広場は平坦で見晴らしが良かった。
嵐龍の姿は見えない。
右90度方向70m先崖寄りに星や月の光に照らされて、ギリギリ卵のようなものが見える。
個数ははっきりと見えないが2個以上はあるらしい。
彼にとってはラッキーだった。
(村長もエイスも馬鹿丸出しだ。卵が孵っていなくて良かった。アレを1個でも持って帰れば一攫千金だ。それを全て駆逐しろだ?テンに話した通り、やはり最後エイスを殺して嵐龍にやられた事にするか。龍玉も手に入るしな。この崖にでも死体を落としておけゃ化け物どもが喰って勝手に証拠隠滅してくれるだろ。)
彼は今後の生活を想像して顔をにやけさせていた。
彼は卵を売った先の土地がどんな事になるか知った事ではないので考えていないがデメリットは大きい。
卵は自然孵化する。
その幼体が仮に野放しになった時、成長した幼体がその地域の生態系を狂わせる可能性がある。
さらに成長すれば・・・
(そのまま王都を経由してさらに西の砂漠まで行きゃ足は残らないか、よし。そうしよう)
彼は事前に大まかな計画を立てそれをテンには話してあった。テンは一人ぼっちの野良アイルーだった。
はぐれ狗竜に襲われ、喰われそうになっていた所をマークに助けて貰った恩がある。
(テンの奴悲しそうな顔をしていたが、なあに
金が手に入りゃエイスの事なんざ忘れるだろ)
マークが戻ると2人の隊員達はエイスの外套にくるまって寝ていた。
エイスはマークが戻るのを待って食事を始めた。
「奴はどうだった?」
「姿は確認出来なかったが〝巣〟は確認出来たぜ。卵は孵化していなかったよ」
「良かった」
(ああ、本当に良かったぜ)「2つ以上確認したよ」
「それを含めて作戦を立てた。聞いてくれ」
「ああ」
エイスは青い顔の(今はいくばか良くなった)隊員から聞いた話をもとにマークに立案した。
嵐龍が山頂にいなかった場合エイスが卵を割って誘き出す
いたとしても卵を割って嵐龍を怒らせ、その場に釘付けにする
卵を割った本人を狙うと思われるのでマークはその間に持っている全ての火炎弾を頭に叩き込む
隙を見てエイスが尻尾を切る
マークがバリスタで拘束弾、続いて麻痺弾
エイスが近接戦闘
それでもダメならその後は状況に応じて各個応戦
100年前の観測隊員の情報をもとにエイスは大雑把に作戦を立てマークに告げた。
出来る出来ないは別として。
「尻尾?何故尻尾なんだ?」
「嵐龍の尻尾は空中での舵取りに使われるそうだ。尻尾を切れば奴はまっすぐ飛べない。仮に奴を倒し損ねても俺たちは逃げるチャンスがあるという事だ。それに高く飛ぶことも出来なくなるらしい。高い位置から一方的に〝水の線〟を撃たれなくて済む・・・100年以上前の情報だがな」
「そりゃ何情報だ?」
「100年前討伐に向かった隊員の証言が入ったノートだよ」
(そういえば水の線、水弾の事は書いてなかった。肝心な事を書き忘れやがって)
「明日も早い。もう寝よう」
「そうだな」
翌日、エイスはマークと共に広場へ向かった。
嵐目山の全体像は切り株のような形をしており、標高35メートル。
広場の大きさは約4ヘクタール(200×200)のやや正方形の広大な土地で嵐龍は卵を育てている。
その中央に嵐龍はいた。
嵐龍 外見・特徴
全身に白い羽衣のような飛膜を持つ。
自らの力で嵐を起こせるこの龍は、その能力で周囲に気流を発生させ、飛膜で捉える事によって空中に浮かぶ。
一切羽ばたく事なく、まるで空を泳ぐかの様な動きを見せた。
頭部には後方に向かって2本の無傷の大きい角が生えていた。
この化け物に外敵がいない証拠である。
バジル村ハンター所属
エイブラムス・ブレイブス 証言ノートより