名前の記載がない依頼だった。
10年前のあの日、ここからおよそ40里離れたユクモ村周辺でも天候異常が発生し、それをどのように解決したかというものだった。
調べていくうちにある男の名前が浮かび上がってきた。
名前は『エイス』この事変の彼の物語はここから始まる。
(天暦130年2月9日ユクモ村現地にて)
『ベラード・ダイス著 嵐龍記 メモ欄より抜粋』
第一章 村の異変と始まり
「旦那、雨強くなってきやしたね」
「ああ、スピードはそのまま。安全運転で・・・雷狼竜?!スピードを出せ!突っ走れ!」
「へ、へい!」
突如上空に現れたバイオハザード、アマツマガツチ(嵐龍)によりその月のユクモ村周辺では異常な豪雨が観測された。
それに追い立てられるように普段森の奥深くに生息しているはずのジンオオガ(雷狼竜)が村郊外まで出没するようになった。
「旦那、危ないところでした。」
猛スピードで駆け抜けた荷車の1人と2匹はすでに雨の上がったぬかるんだ道をユクモ村目指して車を走らせていた。
余談だが荷車を引いていたガーグァ(ずんぐりむっくりで首がちょい長い鳥)が御者アイルー(猫の姿をして人語を話す。人と和を作り共存している)と男を途中崖に落とさず走れたのは偏に御者の操獣技術が巧みだったのに違いはないだろう。
「ここまで送ってくれてありがとうな」
「旦那も気をつけて」
「道中お前もな」
互いが姿見えなくなるまで手を振っていた。
「ここがユクモ村か」
ユクモ村は村というより集落に近く主な産業が温泉と林業、そして旅人や雇われたハンター達が持ち寄ったモンスターの素材で作る装備品の売買で生業を立てていた。
村の殆どの建物はほぼ円に近い多角形の大きな屋根の家で村の中央広場に雑貨屋。武具の売買を兼ねている鍛冶屋(ゲン爺)に同じくオトモアイルーの武具の製作をしているオトモ武具屋(モミ爺)がある。
中央広場の北、その先の長い階段を上がると屋根から大きな湯気が立ち昇る建物が集会浴場である。
ここの良質な温泉はモガの村やロックラック(大砂漠の中央にある巨大な都市)だけでなく世界各地から多くの客が訪れる。
「村長はいるか?派遣に来たハンターだ」
入り口に座っている男に話しかけたが、ただ座っているだけで別に門兵ではないらしい。
「ああ、村長ならいつものところさ。中央ベンチにいるぜ。」
「ありがとう」
行ってみると集会浴場階段下のベンチに女が座っていた。