英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第14話

翌日、エイスは激しく打ち付ける雨の音で目が覚めた。

 

シェラが作ってくれる朝御飯の匂いが寝所まで漂って来た。

 

「おはよう。すまない。寝過ぎた。何か手伝うよ。」

 

「あら、おはようございます。もうできましたわ。それより酷い雨ですわね」

 

「最近晴れの日が少ないのは、奴の仕業だろう。食べ終わったら村の様子を見てくるよ」

 

どん!どん!どん!

 

突然開戸を強く叩く音が聞こえたかと思うと、村人2人が家に転がるように入ってきた。

 

「村長大変だ!村の西の農場の崖が崩れて、アイルー1匹と農場管理人が生き埋めになっちまった。幸い2人の声は聞こえるがこのままじゃやばい。一緒に来てくれないか?」

 

「まあ大変。今すぐ支度を」

 

「俺が行く。シェラは俺が帰るまで飯をよそらないでいてくれよな」

 

「ありがとう。エイス」 「行ってくる」

 

村人2人はエイスと村長が何故朝食を一緒に取っているか詮索はしなかった。

 

空気の読める男達である。

 

エイスが現場に行くと農場の北の坑道の入り口が崩れて岩が散乱していた。

 

この坑道は奥が行き止まりになっていて2人は生き埋めの状態になっている。

 

崩れた手前の土砂を取り除いても上から崩落する恐れがある。

 

「ハンターさん、どうしたらいい?」

 

見れば7.8人の村人が全員エイスを見ている。

 

エイスは既にシェラの朝食の事は頭に無かった。

 

良くも悪くもエイスの長所となる点だ。

 

目の前に集中すべき事があると他は目もくれなくなる。

 

エイスは考えた。

 

(なるほど。入口の崖は崩れてはいるが、他の箇所は無事らしい。ならば横しかない)

 

「みんな、聞いてくれ。入り口の土砂を掘っても危険な事になりかねない。崩れていない脇のところから掘って救出する。大勢では出来ない。2人1組計4人で掘る人間と土を取り除く人間に分かれて作業するんだ。時間がないぞ。急げ」

 

この大雨でいつ、どこが崩れるかわからない現状では時間との勝負だった。

 

エイスは率先して動き、丈夫そうな所を掘っていき、開始からおよそ40分後、坑道の本線まで穴を通じさせる事が出来た。

 

中にいたアイルーと農場主は、多少の擦り傷はあったものの無事だった。

 

「ありがとう。助かった。本当にありがとう。強い雨だったから、中の柱を補強していたんだ。まさか入口が崩れるなんてな」

 

「ハンター様、みんな、ありがとうニャ。こいつだけ置いて逃げようと思ったけど、相棒だからそんニャ事出来なかったニャ」

 

「ざけんなっ」 ゴンッ

 

と小気味良い音を立てて農場主はアイルーを叩いたが、顔は笑っていた。

 

おそらく長い間柄なのだろう。

 

そうそう、書き忘れていた。

アイルーは自分の体の大きさくらいの穴を掘って大事なものを入れる習性がある。

このアイルーが中からエイス達を誘導して自身も横穴を掘っていた。

真っ暗闇だったから方向がわからず、エイス達が近づくまでわからなかったらしい。

 

片付けをしながら男達がエイスに話しかける。

 

「ハンターさん、朝飯まだなんだろ?」

 

「本当に助かったよ。後は俺たちがやっておくぜ。ここはいいからさ」

 

どこに、誰とは言っていない。

 

やっぱり空気が読める男達である。

 

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