ホグワーツの司書   作:影尾カヨ

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ハリー・ポッター:2

 トムが消え去った後。

 ジニー・ウィーズリーが目覚めた。その体を起こし、自分がしてきた行いを後悔する。トムの日記に操られ、『部屋』を開き、バジリスクを解き放った。

 

 以前、彼女が言っていた『読み手を操る本』とはトムの日記のことを言っていたのかと今になって気づく。もっとちゃんと話を聞いていれば、早期に事件の解決ができたかもしれない。

 

「…トムの言う通りだな」

 

 傍観者を気取っているから、手遅れになって後悔する。

 

 フォークスがポッターに近づき、その涙で傷を癒した。解毒もしたのだろう。弱っていた彼は、見る間に元気を取り戻した。これでもう、死にそうな人間はいない。

 フォークスは僕にも涙を落としてくれた。足に力を込め、ようやく立ち上がることができた。だが外傷は消えても、紋様の跡に残った火傷は消えていない。これはどちらかというと傷ではなく呪いに近い物だ。不死鳥の涙でも癒せない。

 

「さあ、帰ろう。こんな所に長居はしたくない」

 

 問題はどうやって帰るのか。ここには傷が癒えたとはいえ重傷者が3人。帰り道にロン・ウィーズリーら2人。『部屋』の入り口は閉まっている。ポッターなら開けるだろうか。

 どうするか悩んでいると、フォークスが声を上げた。

 

「…なら頼むよ」

 

 不死鳥はどんなに重い荷物でも軽々と運ぶ事ができる。彼に捕まっていけば、外に出られる。

 

 

「ライアス!お帰り。ちゃんと戻ってきたわね」

 

 トイレで出迎えてくれたのは、マートルと彼女が呼んだであろうマクゴナガル。

 そしてダンブルドア校長がいた。帰ってこられたのか。

 

「スコープ司書!これはどう言う事なのか、説明してもらえますでしょうね!」

「落ち着くんじゃ、ミネルバ。ライアスもハリーもみんな疲れておる。ゆっくりできる場所に移ろうか」

 

 正直に言って、立っているのがやっとな程だ。意外にも肩を貸してくれたのはロックハートだった。以前の彼からは想像もできない献身だ。記憶を失って謙虚な大人になるとは思わなかった。

 

「助かるよ、ロックハート」

「いえいえ。お年寄りは気遣わなければいけませんから」

 

 年寄り扱いは勘弁して欲しいが。

 

 

 ジニー・ウィーズリーとロックハートは療養のために医務室へと運ばれた。ロン・ウィーズリーが付き添いで一緒に。

 そして僕とポッターは、校長室で事情聴取だ。温かいココアを飲むと、幾分か元気も戻った。

 

「それで、今回の事件について、君らが知る限りを話してもらおうかの」

 

 僕が本格的に関わったのは『秘密の部屋』に入ってからだ。主な語り手はポッターとなる。彼の語った事は、大まかには僕の読んでいた通りだった。

 

 何者かがジニー・ウィーズリーに『トムの日記』を渡した。

 日記に操られた彼女は『秘密の部屋』を開き、事件を起こした。

 その後、彼女は日記を捨て、ポッターの手に渡った。ハグリッドが50年前に捕まった様子を見せたらしい。

 そして何があったのかは知らないが、再び日記は少女の物となった。そしてグレンジャーらを襲って僕を巻き込んだ後、校長を排除してトムは復活を試みた。

 マートルの死んだトイレが『部屋』の入り口だと突き止めたポッターらは、拐われたジニーを助けるために飛び込んだ。

 トムから事件の全貌を聞き、その後『グリフィンドールの剣』でバジリスクを倒した。

 

 つまりこの1年は、ずっと彼の手のひらの上だったわけだ。僕らが彼を阻止できたのは、本当にギリギリの段階だった。

 

 ダンブルドアとマクゴナガルは黙ってポッターの話を聞いていた。マクゴナガルはその事実に言葉も出ないという感じだが、ダンブルドアは何かを思案するように顎に手を当てた。特に、ポッターが組み分け帽子から引き抜いた剣に興味があるようだった。

 

「なるほどの。よくわかった。ハリー、急いで魔法省へフクロウを飛ばしてくれ。森番を呼び戻さないといけん」

 

 校長の言葉にポッターは破顔した。よほど嬉しいのだろう。

 

「ライアス、ついて行ってあげなさい。詳しい話はまた別の日にしよう」

 

 マクゴナガルがついて行けば良いのにと思ったが、校長と副校長で話し合うこともあるのだろう。それにポッターは僕の方をチラチラと見てくる。

 

「分かりました。行こうか、ポッター」

 

 

「あの…スコープさん」

 

 フクロウ小屋へ向かう途中、ポッターが僕に話しかけてきた。

 

「ヴォル…トム・リドルと友達だったんですよね」

「ははっ…。やっぱり気になるかい?」

「はい。日記の記憶では、親友だって」

 

 僕は火傷を撫でて気を紛らわせるが、暗い顔をしているだろう。

 

 少し前までなら、胸を張って親友と言った。彼は闇の帝王に身を堕としたが、それでも学生時代の付き合いは変わらない。

 だが『部屋』でのトムとの会話を思い返すと、とても友人だったとは言えない。僕は彼と、本当に親友だったのだろうか。

 

「…そうだね。親友だった…そう、()()()()()

 

 滑稽もいいところだ。彼の本性から目を背け、彼がヴォルデモートになるのを止めようともしなかった。

 

「あの時も言ったけど…今度は本当に、僕は彼についてあまり知らないんだ。僕に彼の親友を名乗る資格なんて無いよ」

「それは違うと思います」

「…どういう事だい?」

 

 ポッターが何を知っているというのだろうか。たかが12歳の少年に、僕とトムの関係など知るよしもない。そう思った。

 

「『日記』でハグリッドが捕まる夜を見たんです。あの日のこと、覚えていますか?」

 

 もちろん覚えている。マートルが死んだ日の事だ。

 

「貴方と別れた後、トムはハグリッドの所へ向かいました。その時に言っていたんです。『巻き込まなくて良かった』って。多分トムは、貴方に本性を知られたくなかったんです」

「……」

 

 トムは必要のない嘘は言わない人間だが、それ以上に自分の弱さを隠したがる男だった。

 だからこそ、その言葉は本心だろう。巻き込む事を忌避する程度には友情があった。

 

 そうか。ダンブルドアに僕を押し付けたのは、僕を引き離すためだったのか。

 

「巻き込んでくれて良かったのになぁ…」

 

 きっとどうしようもない程に巻き込まれたら、僕は彼と真剣に向き合っただろう。エリシアが1番大切なのは変わらないが、それでも何か変わったはずだ。

 

「こんな後悔…しても遅いのになぁ」

 

 力無く呟く。今更何を考えても遅い。僕は彼から目を背け続けた。結果、彼は僕と決別し、闇の帝王となった。僕はそれを止めなかった。

 

 もう一度、彼と会うことができたらと思わずにはいられない。今度はちゃんと向き合って話がしたい。だがそれは叶う事はないだろう。何せ、彼の『日記』による復活は阻止された。

 

 もう彼が蘇る事は無い

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