イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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焦燥の兎

 準決勝当日、俺達はベンチに集まって作戦を練っていた。

 とはいえ、ほとんど決まっているようなものだ。木戸川清修の特徴は武方三兄弟を中心とした攻撃的なサッカー。なのでこちらはカウンターを狙う、先日鬼道が言っていたのと同じだ。

 

「奴らのトライアングルZは厄介だが、三兄弟が揃わなければ撃つことはできない。ゴール前では特に注意してくれ。だが万が一の時は頼んだぞ円堂」

「ああ、この前は油断してたけど今日は入れさせないぜ!」

 

 三兄弟の必殺技、トライアングルZ…威力なら皇帝ペンギン2号やイナズマ1号落としより上に見えた。あれを撃たれたらさすがの円堂でも止めるのは難しいだろう。

 

「よし、行ってこい!」

「「「はい!」」」

 

 響監督の号令でスタメンがフィールドに入り、それぞれポジションについた。

 

 

 FW 豪炎寺、染岡

 

 MF 一之瀬、鬼道、羽花、松野

 

 DF 風丸、壁山、土門、栗松

 

 GK 円堂

 

 控え 半田、少林寺、宍戸、影野、眼鏡

 

 そういえば一之瀬が加入したことによりベンチメンバー含めて16人になった。準決勝まで人数足りてなかったのもどうかと思うけど…

 

「今日は逃げなかったみたいじゃん?ツンツン君」

「…俺はサッカーから逃げたりはしない」

「どうだか?まぁいい、どの道勝つのは俺達だ!みたいな?」

 

 三兄弟は性懲りも無く豪炎寺を煽っている。まったく…彼にそういった挑発は効かないとわからないのかな?

 

 ビィーーー!!

 

 試合開始のホイッスルが鳴り響いた、するといきなり三兄弟が仕掛けてきた。

 

「な!?」

「マックス、天川!中央を塞げ!」

 

 鬼道の指示でドリブルのコースに立ち塞がるが、あと一歩間に合わずパスを許してしまった。

 

「努!」

 

 空中に上げられたボールに三兄弟の内、緑髪の努が青い炎を足に纏わせながら回転し接近する。

 

「バックトルネード!!」

 

 かかと落としにより放たれたシュートはゴール前の円堂めがけて飛んでいく。…あのシュート、前とは威力が……!?

 

「守君、気を付けて!」

「おう!爆裂パンチ!!」

 

 ボールに叩きつけられる無数の拳、前はこれで弾けていた。しかし…今回はシュートの勢いが落ちる気配がない。

 

「ぐ、前とは威力が……!?ぐわぁぁぁ!」

「「「よっしゃあぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 ゴール…。バックトルネードが爆裂パンチを打ち破りゴールネットを揺らしてしまった。

 

『ゴォォォル!!木戸川清修、開始早々先取点を取ったぁぁぁ!!』

 

「どうなってるんだ…この前のバックトルネードとは桁が違う」

「なぁに言っちゃっての?本番前に本気だすわけないじゃん、みたいな?」

「この前はデモンストレーションにすぎませんよ」

「これでわかったか?」

「「「俺達の力!!!」」」

 

 …なるほど、この前は手加減してたってわけね。円堂もゴットハンドを使ってなかったから本気ではないとはいえ、この失点は痛い。後あいつらの喋り方ムカつく!

 

 雷門ボールで試合再開、しかし先取点を取って勢い付いた木戸川清修の猛攻に防戦一方な時間が続く。

 

「バックトルネード!!」

 

 再び放たれるバックトルネード、対する円堂はパンチではなく手のひらを掲げ、黄金の手を作り出す。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 衝突の末、ゴッドハンドが危なげなく勝利した。これには武方三兄弟も悔しそうな表情を浮かべている。

 

「よし、反撃だ!羽花!」

「はい!」

 

 飛んできたボールを胸トラップで収める。チャンスだ、三兄弟に流され他の選手達も上がってきている。俺は意識を集中する、内に眠る力を引き出すかのように精神を統一。すると俺を囲うように黄緑色のオーラが…………現れなかった………。

 

「……え?」

 

 予想外の出来事に思わず間抜けな声が漏れる。そうしてもたついている間に敵ディフェンスに囲まれてしまった。

 

「「「ハリケーンアロー!!」」」

「……!?きゃあぁぁ!」

 

 必殺技をまともにくらってしまい宙に投げ出された。受身を取ることもできず、背中から落下する。

 

「ッッッ……!?なんで…」

 

 ボールを奪われた事実よりもオーラを纏えなかったことに驚愕する。…練習では1回も失敗しなかったのになんでこんな時に……!?

 背中の痛みに耐えながら起き上がり、ゴールに目線を移すと敵のシュートを円堂が弾いていた。俺が奪われたせいでシュート許してしまったようだ。

 

「……もう一度」

 

 依然として木戸川清修のペースは続く。特に武方三兄弟は守りなど捨てたと言わんばかりの勢いだ。

 

「オラオラ行くぜぇ!」

 

 どうやら木戸川清修は武方三兄弟以外でシュートを打つ気はないらしい、だから俺はそこを突いた。

 

「ワンダートラップ!!」

 

 努からボールを奪うとすぐに勝が取り返しに来た。

 

「この前は随分好き放題言ってくれたじゃん?」

「それはこっちのセリフです。とにかく、あなた達には負けません」

 

 強めの言葉を交わすと俺達は衝突した。

 

「アグレッシブビート!!」

 

 勝を抜き去り弾き飛ばす、攻撃力は凄いが守備力はそうでもないようだ。そのまま意識を集中し、再度オーラを出すのを試みる。…が

 

「……ッッッ……!なんで出ないの…!」

 

 さっきと同じくやはりオーラは出ず、ただ無防備に突っ立ってるだけに終わってしまった。そんな隙だらけな状態を見逃してもらえるはずもなく、スライディングでボールはゴールラインの外に出されてしまった。

 

 そもそもあのオーラはなんなのか?そこからわからずじまいだ。だがあの力があれば木戸川清修や世宇子にも勝てる、みんなの役に立てると思っていた。しかし実際はどうだ?力は満足に引き出せず逆にみんなの足を引っ張っている。

 

「ダメだ…このままじゃ……ダメなんだ……」

「天川?大丈夫か?」

 

 ハッとして振り返るとそこには鬼道がいた。彼は怪訝そうな顔つきでこちらを見ている。

 

「ごめんなさい、ちょっと考え事してて」

「ならいいが、豪炎寺と染岡には伝えたがお前達にはトライペガサスを撃つための囮になってもらいたい。試合が再開したらすぐに上がってくれ」

「はい、わかりました」

 

 ダメだ、今は試合に集中しないと……。雷門ボールのゴールキックで試合再開、円堂がボールを土門に預けるとチャンスとみた三兄弟がすぐに奪いに来る。

 

 そのタイミングで俺達3人は前線に駆け上がる、そして敵選手がこちらに気を取られた隙に土門は一之瀬にパスし、自らも円堂と攻め上がる。

 3人が走りながら交差すると、その地点にエネルギーが集中しそれは天翔るペガサスへと姿を変えた。

 

「「「トライペガサス!!!」」」

 

 3人によって放たれたシュートは巨大なペガサスと共に木戸川清修のゴールへと襲いかかる。

 

「ひぃぃぃ!」

 

 その迫力に相手キーパーは動くことができず、ゴールネットが激しく揺れた。

 

『なんとキーパー円堂も加わった攻撃で雷門が同点に追いついた!』

 

 同点ゴール、ベンチメンバー含め全員が歓喜の声をあげる。反対に相手はトライペガサスの威力とゴールを許してしまった事実に落胆と驚愕の表情を浮かべている。

 だけど俺は素直に喜べずにいた。この試合、まともに貢献できていない。このままじゃダメだ。

 どうする……?

 どうしたら…………?

 

「天川、行ったぞ!」

 

 思考を巡らせている内に試合が再開していたようだ。鬼道の言葉で我に返った時には既に武方三兄弟に抜かれた後だった。

 

「……しまった!?」

「試合中に考え事なんて余裕じゃん?」

 

 すぐに後を追うがだいぶ距離を離されていたので追いつくことができない。

 すると彼らの前に壁山が立ち塞がった。

 

「通さないっス!ザ・ウォール!!」

 

 文字通り壁となり三兄弟を吹き飛ばしす。そしてボールは彼の足元へ。

 

「壁山君!ボールを私に!」

「は、はいっス!」

「…!?待て、天川!」

 

 鬼道の声が聞こえた気がしたが今の俺には届いていなかった。頭の中にあるのはみんなの役に立たないといけないーーそれだけだ。

 ボールを受け取りそのままがむしゃらにドリブルで相手を抜き去る。1人、2人、3人、だがゴールを目の前にしたところでバンダナをつけたディフェンダーに阻まれてしまった。

 

「行かせるか!スピニングカット!!」

 

 彼が足を振るうと目の前に衝撃波の壁が発生し、俺は弾き飛ばされてしまった。

 またボールを奪われた…。まだだ…こんなままで終わる訳にはいかない。私は皆に必要だと思ってもらうためにも…!こんな所で終わる訳にはいかないんだ!

 

 奪われたボールはすぐに前線に送られる。だがそれを空中でパスカット、そしてそのままオーラを出すことを試みるが…

 

「クッッソ…!なんで!?なんで…できないの……!?」

 

 再びボールを奪われる。そしてそのボールは武方三兄弟へ。

 

「そろそろ見せてやろうか!」

「僕達三兄弟最強の!」

「必殺技を!」

 

 攻撃がダメならせめて守備で…!その一心で必死に走り、何とかゴール前にたどり着いた。

 

「三兄弟をフリーにするな!マックス、天川、土門でそれぞれ当たれ!」

「私が止める!」

「な……!?天川、待て!」

 

 無我夢中に三兄弟に突っ込むが、3対1で勝てるわけもなくあっさりパスを回され突破を許してしまった。

 

「へ、自分からチャンスをくれるなんていい心がけじゃん?」

 

 フリーになった勝から友、そして努へとパスがダイレクトで繋がる。その過程でボールにはオレンジのパワーが蓄積され友がシュートを放つ頃に強力なエネルギーの塊になっていた。

 

「「「トライアングルZ!!!」」」

 

 最後の決めポーズと共にシュートは加速する。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂の右手から出る黄金の手がシュートを遮る…が、徐々に円堂が裏に下がっている。堪らず左手も使う彼だったがそれでもなおシュートのパワーが上。そして耐えきれなくなりゴッドハンドが砕けると、彼はシュートごとゴールへねじ込まれた。

 

「そんな……私のせいで…」

 

 私はその光景を自責の念に駆られながら、ただ眺めていることしかできなかった。

 




誰とは言わないけどとある名医の方がそろそろ施術の準備を始めてそう。
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