イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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脅威の侵略者編
サッカー部が消えた日


 朝、私はカーテンの隙間から刺す朝日で目が覚めた。時計を見ると6時ちょうど。

 フットボールフロンティア決勝から1週間が過ぎようとしていた。あれからも私達は毎日特訓を続けている。特に守君はより一層気合いが入っているようだ。前に鬼道君達と話した世界のサッカープレイヤーのことを考えて燃えているのだと思う。

 ……だけどやっぱり私が起こさないと朝練の時間に起きれないのはどうにかしてほしいよね…

 そんなことを考えつつ守君を起こしに行く。もはや日課と言っていいかもしれない。一応ノックして部屋に入ると、やっぱりいつものごとくまだぐっすりおやすみ中だった。

 

「守君、朝だよ!起きて!」

 

 カーテンを開けつつ声をかけるが起きる気配はない、いつも通りだ。

 

「守君、朝練するんでしょ!時間無くなっちゃうよ!」

 

 守君は大抵サッカーや朝練という単語を出すと飛び上がるように起きてくる。多分寝てる間もサッカーのこと考えてるんだろうな。

 ところが今日はゆっくりと目を擦りながら怠そうに起きてきた。珍しいこともあるものだ。

 

「なんだよ羽花、こんな朝早く」

「朝練の時間だよ。早く準備してね」

「朝練?なんのだ?」

 

 今日は特に寝ぼけているようだ。とろんと眠気が残った声で守君はそう答えた。

 

「なんのって……サッカーでしょ!寝ぼけてるなら先に顔洗ってきたら?」

「サッカー?羽花、サッカーなんてやってたのか?」

「へ?……サッカー部なんだから当たり前でしょ」

 

 あんまり寝ぼけてるようだからファイアトルネードでもぶち込んでやろうかと冗談混じりに考えていると、守君はキョトンとした様子で口を開いた。

 

 

「……うちの学校にサッカー部なんてあったか?」

 

「は……?何言ってるの?あるもなにも…守君キャプテンでしょ?」

「俺サッカーなんてやったことないぞ?寝ぼけてるのか?」

 

 そう言うと守君は下に降りていってしまった。…寝ぼけてる?それにしても様子が変だったし冗談を言ってるようには見えなかった。そもそも守君はそんな冗談を言うような人じゃない。

 

 その後朝食を食べている時にも話をしてみたけど結果は同じだった。それどころか温子さんや広志さんまで守君と同じ反応だった。一番驚いたのが大介さんの話をした時だ。

 

「じいちゃん?何言ってるんだ、じいちゃんは生きてるぞ?」

 

 生きてる…?大介さんが?……ううん、そんなはずはない。だって毎日守君は仏壇に挨拶してたし、私も1回お墓参りに行ったことがある。だけど仏壇があった場所はクローゼットになっていて、仏壇は跡形もなく消えていた。

 

「いったいどうなってるの……?」

 

 いくら考えても答えの欠片も浮かんでこなかった。わけもわからないまま、私は1人学校へと向かった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 放課後、夕焼けを浴びながら私は河川敷の堤防に呆然と座っていた。

 あの後、学校に行った私を待っていたのは到底理解できないような現象だった。まず教室に入って感じた一番の違和感、それは豪炎寺君がいないことだった。いつも遅刻ギリギリに来る彼だけど今日はホームルームが始まっても姿を表さなかった。それどころか皆豪炎寺君がいないことを疑問にも思っていない様子だった。

 秋ちゃんに聞いてみたら

 

「豪炎寺君?そんな人うちのクラスにいないわよ?」

 

 と返ってきた。守君に聞いても答えは同じ。まさかと思って鬼道君達のクラスを見に行くと鬼道君だけじゃなく土門君と一之瀬君の姿もなかった。

 

「豪炎寺君達がいなくなってる……?」

 

 奇妙な現象はそれだけではなかった。廊下で風丸君を見かけたので声をかけると「誰だ?」と彼は答えた。頭の中がフリーズしてしまった私は何も言うことができず、そんな私を見て彼は変なものを見たような顔をして行ってしまった。

 それから染岡君やマックス君、壁山君に栗松君達にも声をかけたけど、同じクラスの半田君以外誰も私のことを覚えていなかった。それどころかサッカー部のこともフットボールフロンティアのこともなにもかも。まるで最初からサッカー部なんてなかったかのように皆忘れてしまっていた。

 

 それだけならまだ悪質なドッキリで片付けられたかもしれない。だけどそんな希望はすぐに崩れ去った。サッカー部の部室や女子部室、イナビカリ修練場も綺麗さっぱり消え去ってしまっていたのだ。昨日までは確かにそこにあったはずなのに。

 

 そしてなにより夏美ちゃんに声をかけた時……

 

「……誰?馴れ馴れしく声をかけないでくれる?」

「私だよ!天川羽花!私達友達でしょ!忘れちゃったの!?」

「あなたのような友人は私にはいなくってよ。用がないならこれで失礼するわね」

 

 ………ショックだった。私にとっては初めての友達……親友だったのに。それにサッカー部の皆も大事な仲間だ。皆とサッカーをする時間は本当に楽しかった。皆サッカーが大好きで、頑張って特訓してたのに…

 何が起こっているのか理解できず、ただ寂しさや悲しみで涙が滲んでくる。

 

「サッカー部が………消えた……?」

 

 

「ノー。サッカー部は消えていない」

 

「え?」

 

 突然の返答に振り向くと、紫色の髪に見たことないような服装をした少年が立っていた。

 

「雷門サッカー部の消去は不完全だ。天川羽花、これよりお前からもサッカーを消去する」

「……あなたは…誰?」

「私はアルファ。我が使命は雷門サッカー部の消去、残る痕跡は…お前だけだ」

 

 アルファと名乗った少年は無表情に淡々と私の質問に答えた。…サッカーの消去……?……まさか!?

 

「あなたのせいなの!?意味わかんないけど、皆がサッカーのことを忘れてるのは!」

「そうだ」

「ッッッ…!?なんでそんなことを……今すぐ皆を元に戻して!」

 

 全然理解できないけど、こいつが皆からサッカーを………許せない、皆一生懸命に大好きなサッカーに打ち込んでいたのに…!それを奪うなんて……!

 

「ノー。我々が行うべきはその逆、サッカー部の完全消去だ」

「……ッッ!させない!」

「拒否はできない」

 

『タイムワープモード』

 

 彼が何か薄いものを指先で放り投げたかと思うと、それはサッカーボールの形へと変化していった。そしてアルファがボールに足を置くと音声が流れてボールは赤い光を発し、それを彼がこちらに蹴りこんできた。咄嗟のことに避けきれないでいると、ボールは私の前で止まり眩い光を放った。

 

 次に目を覚ました時、私はサッカーグラウンドの真ん中にいた。ここは……もしかしてフットボールフロンティアスタジアム!?

 見覚えのあるその景色、ついこの前までここで全国一を賭けて戦っていたのだから。

 

「お前がサッカーを失うのに相応しい場所だ。天川羽花、お前には何故かインタラプト修正の影響が見られない。よって少々強引な手段をとらせてもらう。喜べ、ここからはお前の好きなサッカーの時間だ」

 

 突然、アルファの周りに同じ服装をした男女が現れた。人数はアルファを入れてちょうど11人だ。

 

「あなた達は…サッカープレイヤーなの?」

「そんな次元の低い存在ではない。我々は時間に介入することを許されたルートエージェント。サッカーがこの世から消えていくルートを生み出すのが我らの使命。サッカーは…我々が消去する!」

 

『ストライクモード』

 

 ボールが今度は黄色の光を放ち、アルファがそれをこっちに蹴りこんでくる。

 

「そうはさせない!……っっきゃあ!」

 

 蹴り返そうとするが凄まじいパワーに弾き飛ばされてしまった。このシュートの威力……もしかしたらあの世宇子以上……

 

「……これくらい、なんとでも!」

「そうかな…」

「……!?」

 

 いつの間にか囲まれていた私に容赦なく何度もシュートが撃ち込まれる。私はそのシュートの速度と威力に避けることも蹴り返すこともできず、ただサンドバックになるしかなかった。

 

「うぁぁぁぁ……!」

「どうだ、感じたか?サッカーの恐ろしさ。サッカーは痛い、辛い、重い、苦痛、邪悪、不必要。そう、サッカーは不必要だ」

「サッカーは……不必要?……うぁぁぁぁ!」

 

 頭の中に色んなものがグチャグチャに流れてきた。サッカーは…不必要?サッカーは…サッカー……は……

 

「サッカーは……不必要なんかじゃない!絶望のどん底にいた私を救ってくれた………大切なものなんだ!

「……!?」

「サッカー部の皆は…私を……助けてくれた………手を差し伸べてくれた…………だから……今度は私が…………皆を助ける!」

「……そうか、ならば!」

 

 アルファのシュートが私の顔面向けて放たれる。避けれない、そう確信した時

 

「サッカーは必要だ!」

 

 目の前をひとつの影が通り過ぎた。それはシュートをカットし、そしてアルファへと蹴り返す。

 

「サッカーは必要。そうだろ?羽花」

「……フェイ?どうしてここに……」

 

 その人物は私も知る人だった。よく一緒に特訓している私のサッカー仲間、フェイ・ルーンだ。

 

「……何者だ?」

「僕の名前はフェイ・ルーン。羽花と同じ、サッカーを必要としている者さ。1人をいたぶって楽しい?だったら勝負しようよ」

「勝負?なんの勝負だ?」

 

 フェイが指をパチンと鳴らしたと思うと、彼の背中から紫色のオーラが溢れ出た。それは少しずつ人の形に姿を変え、赤いユニフォームを身にまとった選手となった。ユニフォームには天の字があしらわれている。

 

「これでどう?」

「…いいだろう」

 

 本当に全然理解が追いつかないんだけど要するに彼らとサッカーで勝負して勝たないと雷門サッカー部は戻ってこないらしい。だったらやってやる!サッカー部を消すなんて絶対させない!

 

 私達がそれぞれポジションにつくと、フィールドの横に赤いキャップを被った男性が現れた。彼は一瞬戸惑ったかと思うと手に持ったマイクを見つめて陽気に実況を始めた。

 

「ではお願いする」

「おう、任せとけ!」

「選手データは全てこの男にインプットした。実況はサッカーに不可欠だと聞いている。我々はプロトコル・オメガというチーム名で登録した。お前達のチーム名は?」

「そっか、即席のチームだからまだ名前が無いんだ…僕達のチーム名は……よし、アマカワーズだ!」

「あ、アマカワーズ…?」

「天川羽花のチームだからね。ピッタリでしょ!」

 

 ダサいよフェイ……もっといいチーム名あったでしょ……なんなら別に雷門でもいいし…

 

「はいこれ」

「…え?これってキャプテンマーク?」

「これは君のサッカーを守るための戦いだ。だからキャプテンは君に任せる」

 

 そう言って黄色い布を差し出してくるフェイ。私は一瞬考えて、覚悟を決めてそれを受け取った。守君達が帰ってくるまではやるしかない。

 

 

『さあ、プロトコル・オメガ対アマカワーズの試合開始です!』

 

 FW フェイ、キモロ

 

 MF ドリル、マント、羽花、チビット

 

 DF ストロウ、スマイル、デブーン、ウォーリー

 

 GK マッチョス

 

 ホイッスルが鳴りプロトコル・オメガのキックオフで試合が始まった。そしてすぐにオレンジ髪の女性がバックパスをしたと思うと、彼らは超高速でパスを回し始めた。その速度は世宇子を遥かに上回っていて私はそれを目で追うことすらできない。

 

「何……!?この速さ!?」

「大丈夫、目が慣れてないだけさ。さぁ、戦うよ!」

 

 そう言って飛び出したフェイは目にも止まらぬ速度で飛び上がりパスをカットしてしまった。そして高速でボールと共に跳躍を繰り返しあっという間に敵ゴール前に辿り着いた。

 

「……すごい!」

 

 そのままフェイは2回、3回と飛び跳ねて、月を背景にオーバーヘッドキックを叩き込んだ。

 

「バウンサーラビット!!」

 

 私も使う必殺技、バウンサーラビット。だけどフェイが放つそれは私のとは比べ物にもならない強さでプロトコル・オメガのゴールに迫っていく。

 

「キーパーコマンド03!!」

 

『キーパーザノウ、止めたぁぁ!』

 

 しかしその強烈なシュートもキーパーに阻まれてしまった。私はその一連のプレーのレベルの高さに唖然としていた。私とは次元が違う……本当にこんな奴ら相手に戦えるの……?

 

『さぁ、今度はプロトコル・オメガの攻撃だ!アマカワーズ防げるか!』

 

 ボールを持ったアルファが攻め上がってくる。姿を追うことさえ出来ない速度に私はあっさり抜かれてしまった。

 

「ディフェンスだ!」

「「「おう!!!」」」

 

 フェイの合図でディフェンスの3人がアルファを囲んだ。すると紫色の三角形の物体が現われ彼らを覆った。

 

「「「フラクタルハウス!!!」」」

 

 囲いの中からハロウィンを彷彿とさせる城が現れたと思うと、そこに落雷が落ちる。だけどアルファはそれを飛び上がって強引に突破するとシュート体勢に入った

 

「シュートコマンド01!!」

 

 強烈な風を纏ってアルファがシュートを放った。対するキーパーのマッチョスは深く息を吸い込んだと思うとシュートを胸の筋肉で受け止めた。

 

「エクセレントブレスト!!」

 

『止めたぁ!なんという激しい攻防!一進一退とはこのことだ!』

 

 それからは両チーム無得点でボールを奪い合う時間が続いた。そしてその均衡を破ったのプロトコル・オメガだった。

 

「羽花!」

 

 マントからボールを受け取った私の目の前にアルファが立ちはだかる。

 

「くっ……アグレッシブ……」

「遅い!」

 

 必殺技で突破しようとするもその暇すらなく肩をぶつけられボールを奪われた。私はなすすべなく宙を舞い地面に叩きつけられた。

 

「そろそろ行く」

「存分にお暴れください」

 

 加速したアルファはディフェンスをなぎ倒すよう突破していき、マッチョスと1対1になった。

 

「天空の支配者鳳凰!!」

 

飛び上がったアルファの背中から巨大な人のような何かが飛び出してきた。大きな翼を持ったそれは、まさに伝説上の鳳凰そのものだ。

 

「何……あれ!?」

 

「化身だよ、人の強い心が形になって現れたものさ」

 

「化身……そんな力があるなんて……」

 

「……それだけじゃないよ」

 

「アームド!!」

 

私は驚きのあまり動けなかったが、それだけではない。アルファは流れるように化身を鎧のように纏ってしまった。

 

「あれが化身アームド。化身を鎧のように纏うことでより強力な力が出せるんだ」

 

「化身……アームド……」

 

 化身アームドしたアルファのシュートが放たれる。必殺技も使っていないシュートはそれでもものすごく強烈だ。マッチョスが目を見開いて驚いたその一瞬が命取りとなり、ボールはゴールに突き刺さった。

 

『ゴォォォル!!先制点はプロトコル・オメガだぁ!!』

 

 そのシュートのあまりの強烈さに私は身体が動かなかった。あのシュート……アフロディのゴッドノウズ・インパクトよりも遥かに……

 

「フェイ…どうすれば?」

「大丈夫、まもなくだ」

「へ?なにが?」

「来るよ……3…2…1」

 

 空を見上げてカウントダウンを始めたフェイ。するとその視線の先にいきなり空を飛ぶ車?のようなものが現れた。車の窓が開いて中から誰かが手を振っていた。あれは……熊!?

 

「おお、羽花ちゃん!ごきげんよう!」

 

 ……なにこれ、喋る青い熊が空飛ぶ車を運転しながらこっちに手を振ってる……やっぱり夢でも見てるのかな……?

 そう思って自分の頬を叩いてみたけど、そこにはヒリヒリとした痛みが残るのみだった。

 




アマカワーズのユニフォームはテンマーズと同じです。ちょうど天の字が同じなので。

化身は出した方がいい?

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