英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第17話

ユクモ村から観測定置点まで15里。

 

その半ばを過ぎた頃から道は険しく、細くなり荷車が進みにくくなっていた。

 

加えて強まる豪雨。

 

視界がかなり悪くなってきた。

エイス達は警戒を強めた。

 

「マイム、レッド、俺は母衣で横が見えない!警戒を厳にしろ!前方のマークにも知らせてやってくれ!」

 

マイムはエイスからの令を受けると前方を走っている御者のテン、ツウの頭上に信号弾を撃った。

 

アイルー達はお互い手旗信号で確認し合った。

 

ユクモ村を出発して14里。

 

あと少しで観測定置点到着という所で前方のマーク車から信号弾が上がる。

 

荷車が停まり、マークが出る。

 

前方の何かを撃っている。

 

「会敵!マイムとレッドは荷車を守れ」

 

エイスも飛び出し相手を視認した。

 

エイスの背の2倍ほどある4匹の青熊獣に3人の男達が苦戦しているようだった。

 

その青熊獣にマークの火炎弾が吸い込まれるように命中する。

 

金銀火竜の素材より作り出した重弩。

妃竜砲「神撃」

 

銃身を竜の堅殻から作られているので、燃焼火薬が内臓されている火炎弾を撃っても劣化しない。

 

エイスも肉薄する。

 

既に前方の2頭は黒く焦げ、死んでいた。

 

エイスは男達に相対している、エイスから見れば後ろを向いている2頭に対し、斬撃を繰り出した。

 

剣による縦切り、斬り上げ。

 

2頭を容易く屠った。瞬殺である。

剣斧「ハイランドグリーズ」

 

同じく金銀火竜の素材で作ったこの剣斧は以前のものとは切れ味が比べ物にならなかった。

 

「助かった。視界が悪くて奴らの接近に気がつかなかったよ」

3人は全員ゴーグルをつけており、灰色のベストの下は緑が所々散りばめられた厚手の灰色のズボンを穿いていた。

 

シェラの手紙には名前の他にかなり長ったらしく彼らの特徴が書いてあったが、要約するとこうだった。

 

【隊長】カール・マクダウェル・・・黒い短髪で壮年の男性。快活で誰とでも打ち解ける。

 

【隊員】シモンスキー・コンスキー・・・少し小太りの男性。よく気がつく。

 

【隊員】ジアース・ノット・・・中肉中背。あまり話をしない。目と耳がいい。

 

 「残り2人は箱にいる。後で紹介するぜ。ちょっと待っててくれ。〝肉〟だけでも持っていきたい」

 

「箱?」

 

「俺たち定置点のこと箱って言っているんすよ」

 

そう答えたのはシモンスキー・コンスキーだ。

 

3人は自分達の荷車からスコップを取り出すと、手早く青熊獣の手足を乱雑に断ち切っていった。

 

「これで良しっと。

霊峰までコンパスで北東を目指せばいいだけだがここいらは道という道がない。

案内するつもりが逆に助けてもらってすまなかったな。

1、2頭ならハンター無しでもなんとかなるんだが、まさか4頭も現れるとはな」

 

「護衛のハンターは?」

 

「死んじまったよ。ここ」

「なあ、話は移動しながらでもいいんじゃねえか?俺たちの仕事は奴を倒す。そうだろ?エイス」

 

「ああ」

 

見れば2人の観測隊員の肉の積み込みも終わっており、一行は定置点に向かうことにした。

 

「あんた達の車母衣付きかよ。いいなあ」

 

「さっきの話の続きは?」

 

「そうそう、1人ハンターが居たんだけどな、死んじまった。

3人が行方不明になった次の日かな?気球が飛ばせなくなったから周辺調査は徒歩でそのハンターにお願いしたんだ。

〝箱からユクモ〟は奴の外側だ。どのくらい化け物の数が増えているか大まかな調査をしていた矢先、♂の大型狗竜を筆頭に♀の狗竜12頭に遭遇し、♂は倒したんだが、残った♀に装備品ごと跡形もなく食われちまった。

肉片すら残ってねえ。

護衛のハンターがいなけりゃ俺らは調査が出来ねぇ。

だから定置点はただの〝箱〟って訳さ。

笑えるだろ?

2日前ユクモ村ハンターギルド長の手紙を持った伝令が箱に来た。

これがその手紙さ」

 

(2日前?マークが治療に入ったのは3日前だから直後に手紙を届けたのか・・・)

 

【ユクモ地方霊峰観測定置点分隊所属の皆へ

任務ご苦労。

君達の報告のおかげで嵐龍の活動内容や勢力圏内外をより詳しく知ることが出来た。

化け物も嵐龍の勢力圏外で数が増え、こちらに来る伝令係もさぞ大変な思いをしたであろう。

本当にありがとう。

そちらに周辺調査嵐龍討伐のハンターを寄こした。

例の2人だ。

彼らと合流し、協力してくれ。

18日夜到着の予定だ。

嵐龍討伐後ユクモ村に全員で帰ってきて欲しい。

全員でだ。

健闘を祈る。

 

ユクモ村ギルド長 テネシー・ベルガモット】

 

「これだけか?」

 

「実は手紙は2通届いていて、もう1通の手紙は村長からのだったんだが、風で流れて失くしちまった。へへっ」

 

(嘘つけコノヤロウ)

 

隊長カール・マクダウェルの長話が終わる頃、丁度定置点らしきものが見えてきた。

 

 

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