イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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ペガサスが翔ぶ時

「ハァ…ハァ…なんだったの…?今の…」

 

 試合終了のホイッスルが鳴り響くとほぼ同時に疲労感がどっと襲いかかってきた。思わずその場に座り込み、さっき自分に起こった現象を振り返る。

 突然黄緑色のオーラ?のようなものが湧き出したと思ったら身体が軽くなった。さらに相手の動きがスローモーションのように遅く見えて、敵のディフェンスを容易にかわすことができた。

 

「すっげぇぜ羽花!」

「へ?うわぁぁ!」

 

 

 後ろからの声に振り返ると円堂がいきなり突っ込んできた。その反動で俺は地面に転がる。

 

「なんだよ今の!全然動きが見えなかったぞ!」

「私にもなにがなんだか…」

 

 周りを見るといつの間にかみんなが集まってきていた。

 

「すげぇじゃねえか!新必殺技か!」

「いつの間にあんな技使えるようになってたんスか?」

 

 口々に喜びの声をあげるみんな。だが俺はまだ理解が追いついていないので呆然としていた。

 まぁでも、役に立てたならそれでいいかな。

 

「鬼道君達のシュートも凄かったですよ。咄嗟にあんな連携技を編み出すなんて」

「ふ、それが雷門の面白いところだ。いつどのタイミングで進化するのか想像もできん」

 

 鬼道に話を振ると彼はクールに笑みを浮かべて答えた。彼が手を差し伸べてくれたので、それを掴み立ち上がる。

 

「さあみんな!次は準決勝だ!気合い入れていくぞ!」

「「「おう!!!」」」

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「あいつが例の奴か。そんなに凄そうには見えなかったが」

 

 フットボールフロンティアスタジアムの観客席でフィールドを見下ろす4人の少年少女がいた。

 見下ろす先には勝利を喜ぶ雷門イレブンの姿。それを見て少年の内の一人、白とオレンジの髪を首周りに巻いた髪型が特徴の男が口を開く。

 

「あんな奴、わざわざ見に来る価値があったのか?」

「ガロったらほんと短気ね。可愛いじゃない、一生懸命で」

「それにまだ完全に力に目覚めてはいないようだしね、決めつけるのは早計じゃないかな?」

「ああ!?てめぇら喧嘩売ってんのか!」

 

 ガロと呼ばれた少年の言葉を、ピンク色の髪をした少女と眼鏡をかけた少年が鼻で笑うように否定する。言葉の端々に荒々しさを感じさせた前者とは違い、上品さが垣間見得る口調だ。

 

「楽しみね、あの子がどんな風に成長するのか。ねぇギリス?」

「だけど、彼女がいくら成長しようと君の輝きには敵わないよ。メイア」

「まぁ、ギリスったら」

「うっせえなバカップルが!今ここでぶっ潰してやろうか!」

 

 突然人目もはばからずイチャつきだしたメイアとギリスに、ガロの怒りは頂点に達していた。彼の殺気が2人に向けられる。すると白髪にゴーグルをかけた少年がなだめるように話し始めた。

 

「やめなよ3人共、他のお客さんに迷惑だよ?」

「あんたは黙ってろ、SARU!」

「へぇ…」

 

 笑顔のまま、目だけは鋭い視線を向けるSARU。その雰囲気に飲まれ、3人は黙ってしまった。

 

「俺が悪かった…すまん」

「わかればいいんだよ、ガロ」

「それで、彼は上手くやってるいるのかい?」

「記憶まで消すことはなかったんじゃないの?」

 

 メイアが首を傾げるとSARUはフフっと笑った。

 

「彼は嘘をつける奴じゃない。ああするのが一番だよ。それに今のところは順調みたいだからね」

 

 眼下の少女を見下ろし、SARUは再び不気味に笑うのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 2回戦を突破し、俺達は準決勝へ向けて練習に励んでいた。みんな気合十分、連携のズレも鬼道によって修正されて今は見る影もない。その時、フィールドの外に見知らぬ人がいるのに気付いた。見学だろうか?なにをするでもなくこちらをただ眺めている。

 その時、円堂が弾いたボールが彼の元に転がっていった。彼はそれを拾うといきなりドリブルでコートの中に入ってきた。動揺する栗松と半田をいとも簡単に抜き去り、ゴール前で円堂と対峙する。

 

「スピニングシュート!!」

 

 逆立ちしたと思ったら駒のように回転しボールを蹴り出す少年。それに対して円堂は手のひらを天に掲げた。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 必殺技同士の衝突、勝ったのはゴッドハンドだ。

 

「君の勝ちだね、素晴らしい技だ。アメリカの仲間にも見せてやりたいよ」

「アメリカでサッカーやってるのか?」

「ああ、ジュニアチームの代表候補にも選ばれたんだ」

「聞いたことがある。将来代表入りが確実だろうと言われている天才日本人プレイヤーがいると」

 

 なんだかすごい人らしい。確かにドリブルのテクニックも見事だったしシュートもゴッドハンドと競り合えるくらい強力だった。

 

「みんな何してるの?」

 

 遅れて木野と土門が来た。すると突然少年は木野に抱きついてしまった。

 

「お、おいお前!」

「久しぶりだね、秋。俺だよ」

「…一之瀬くん?」

 

 どうやら一ノ瀬は木野と土門のアメリカ時代の友人らしい、交通事故で亡くなったことになっていたが実は生きていたのだ。

 そしてグラウンドでは鬼道と互角の勝負をする一之瀬。

 

「鬼道と互角…いやそれ以上とはな」

「凄いですね一之瀬くん」

「お前もやってみたらどうだ?」

「う〜ん、鬼道君でも取れないとなると私には難しいかもです」

 

 日本でも有数のプレイヤーである鬼道でも取れないとなると俺では無理だと思う。あ、でも千羽山戦のあれを使えたらいけるかも?

 

「よぉし、今度は俺とPK対決だ!」

 

 そう言ってゴール前に立つ円堂。それから1時間以上も対決を続けている。勝負はほぼ互角で両者負けず嫌いなのでなかなか終わらなかった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「母ちゃん、今日友達来るんだ。夕飯いっぱい作っといて!」

「ちょっと守!?どこ行くの?」

「特訓!明日までにトライペガサス完成させるんだ、夕飯までには戻る!」

 

 帰るなりそう言い残して円堂は飛び出してしまった。残された温子さんはため息をこぼしている。ちなみにトライペガサスというのは円堂が一之瀬と土門と一緒に練習しているシュート技。一ノ瀬が明日にはアメリカに帰るというので絶対に完成させると張り切ってるのだ。

 

「まったく、あの子ったら…」

「あはは、アメリカからすごい上手い選手が来ててテンション上がってるんだと思います。私も手伝いますから」

「そう?いつも悪いわね。じゃあ買い出しお願いしようかしら」

 

 買い物メモを受け取り私は近くのスーパーへと向かう。すると道中、見知った人物と遭遇した。

 

「雷門さん?」

「あら 天川さん?こんなところで何してるの?」

「私は夕飯のおつかいです。雷門さんは?」

「お父様のお見舞いに行って、帰りにスーパーに寄ろうと思ってたの」

 

 へぇ、お嬢様でもスーパーとか行くのか。ちょっと意外だな。

 

「雷門さんがスーパーなんて、何かあったんですか?」

「お父様が事故にあって、考えたの。いつまでも人に頼ってはいられないって。だからまずは自分で夕飯を作れるようにしようと思ったの」

 

 彼女なりに色々考えてるらしい。すごく立派だと思う。

 

「良かったらご一緒していいかしら?スーパーって初めてだからよくわからなくて」

「もちろんです。2人の方が楽しいですし」

 

 数分後、スーパーに到着した。

 

「ところでなにを作るか決まってるんですか?」

「いいえ、まだ何も」

 

 まぁ初心者ならカレーとかが無難なところだろう。切って煮るだけだから簡単だし。

 

「それなら私にも出来そうね」

 

 そう伝えると喜んで了承してくれた。自分が買うものだけササッとカゴに入れて夏美の買い物に付き合う。

 

「ところでカレーってどうやって作るの?色々な種類のスパイスを混ぜ合わせると聞いたことがあるけど」

「え?いや普通はルーを使って作るんじゃないですか?さすがにスパイスの調合からはプロでもないとやらないと思います」

「ルー…ってなに?」

 

 ああ、これは思ったより大変そうだ。その後も野菜をダンボールごと買おうとしたり、肉の鮮度を確認するとか言って包装を破ろうとしたりしてたけど何とか買い物を終えて店から出ることができた。

 

「ありがとう、早速帰って作ってみるわ」

「どういたしまして、でも作る時は誰かと一緒に作った方が…」

「どうして?」

「いえ、大したことじゃないんですけど…ほら、やっぱり誰かと料理した方が楽しいじゃないですか!」

「それもそうね、考えてみるわ」

 

 この人に1人で料理させたらまずい。下手したらボヤ騒ぎになりかねない…バトラーさん、頑張れ。

 

「じゃあ、私は帰りますね。また明日、学校で」

「ええ、また明日」

 

 夏美と別れて1人夜道を歩く。歩き慣れている道のはずなのに今日はなんだか寂しく感じた。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 次の日、円堂達はトライペガサスの練習に励んでいた。だが、中々完成しない。この技は3人が交差することでその1点にパワーを集中させ放つ技らしいのだが、その交差する位置を合わせるのに苦戦しているみたいだ。

 すると突然木野が前に出た。

 

「木野さん?」

「私が目印になる。3人が1点で交差できるようにポイントに立つわ」

「でも、失敗したら怪我どころじゃ…」

「大丈夫、円堂君達を信じてるから」

「秋…よし、頼んだ」

 

 でも、もしも万が一失敗したら…こういうのは適材適所だ。失敗しても怪我をする可能性が低いのは…

 

「それなら私が目印になります」

「羽花ちゃん!?」

 

 私の提案に驚く木野。すると鬼道が淡々と口を開いた。

 

「確かに、天川なら仮に失敗したとしてもかわすのは容易だろう。リスクを減らすという点では適任かもしれない」

「でも…」

「大丈夫ですよ、それに絶対成功するんですよね?」

「ああ、必ず決めてみせる!」

 

 結局俺がポイントに立つことになった。普段からイナビカリ修練場で鍛えてるから多少怪我することはあっても大事にはならないだろうし、それに

 

(私なら怪我したところで別にいいからなぁ…)

 

 考えているうちに3人が迫ってきた。身構えるとほとんど同時のタイミングで俺の横を通過し、そして彼らが交わったところからは青い炎が吹き出していた。それはすぐにペガサスと形になり、上空に舞い上がる。そして円堂達も飛び上がり同時にボールを押し出した。

 

「「「トライペガサス!!」」」

 

 どうやら成功したようだ。シュートは勢いを失うことなく無人のゴールに突き刺さった。

 

「できたよ!一之瀬!」

「ああ、やったな円堂、土門!」

 

 抱き合って喜びあう3人。時計を見ると一之瀬がアメリカに帰る時間の30分ほど前、本当にギリギリの完成だった。

 

「羽花、ありがとう!トライペガサスが完成したのはお前のおかげだ!」

「いえ、私はただ立ってただけですよ。でも、成功してよかったです」

「度胸あるね。天川羽花、覚えておくよ」

 

 そう言い残すと彼はアメリカに帰っていった。

 そして夕方、雷門グラウンドで俺達は空を見上げていた。

 

「あの飛行機かな?」

「多分ね」

「一之瀬!また一緒にサッカーやろうぜ!」

「うん、やろう!」

 

 空に叫んだ円堂の言葉に返答が帰ってきた。一之瀬の声そっくりだ。…ん?

 

「俺、こんなに熱くなったのは初めてだ!だから帰れない、もう少しここにいる!」

 

 なんと一之瀬の雷門加入が決まった。物凄い行動力だ。だけど彼みたいなプレイヤーが加わってくれるのは心強い。

 

「みなさーん、次の対戦相手が決まりました!」

「音無さん?」

 

 その時、息を切らしながら音無が走ってきた。そして一瞬豪炎寺に目を向けるたと思うと続けた。

 

「次の対戦相手は…木戸川清修です!」

 

 それを聞いた瞬間、みんなの視線が豪炎寺に集まった。彼は驚いた顔をしたが、すぐにどこか悲しげな顔をして俯いてしまった。

 

化身は出した方がいい?

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