イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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FF編
プロローグ


 単刀直入に言おう、転生した。

 しかも女として。

 前世の俺はどうやら事故にあって死んだらしいがどうも記憶がはっきりしない。

 というか大事なことは何一つとして覚えてない。自分の名前や両親、友人などなどだ。

 そのくせ何故か好きだったアニメや漫画、ゲームなどの事はよく覚えている。

 神様ってもんがいるなら1発ぶん殴ってやりたい。いやまあなにも覚えてないよりはマシかもだけど。

 あ、もうひとつ覚えてる事がある。前世の俺、コミュ障陰キャだった。

 

 

 

 

 とまあそんな俺だがお世辞にも転生先がいい環境とは言えなかった。

 一応両親は天川財閥という大企業の社長で俺も最初のうちはお金をかけて大事に育てられた。

 しかし俺が1歳の時に両親が交通事故で亡くなり状況が一変した。

 まだ子供の俺に会社を継げる訳もなく会社の経営は親戚連中が引き継ぐ事になったのだが、俺が成長して会社を継がれるのを恐れたヤツらによって俺は徹底的に隔離されてしまった。

 与えられたのは家の外れにある最低限生活できるような小さな庭付きの小屋と1人の従者だけだった。

 幼稚園や学校に行くことも許されずただ小屋で過ごす日々。

 唯一の救いは従者の高月玲奈(たかつきれな)がとても俺を可愛がってくれたことだ。

 勉強や家事などは一通り彼女から教わったし、月に1度ではあるが外出の許可もとってきてくれた。

 だが彼女も忙しいようで1日中俺についてはいられなかった。そこで彼女が俺に渡してくれたのがサッカーボール。自分がいない時はこのボールを自分だと思ってくれと。ぬいぐるみならまだわかるけどボールってどうなの? と思ったのだがある日たまたまつけたテレビがその答えは教えてくれた。

 

 そこに映っていたのは人間ではありえない身体能力でボールを捌き、強烈な威力のシュートを放つサッカー選手の姿。それを見て俺は確信した。ここは前世の俺も知っているアニメの世界、すなわちイナズマイレブンの世界なんだと。

 イナズマイレブンか、あんまり見たことないんだよな.

 

 

 ♦♦♦♦♦♦

 

 

「本当によろしいのですか? 羽花様」

 

 大きめの旅行カバンに荷物を詰め荷造りする俺に従者の玲奈が聞いてきた。

 

 

「はい! 私がここに居ても邪魔なだけですから」

 

 俺がそう答えて、カバンに再び目線を落とすとため息をつきながらも玲奈も荷造りを手伝ってくれた。

 今日、俺はこの家を出る。現在13歳、中学2年生にして家出をするわけだ。

 といっても黙って出ていく訳では無い。親族連中には了承を得ている。俺が今後一切天川財閥と関わらないのならば高校卒業までの生活費を保証してくれるとの約束だ。

 

「羽花様、学校生活では最初が肝心です。くれぐれも失言のないように」

 

「わかってますよ。私ももう13ですからそれくらいはできます」

 

「私の知り合いの家に住まわせて頂けるように頼んであります。家事の手伝いもしっかりと、それと勉強も怠らないようにしてください」

 

「大丈夫です! 玲奈は心配し過ぎですよ」

 

 玲奈がこれから俺が転入する学校や住まわせてもらう家での注意事項を口うるさく言ってくるものだからつい強く言ってしまった。

 彼女が心配するのもわかる。俺はこれまで学校に通った事がないし、外出だって数える程しかしていない。

 俺が転生してきたことを知らない彼女にとってそんな世間知らずの少女に対し過保護になるのも当然といえば当然だ。

 

「よし、これで最後ですね!」

 

 俺は最後の荷物をカバンに詰め込み立ち上がる。引越しといっても元の荷物が少ないのでカバンひとつで収まってしまった。衣類一式と筆記用具、サッカー用具くらいだ。

 

「それでは行きましょうか、雷門中へ」

 

 玲奈は車の鍵を手に持ち、笑みを浮かべながら俺にそう言った。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「ここが、雷門中...」

 

 車から降り校門の前でそう呟く。

 授業中だからか人影は見当たらない。

 

「それでは私は転入の手続きをしてまいります。羽花様はサッカー部をご覧になられては?」

 

 玲奈が言ってくれたので俺はサッカー部を見に行くことにした。

 まだ活動時間ではないので誰もいないだろうけど。

 昔アニメを少し齧った程度の曖昧な原作知識を頼りにしばらく歩き、俺はサッカー部の看板が立ててある小さなボロ小屋を見つけた。

 俺の顔が若干引き攣るのがわかった。

 あまり期待はしていなかったがここまで汚いとは。

 

「サッカー部に何か用か?」

 

 突然話しかけられ声がした方を振り返る。

 そこにはオレンジ色のバンダナが特徴的なサッカーボールを抱えた少年が立っていた。

 間違いない、円堂守だ。

 廃部寸前だった雷門を全国優勝まで導いた伝説のキャプテン。

 イナズマイレブンをほとんど知らない俺でも覚えているほどの超重要人物。

 

 

「あ、もしかして入部希望か!?」

 

 言うやいなや円堂が目を輝かせて飛びついてきた。

 

「あ、はい一応」

 

 あまりの勢いに少し仰け反りながらも俺はそう答える

 

 

「ホントか!? 俺、キャプテンの円堂守! 君は?」

 

天川羽花(あまかわうか)です」

 

「天川か、よろしくな! 新しいマネージャーが入ってくれて皆も喜ぶよ!」

 

 

 円堂の言葉を聞いてハッとする。そうか女子が入部希望って言ったらそう捉えるよな。

 

「あの、マネージャーじゃなくて選手として入部したいんですけど女子じゃダメですか?」

 

 

 円堂は一瞬戸惑ったような顔をしたがすぐに笑顔に戻り

 

「そうなのか? それなら大歓迎だよ! サッカーするのに男も女も関係ないからな!」

 

 

「皆揃ったら紹介するからさ! 部室の中で待っててくれよ!」

 

 そう言うと彼は扉を開け部室の中に案内してくれた。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「あ、天川羽花です! よろしくお願いしまひゅ!」

 

 ...噛んだ。元からコミュ障な上に13年間ろくに人と話してのでしょうがないのだが。

 部室で待つこと数分、授業を終えた部員達が続々と集まり全員揃ったところで

俺は自己紹介をしていた。

 ...まあ盛大に噛んだ訳だが。

 皆の反応は概ね良好で拍手で歓迎してくれた。

 俺がプレイヤー志望だと聞いた時はさすがに驚いていたが。

 

「天川さん、ポジションはどこなの?」

「キーパー以外ならどこでも大丈夫です」

「校内で見た事ないけど転校生なのか?」

「はい、明日から転入の予定です」

 

 部室内では現在俺への質問コーナーが開かれている。いや、質問攻めと言った方が正しいか。

 てかこの人達やばすぎでしょ。初対面の俺にこれだけの質問を浴びせてくるとか。

 これが陽キャか、と内心で感心してしまう。

 

「羽花さんもやっぱりサッカー好きなんですか?」

 

 

 マネージャーの音無にいたってはもう下の名前で呼んでるし。俺にはとても真似出来ないな……

 

「好き……というか私にはサッカーしかないから、だからサッカー部に入ろうと思ったんです」

 

 音無の質問に手に抱えたボールを見つめながら答える。

 外出できず学校にも行けなかった俺は勉強するかボールを蹴る毎日だった。

 

「皆、質問はそれくらいにして練習しようぜ! 天川のプレイも見てみたいしな!」

 

 質問攻めを受けて疲弊している俺を見かねてか、ただサッカーがしたいだけかはわからないが円堂の一言で練習を始めることになった。

 正直ありがたい、コミュ障にこの空間はキツすぎる。

 俺の正式入部は明日のため、今日は体験入部という形で練習に参加することになった。

 予備のユニフォームをマネージャーから受け取り、更衣室がないためトイレで着替える。

 着替え終わりグラウンドに向かうと皆揃っており各々準備を進めていた。

 

「よぉし皆! 今日も気合い入れてくぞ!」

 

 早速練習が始まった。オフェンス側とディフェンス側に別れてのゲーム形式の練習だ。

 ちなみに俺はオフェンス側。

 キックオフから始まり、強面のピンク髪が特徴の染岡を先頭にオフェンス陣が攻め上がる。

 俺も遅れないようにと後に続く。複数人でのサッカーは初めてなので内心では心臓バクバクだ。

 

「天川!」

 

 ディフェンス2人にマークにつかれ突破は無理だと判断したのか染岡がバックパスで俺にボールを移した。

 トラップし周りを見渡すが全員にマークがついていてパスが出せない。

 それならばとボールを蹴り出しドリブルを開始する。

 自慢じゃないがドリブルには少し自信がある。

 

「いかせないでヤンス!」

 

 ディフェンスの栗松が止めに来たので右に行くと見せかけた左のフェイントでそれをかわす。

 そのままの勢いでゴール前に迫るが今度は壁山と影野の2人に阻まれてしまった。

 

「ここから先は通さないっス」

「アグレッシブビート!!」

 

 胸に手を当て鼓動を刻み、そのまま一気に加速し2人を抜き去る。

 最終ラインを突破、つまりキーパーと1対1だ。

 フリーの状態でシュートを放つ。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂が右手に力を入れる。

 すると黄金に輝く巨大な手が現れた。

 

「……すごい」

 

 思わず見とれているうちに、ゴッドハンドによって行く手を阻まれたボールはみるみる勢いを失い完全に停止した。

 

「いいシュートだ! それにドリブルも凄かったぞ!」

 

 キャプテンからの思わぬお褒めの言葉に思わず頬を赤らめる。

 こういうところが主人公たる所以なのだろう。

 

「それじゃもう1本いくぞ!!」

 

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「ふぅ・・・疲れたぁ」

 

 ベンチに腰掛けひと時の休息をとる。

 1時間程練習に参加し、今は見学という形でみんなの練習を眺めている。

 

「これ飲むか?」

 

 そう言ってスポドリを渡してくれたのはツンツンヘアーが特徴のこのチームのエースストライカー豪炎寺だ。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言いつつ受け取りスポドリを口にする。

 やはり運動の後の水分補給は格別だ。

 ふと横に座った豪炎寺の足に目をやる。

 

「足の具合は大丈夫ですか?」

 

 手当をし、包帯を巻いてある左足が目に入った。

 

「ああ、そこまで大事には至っていない。ただ、次の試合には出られそうもない...」

「次の試合って確か準決勝ですよね?」

「知ってるのか?」

「はい、雷門の試合は全部見てます。帝国学園との練習試合の時から」

 

 帝国との試合を目撃したのは偶然だった。

 月に1度の外出の際にたまたま雷門中の前を通りかかり、帝国と雷門の試合を見たのだ。

 

「あの時のゴッドハンドと円堂君の諦めない姿を見て、雷門でサッカーしたいって思ったんです」

 

 そんなふうに話していると手続きを終えた玲奈が戻ってきた。

 

「羽花様、私は先に車に戻ります。羽花様も早めにお戻りください」

 

 そう言い残し玲奈は立ち去った。

 

「天川ってお嬢様なのか?」

 

 隣の豪炎寺が驚いた様子で聞いてきた。

 

「あ、はいまぁ一応.」

 

 あまり堂々と答えるのも良くないと思い少し誤魔化す感じで答えた。

 もっとも今の俺をお嬢様と言っていいのかは疑問だが。

 

「それじゃあ私は行きます。明日からよろしくお願いします」

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

 ぺこりと頭を下げ、俺は少し早足で玲奈の待つ車に向かった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「緊張しますか? 羽花様」

「はは、少しだけしてるかもです」

 

 必要な物の買い物を済ませ、俺たちはとある一軒家の前に来ていた。

 玲奈の知り合い、つまりこれから俺がお世話になる家だ。

 

「やはり私も一緒にご挨拶した方が.」

「大丈夫です! 子供じゃないんですから1人で行けます!」

 

 まぁ本音を言うと一緒に来て欲しいんだが、やはりこの年で保護者同伴は恥ずかしいのだ。

 

「では私はこれで。円堂様によろしく伝えておいてください」

「はい、玲奈今までありがとうございました」

 

 そう言って車に乗り込む玲奈を見送る。

 車が見えなくなったのを確認し、背後の家の方に振り向く。

 一般的な一軒家という感じで表札には円堂と書かれている。

 気に止めてなかったがそういえば偶然にもサッカー部の円堂守と同じ名字だ。

 

「もしかして...」

 

 一瞬ある可能性が頭によぎるがただの偶然だろうと思い直す。

 玄関先まで来たところで深呼吸。覚悟を決めてチャイムを押した。

 数秒の静寂の後、ガチャという音と共にドアが開き40代くらいの女性が姿を現した。

 

「はじめまして、今日からお世話になる天川羽花です! よろしくお願いします!」

 

 よし、今度は噛まなかったぞと安堵しながら頭を下げる。

 

「はじめまして、円堂温子です。よろしくね」

 

 そう名乗った女性は優しく微笑み俺を家の中に案内してくれた。

 

「ちょっと待っててね。今息子を呼ぶから」

「守〜! 降りてきなさい!」

 

 リビングまで案内してくれたところで温子さんが2階にむかって叫ぶ。

 守ってまさか…

 

「なんだよ母ちゃん! でかい声出してさぁ」

 

 聞き覚えのある声と共にオレンジ色のバンダナをつけた少年が降りてきた。

 

「言ったでしょ! 今日から私の知り合いの子が住むって!」

「あれっ今日だっけ? まぁいいや。俺、円堂守! よろしく……」

 

 そこまで言ったところで円堂と俺の目が合う

 彼は目をぱちくりとさせている。

 

「「ええええええええ」」

 

 俺と円堂が驚きのあまり声を上げたのはほぼ同時だった。

 




駄文ですね…はい。とにかく読んでいただきありがとうございます!

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