第6章 舞うは嵐奏でるは災渦の調べ
エイス達は手持ちの食料を2人に分け与えた。
「ゆっくり噛んでゆっくり飲み込むんだ。気持ちは解るが焦らず食べるんだ」
隊員がゆっくり咀嚼しながら飲み込むのを待ってエイスは聞いた。
「何があったか話してくれ」
2人のうち比較的ガタイの大きい隊員がとつとつと口を開いた。
この嵐目山上空で飛竜のブレスにも耐久のある気球を〝水の線〟で撃ち抜かれたこと。
不時着したが、バリスタ(据え置き式の大型弩砲)を簡易設置できたこと。
この穴にたどり着く前に1人が〝水弾〟で粉々にされたこと。
最後は涙声で殆ど聞き取れなかったが、気になる単語が2つ出てきた。
〝水の線〟と〝水弾〟だ。
後者は大体予想が付くが水の線とはなんだろう。
エイスは聞いた。
「もう少し教えてくれ。お前はその水の線がどうなったのか見えたか?」
「嵐龍の口から気球に向かって伸びたかと思うと気球が横に真っ二つに切れちまった。不時着してからも次々と水弾を撃ってきて、岩を盾にしながらバリスタを設置したが、そのうちの1人が・・・あぁあいつは悪魔だ。あぁぁぁ」
エイスはこれ以上聞くのは酷だと思い話を止めた。
「俺たちは見ちまったんだよ」
青い顔で窪んだ目のもう1人の隊員が口を開いた。
「この洞窟の入り口に逃げ着いて後ろを振り返ったら奴が人間の肉片を食べていたのを。仲間の頭が噛み砕かれるのを」
エイスはそれを聞いて怒りが込み上げて来た。
この世界の化け物は人間を食べる。
エイスは隊員達の命を軽んじているつもりはない。
だが、もし喰われたのがシェラだったら?
良くしてくれた村の人達だったら?
みんな言ってくれた。
危険になったら帰って来てもいいと・・・
(そんな真似はできない。必ず奴の首を村に届けてやる)
彼らは約19日間の間ネズミやヘビを食べて飢えを凌いでいたという。ただ、湿気が酷い為体がかなり衰弱していた。
「心配するな。必ずユクモ村まで連れて帰る」
青い顔の隊員が暗闇の一角を指さした。
あの狭い通路を道なりに登っていけば広場に出る。そこが奴の巣だ。気をつけてな。ただ・・・」
「ああ、今は無理だな。明日の朝まで待とう」
「ちょっと様子だけでもみてくるわ」
今まで会話に加わろうとしなかったマークが口を開いた。
「大丈夫。少し覗くだけだって」
マークは、暗闇を抜け、岩に足をかけながら洞窟を登り、広場出口に辿り着くと双眼鏡を取り出し、慎重に辺りを伺った。
夜だったが満天の星空で月の光も相まって嵐目山が照らし出される光景は神秘的ですらあった。
これが意図的に作り出したものでなければ。
それに今のマークも微塵もそんなことは思わなかった。
彼の頭にあるのは嵐龍の持つある「モノ」だけだった。