イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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孤独な兎

 目が覚めると私は何も無い真っ暗な空間にいた。

 辺りを見回すも、目に入るのは暗闇のみ。

 すると突然白い人影のようなものが現れた。体格から見て男性、高校生くらいだろうか?影は光を放ち、佇んでいる。

 

『いつまで俺のフリを続けるつもり?』

 

 どこからともなく聞こえてきた。恐らく影の声だろう。

 

「…!?…だって、私には…”天川羽花”には何も無いから」

『俺だった時の記憶なんて殆どないんだろ?ならそこまでこだわる必要はないんじゃない?』

 

 何となく影の正体がわかった。あれは、私だ。昔の、この世界に来る前の。

 

『君は何がしたいんだ?』

 

 その言葉が頭に響く。何がしたい?私は……わからない。昔からずっとそうだ。好きな食べ物も、趣味も、音楽も何もかもわからない。だから雷門に来た。ここなら自分を見つけられるかもしれない、そう思って…

 

「わからないよ、私は空っぽだから…」

『空っぽ……ね』

「でも雷門で守君と、皆とサッカーをして楽しかった。皆が私を必要としてくれるのが嬉しかった」

 

 そう、雷門で初めて私は独りじゃないと実感できた。何かを楽しいと思えた。だけど…

 

「だからこそ、それを失うのが怖い…また独りぼっちに戻るのが、堪らなく怖いの…」

『……』

「だから私は強くなくちゃいけない。皆の役に立って、必要とされて……独りに戻らないように…その為にあなたが必要なの。空っぽの私を埋めてくれるあなたが」

 

 影は何も言わず、ただ私の言葉を聞いていた。しばらく沈黙が続き、そして影はこう言ってきた。

 

『君は何もわかってないよ』

「え…?」

『彼らは君のことを必要だなんて思ってない』

「…ッッ!?…そんなことない、皆私のことを必要だって思ってくれてる!」

 

 影の言葉に私の心がささくれ立った。必要と思ってない?そんなことない…そんなこと、あっていいはずがない…

 

『フフ、ごめんね。別に怒らせるつもりはないんだ…。君はまるで兎だね。独りだと寂しくて何もできない、可哀想な兎』

 

 怒らせるつもりはないと言っておいてその言葉は嫌に挑発的だった。私はそいつを睨みつけた。

 

「結局、何が言いたいの?」

『君は大事なことを見落としてる。それに気づかない限り、君は永遠に孤独だろうね』

「見落としてる…?」

『ああ、とても単純で簡単なことさ。最も今の君では見つけるのは難しいかな?』

 

 言ってる意味がわからず困惑する私をよそに彼は言葉を紡ぎ続ける。

 

『俺が答えを教えてもいいんだけど、多分それじゃ意味が無い。これは君自身で解決するべき問題だからね。俺は所詮、傍観者にすぎないんだよ』

『まあヒントくらいは出してもいいかな。もっと彼らの言葉に耳を傾けるといい。そうすれば自ずと答えは出るはずだよ』

 

 ペラペラとまるで台本でも読んでいるかのように語る彼の言葉を、私はただ黙って聞いているしかなかった。すると辺りに、私を呼ぶ声が響いた。この声は……守君?

 

『おっと、王子様のお迎えのようだ。フフ、目覚めのキスでもしてくれるのかな?…冗談だよ、そんな顔しないでくれ』

 

 自分でもどんな顔をしているかわからないが彼の反応から察するにいい顔ではないだろう。ここに鏡がなくてよかった。

 

『それじゃあまたね。答えが見つかることを祈ってるよ』

 

 その言葉と共に私の視界は白に包まれ、次に目を開けるとそこには見慣れた天井と人物が写っていた。

 

「羽花、大丈夫か?うなされたみたいだけど」

「守君…?はい、大丈夫です。少し悪い夢を見ていたみたいです」

「そうか?ならいいけど。朝ごはん出来たってさ、早く降りてこいよ」

 

 こうして起こされるのは初めてかもしれない。いつも決まって俺が円堂を起こしていたから。

 部屋から出ていく彼の後ろ姿を眺めながら、俺はさっきの夢で聞いた言葉を思い出していた。

 

「俺は…私は……必要ないのかな……」

 

 その呟きは誰の耳に入ることもなく、やがて消えていった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「よし、ダイレクトで裏に繋いでシュートだ!」

 

 鬼道の号令で皆が一斉に動き出す。やはり彼がいると練習の幅も広がるのでより実践的な練習ができるようになっていた。

 鬼道が後ろの一之瀬にパスを出すと、彼はそれをダイレクトで前線に蹴り出した。それを染岡がダイレクトでシュート、逆をつかれた円堂だったがなんとか切り返し、ボールを弾いた。弾かれたボールははるか上に飛び上がった。

 よし、あれなら取れる。目を閉じて身体に意識を集中し、精神を統一する。段々身体が熱を帯びてくるのを実感し、目を開けると俺の身体は黄緑色のオーラを纏っていた。

 

 力いっぱい踏ん張り跳躍すると、俺は普段では絶対に届き得ない高さまで飛び上がり、ボールを足に収める。そして一度着地するとボールを蹴りあげ再び跳躍する。ボールは黄緑色の光を放つ月と重なり、そして一体化した。

 

「ムーンフォースラビット!!」

 

 それをオーバーヘッドで蹴り落とすと、いくつもの星屑へと姿を変え降り注ぐ。それらは何回も地面で跳躍した後、一つの強力なシュートとなった。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 必殺技同士の衝突。ゴッドハンドがシュートを捉えるも徐々にひび割れ、次の瞬間に砕け散りシュートはゴールに突き刺さった。

 

「くっそぉ!やっぱすげえな羽花は!」

「その前のダイレクトもバッチリでしたね、一之瀬君」

「やっぱりすごいや、一之瀬のボールコントロールは」

「サンキュー!」

 

 千羽山戦の時の感覚をだいぶ掴めてきた。これなら十分に実践で使えるはずだ。

 

「ちょっと聞いてくれるかしら?」

 

 休憩中、夏美が皆に声をかけた。視線が集まるのを確認した彼女は手に持った紙を見ながら口を開いた。

 

「準決勝の結果が届いたわ。決勝進出は…世宇子中よ」

「やはり出てきたか」

「鬼道、決勝でもう一度世宇子中と戦うんだろ?準決勝は絶対に負けられないぞ!」

「ああ、もちろんだ!」

 

 世宇子中、やっぱり勝ち進んできたか。帝国を大差で下したチームだから不思議ではない。

 

「よし、皆!頑張ろうぜ!」

「「「おう!!!」」」

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 練習後、俺と円堂、豪炎寺、鬼道の4人は公園で作戦会議をしていた。

 

「相手はオフェンス重視で攻めてくるだろう、円堂は守備の確認を徹底してくれ」

「おう、ディフェンスは忙しくなりそうだな!」

「こちらの攻撃はカウンター主体になるだろうな。豪炎寺、天川、攻守の切り替えのタイミングに注意してくれ」

「はい」

「……ああ」

 

 メモ帳片手に注意事項等を話す鬼道。彼の言葉に返事はしたものの豪炎寺はどこか元気の無い様子だった。彼は確か元々木戸川清修にいたはず、元チームメイトとは戦いずらいのだろう。

 

「よし、作戦会議は一旦休憩だ!来いよ!」

「円堂!どこへ行く気だ!」

 

 そんな豪炎寺を見かねてか、円堂が急に走り出した。あの方向ってことは、駄菓子屋か…?

 どうやら当たりだったようで彼は駄菓子屋の前で歩みを止めた。

 

「駄菓子屋?」

「なんだよ、来たことないのか?」

 

 そう言って中に入る円堂、俺もそれに続く。

 

「おばちゃん、こんちわ」

「お邪魔します」

「おや、サッカー少年にサッカー少女、いらっしゃい」

 

 この駄菓子屋には円堂に連れられて何度か来たことがある。今では店主のおばあさんに顔を覚えられるくらいになった。

 

「ええと、なんにしようかな」

 

 子供達と一緒にお菓子を選ぶ円堂を眺めつつ、俺も適当なお菓子を見繕う。すると、店内に変な髪型をした3人の男達が入ってきた。

 彼らは店に入るや否や、子供達の列に我が物顔で割り込んでしまった。

 

「お前ら、順番守れよな!」

「うっせえ!」

「3対1で俺達の勝ちぃ!みたいな」

「人数の問題じゃないだろ!」

「いいえ、人数の問題です」

「俺達は常に三位一体なんだよ」

 

 何この人達…てか三位一体だったら結局一人分だろ。すると彼らは店内を覗き込んでいた豪炎寺を見つけると一斉に彼を睨みつけた。

 

「豪炎寺!」

「久しぶりだな、決勝戦から逃げたツンツン君!」

「この変な人達豪炎寺君の知り合いですか?付き合う人は選んだ方がいいですよ」

 

 3人を指さして問いかけるが豪炎寺は黙ったまま答えなかった。

 

「「「誰が変な人達だ!俺達は、武方勝!友!努!3人合わせて、武方三兄弟!!!」」」

 

 ええ…、なんか変なポーズとってるしガチの変態じゃん。

 

「俺達は豪炎寺を超えたと証明するために来た!」

「そいつが決勝から逃げなければ、俺達は去年のフットボールフロンティアで優勝できたんだ!」

「だけどそいつは逃げ出した!だからそいつを倒して証明する!豪炎寺なんかいなくても俺達は勝てるって!」

「ちょっと待てよ、豪炎寺はあの時…」

「いいんだ円堂、事実は変わらない」

 

 そういうことか、けれど豪炎寺側にも事情がある。前に聞いたが豪炎寺はその日妹が事故にあって決勝どころではなくなってしまったのだ。しかしそれを知らない彼らはずっと豪炎寺を恨んでいたというわけだ。

 

「さあ、勝負だ豪炎寺!」

「悪いがその気はない」

 

 彼らの挑発など意を介さず豪炎寺はその場を去ろうとする。

 

「また逃げるのか、やっぱりお前は臆病者の卑怯者だ!」

 

 その時3兄弟の一人、勝と名乗った彼がカバンからボールを取り出し、豪炎寺に向けてシュートを放った。しかしこれは円堂がギリギリのところで弾いた。

 

「もう我慢できない、その勝負俺が豪炎寺の代わりに受けてやる!」

「大体豪炎寺君一人相手に三人がかりで勝って嬉しいですか?」

 

 結局豪炎寺の代わりに円堂が勝負することになり、俺達は河川敷に移動した。

 そして円堂がゴール前に、武方三兄弟がハーフラインに立つ。

 

「「「さあ、武方三兄弟の力、見せてあげましょうか!!!」」」

 

 そう言うと彼らはいっせいにゴール前に前進、そして空中ボールを蹴り上げた。そして緑髪の努だっけ?が青い炎を足に纏わせて回転した。

 あの動きはまさか…

 

「あれはファイアトルネード!?」

「いや回転が逆だ!」

「これがファイアトルネードを超えた俺達の必殺技!バックトルネード!!」

 

 回転の勢いそのままにかかと落としでボールを蹴り落とした。青い炎を纏わせてボールがゴールへ向かう。

 

「爆裂パンチ!!」

 

 対する円堂は拳を何度もシュートに打ち付ける。そしてトドメと言わんばかりの一撃で弾き返した。しかし

 

「「バックトルネード!!」」

 

 なんと勝と友までもがバックトルネードを撃ってきた。当然止められるはずもなくそれらはゴールに突き刺さる。この人達サッカーのルール知らないの?

 

「はぁい、ちょっとゴール奪ってみました。みたいな?」

「待てよ、3本同時なんて止められるわけないだろ!」

「落ち着いてください守君。彼らを見てください、とても頭が悪そうでしょう?きっとサッカーはボールを3つ使うと思い込んでるんですよ、可哀想に…」

「「「誰の頭が悪いって!!!」」」

 

 さすがに俺もイラッときてつい挑発してしまった。誰だってチームメイトを侮辱されれば怒る。

 

「なんか今日口悪くないか羽花…」

「私だってチームメイトを馬鹿にされたら怒ります」

「なるほど、じゃあ1本なら止められるんだな?」

 

 不敵な笑みを浮かべる三兄弟。もしかして秘策か何かがあるのか?

 

「ストップ、ストップだ!喧嘩はまずいぞ円堂!」

 

 すると堤防の方から風丸や一ノ瀬、宍戸達が走ってきた。

 

「喧嘩ってなんの事だ?」

「だって勝負だとか、受けてたつとかすっごい喧嘩っぽかったじゃないですか!?」

「サッカーの勝負だよ」

 

 どうやらさっきの武方三兄弟とのやりとりを喧嘩だと勘違いしてたみたいだ。すると堤防沿いの道路に見慣れた黒い車が停車した。

 

「ほんと、人騒がせな人達ね。ま、いつもの事だけど」

 

 降りてきたのは当然、夏美だ。

 

「なんかギャラリーも増えてきたみたいだし、そろそろ見せてやるか」

「「「武方三兄弟、最強の必殺技を!!!」」」

 

 そう言うと彼らは一斉に走り出し、勝がボールを蹴ったと思うとそれを努が上に蹴り上げ、勝の肩を踏み台にジャンプした友が空中のボールをシュートした。

 

「「「トライアングルZ!!!」」」

 

 そして最後に変なポーズを決める3人。しかしそのヘンテコな光景とは裏腹にシュートは物凄い威力でゴールを襲う。

 

「爆裂パンチ!!ッッッ…!?ぐわぁ!!」

 

 ボールに拳をぶつける円堂だが一発目で吹き飛ばされ、顔面にめり込んだボールごとゴールへ押し込まれてしまった。

 その威力に俺達全員は息を呑むほど驚いていた。…準決勝も一筋縄ではいかなそうだ。

 




今更なんですけど羽花の容姿はプロジェクトセカイというゲームの星乃一歌ちゃんを少し幼くした感じでイメージしてます。まぁ瞳の色とかは違うんですけど参考までに。
面白かったら感想、評価などよろしくお願いいたします。

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