ホグワーツの司書   作:影尾カヨ

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アズカバンの囚人
鎖無き獣のプロローグ


 シリウス・ブラックがアズカバンから脱獄したというニュースは、魔法界を震撼させた。彼は『彼』の部下として、ポッター夫妻の殺害に深く関わっていた。

 そしてそんな彼が脱獄したのは、『彼』を討ち破ったハリー・ポッターへの復讐であると魔法省は見ている。

 

「おかげでホグワーツはいい迷惑ですね」

 

 魔法省はアズカバンの看守をホグワーツに配置する事を打診してきた。曰く、安全の確保のためだとか。

 

「校長が許可したのです。我々はそれに従うだけですよ」

「それもそうですね。ただ彼らを歓迎することなどできますか?」

 

 吸魂鬼(ディメンター)と呼ばれる彼らは、凶悪な闇の生き物だ。人間の魂を糧とし、生半可な呪文や魔術では追い払うことすらできない。

 

「無理です。だから校長は敷地内に入る事は許可しても、城の中にまで入る事は禁じたのでしょう」

「彼らがすんなり従うとは思えませんけど…」

 

 看守をしているのは、囚人の魂を好きに喰らっていいからだ。つまり主従関係ではなく、損得の利害関係でのみ彼らは魔法省に従っている。彼らの気まぐれで生徒が襲われることは、十分に考えられる。

 

「シリウス・ブラックがハリー・ポッターを狙っている可能性がある以上、彼はここに現れることが考えられます。警戒するのは仕方ないでしょう」

 

 いざ彼がホグワーツに現れた時、吸魂鬼がブラックと生徒の区別がつくか怪しいものだ。無差別に襲うかもしれない。

 

「いざと言う時、生徒を守ることができるなら良いですが…あいにく、僕は『守護霊の呪文』が使えないので…」

 

 あれを完全に使いこなすには、単なる技量だけではなく『幸せな思い出』が必要になる。僕の幸せな思い出は学生時代、トムとエリシアと一緒に遊んだ記憶だ。だがトムはヴォルデモートになり、エリシアが呪いによって死んだ事で、その記憶は僕の後悔となった。

 

「動物もどきならば彼らの眼を誤魔化すことができるそうですが。それでは自分しか守れないです」

「そこに関しては校長も考えているでしょう。新しい『闇の魔術に対する防衛術』の教員は『守護霊の呪文』が使える人を選んだそうです」

 

 確かホグワーツ特急の護衛を兼ねて、生徒と一緒に乗ってくる予定だったか。その人物が誰なのかは知らない。噂ではホグワーツの卒業生だとか。

 今年こそまともな教師である事を期待するばかりだ。元『不死鳥の騎士団』のメンバーらしいので大丈夫だとは思うが。

 

「火傷の方はもう平気なのですか?」

「ええ。この通り」

 

 マクゴナガルは心配してくれるが、腕を見せて治ったことを教える。薄く跡が残っていて僅かな違和感があるが、痛みは無い。『守護紋様の魔術』の改良ができるまで、肌に描くのはやめる事にした。看守達が闇の生き物なのに描いていたら肌が焼け焦げそうだ。

 

「脱獄囚がいて吸魂鬼が彷徨いている最中に無防備なのは不安ですが、羽の方は問題なく使えますし大丈夫でしょう」

「既に完成度の高い魔術をさらに改良するのは大変でしょう」

 

 たしかにそうだが、あれは元々僕が考えたものだ。どうとでもなるだろう。

 

「今年はハナから騒がしい年になりそうですね」

「ええ、全くです。たまにはもっと静かな時間を過ごしたいのですが」

 

 厄介事から眼を背けないと誓ったが、それでも何も無いほうが良いに決まっている。

 速やかなブラックの逮捕を望む。

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