「終わったな」
「起きていたのか?」
「今、目が覚めたところだ」
そう言いながら上体を起こしたマークはアイルー達の待機しているであろう方角へ信号弾を上げた。
(信号弾?)
「信号弾を何故上げるマーク」
「テンはさ、1人だったんだ。ずっと孤独だったのさ。狗竜の群れに襲われ喰われそうになっていた所を俺が助けたんだ。」
「なんだ?何を言っている?」
「だから今テンを呼んだのさ。大丈夫。予め打ち合わせしてあるからよ」
「だから何を言っているのか聞いているんだ」
マークはすでに立ち上がっていた。
「こういうことさ。卵・・・破壊するんだろ?そいつを俺らに寄越すんだ」
マークはエイスに銃口を向けた。
いつのまにかテンがマークの横にいる。
「嵐龍の素材は全てくれてやる。だが卵は駄目だ。危険すぎる」
「何言ってやがるすぐに売りゃいいだろうが!!金持ちになれるんだぞ?」
「人の命や生活に代えられるものはない。失ったものは取り戻せない」
それを聞いたマークは激昂し、エイスに対して2発の弾を発射、右脇腹に命中した。
「ぐっ・・・」
「他人の命なんぞ知ったことか!こいつをコレクターに売れば一生遊んで暮らせる金が手に入るんだ。こんな危険な仕事とおさらばなんだぞ?」
エイスは片膝をつき、マーク、テンに見えないように最後の秘薬を飲んだ。半分は演技で半分は本当に体が参っていた。
「だいぶキテいるな。今渡せば殺しゃしねえよ。今ならな」
「龍玉とその他の素材では不満か?」
「エイス、何度も同じ事を言わすな。俺は遊んで暮らしたいんだ」
「テン。お前も目を覚ませ。そんな奴に着いて行くな」
「ご主人には拾ってくれた恩があるニャ。それをまだ返してないニャ」
「交渉決裂だな。死ね」
エイスはマークが言い終わる前に柄に手をかけマークに肉薄した。
(速い!!どこにそんな力が)
マークは一歩遅れてエイスに再び銃口を向ける。
距離僅か3m。
(ギリギリまで距離を詰める!)
マークの重弩から弾が発射された。
1発目、エイスは弾が発射される前に横にステップし回避。
しかし2射目を至近距離でしかも胸に被弾した。
だが、エイスは腰を落とし躊躇無く剣を右から左へ横になぎった。
エイスは慣性で半回転すると背後から飛びかかってきたテンにその勢いのまま剣を下から上に斬り上げた。
テンは四散した。
殺しにかかってくる者にエイスは手加減など出来ない。
馬鹿な男に付き従うしか生きる術を持たなかった哀れなアイルーの最後だった。
上半身と下半身に分かれたマークは大量の体液と臓物を辺りに撒き散らしながら倒れた。
口をぱくぱく動かしていたが、やがて物言わぬ骸になった。
(マーク・・・テンを自分の欲に引き込みやがって・・・この子は殺したくなかった。ごめんな。テン)
エイスは大きく息を吐くと胸に手を当てた。
(確かに当たったはずだ。シェラが守ってくれたのか)
村長から貰ったお守りは粉々に砕かれていた。
見ればマークのお守りも砕け散っていた。
(こいつの邪気は払いきれなかったか)
「終わった。彼らを連れて帰らないと」
ぽつり呟きエイスは最後の卵を割ると嵐目山山頂を後にした。