イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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神の裁き

 フィールドに試合開始を宣言するホイッスルが鳴り響いた。キックオフは世宇子から。フォワードがバックパスしたボールはアフロディの元へ。

 

「…!?動かない?」

「舐めんな!」

 

 豪炎寺と染岡がボールを奪おうとプレスをかけに行くが、アフロディは雷門中の時と同じく動こうとしなかった。

 

「君達の力はわかっている、僕には通用しないとね。ヘブンズタイム!!」

 

 その瞬間、信じられないことが起きた。アフロディが指を鳴らすと同時に彼の姿が消えたのだ。視界からアフロディを見失い困惑する2人だが、俺は彼らより後ろにいたからわかった。アフロディが瞬間移動でもしたかのように彼らの背後に回り込んだのを。

 そして直後に突風が発生して2人は吹き飛ばされてしまった。

 

「なに……今の?動きが見えなかった…」

「なんて速さだ」

 

 アフロディはまるで道でも歩くかのようにゆっくりボールを蹴りながら前進してくる。そこに鬼道と共に突っ込んでいくが…

 

「ヘブンズタイム」

 

 また彼が指を鳴らした。それと同時に目の前にいたはずの彼は視界から消えてさってしまった。

 

「ッッ!!きゃぁぁぁぁ!!」

 

 突然発生した突風に巻き込まれ、抵抗する間もなく宙へと放り出された。そんな状態で受身を取れるはずもなく背中から地面に叩きつけられる。

 痛みに悶えていると後方からまたもや突風が風を切る音が聞こえてきた。

 彼は既にゴール前に到達していて、今まさに円堂と1対1の状況になっていた。

 

「来い!全力でお前を止めてみせる!」

「天使の羽ばたきを聞いたことがあるかい?」

 

 アフロディの背中から美しい真っ白な羽が生えてくる。彼は空中に飛び上がるとボールに白いエネルギーを纏わせ、蹴りを叩き込んだ。

 

「ゴッドノウズ!!これが神の力!」

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂はゴッドハンドで対抗するも、そのシュートに対してはあまりに無力だった。ひび割れた神の手は砕け散り、彼はボールごとゴールへねじ込まれた。

 

『恐るべきシュート、ゴッドノウズが雷門ゴールに炸裂!世宇子中先制!』

 

「ゴッドハンドが…」

「やはり通用しないのか……」

 

 ゴッドノウズの強烈さに息を呑む面々。こんなシュートを撃つ相手に勝ち目なんてあるのか、と。

 

 試合再開のホイッスルが鳴り、染岡がドリブルで攻め上がる。だが世宇子中は攻められているというのにまったく動かない。

 

「なめやがって…ドラゴン!!」

「トルネード!!」

 

 染岡が蹴り出したボールに豪炎寺が追撃のように蹴りを入れる。すると赤く燃え上がるドラゴンが現れ、世宇子ゴールに襲いかかる。

 

「ツナミウォール!!」

 

 キーパーが両手を地面に叩きつけるとどこからともなくゴールを覆うように津波が発生し、いとも簡単にドラゴントルネードを弾いてしまった。

 

『なんと、世宇子キーパーポセイドン!ドラゴントルネードを止めた!最強の守護神ここにあり!』

 

 シュートが止められることは想定していたけどここまで簡単に防がれるなんて……

 するとポセイドンはボールを放り投げ、豪炎寺へと渡した。そして指をくいくいと折り曲げ、撃ってこいと言わんばかりに挑発する。

 

「ボールを渡したことが失敗だと思い知らせてやる」

 

 鬼道が豪炎寺の横に並び、そう声をかけた。彼は頷くとボールを鬼道に渡し、視線をこちらに向けてくる。この3人ってことは…あれか。

 鬼道が指笛を鳴らすと同時にペンギンが出現。それをシュートと撃ちだし、両隣から駆け込んだ俺と豪炎寺がツインシュートを決める。

 

「皇帝ペンギン……!!」

「「2号!!」」

「ツナミウォール!!」

 

 再び現れる波の壁。それに衝突したペンギンはあっけなく消し飛ばされてしまった。ボールは再びポセイドンの手元へ。そして今度はそれを俺の目の前に転がしてきた。

 

「……だったらこれで!」

 

 ボールと共に飛び上がり、跳躍を繰り返す。そして月の背景をバックにオーバーヘッドキックで地面に叩きつける。

 

「バウンサーラビット!!」

「ツナミウォール!!」

 

 跳躍を繰り返すボール、しかしツナミに激突した瞬間威力が削がれ停止してしまった。弾かれたボールは今度は一之瀬の足元へ。彼は後方を確認すると走り出した。その後ろには土門と円堂の姿がある。そしてクロスすることで生み出したエネルギーからフェニックスが形成され、3人は空中で同時にそれを蹴り出す。

 

「「「ザ・フェニックス!!」」」

「ギカントウォール!!」

 

 巨大化したポセイドンの拳がシュートを地面に打ちつける。地面がひび割れ、シュートは完全に止められてしまった。

 

「これじゃウォーミングアップにもならないな」

「俺達の必殺技がどれも通用しない…」

 

 4連続シュートが止められ、俺達の表情が絶望に染る。しかしそれで試合が中断されるわけもなく、ボールは兜のようなものを頭につけたフォワードへと渡った。

 

「ゴールには近づかせない!」

「ダッシュストーム!!」

 

 彼が発動した必殺技による突風でディフェンス陣が次々と吹き飛ばされていく。

 

「リフレクトバスター!!」

 

 浮き出した岩にシュートが何度も反射され、その度に威力が増していく。

 

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂は再びゴッドハンド。だがこのシュートもゴッドノウズに負けず強烈だった。一瞬の拮抗の後、ゴッドハンドは砕け散ってしまった。

 試合開始わずか数分で2対0、シュートは止められ相手の攻撃は防ぐ術がない。一体どうすれば…

 

「おい栗松!マックス!」

 

 土門の声に振り返ると栗松と松野が苦しそうに足を抑えていた。まさかさっきのダッシュストームで吹き飛ばされた時に…

 ベンチに戻る彼らだが試合続行は不可能のようだ。空いたポジションに交代で半田と影野がそれぞれ入った。

 だけどそれで試合の状況がどうにかなるわけもない。そこから始まったのは一方的は蹂躙だった。

 

「ダッシュストーム!!」

 

 敵の攻撃を止めようとすれば、吹き飛ばされる。

 

「メガクエイク!!」

 

 点を決めようにも圧倒的な防御の前に為す術もない。

 

「ディバインアロー!!」

「爆裂パンチ!!」

 

 ヘラというフォワードが放ったシュートに円堂の拳は適わず弾き飛ばされる。また追加点を決められてしまった…

 

「これ以上やらせない……!」

 

 試合がリスタートされると同時にボールを持ってドリブルで攻め上がる。だが世宇子ディフェンスが余裕の表情で待ち構えていた。

 

「さばきのてっつい!!」

 

 ディフェンスの髪の長い男が天に手を翳したと思うと、巨大な足が落下してきた。間一髪のところでそれをかわすも、風圧に巻き込まれ俺は地面を転がった。

 しかしなんとか体勢を立て直し、痛む身体にムチを入れボールを取り返しにかかる。

 

「ワンダートラップ!!」

「無駄だ。神には通用しない」

 

 高速のスライディングも通じず吹き飛ばされ、再度地面を転がった。

 ボールは前線のアフロディへ。彼は余裕を隠そうともせず歩いてゴールへ向かっていく。

 

「ヘブンズタイム」

 

 その神業に全員が倒されてしまった。もはや立ち上がれる者はおらず、皆地面に倒れ伏している。

 

「残るは君だけだ」

 

 円堂を指さすと、彼は純白の羽を出現させ舞い上がる。

 

「ゴッドノウズ!!」

 

 彼が白いエネルギーを纏ったボールを蹴った瞬間、ありったけの力を振り絞り彼の目の前までジャンプした。そしてほとんど同時のタイミングで蹴りを入れる。

 

「絶対に……やらせない………!」

「ふふ、その執念だけは認めてあげるよ。だが神の前ではあまりに無力だ!」

 

 単純なキック力の差。俺は抵抗することもできず押し出された。途端に襲ってくる吐き出しそうになるほどの痛み。シュートは俺の身体ごと突き進み、円堂を巻き込んでゴールに炸裂し、俺はその場に倒れ込んだ。

 

 4対0、俺の…私の力は世宇子には通じない……私は強くならなきゃいけないのに……皆の役に立って必要だと思ってもらうために…もう独りには戻りたくないから……

 

 そのために必死に特訓した。雷門に入ってからは寝ても醒めてもサッカーばかりだった。強くなるために前世の自分にも頼った。強い自分に…

 

 ……でも無理なのかな?結局私みたいな役立たずはどう頑張っても強くなんてなれない。

 

 

「お前は不必要な人間だ」

「早く死ねばいいのに…役立たず」

 

 昔のトラウマとも言える記憶が脳裏を過ぎる。でも……否定なんてできない。

 

 だって全部本当のことなんだから………

 

 私は、要らない人間なんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ続けるかい?いや、続けるに決まってるね。では質問を変えよう。チームメイトが傷ついていく様子をまだ見たいのかい?

 

 世宇子のシュートを受け続け、地面に倒れる円堂に対しアフロディは満身創痍でうずくまる雷門イレブンに目を向け問いかけた。

 自分だけならそれこそ命を失うまで戦い続ける、それほどの決意が彼にはあった。だがチームメイトが傷つくのは耐えられない、ここまで来られたのは間違いなく彼らのおかげなのだから。

 

「何を迷ってる円堂!」

「…豪炎寺!?」

「俺は戦う!そう誓ったんだ!」

 

 チームメイトを思いやるあまり棄権することを考え始めた矢先、豪炎寺が立ち上がった。

 

「豪炎寺の言う通りだ!俺達のためにだと言うなら大間違いだ!」

「最後まで諦めないことを教えてくれたのはお前だろ!」

「俺が好きになったお前のサッカーを見せてくれ!」

「「「円堂!/キャプテン!」」」

 

 風丸、鬼道、一之瀬。豪炎寺の言葉を皮切りに立ち上がり、円堂に声をかける。諦めるなと。それを聞いて円堂は己を恥じた、仲間を言い訳に諦めようとしていたのは自分自身だと。彼はフラフラの足を奮い立たせ、立ち上がった。その姿にさすがのアフロディも意外そうな表情を浮かべた。

 すると彼はボールをピッチの外へと蹴り出した。ミスではない、意図的にだ。

 困惑する雷門イレブンをよそに世宇子イレブンはベンチに戻り、運ばれてきた飲料を口にする。これこそが彼らの力の源、神のアクアだ。最も周りからはただの水分補給にしか見えないだろう。

 

 そして彼らがピッチに戻り、試合が再開される。

 

「点を取る、そして勝つ!」

 

 豪炎寺が雄叫びを上げながら突き進む。しかし…

 

「神には通用しない!」

 

 ディフェンスのディオによって阻まれる。豪炎寺とディオの足がボール越しに激突するが、明らかに神の方が優勢だった。

 

「「まだだ!!」」

 

 その時、鬼道と一之瀬が加勢に入った。だがこれでも彼を突破するには至らなかった。

 

「無駄だ!神には通用しない!メガクエイク!!」

 

 盛り上がった地面によって飛ばされる3人。クリアされたボールはデメテルへ。

 

「ダッシュストーム!!」

 

 暴風が雷門の選手達をことごとく吹き飛ばす。そしてアフロディにパス。

 

「キラースライド!!」

「コイルターン!!」

「ヘブンズタイム!!」

 

 土門と影野が必殺技を仕掛けるも、それよりも早くアフロディの指が鳴らされ、次に彼らは空を見上げ飛ばされることになった。

 

「ディバインアロー!!」

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

 ヘラのシュートを間一髪で弾いた円堂。否、正確にはわざと弾かせたのだ。彼を潰すために。ボールは今度はデメテル、そして次にアフロディ。円堂に対してシュートの嵐とも言うべき弾幕が襲いかかる。しかしそれでも彼の心が折れることはない。だが肉体の方はそうはいかない、ついに身体は悲鳴を上げ、彼は倒れ込んでしまった。

 

「……限界だね。主審」

 

 これ以上試合を続けることはできないだろうとアフロディは審判に試合終了を申し立てる。雷門イレブンが誰一人立ち上がっていないのを確認し、主審が試合を終了させようとするが…

 

「まだだ!まだ試合は終わってない!」

「……!しかし君だけでは…」

「そいつだけじゃない!」

「そうだ!まだまだ戦える!」

 

 円堂が立ち上がり、そして連鎖するように豪炎寺や鬼道、一之瀬達が次々と立ち上がった。そんな彼らの姿を見て、アフロディは動揺を隠せなかった。

 

「信じられないという顔をしているな。円堂は何度でも立ち上がる!立ち上がる度に強くなる!お前は円堂の強さには敵わない!」

「鬼道の言う通りだ!俺達は絶対に諦めない!そうだろ!皆!」

「「「おお!!!」」」

 

 鬼道、そして円堂の言葉にチームの闘志が奮い立った。アフロディは一瞬呆然としたかのような顔になったが、すぐに笑みを取り戻し告げる。

 

「そうか…しかし彼女は神に逆らう愚かさを既に理解したようだよ」

 

 彼の目線の先には地面に膝をつき、顔を伏せたきりで打ちひしがれる羽花の姿があった。その瞳には一切の光がなく、絶望の色で染まっていた。

 

「…!?どうした!まだ試合は終わってないんだぞ!羽花!」

 

 円堂の言葉も今の彼女には届いていなかった。ただひたすらに虚無を見つめるのみだった。

 

「彼女を責めるのはやめたまえ。神の圧倒的な力を前にしては仕方のないことだ」

 

 言い終わると彼は翼をはためかせ、宙に舞った。ゴッドノウズの体勢だ。

 

『アフロディゴッドノウズの体勢!とどめを刺すつもりか!』

 

「ゴッドノウズ!!」

 

 アフロディが不気味な笑みでボールを蹴ろうとしたその時、ぴぃぃぃという笛の音が鳴り響いた。前半終了だ。

 

「…命拾いしたね。雷門中」

 

 崩れ落ちる円堂にそう言い残し、彼はベンチへと戻っていった。

 

「…!?神のアクア!?」

「ええ、神のアクアが世宇子の力の源よ」

 

 ベンチに戻った雷門イレブンに夏美から衝撃の事実が明かされた。世宇子の強さの秘密は神のアクアによるものだと。

 

「許せない、サッカーにそんな物を持ち込むなんて!サッカーをどれだけ汚せば気が済むんだ!」

 

 その事実に彼らは怒りを露わにしていた。自分達の大好きなサッカーを汚されたことに。

 しかしそんな中でも羽花だけはただ地面に座り込み、呆然と地面を眺めていた。そんな羽花が心配になり、円堂が声をかけようとしたその時、彼の視界に赤く燃え盛るなにかが横切ったと思うと、羽花は腹部に襲いかかった熱と衝撃と共に激しく吹き飛ばされた。

 

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