イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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戦国伊賀島の忍者サッカー

 いつも通り練習に励んでいた時、理事長が事故にあったという知らせを聞いて、俺は夏美、円堂、木野と共に病院に足を運んでいた。

 バトラーさんの話によると、理事長はフットボールフロンティアの会場の下見に行った帰りに事故にあったそうだ。同乗していた関係者の中でも一番の重症らしい。

 

「雷門さん、大丈夫ですか?」

「ええ…大丈夫よ……大丈夫」

 

 夏美の手をそっと握り、声をかける。

 大丈夫とは言うものの彼女の声は震えている。目に涙を浮かべていて、見ているのも辛いほどに弱々しいその姿は、いつもの彼女には程遠いものだった。

 

「お前、お父さんについててやれよ。その方がいいと思うんだ」

「ついててあげて。お父さんが目を覚ました時に最初に夏美さんの顔を見せてあげて」

 

 円堂の発言に木野も同意した。言葉にはしなかったが俺も同じ考えだ。

 

「守君、私もう少しここにいていいですか?先に練習に戻っててください」

「羽花……わかった!夏美のこと頼んだぞ!」

 

 そう言い残して練習に戻る円堂と木野。

 こんな状態の夏美を残して練習には参加できない。彼女にはお世話になりっぱなしだし、少しくらい役に立たなければ。

 

「大丈夫ですよ。理事長はきっと元気になります」

「でも……もしも万が一のことがあったら私…ひとりぼっちに…」

 

 …そうか、彼女は母親がいないのか。だから余計に不安なんだろう。父親である理事長まで亡くなってしまったらと気が気でないのだ。

 だったら俺にできることは…

 

「ーー天川さん!?」

 

 気がついたら俺は夏美を抱きしめていた。今の俺にできることはこれだけだ。

 

「大丈夫ですよ。ひとりぼっちなんかじゃない。私も守君達もついてますから。」

 

 こんなことで夏美の不安を払拭することなどできないだろう。自分の不甲斐なさにどうしようもなく腹が立つ。だけどせめて、少しでも元気になってくれれば…

 

「…ありがとう、ちょっとだけ落ち着いてきたわ。あなたも練習に戻って。明日から全国大会よ、初戦敗退なんてしたら承知しないからね」

「でも…」

「いいから。これは理事長の…いえ、私からのお願い」

「…わかりました。でも、なにかあったらすぐに言ってくださいね?」

 

 そう言い残して病院を後にする。しかし、練習に戻っても父親の一大事に体を震わせている夏美の姿が頭から離れなかった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

『さあ、フットボールフロンティア全国大会1回戦!雷門中学vs戦国伊賀島中学!まもなくキックオフです!』

 

 いよいよ全国大会の日がやってきた。初戦の相手は戦国伊賀島というチームで、なんでも忍者サッカーをするらしい。

 練習中に霧隠という選手が乱入してきて、風丸とスピード対決をしていたがほぼ互角。さすが全国大会に出てくるだけあって手強そうな相手だ。

 

 FW 豪炎寺、染岡

 

 MF 少林寺、羽花、松野、半田

 

 DF 風丸、壁山、土門、栗松

 

 GK 円堂

 

 控え 影野、宍戸、眼鏡

 

 今日のフォーメーションはこんな感じ。前回の帝国戦と同じだ。

 

 雷門ボールでキックオフ。染岡がボールを持って攻めあがり、半田にパスを出す、がこれを霧隠がカット。

 さっきも見たがやはりスピードは相当なもので一気に雷門陣内に切り込む。

 

「残像!!」

 

 風丸がマークにつくと霧隠が分身のようなものを出現させた。そのまま撹乱された風丸を抜き去る。

 そしてシュートを放つがこれは円堂の真正面だった。

 

「羽花!」

「はい!半田君!」

 

 円堂からのボールを受け取り、それを半田にパス。

 

「伊賀島流蹴球戦術、鶴翼の陣!!」

 

 掛け声と共に伊賀島の選手によって半田と豪炎寺が囲まれてしまった。そして身動きが取れなくなったところで

 

「「四股踏み!!」」

 

 2人のディフェンダーの必殺技によってボールを弾かれた。それを相手のキーパーが抑える。

 それからも伊賀島の意表を突くサッカーに翻弄されてしまい、思うように攻めれない時間が続いた。

 

「ドラゴン…!!」

「トルネード!!」

 

 なんとかゴール前にボールを繋ぎ放たれた必殺シュート。炎を纏った龍が伊賀島ゴールを襲う。

 

「つむじ!!」

 

 伊賀島のキーパーが発生させた竜巻にシュートの威力が完全に殺され、上空に投げ出された。そしてすかさずそれをキャッチ。

 

「分身フェイント!!」

 

 パスを受けた小柄なミッドフィールダーからボールを奪おうとするが、3人に分身した彼に惑わされ、突破されてしまった。

 ボールは霧隠へ、その前に再び風丸が立ち塞がる。

 

「お前なんかに取られるかよ!」

「絶対に止める!」

 

 2人のボールの奪い合いは熾烈を極めた。そして

 

「俺の勝ちだ!」

 

 勝ったのは霧隠、そのまま雷門ゴールへ前進していく。そのスピードに誰も追いつけないままゴール前で円堂と1vs1の状況になってしまった。

 

「くらえ!つちだるま!!」

 

 霧隠が放ったグラウンダー製のシュートはみるみる土を巻き込み、ゆきだるまのように巨大化していった。そして指でなにか切るような動作をしたかと思うと土が崩壊して中のボールが姿を表した。

 

「熱血パンチ!!」

 

 ぶつかり合う拳とシュート。だか徐々に円堂の拳が押し負け始め、そして弾かれてしまった。

 

『ゴオオオォォルッ!!先取点は戦国伊賀島だ!!』

 

「くっそぉ!」

 

 地面に転がるボールを見つめながら悔しがる円堂。無理もないだろう、今のは恐らくゴッドハンドなら止められたはずだ。だが予備動作が必要なため発動が間に合わずに点を決められてしまったのだ。

 

「大丈夫ですか?守君…」

「ああ、ッッ…!」

 

 倒れている円堂に駆け寄り手を差し伸べる。すると彼は顔を歪めて苦しそうな表情をした。

 

「…!もしかして右手を?」

「大丈夫だ!まだ戦える!」

 

 どうやらさっきのシュートに倒された時に嫌な倒れ方をしたらしい。右手の甲が真っ赤に腫れ上がっている。

 だが雷門のキーパーは彼だけだ。故に交代することもできない、ならせめて応急処置だけでもしておくべきだろう。

 大丈夫だと思うが一応肩を貸して彼をベンチまで送り届ける。 そして木野と音無に手短に説明した後、フィールドへと駆け足で戻った。

 

『おっと、円堂負傷でしょうか?手当が終わるまで雷門はキーパー不在の10人で戦うようだ!』

 

 守りを固めるために俺もディフェンスに入り、5バックの体制で試合再開。この好機を逃すまいと戦国伊賀島はディフェンス2人とキーパーを除いた全員で攻めてくる。

 そして撃ち出される幾つものシュートはまるで嵐のようにゴールに襲いかかってくる。

 それをディフェンスのみんなが体を張って文字通りの肉壁となり守り抜く。

 

「いつも円堂にはゴールを守ってもらってるんだ!」

「だから今は俺達が守る番だ!」

「その通りでやんス!」

「みんな…」

 

 だが無常にもシュートの嵐は続く。弾かれたボールは天に投げ出され、それを柳生十兵衛のような格好のフォワードが確保した。彼は3人に分裂するとそれぞれ左右と下からシュートする。

 

「分身シュート!!」

 

 まずい…ディフェンスのみんなは体制が崩れてフォローに入れない上にキーパーもいない状況。万事休すかと思われたがそこに壁山が立ち塞がる。

 

「絶対決めさせないっス!ザ・ウォール!!」

 

 彼の背後に巨大な壁が現れる。それに激突したシュートは段々威力が殺されていき、完全に静止した。

 

『止めたぞ壁山、まるでそそり立つ壁のようなディフェンスだ!』

 

「凄いです!壁山君!」

「へへ、頼むっス天川さん!」

 

 チャンスだ。相手はほとんど全員が攻撃参加している弊害で守備が手薄になっている。そこを狙えば…

 壁山からのパスをトラップしようとしたその時、目の前を黒い影が通り過ぎた。

 

「…え?」

「まだだ、俺が決める!」

 

 影の正体は霧隠だった。壁山からのパスをカットした彼はそのままゴールに迫る。

 ダメだ、追いつけない…、だったら一か八か…!

 

 霧隠に向かってありったけの速度で前進、進む度に分身が作り出される。そして接近したところで矢を射抜くが如く速さのスライディングでボールを奪い取る。

 

「ワンダートラップ!!」

 

 何が起こったのか理解できないのか彼は目をぱちくりさせている。

 それを他所に手薄なゴールに向かってぐんぐん前進する。ほとんどの選手が上がっていたので待ち構えるのは2人の巨漢ディフェンダーのみだ。

 

「「しこふ……!?」」

「アグレッシブビート!!」

 

 必殺技が発動される前に高速で突破する。あまりの勢いに弾かれた彼らは追ってくることもできない。

 そしてあっという間にペナルティエリア内に侵入する。

 

「これだけは決めてみせる!」

 

 うさぎのように何度も跳躍し、月を背景にオーバーヘッド。

 

「バウンサーラビット!!」

 

 撃ち出されたボールは地面を幾度となくバウンドする。そのトリッキーな動きは相手キーパーの反応を許さずそのままゴールに突き刺さった。

 

『ゴオオオオォォォォォルッッ!!天川の必殺シュートで雷門同点!そしてここで前半終了です!』

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「ナイスシュート!羽花!」

「ありがとうございます。それより怪我の方は?」

 

 ハーフタイム、円堂の怪我の具合が気になり彼の元へ駆け寄った。みんな同じ考えだったようで円堂を囲み、円ができている。

 

「大丈夫だ、後半は1点も入れさせないぜ!」

 

 どうやら大事には至っていないようで安心した。だが無理をさせる訳にもいかない。このチームのキーパーは彼だけなのだから。

 

「よしみんな、円堂を全力でカバーするぞ!」

「「「おう!!」」」

 

 風丸の言葉に全員が賛同するように声をあげた。すると響監督がベンチから腰をあげて俺達の方を向いた。

 

「後半の作戦を伝える。まず天川はそのままディフェンスに入れ。相手の攻撃の芽を摘むんだ」

「はい!」

「そして風丸、お前は攻撃のチャンスがあれば積極的に天川と共に前に出ろ」

「わかりました!」

「敵は炎の風見鶏を知らない。豪炎寺と染岡は囮になるくらいの気持ちでいろ。だが決定的な場面があれば迷わず狙うんだ」

「「はい!!」」

 

 そうしていると後半開始が審判から言い渡され、俺達はそれぞれのポジションについた。そして戦国伊賀島ボールで試合再開。

 

「伊賀島流蹴球戦術、偃月の陣!!」

 

 いきなりの伊賀島の速攻、選手達が扇形のようなフォーメーションになったと思うと土煙を巻き上げながらものすごい勢いで突っ込んできた。

 あまりの激しさに誰も止めることができず悉く吹き飛ばされてしまった。そしてゴール前で霧隠が砂塵の中から姿を現す。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

 風丸が突撃していくが残像で躱されてしまった。円堂と1vs1、さっきと同じ状況だ。

 

「もらった!つちだるま!!」

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂のゴッドハンドが発動。黄金の手によってシュートは勢いを失っていき、そして彼の手の中に収まった。

 

「なに!?」

 

 そして前線へパントキックをあげるが…

 

「まだだ!俺の力を見せてやる!」

 

 霧隠にカットされてしまった。くそ、ここからじゃフォローが間に合わない。

 円堂もパントキックの位置から戻っていない、今シュートされたら…

 相手もそれをわかっているのか必殺技ではなく普通のシュートを放った。無人のゴールにボールが迫る、が

 ゴールの前を1人の影が横切った。風丸だ、足元にはしっかりボールがキープされている。

 

『なんと風丸がその名の通り風のような速さでゴールを阻止!これはスーパープレイだ!』

 

 そのままボールを前線に運ぶ風丸。それを霧隠が追っていった。

 

「このままじゃ終わらせない!」

「ああ、勝負だ!」

 

 肩をぶつけ合い、激しくボールを奪い合う2人。その勝負は相手のペナルティエリア付近まで続き、そして決着を見た。

 

「お前の足じゃ、俺を振り切れない!」

「足が早いだけじゃダメなんだよ!サッカーは!」

 

 風丸が不意打ち気味に静止したと思うと霧隠の頭上にボールを蹴りあげた。反応できない彼をそのまま抜き去る。

 

「いくぞ!天川!」

「はい!」

 

 風丸が蹴り上げたボールを2人同時のタイミングで蹴り出し、そして上空でシュート放つ。

 

「「炎の風見鶏!!」」

 

 炎を纏った鳥の前に相手のキーパーは為す術なくシュートはゴールに突き刺さった。

 

「ゴオオオオォォォォォルッッッッ!!風丸と天川の2人が放つ必殺シュートが炸裂!雷門中勝ち越し!」

 

 ゴールと共にホイッスルが鳴り響く。今回も無事勝てたようだ。円堂が負傷した時はヒヤヒヤしたけどなんとかなってよかった。ちなみに風丸は試合を見に来ていた後輩と和解したようでサッカー部に残ることになった。そして理事長の怪我も大事には至らなかったそうだ。これで一件落着。

まぁ円堂と夏美が病院内でくだらない喧嘩をして看護師さんに怒られたこと以外だけど…

 

化身は出した方がいい?

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