「エイスさんお帰りなさいっす。あれ?マークさんは?テンもいたはずだけ・・・え?」
戻ったエイスを見てシモンスキーとジアースはぎょっとした。
「エイスさん、傷の手当てをしないと」
「時間が惜しい。弾の摘出だけ頼む」
「ジアース、タオルを持ってきて欲しいっす」
そう言いながらシモンスキーは焚き火でナイフを炙り始めた。
熱せられた銅のナイフがエイスの右脇腹2箇所の銃創を焼くが薬のおかげでエイスに鋭い痛みは無い。
が、痛いものは痛いし熱いものは熱い。
貰ったタオルを口から外し、舌を噛まないように注意しながらエイスはゆっくり喋った。
「マ.マークとテン・・・は俺が・・・殺し・・・た。彼らは嵐龍・・・の卵を売ることしか考えていなかった。最後まで・・・説得しようと・・・したんだが・・・」
ジアースとシモンスキーはじっとエイスの目を見て話を聞いていた。
いつのまにか弾は2つとも摘出されていた。
「エイスさん、俺たちは信じるっすよ。今は帰ることだけを考えるっす。箱に着いたら気球でユクモ村まで運ぶっす。嵐龍がいなくなったから余裕っすね」
アイルー達の元へまず、ジアースとシモンスキーが2人の観測隊員を背負いながら降ろした。
エイスは ボロボロになった胴、腰、足の装備を捨てると荷車からジアース達が持ってきた簡易担架(2本の長い棒に布を巻きつけただけのもの)に乗せられロープを使い崖から降りた。
崖下には全員待機していた。寝ながらエイスは感情を込めず、先の出来事をアイルー達に話した。
アイルー達は沈痛な面持ちで聞いていたが、とりわけショックを受けていたのがマークのオトモのツウだった。
ツウはテンと、とりわけ仲が良かった。
エイスの話を聞いてその場で泣き崩れた。
誰もかける言葉が無かった。
ツウはエイスに食って掛かった。
「テンは良いやつだったニャ。・・・短い間だったけど友達ニャ。マークの旦那も嫌な所はあったけどボク達には優しかったニャ。にゃにも殺す事なんて無かったニャ!!」
ジアースが止めに入る。
「よせ。ツウ。エイスさんの傷に障る。それにお前はその場に居たわけでは無いだろ?エイスさんの話や傷跡から鑑みるにマークさんが先に攻撃して来た可能性も大きいだろ?」
「・・・だけど!」
ツウの言葉を遮るようにシモンスキーが辺りを見渡しながら言った。
「此処もじきに危なくなるっす。みんなが無事に村へ帰る。後はそれだけっす」
「もういい・・・わかったニャ」
(こいつだけは絶対許さないニャ)
「ツウ、村に着いたら俺をどうとしても構わない。すまなかった。確かに俺が殺した。事実だ。あの場所で死ぬべきは俺だったかもしれない」
「旦那・・・」
マイムが悲しそうな顔でエイスを見た。
「もうわかったニャ!!」
嵐龍がいなくなった事で周囲に鳥と虫の声が戻ってくる。
そして他の動物や大型獣も・・・
「良し。一刻も早くここを去ろう。途中化け物が出たら俺を必ず起こせよ?」
「無茶っす。そこは俺たちに任せて欲しいっす」
ジアースもシモンスキーの言葉に頷く。
「ああ、多少の奴らは任せるよ。とにかく出せ」
エイスの号令で全員それぞれ乗り込み3匹のアイルーは手綱を握った。
(彼らを必ず村に送り届けると誓った。約束を破ってシェラに嫌われたくないからな)
霊峰を出発して12里。一行が無事、観測定置点まで辿り着けそうだと安堵し始めた時、荷車の遥か後方から大量の何かが猛スピードで森の葉を乱雑にかき分けて迫ってくる音が聞こえた。