英雄譚   作:繊細なゆりの花

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第6話

ユクモ村のほぼ中心にある集会浴場は、温泉とギルド(各地方の街や村、いくつかの里に存在する同業者組合)と宿泊施設、ハンターが住み込みの寮が入っている大型施設である。

 

通常ハンターはこのギルドから依頼を受け、仕事に入るのだが、この村では稀に村長自身が依頼をするときがある。

 

それは案に村長が村の安寧を願ってのことなのだろう。

 

今回の場合、ユクモ村周辺で大型の獣が活発化してきた。

 

村周辺の緊急を要する依頼をエイス達は請け負っている。

 

 

準備を整えた2人が村長の家に向かう途中、集会浴場階段下の長椅子に座っている村長がクルクルと落ちゆくユクモミジの葉で遊んでいた。

 

(ユクモの象徴。魔除けの赤か・・・)

 

「なんだ?村長か?やめとけやめとけ。竜神族と俺らじゃ釣り合わねえよ」

 

「そんなんじゃない。この村の赤色のことだ。この厄災の調査に来た俺自身何をすべきなのかを考えていた」

 

「わかった・・・すまん。」

 

「ああ、それより声を落とせ」

 

「ああ・・・すまん」

 

エイス達の声が丸聞こえだったであろう村長が、聞こえていないかのような顔で話しかけてきた。

 

「あら?もう準備はお済みになりましたの?」

 

「ああ、問題ない」

 

「マークさんにもお渡ししますわ。魔除けのお守りです。私の故郷のおまじないですの」

 

「サンキュー。大事にするぜ。エイス、行こうか」

 

「ああ」

 

2人は渓流に向かうべくユクモ村を背に出発した。

 

道中、荷車に揺られながらエイスは考えた。

 

(手負のやつをこのままにしては置けない。村に被害が及ぶ前に討つべきだ。)

 

「マーク、発見次第奴を討つぞ」

 

「当たり前だ。その為の装備だろ?」

 

「マイムとテンは奴の痕跡を発見次第距離を取って待機だ。信号玉上がったら来てくれよ?それまではガーグァを守れ」

 

「はいニャ」

「わかったニャ」

 

(出発前、もっとアイルー達に気を配ってやれば良かったな。装備はこのまま青熊獣の皮でもいいけど、戦闘サポートに後2匹は欲しい。移動するにも多い方が交代出来るし楽になるだろう。)

 

『うわあぁぁぁぁ!!』

 

エイス達一行が渓流の入り口に差し掛かった時、複数の恐怖で驚いたような叫び声が森に響き渡った。

 

「近いな。エイス行くぞ。アイルー達は離れていろ」

 

先に動いたのは、マーク・シュルツだった。

 

エイスとのハンター歴の差が出た。

 

声のした方角に全速力で向かったエイス達の目に飛び込んできたものは、足がすくんで動けなくなった木こり3人と、獲物を今にも食い殺さんばかりの目をしている右目のつぶれた雷狼竜だった。

 

エイスは短刀を鞘から抜き、それを投げると、雷狼竜は〝今度は〟それを弾いた。

 

マークは会敵と同時に重弩を地面に置き、狙いを絞り、連射する為しゃがみ撃ちをした。

 

短刀を弾いた雷狼竜はその分回避が遅れ、弱点である角に弾が吸い込まれる。

 

奇襲は成功した。

 

マークはエイスが言わなくてもわかっていた。

 

獲物の右側が死角で弾が見えないことを。

 

雷狼竜が低く唸り声を上げながら辺りの雷光虫を集め帯電し始めた。

 

雷狼竜はその溜めた電気を使い放電する。

 

その威力は触れたものを容易に焦すほど高威力だ。

 

エイスとマークは立ち回っているが、雷狼竜は右目をカバーするように動いていた。

 

個体差はあるが、この雷狼竜は体が大きい為弱点が狙い辛い上に賢かった。

 

集電完了。

 

エイスとマークは完全に後手に回った。

 

『ちぃ!!閃光を使うぞ!』

 

エイスは道具袋の中の閃光玉を取り出すと雷狼竜の目の前に投げた。

 

一瞬、夜の森が真っ白になり、その眩しさで相手はたたらを踏んでいた。

 

「援護を頼む」

 

エイスは、雷狼竜の後ろに回り込むと、剣斧を振り上げ尻尾の中程に思いっきり叩きつけるように振り下ろし切断した。

 

 

 

 

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