英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第25話

「エイスさんお帰りなさいっす。あれ?マークさんは?テンもいたはずだけ・・・え?」

 

戻ったエイスを見てシモンスキーとジアースはぎょっとした。

 

「エイスさん、傷の手当てをしないと」

 

「時間が惜しい。弾の摘出だけ頼む」

 

「ジアース、タオルを持ってきて欲しいっす」

 

そう言いながらシモンスキーは焚き火でナイフを炙り始めた。

 

熱せられた銅のナイフがエイスの右脇腹2箇所の銃創を焼くが薬のおかげでエイスに鋭い痛みは無い。

 

が、痛いものは痛いし熱いものは熱い。

 

貰ったタオルを口から外し、舌を噛まないように注意しながらエイスはゆっくり喋った。

 

「マ.マークとテン・・・は俺が・・・殺し・・・た。彼らは嵐龍・・・の卵を売ることしか考えていなかった。最後まで・・・説得しようと・・・したんだが・・・」

 

 

ジアースとシモンスキーはじっとエイスの目を見て話を聞いていた。

 

いつのまにか弾は2つとも摘出されていた。

 

「エイスさん、俺たちは信じるっすよ。今は帰ることだけを考えるっす。箱に着いたら気球でユクモ村まで運ぶっす。嵐龍がいなくなったから余裕っすね」

 

アイルー達の元へまず、ジアースとシモンスキーが2人の観測隊員を背負いながら降ろした。

 

エイスは ボロボロになった胴、腰、足の装備を捨てると荷車からジアース達が持ってきた簡易担架(2本の長い棒に布を巻きつけただけのもの)に乗せられロープを使い崖から降りた。

 

崖下には全員待機していた。寝ながらエイスは感情を込めず、先の出来事をアイルー達に話した。

 

アイルー達は沈痛な面持ちで聞いていたが、とりわけショックを受けていたのがマークのオトモのツウだった。

 

ツウはテンと、とりわけ仲が良かった。

エイスの話を聞いてその場で泣き崩れた。

誰もかける言葉が無かった。

 

ツウはエイスに食って掛かった。

 

「テンは良いやつだったニャ。・・・短い間だったけど友達ニャ。マークの旦那も嫌な所はあったけどボク達には優しかったニャ。にゃにも殺す事なんて無かったニャ!!」

 

ジアースが止めに入る。

 

「よせ。ツウ。エイスさんの傷に障る。それにお前はその場に居たわけでは無いだろ?エイスさんの話や傷跡から鑑みるにマークさんが先に攻撃して来た可能性も大きいだろ?」

 

「・・・だけど!」

 

ツウの言葉を遮るようにシモンスキーが辺りを見渡しながら言った。

 

「此処もじきに危なくなるっす。みんなが無事に村へ帰る。後はそれだけっす」

 

「もういい・・・わかったニャ」

(こいつだけは絶対許さないニャ)

 

「ツウ、村に着いたら俺をどうとしても構わない。すまなかった。確かに俺が殺した。事実だ。あの場所で死ぬべきは俺だったかもしれない」

 

「旦那・・・」

 

マイムが悲しそうな顔でエイスを見た。

 

「もうわかったニャ!!」

 

嵐龍がいなくなった事で周囲に鳥と虫の声が戻ってくる。

そして他の動物や大型獣も・・・

 

「良し。一刻も早くここを去ろう。途中化け物が出たら俺を必ず起こせよ?」

 

「無茶っす。そこは俺たちに任せて欲しいっす」

 

ジアースもシモンスキーの言葉に頷く。

 

「ああ、多少の奴らは任せるよ。とにかく出せ」

 

エイスの号令で全員それぞれ乗り込み3匹のアイルーは手綱を握った。

 

(彼らを必ず村に送り届けると誓った。約束を破ってシェラに嫌われたくないからな)

 

霊峰を出発して12里。一行が無事、観測定置点まで辿り着けそうだと安堵し始めた時、荷車の遥か後方から大量の何かが猛スピードで森の葉を乱雑にかき分けて迫ってくる音が聞こえた。

 

 

 

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