クリスマスが近づいてくると、学校は俄かに騒がしくなる。生徒たちはクリスマス休暇を待ち焦がれているようだった。
図書室も休暇の間に家で本を読むために借りる生徒や、逆に期限を過ぎないように返しにくる生徒で溢れていた。
司書をしていて嬉しい時というのは、今まで本を読まなかった生徒が僕にオススメの本を訊いてくれる時だ。同じ趣味を持つ子が増えたという事でもあり、魅力的な本の世界に気づいた子が増えたということでもある。
「これをお願いします」
以前はマルフォイの腰巾着でしかなかった彼も、最近ではこの図書室の常連に成りつつある。借りるのは主に物語などだが、徐々に挿絵の少ない長編作品に手を伸ばして来ているのに僕は気づいていた。
そんな彼が今回借りるのは『夢食』。
夢を食べるという幻の生き物にまつわる伝説をなぞった、ちょっとしたホラー小説だ。夢を喰われ眠りを忘れた主人公達が、夜の世界で恐ろしい怪物に襲われる。
スリザリン生はこういったホラーやサスペンスのような暗い物語を好む傾向がある。ティーンエイジャーにはグロテスクな描写は心躍るものがあるのかもしれない。
スリザリンは純血主義者が多く排他的。
という認識がホグワーツには昔からある。確かにそれは間違っているとは言い難いし、僕の友人もそうだった。だがその本質は強い仲間意識であり、他の寮よりもむしろ寮生同士の仲はいい。
何か大きな困難にチーム一丸となって立ち向かうような物語が人気なのは、そういった事情があったりするのだろうか。
「クラッブ、ゴイルとは会っているかい?」
「あいつですか?はい。会ってますよ」
ゴイルは残念ながら、あれから図書室を利用することはなかった。マルフォイの後ろに付き従ってやってくる事があっても、彼が本を読むことはない。少し寂しいが、読書は彼の趣味にはならなかったということか。
だが、1つ問題がある。
「彼に本を返すように言っておいてくれるかい?期限が迫ってるから」
本の種類によってそれはまちまちだが、彼に貸し出したものはもうすぐだった。マルフォイの言うことでは、彼ら3人は全員クリスマスには家の方に帰るらしい。それまでに返してもらわなければ、当然彼の図書室利用は制限されるし、長引くようならスリザリンからの減点も考えなければならない。
「わかりました」
司書たる者、本の貸し出しの管理はしっかりとしなければならない。彼もスリザリンから点数が引かれるのは困るはず。