英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第13話

 マーク・シュルツの治療は朝昼晩、調合薬草を体に貼る事と温泉治療を同時進行する為、マークの部屋は集会浴場横の旅客部屋に移された。

 

医者の話では3日も在れば痛みもなく動けるようになると言っていた。

 

今日1日を入れて明明後日に出発する間エイスは出来ることをメモにまとめ1つずつ潰していくことにした。

 

装備の確認、嵐龍の情報、ユクモ村から霊峰までの往復に使う道具の選別。

 

まずは装備の確認。

 

竜職人のゲン爺が金銀火竜の素材を使ってエイス、マークの武器を作ってくれる。切れ味、弾の威力が並ではないらしい。

 

オトモの武器、防具はその余った端材で作ってくれるらしい。

 

しかし、マーク自身は防具は必要ないと言った。

 

その理由は身軽の方がいいからだそうだ。

 

何か引っかかる物言いにエイスはその時疑問に思った。

 

道中で使う道具や嵐龍の情報、荷車の数などは村長と話し合って決めることにした。

 

曇っていた空からやがて雨粒が落ち、次第にそれは勢いを増していった。

 

村長宅に着いた頃、エイスは全身びしょ濡れになっていた。

 

ドンドン

 

開戸を2回叩く。

 

「はーい。どちら様かしら?」

 

「エイスだ。嵐龍について伺いに来た」

 

「今開けますわ。・・・まあ!そのままだと風邪を引いてしまうので奥にどうぞ」

 

「すまない。濡れたのは上着だけだ。少し乾かせてくれ」

 

エイスは居間で囲炉裏に当たりながら、メモの内容を話した。

 

 

 

「・・・なるほど。お話は解りました。まずは道具の方ですが嵐龍に効く道具は閃光玉を含めて無いと断言します。申し訳ないですが、あの子にはハンター様のお力で向かっていってもらうしか方法がございません」

 

「理由を聞いても?」

 

「はい。100年前バジル村(ユクモ村から東に11里の場所にあった今は無き村)の3人のハンター様が嵐龍討伐に向かった時の情報です。その時は討伐できずかろうじて撃退したそうです。卵は破壊したらしいのですけれど・・・」

 

「そのハンター達は全員無事だったのか?3人いれば証言が・・・」

 

「1人ですわ」

 

「え?」

 

「片腕を食いちぎられて息も絶え絶えで村に戻られ二週間後に亡くなられました。その時の証言を纏めたものがこちらに・・・今お見せいたしますわね」

 

古くなっており、文字が読めない部分もあったがこう記されている。

 

天暦20年2月?霊峰に産卵、子育てする為嵐龍が居着いた。その中心部以外、その周辺は瞬く間に暴風雨の暴力にさらされ、いくつかの村が消滅した。私の村も例外ではなく壊滅的被害を受けた。・・・と

 

エイスは読み進めていく。

 

嵐龍には今、この村にある・・・いや、世界で使われている対化け物用の小道具がまるで通用しなかったと記されていた。

 

しかし、3人のうち1人が弓の使い手で矢に麻痺毒を塗り嵐龍を追い詰めたという。

 

その弓使いも尻尾の薙ぎ払いで肉片にされたらしい。

 

文の最後に【バジル村所属ハンター エイブラムス・ブレイブス】とサインがあった。

 

「今回は予め手を打ちました。先日遭難された観測隊員様3名が乗った大型気球にバリスタ(据え置き式の大型弩砲)を積みました。作戦通りなら・・・運が良ければ嵐龍の巣に設置してあるはずです」

 

実際見るまで分からないがおそらくそれは無理だろう。期待するだけ無駄だと思った。

 

しかし、麻痺させるのは良い手だと思った。

 

「ありがとう。考えがまとまったよ。良い方に考えれば道中の荷物は少なくなる。身軽の方がいい時もある」

 

「これをエイス様に」

 

村長が取り出したのは泥より粘度がある匂いのキツい豆粒くらいの丸い玉薬だった。

 

「これは村に古くから伝わる秘薬ですわ。高薬草を潰して混ぜて発酵、乾燥を繰り返して作ったものです。製造に時間がかかる為多くは渡せませんが4つお持ちくださいませ・・・私のお守りはまだお持ちですか?100年前、この村には無かった私の村の石です。必ず貴方様をお守りします。約束してください。必ず無事で帰ると」

 

「ああ、約束する。終わったらこの村に必ず報告に戻ると」

 

「うふふ。ありがとう。難しい話は終わり。食事まだでしょう?良かったら食べて行ってくださいましな。まだお昼時ですけどお酒もあるし」

 

「いや・・・俺は・・・」

 

「いいじゃありませんの。今日くらい・・・ね?」

 

エイスはこの日村に来て初めて久しぶりに深酒を楽しんだ。

 

 

 

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