虹色のトンネルを抜けて、タイムマシンは開けた空間に出た。外に見える景色はレトロな雰囲気の街並みで、ビルなんかは一切なかった。もしかしたら路面電車も走ってるかもしれない。そんな風景を見て本当に過去に来たんだと実感する。
「ここが……昔の雷門中…」
外に出てみると目の前に見覚えのある建物が見えた。半世紀以上も前だというのに校舎の雰囲気は今とそこまで変わらない。
「大介さんはどこにいるのかな?」
「あ!あの人じゃない?」
木の影に隠れて校門の様子を伺っているとフェイが急ぎ足で出てくる人物を指差した。特徴的なオレンジのバンダナ、手に携えたサッカーボール、守君にそっくりだ。間違いない、あの人が大介さん……まだ中学生とはいえ、写真の面影がある。
「フフッ」
「…どうしたの、羽花?」
「ううん、本当に守君にそっくりだなって思って」
見た目はもちろん、サッカーボールを抱えたまま飛び出てくるなんて…サッカーバカなところもそっくりなんだなぁ…
走っていく大介さんの後をこっそり追うと、見覚えのある場所に着いた。鉄塔広場だ。すると大介さんは木に括りつけてあったタイヤを使って守君と同じように特訓を始めた。まさか特訓方法まで同じだなんて。
「羽花、円堂守と大介、どっちの顔が好みだ?」
「…え?う〜ん…大介さんもキリッとしててかっこいいけどやっぱり守君の方が……って何言わすの!」
「ワンダバ…そういうのはさぁ…」
ワンダバにツッコミを入れつつ隠れて様子を見ていると、突然大介さんの近くに青白い光がフラッシュした。そしてその光を突き破って現れたのは…
「プロトコル・オメガ!?」
「やっぱり現れたね」
内心現れなければいいって思ってたけどそう上手くもいかないよね…とにかく、大介さんを守らないと!
「なんだ?お前達?」
「円堂大介だな?これよりお前からサッカーを消去する」
「消去?何言ってんだ?」
「嫌いになってもらうということだ。サッカーを」
「は?俺がサッカーを嫌いになる?ないね、それは前に蹴ったボールが後ろに飛ぶくらいありえないことだ!」
アルファの言葉にはてなマークを浮かべた大介さんだったがすぐに真っ向から否定してみせた。さすが大介さんだ。
「……そうか」
『ムーヴモード』
その返答を聞いたアルファが足でサッカーボール……スフィアデバイスを操作する。するとそこから青白い光が放たれ大介さんとプロトコル・オメガを包んだ。
「羽花、僕達も行こう!」
「…!?うん!」
私達も急いでその光の中に入っていく。目の前を眩い輝きが覆い、思わず目を瞑る。そして次に目を開けるとそこはどこかのサッカーフィールドだった。
「ここは……?」
「君にはこれから我々とサッカーをやってもらう。試合だ」
「試合?どういうことだ?」
「大介さん!」
どうやって説明しようか考えたかったけどその時間はないみたいだ。私は彼らの前に飛び出して事情を説明した。
「そいつらはサッカーを消そうとしてるんです!」
「えっと…お前は?」
「私、天川羽花っていいます。ちょっと説明難しいんですけど、私はサッカーを守るために来ました!このままだと大変なことになっちゃうんです!信じてください!」
自分で言ってても突拍子もないことだっていうのはわかってる。だけど大介さんはこっちをじっと見つめると、少し考える様子を見せ口元を緩めた。
「わかった。信じるよ」
「え?信じてくれるんですか?」
「ああ、サッカーを守ろうとしてるってことはサッカーが好きなんだろ?サッカー好きに嘘をつける奴はいないさ」
すごい……考え方まで守君と瓜二つだ。きっとここにいるのが守君でも同じことを言うだろう。
「やってやるよ、試合!サッカーを消させやしない!……でも人数が」
「大丈夫、ここにいるよ」
振り向くとそこにはフェイとデュプリ達、これで試合をするだけの人数は揃った。
私達は試合の準備をしてそれぞれポジションにつく。向こうは以前の試合と同じく、こっちはキーパーがマッチョスから大介さんに。
そして前回と同じく赤キャップのおじさんが実況として現れた。可哀想に……
『うぉぉ!?店の厨房かと思ったらいきなりどこかのサッカー場だぁ!?………さぁプロトコル・オメガ対アマカワーズ2度目の激突だぁぁぁ!』
「さぁみんな!行くぞ!」
大介さんの号令とほぼ同時にホイッスルが鳴り、試合が始まった。ボールはプロトコル・オメガから。すると彼らはいきなり3人がかりでフェイをマーク。そして超スピードでパスを回す。……いや様子がおかしい………さっきからボールは味方ではなくデュプリ達にぶつかってばかりだ……まさか!?
「奴らはデュプリが遠隔操作だと知って、フェイの視界をさえぎって痛めつけてるんだ!」
ワンダバの言葉通りデュプリ達が次々と倒されていく。どうやらフェイにもダメージがいっているようだ。苦しそうに呻いている。
「おい待て!サッカーは人を傷つける道具じゃないぞ!狙うならゴールを狙え!」
「……いいだろう、ならば望み通りにしてやる」
そう言うとアルファがシュートを放った。それは必殺技ではないただのシュートだが、生半可な必殺技より遥かに威力が高かった。対する大介さんは左胸に手を当てた。するとそこに気が集まりだして、大介さんが落雷のように吠えるとそれは魔神に姿を変えていった。あれはまさか……!?
「だぁぁぁぁ!真マジン・ザ・ハンド!!」
魔神の左腕がシュートを阻み、完璧にブロックした。その光景に全員が驚きを隠せないでいた。止めた本人でさえも。
「うぉぉぉぉぉ!なんだ今のパワー!」
大介さんはボールを持ち上げて喜んでいる。その姿に、一瞬守君が重なった。
「大介さん!こっちです!」
「おう、反撃だ!」
大介さんが蹴り出したボールを受け取り、ドリブルで攻め上がるが身体が異様に軽い。それになんだか胸の奥底から力が湧いてくる。
『速い速い!天川ものすごい加速だぁ!』
風を切るような速度でゴールに迫るがディフェンスが立ち塞がった。だけど私はさらに加速して必殺技で一気に抜き去る。
「ビビッドステップ!!…フェイ!」
そうしてフェイにパスを出すと、彼はボールを上に蹴り上げた。私がそれに飛びつくと、黄緑色の月が出現。ボールと重なり、私はそれをオーバーヘッドキック。
「ムーンフォースラビットG3!!」
降り注ぐ星屑となったボールは地面を幾度なく跳躍し、最終的に一つの強烈なシュートとなった。
「キーパーコマンド03……ぐぁぁぁ!」
ザノウが発した衝撃波を消し飛ばしてシュートはゴールに突き刺さった。まずは1点だ。
「すごい加速だったよ羽花!」
「えへへ、ありがとう!自分でもここまでできるなんて思ってもみなかった!」
自らの成長を感じて少しはしゃいでしまった。でも油断はできない…彼らの実力はきっとこんなものじゃないから。
『さぁアマカワーズ優勢で試合再開!プロトコル・オメガが攻め上がる!』
先取点を取られたことで逆に勢いを増したプロトコル・オメガが一気に攻撃してくる。
そしてゴール前にボールが上がり、そこにアルファが飛び上がる。
「シュートコマンド01 !!」
激しい回転を纏ったシュート。さっきのとは別次元の威力だ。すると大介さんは魔神を呼び出すのではなく、左足をめいっぱい上げ、ものすごい力で強く踏み込んだ。そして右手を思いっきり振りかぶると彼の背後に巨大な拳が出現した、それはさながらグーのゴッドハンドのようだ。
「正義の鉄拳!!」
彼が拳を突き出すのと同時にグーのゴッドハンドは回転しながらシュートとぶつかりあった。その時生じた風圧でフィールドに突風が巻き起こる。私は弾き飛ばされそうになるのを必死にこらえた。そしてそれが収まった時にはシュートは跳ね返され、タッチラインを割りフィールドの外に飛ばされた。
「……なに…今の?」
あんな必殺技見たことがない…マジン・ザ・ハンドよりも圧倒的なパワーを感じた。私は気付けば私は大介さんの元へ駆け寄っていた。
「できた……よっしゃあ!ついにできたぞ!」
「凄いです大介さん!今の必殺技は?」
「ああ、究極奥義……正義の鉄拳だ!」
究極奥義……まさかそんな技があるなんて。もしかして大介さんのノートに書いてあるのだろうか?今度守君に教えてあげないと。
「……!?羽花、あれは?」
そう言うとフェイがフィールドの外に視線をやった。その先には一人のピンク髪の少女が佇んでいた。彼女はフィールドのラインを超えてゆっくりとこちらに近づいてくる。全員の視線が彼女に集中する。
「この戦い、私も加えてもらえませんか?」
私と同い年くらいだろうか?あの格好は……雷門のジャージ!?それにあのつり目な瞳、髪型、なんだか見覚えがあるような………まさか!?
「………夕香ちゃん?」
思い立った人物の名前を呟くと、彼女は微笑み顔を縦に振った。
「はい、私は豪炎寺修也の妹。豪炎寺夕香です!」
「……怪我はもういいの?それにどうしてここに……」
「話は後で、今はあいつらと戦いましょう」
その時、アルファがこちらに歩いてきて夕香ちゃんを睨みつけた。
「……お前は再修正される」
「さぁ?それはどうでしょう」
アルファの視線と夕香ちゃんの視線がぶつかり合う。そしてワンダバによってキモロと夕香ちゃんの交代が告げられる。キモロはフェイとハイタッチすると消えてしまった。
プロトコル・オメガのスローインで試合再開。だけどそれを夕香ちゃんがカットした。そのまま駆け上がっていく。
「ヒートタックル!!」
彼女の前にディフェンスが立ちはだかるが炎を全身に纏った夕香ちゃんは激しいチャージでそれらを弾き飛ばした。
「凄い……あれが夕香ちゃんのサッカー……」
「ああ、想像以上だ」
そのまま彼女はボールを宙に浮かべ、そして自らも爆炎と共に回転した。
「ファイアトルネード!!」
「キーパーコマンド0……ぐぉぉぉ!」
激しい回転を利用した炎のシュートはザノウが必殺技を出す前にゴールに到達。彼を吹き飛ばした。そのままキーパーごとゴールに突き刺さる。その姿はまるで豪炎寺君のようだ。
『ゴォォォル!!豪炎寺夕香の得点でアマカワーズ、プロトコル・オメガを突き放した!!』
「凄いよ夕香ちゃん!豪炎寺君のシュートにも負けてない!」
「ありがとうございます」
私達はハイタッチをし、微笑みあった。彼女がここにいる理由はわからないけど、予想外の助っ人の登場に私達は沸き立つのだった。
化身は出した方がいい?
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出した方がいい
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出さない方がいい