ホグワーツの司書   作:影尾カヨ

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双子のウィーズリー:1

 ダンブルドアは僕とスネイプの報告を受け、クィレルを警戒するように言ったが、それだけだった。スネイプは不満そうだったが、僕にとっては予想通りの判断だ。なるべく今まで通りに行動するようにと、校長は言った。

 だがそれはダンブルドアがそれだけ敵を警戒しているという証拠だ。クィレルとその裏にいる人物は、どうやらただの小悪党ではないらしい。

 

 そういえば学校に侵入したトロールだが、僕らが向かった時には既に気絶していた。それは教師によるものではなく、なんと3人のグリフィンドールの1年生達にによるものだった。彼らがなぜあの場にいたのかはわからないが、なかなか勇敢な子達だ。まさにグリフィンドール生らしい。

 

 トロール侵入の顛末だが、何故か3人の中の1人、グレンジャーが自分がトロールを入れたと言い出し、マクゴナガルが彼女に減点という処罰を与えた。それによりこの事件は、『生徒の起こした事件』となった。

 本当の犯人であるクィレルだが、何食わぬ顔で教師陣の中に紛れていた。顔に似合わず神経が図太い奴だ。

 

 ダンブルドアはその後として、何人かの教師に定期的な校内の見回りを命じた。名目は生徒の監視だが、本音はクィレルやその仲間が陰で活動するのを未然に防ぐのが狙いだ。

 

 そして僕も命じられた人間の1人だ。全くなぜ司書の僕が選ばれるのか。クィレルの犯行を止めたのが原因か。人使いの荒い老ぼれ校長め。

 

 現在ホグワーツの司書は僕1人だけだ。何年か前はピンスという女性が研修を兼ねて僕の手伝いをしてくれていたのだが。有能な司書になると思い、僕の推薦で大英図書館に勤務している。当時はそうでもなかったが、今こそ彼女のような助手が欲しくなる。

 

 利用者の少なくなる午後の授業時間。僕は図書室を閉めて見回りを始める。といっても肝心のクィレルは授業中。やる事も無いのでただ歩いているだけだ。暇なので久しぶり友人である森番を訪ねようか。それとも読みかけの本の続きを読もうか。などと歩きながら考えていると、後ろから声がかかった。

 

「おやおや」

「これはこれは」

 

 全く同じ、2つの声。振り返ればそこにいたのは瓜二つの2人の青年。燃えるような赤毛にそばかす。ウィーズリー家の双子にして、学校で1番のいたずらコンビ。

 

 フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーだ。

 どっちがどっちかは、本人達にしかわからない。時々入れ替わっているらしい。

 

「ミスター・フライトがお出かけだ、相棒」

「珍しい。王国から出てきたみたいだぞ」

 

 ミスター・フライトと僕を呼ぶのはやめてほしいのだが。第一に今は授業時間だ。彼らのようなグリフィンドールの三年生はその真っ最中ではないのか。

 

「また抜け出して来たのかい?」

 

 確信を持って訊くと、当たり前だとでも言うように2人は胸を張った。威張ることでは無いが。

 

「グリフィンドール2点減点。すぐに教室に戻るんだ」

「そう固い事を言うのはやめてくれよ」

「俺たち、すっげーいたずらのアイデアを思いついたんだぜ?」

「これを放っておくなんて、それこそ将来大損だな」

 

 そう言って双子は駆け出す。一瞬は放っておこうかとも思ったが、彼らの悪戯が4階のあの廊下に関することなら問題だ。念のため彼らについて行った方がいいかもしれない。

 奇しくも生徒の監視という上っ面の仕事が主になりそうだ。

 

 

 双子は学業の成績は悪くないのだが、このように授業を抜け出しては方々でイタズラを繰り返す問題児でもある。管理人のフィルチも手を焼いており彼の愛猫ミセス・ノリスはこの双子を見つけると何もないと判断するまで追いかけるのをやめない。

 

「ミスター・フライト。俺たちが考えているイタズラ、何かわかるか?」

 

 双子の片割れ、恐らくはジョージが、僕に訊く。何のヒントも無い状態で分かるかと訊かれても、答えようが無い。強いて言うなら今いる場所がヒントになるのだろうか。

 だがここはなんの変哲もない廊下の真ん中。人通りは少なく、薄暗い印象を受ける。

 

「さあ。わからないな」

 

 素直に降参すると、双子は意気揚々とローブの中から羊皮紙を取り出した。何も書かれていないように見えるが、僕にはそれが何なのかすぐに分かった。

 

 『忍びの地図』。

 十数年前に4人の問題児が作り上げた、ホグワーツの詳細な地図だ。ただの地図では無く、ホグワーツにいる人間の場所がリアルタイムで分かる物。

 僕がそれを知っているのはその製作に関わったからだ。

 

 双子が呪文を唱えると、まるでインクが広がるように地図が描かれた。現在の場所を見ると、主要な廊下から外れた所謂、裏道のような場所である事が分かった。

 

「ここを通るのはフィルチだけなんだ」

「先生も滅多に通らない隠れ道さ」

 

 なるほど。彼らはフィルチをイタズラの餌食にするつもりらしい。彼には申し訳ないが、僕には双子を止める事ができない。

 

 何せ忍びの地図の表紙には『協力してくれたミスター・フライトに感謝を』とでかでかと書かれているのだ。もし双子にそれを拡散されてしまえば、僕の司書としての生活は絶望的だ。

 

「ここで良いよな、相棒」

 

 片割れが地面に複雑な紋様をチョークで書いていく。似たような形の物を以前、本で読んだ。

 

「『隠し沼の罠』かい?」

「流石だ、ミスター・フライト」

 

 それは罠魔術のひとつで、書かれた紋様を踏むと沼のようにズルズルと沈んでしまう。侵入者対策の罠として度々、本の中に登場する。

 

「『知るべき呪いと作り方』でも読んだのかい?」

「ああ、勘がいいな」

 

 そう言えば何日か前に、彼らの兄であるパーシー・ウィーズリーに宿題の資料として貸し出した記憶がある。あれには隠し沼の作り方が詳しく載っている。何かの拍子にこの双子の目に入ったか。

 

「よし、できたぞ」

 

 双子が書き終わると、紋様は微かに魔力を帯びる。大人の魔法使いでも注意しなければ気付くことができない程にだが。それを書き上げる腕前に、僕は思わず感嘆の言葉が出ていた。やはり彼らはイタズラに対する才能はあると言えよう。

 

「《隠せ》」

 

 さらに念入りにチョークの線を消す。これで廊下は、知らない人から見たらただの薄暗い廊下でしかない。

 

 フィルチには大人しく犠牲になってもらおう。今度彼の事務所に美味しいクッキーでも持っていこうと心の隅に留めておく。

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