エイス達はいつも通り、そして作戦通りに分散し位置につこうと動いた瞬間、エイス達が1秒前まで立っていた場所が爆ぜた。
嵐龍の水弾である。
エイスは卵の所まで一直線に走った。
通常平行移動する目標に対し射線を合わせる事は難しい。
連続発射された水弾は全てエイスの走った右後方に着弾した。
マークの頭部への火炎弾による援護射撃の効果も大きい。
卵まで距離10mという所で嵐龍が流れる様に動きエイスの前に立ちはだかった。
エイスは走る勢いそのままに柄に手をかけ嵐龍の頭部へ切りかかった。
その間マークはエイスへの誤射を防ぐため頭部から胴体への攻撃に切り替えている。
嵐龍はエイスの縦斬りを払うかの様に左手を撫ぜた。
羽衣手と剣斧が激交した。
エイスは4〜5m吹っ飛ばされたが、嵐龍の腕には深々と裂傷が出来た。
マークの頭部への攻撃が再開されている。
火炎弾による小爆炎で嵐龍はあまり目が効かない様だった。
マークを鬱陶しく思ったのか目の前のエイスを放置し、嵐龍は向きを変えると大きくのけぞり水の線を発射した。
盾として使っていたはずの岩が豆腐の様に切断されマークの僅か2cm上を何かが横切った。
一瞬で。
マークの手は完全に止まってしまっている。
嵐龍はもう一度大きくのけぞると今度はしっかりと目標を見定めて水の線を放った。
マークはしゃがまずその場に這いつくばった。
超低空で真っ直ぐ放たれたそれはマークのやや後方に着弾し地面を爆ぜた。
(やべえ。隠れるところが無ぇ)
辺りを見渡したが身を隠す岩が無い。
マークは先程の着弾場所まで転がりながら移動すると、その溝に寝転んだそのままの体制で残り15発の火炎弾を全て装填した。
エイスは・・・
嵐龍が1発目の水の線を撃った時体を起こし、2発目を撃つ瞬間には卵まで全力で駆け、3つのうち2つを斧で叩き割った。
(エイスの奴2つも割りやがった。クソが)
マークに注意が入っていた嵐龍がぐるんとエイスに顔を向けた刹那、ビリビリと大気が震えるかの様な強烈な殺気がエイスを襲った。
同時に耳をつんざく咆哮が霊峰全体に響いた。
エイスは自らの意思とは関係なく足がガクガク震えた。
(こいつは想像以上だ。舐めてたわけじゃ無いけど想像以上だ)
マークは火炎弾を撃っているが嵐龍は意に介さない。
が、エイスが卵の近くにいる限りエイスに対し嵐龍は派手な攻撃が出来ない。
大きく口を開けると噛み付いてきた。
何度も何度も。
その巨体に似合わず素早い動きにエイスは応戦できず転げ回って逃げる事が精一杯だった。
嵐龍の口がエイスの頭部を捉えた。
すぐにエイスは身を引いた。
脱げたシルソル頭部が嵐龍の口の中でバキャッと音を立てて砕けた。
(銀火龍の堅殻で作った防具が紙細工の様に!!)
左耳に激痛が走る。
触ってみるとノコギリで削られた様に耳が根こそぎ無くなっていた。
痛みにふけっている余裕はない。
間髪入れず嵐龍は尻尾を払ってきた。
一撃目地面を這う様に迫ってきたそれをエイスは跳躍して回避。
二撃目を剣斧で防いだがその衝撃でバラバラになり剣と斧が分離した。
エイスは吹っ飛ばされながらも剣の柄だけは離さず剣の状態を整えながら嵐龍の目を真っ直ぐ見据えたが、体制が整えきれていないエイス目掛けて嵐龍は少しのけぞると水弾を発射・・・のタイミングでマークによるバリスタの拘束弾が着弾した。
(マークめ、遅すぎる!!)
エイスは隙を見てシェラから貰った4つの秘薬のうち1つをかつて左耳があった場所に塗り、2つ目を口に入れ無理やり飲み込んだ。
するとたちまち出血は止まり痛みも和らぎ右耳から入ってくる音も鮮明になってきた。