英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第15話

エイスが村長宅に戻るとシェラはご飯と味噌汁をよそらず待っていてくれた。

 

「お帰りなさいまし。どうでした?」

 

「それより先に食べてくれてよかったのに」

 

「お食事は一緒の方が美味しいですわ」

 

「ありがとう。食べながら話すよ」

 

(ご飯に味噌汁、旬野菜に川魚の煮付け。これは何の肉だ?)

 

一心不乱にかき込んでいるエイスを見てシェラはニコニコ微笑んでいる。

 

「あ、いや、ごめん。美味しくてつい」

 

エイスは生まれてこの方こんなに美味しい手料理を食べたのは初めてだった。

 

家での料理当番はいつも自分だった為である。

 

「うふふ。いいんですわよ。それよりお話って?」

 

「ああ、崖崩れの件は、2人坑道に埋まったが無事救出した。のちの作業も村の男達がやってくれている」

 

「あら。良かった。私も後で行きますわ。それで?」

 

(表情を読まれているのか?)

 

「今日、明日訓練所を使わせてもらいたい。俺は素人だから、剣筋を誰かに見てもらいたいんだ」

 

「それなら訓練所にいる教官か、オトモ武具屋のモミ爺が適任ですわ。モミ爺は昔1人のハンター様と共に雷狼竜を倒した事がありますわ。その時に付いたあだ名が鬼神様【オニガミサマ】ハンター様が雷狼竜に気絶させられた後、たった1匹で角を折り、目をつぶし、鬼神の如く戦ったそうよ。その後気絶から立ち直ったハンター様と雷狼竜を討伐されましたわ」

 

「凄いなモミ爺。あの柔和な笑顔からは想像出来ない。でもモミ爺は加工屋の仕事があるからなあ。邪魔したく無いし・・・あいつに頼むか・・・」

 

「嫌っていますのね」

 

シェラははっきり言った。

 

「うぐっ」

 

「専門の方が村に1人は必要ですわ。それに彼には本職がありますし」

 

そう、彼は訓練所の教官でハンターの卵にノウハウを教える立場にある。

 

最も現在の生徒はアイルーだけである。

ツウ、レッドも彼の生徒だ。

 

(そういえばそう命じているのがシェラだったな。この人が村長ってのついつい忘れるなあ)

 

「わかったよ。早速行ってくる」

 

訓練所は村長の家から西に真っ直ぐ300m、先程の農場の北50mのところにある。

 

2日でどれだけ出来るかわからないが、エイスはやれる限りの事はしたかった。

 

一旦自室へ装備を取りに帰り訓練所に向かった。

 

村の一角に一際目立つ大きな建物がある。

 

面積が4ヘクタール(200×200)の広い土地に50m四方の二階建てで出来ており、2階部分は様々な種類の武器庫となっている。

 

1階は中と外で訓練所が分かれている。

 

 

そのI階の中心部に男が立っていた。

 

緑の頭巾を被り、同じく緑の合羽を着た変な男だった。

 

腕を組み、エイスが門を潜ってからずっとこちらを見ている。

 

エイスは気持ち悪くなった。

 

「はっはっは。よく来たな。吾輩は教官。教官と呼べぃ」

 

「来たくなかったんだけどな。他の人はどうしたんだ?」

 

「ん?雨だから来ないに決まっておろう。大体最近の・・・」

 

「時間が惜しい。剣の型を見てくれ」

 

「まあそう焦るな。自前を持ってきたのか?倉庫にあるのを好きなだけ使え」

 

「手に馴染んだ柄がいいんだ」

 

「そうか。剣斧についてどれだけ知っている?変形出来るのは知っているな?」

 

「ああ、だが俺は斧使いだから斧しか使っていなかった」

 

「あいわかった。剣の動きは斧とだいぶ違う。覚えれば覚えた分だけ行動の幅が広がる。だが、今からやっても付け焼き刃になるぞ?」

 

「体で一つ一つ覚える。教えてくれ」

 

「斧の使い方は割愛する。剣はまず、縦斬り。斬り上げ。横斬りの基本をマスターしないと進めない。明日までに完成させておけ」

 

縦斬り・・・相手の左半身(自分から見て右)に対して垂直に剣を下ろす

 

斬り上げ・・・縦斬りで下ろした剣先を相手の右半身を斜めに斬り上げる

 

横斬り・・・腰を落とし右足をやや前に出し、剣を水平に右方向に斬る

 

エイスは木こりだった為、刀筋を立てることはできていた。

 

単純作業が好きなことも、そして目の前の出来事に集中する性格もプラスして貪欲に技を習得していった。

 

正午に始めた訓練は、気づけば夜8時を回っていた。

 

(今何時だ?今日はこれくらいにしよう。流石に腕がキツくなってきた。マークの状態も見に行かないと行けないしな)

 

体を起こし、エイスが入り口に向かうと1人の女性が立っていた。

 

シェラだ。

 

 

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