英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第26話

ジアースが閃光玉を投げ、双眼鏡を覗き込む。

 

「なんだ?中型の獣脚類?・・・狗竜か!!8・・・12・・・数えきれない。箱のハンターを殺した奴らか!まだこんな所うろちょろしていたのか!!エイスさん・・・」

 

ジアースが不安を隠せない顔でエイスを見た。

 

「こんな所まで来て♀狗竜に囲まれるとはな。モテモテだな。俺たち」

 

(定置点から持ってきた爆薬、閃光玉は、この数じゃ足りないか・・・)

 

エイスは うっっ とうめき声を上げながら上体を起こすと、御者のマイム、レッドに向かって叫んだ。

 

「一旦止めてくれ!!」

 

2匹は?になりながらもガーグァの手綱を引いた。

 

すぐさまエイスは荷車から飛び降りた。

 

確かにガーグァが3頭もいるとはいえ、行きよりも人数が増えている荷車は、いずれ追い付かれる。

 

そして止まってしまったら死期が近づくだけだ。

 

それがわかっているからエイスは早口で言葉を捲し立てた。

 

「マイム、レッド、ジアース。先行しているツウとシモンスキーと共に観測隊員を守れ。行け!」

 

言い終わるや否やエイスはガーグァの尻を思いっきり蹴飛ばし急発進させると荷車を背に狗竜達と相対した。

 

(この場で可能な限り数を減らせば追手が付いても積載道具でなんとかなるな)

 

「旦那ぁぁぁぁぁ」

 

マイムは頭で考えるより先に荷車から飛び降りた。

 

エイスの元へ急いで駆け寄る。

 

「旦那、水臭いニャ。死ぬ時は一緒ニャ」

 

狗竜どもの襲撃を捌きつつエイスは答える。

 

「馬鹿やろう!犬死だぞ!!」

 

「旦那の方が大馬鹿ニャ。それに・・・あの世に友達が居ないと困るニャ。僕も一緒ニャ」

 

「ありがとう・・・マイム、君に出会えて良かった。ごめんな」

 

狗竜の数が20を超えた辺りでエイスは数えるのを諦めた。

 

荷車は完全に森の奥へと消えている。

 

(これで安心だ。シェラ・・・達者でな)

 

その後彼らの姿を見たものはいない。

 

 

 

※エピローグ

嵐龍を討伐した日の翌日夜、ユクモ村ハンター ジル・ローレンツと他4名が現場を捜索したところ彼の腕に付けていた籠手と骨らしき破片がそこら中に散乱していたという。

 

報告を聞いたユクモ村村長シーラ・ステルヴィアはその場で発狂した。

 

エイスとマイムの墓はユクモ村全体が見渡せる村外れの丘の上に建てられた。

ベラード・ダイスが調査に訪れた時にも献花は絶えていなかったらしい。

 

マーク・シュルツとテンの墓は村の雑木林の中に建てられた。

墓石は無い。

 

しかし、毎月命日の20日になると1匹のアイルーの姿が確認されているという。

 

ユクモ村とその周辺の村は平和を取り戻した。四季の花が咲き鳥達の声が帰ってきた。

ただ一つユクモ村村長シーラ・ステルヴィアの心を除いて。

 

後書き

 

王都の便利屋ベラード・ダイスから受け取った調査報告書から私はこの本を書いた。

詳細がわからないところは私の想像で書いた。11年も前の話。

それも一部の地域で起こった出来事。

しかし私は風化させたくなかった。

私の名より彼の名を残そう。

確かにそこに英雄はいたのだから。

 

「英雄譚」完 作成終了日 天暦131年 9.15

 

※作者名不明の為記載せず(王都印刷)

 

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