イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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豪炎寺夕香の覚悟

『続け様に得点を重ねたアマカワーズ!なおも攻撃の手を緩めません!』

 

 夕香ちゃんの加入で攻撃力が格段に上がった私達はプロトコル・オメガを圧倒していた。さすがの彼らにも焦りの表情が見え始めているけど、唯一アルファだけは一切表情を崩さず淡々とプレイしている。

 

「ミキシトランス…ティラノ!!」

 

 ティラノザウルスの力を解放したフェイが力強いドリブルで敵をなぎ払いぐんぐん攻め上がっていく。そのままシュート……

 

「羽花!」

 

 せずに私にパス。そう、彼は私達をフリーにするための囮だ。受け取った私は夕香ちゃんと並走し、ボールを蹴り上げる。

 

「行くよ!夕香ちゃん!」

「はい!」

 

 私達は同時に回転しながら飛び上がった。脚には激しく燃える炎が纏われている。そしてボールを…

 

「「ファイアトルネードDD(ダブルドライブ)!!」」

 

 左右で同時に蹴った。爆炎が宿ったボールは凄まじい破壊力でプロトコル・オメガゴールめがけて突き進む。

 

「キーパーコマンド03!!」

 

 衝撃波がシュートの行く手を阻む。だけどそんなものはなんの抵抗にもならずザノウの顔面を直撃しぶっ飛ばす。そのままゴールかと思われたが、私達はゴール前にもう1人いることに気がついた。

 

『FWのアルファ、ゴール前まで戻っていた!』

 

「……!?いつの間に…!」

 

 彼はシュートを止めようと最後の壁となり蹴りを放つ。足とボールの間で火花が散り、焦げ臭い匂いが辺りを包んだ。だがそれでもアルファは蹴るのをやめない。しかし抵抗虚しく次第に彼は後退していき、そして彼の足は大きく弾かれた。

 

『ゴォォォル!アマカワーズ3点目!決めたのは天川と豪炎寺だぁ!』

 

 ダメ押しの3点目。私と夕香ちゃんは手を取って喜びあった。ベンチの方ではワンダバが何故かピンク色に変色してはしゃいでるけど無視しておこう。

 

「……了解。撤退する」

 

 アルファがそう言ったと思うと彼らの頭上に巨大なUFOのようなものが現れた。彼らはそれに吸い込まれるようにして消えてしまった。

 

「やった!勝ったんだよね!」

「ああ、円堂大介のサッカーを守ったんだ!」

「何が何だかわからんが……一件落着ってとこか!」

「ありがとう、夕香ちゃん」

「はい!この戦い、私もお手伝いします」

 

 フェイと夕香ちゃんが固い握手を交わした。そして私達は円のように丸くなり座って、夕香ちゃんの話を聞くことにした。

 

「羽花さん、あなたが知る私は、お兄ちゃんが1年生の時のフットボールフロンティア決勝の日に、応援に向かう最中で事故にあった。だからお兄ちゃんは決勝戦に出られなかった…ということですよね?」

「うん、そう聞いてる」

「……あの事故は起きなかったんです。その結果お兄ちゃんは決勝戦に参加して、木戸川清修は帝国を破り、優勝した」

「へぇ…すごいね!」

 

 だけど、と夕香ちゃんは続ける。

 

「その後しばらくして、お父さんがお兄ちゃんにサッカーを辞めるように言ったんです。医者になるためにドイツに留学しろって…」

「留学…!?なんで?」

「お父さんは元々、お兄ちゃんに医者になってもらいたかったんです。お母さんが生きていた時はそこまで強く言うことはなかったんですけど…お母さんが死んでしまってからは……」

 

 そういえば豪炎寺君のお父さんはお医者さんをやってるって聞いたことがある。

 

「…でもあの豪炎寺君がそんな簡単にサッカーを辞めるとは…」

「もちろん、お兄ちゃんも最初は反抗してました。でも…やっぱり子供にとって親の言うことは絶対だから…次第にお兄ちゃんはサッカーから遠ざかって…ついにはサッカーに関わるものを全て処分してしまったんです……」

「それは……エルドラドが豪炎寺修也からサッカーを奪うために仕掛けたということだね…でも夕香ちゃん、君はなんでサッカーを?」

「私は……お兄ちゃんがサッカーをしている姿を見るのが一番好きだったんです。私がサッカーをすれば、お兄ちゃんもサッカーに戻ってきてくれるって…そう思って…」

 

 

 夕香ちゃんの表情は暗い。彼女は顔を俯かせたまま続けた。

 

「でも…お兄ちゃんがサッカーに戻ってくることはありませんでした。そんな時、私の前に奴らが現れたんです。私からサッカーを奪おうと」

「そうか!君は新たな時空の中で多くのサッカー少年少女に影響を及ぼしたわけだ。それで狙われた。」

「はい、だけど私がこうやってここに来られたのは、ある人に助けてもらったからなんです。その人は私にこれを渡してきました」

 

 ワンダバの言葉に頷いて肯定した夕香ちゃんは右手につけているブレスレットのようなものを私達に見せてきた。

 

「それは…タイムブレスレット!?」

「これがあれば時間を自由に移動できるんです。それに身につけている間はインタラプト修正の影響を受けない」

「そのある人っていうのは?」

「彼は支援者Xと名乗りました。君達のようなサッカーを愛する者を支援しているとも」

 

 支援者X……何者なんだろう?悪い人ではなさそうだけど……フェイに視線を向けても首を横に振るだけだった。

 

「……よく分からないけど、サッカーを守るために戦ってるってことか?だったら俺も協力するぞ!」

「いや、大介さんにはこれから日本にサッカーを広めるっていう大事な仕事があるんだ」

「大介さんのおかげで私達はサッカーと出会えたんです!大介さんが守君にサッカーを託したから!」

「そうか……わかった!なら俺はサッカーを続けて色んな奴にサッカーの楽しさを教えればいいんだな!任せろ!」

 

 勢い良く立ち上がり拳を手のひらに合わせ大介さんはニカッと笑った。ふふ、やっぱりそっくりだな。

 

「それじゃあ行こうか、次は豪炎寺修也のインタラプトを元に戻さないと。夕香ちゃんの為にもね」

 

 フェイ達が次の戦いに赴くべくタイムマシンに乗り込む、私もその後に続いた。入口の段差を登ろうと足を置いた時、大介さんに声をかけられた。彼はこちらに拳をつきだした。

 

「羽花、ありがとな!また一緒にサッカーやろうぜ!」

「……!はい!」

 

 私達は拳を合わせて頷きあう。一瞬、大介さんに守君が重なったような気がした。……ダメだ、まだ戦いは終わってない。こんなところで泣いてる場合じゃないんだ……!

 零れそうになった涙を抑えて、私はタイムマシンに乗り込む。

 

「あれ?大介さんのノートが……」

 

 アーティファクトとしてセットしていた大介さんのノートがみるみる消えていってしまった。

 

「アーティファクトは歴史が変わってここにあることに都合が悪くなると、本来の時間に戻るんだよ」

「つまり……守君のところに戻ったってこと?」

「そう、わかってきたね」

 

 理屈としてはなんとなくわかってきたけどやっぱりまだ不思議だな。まさか自分が時間を移動することになるなんて。

 

「さて、それじゃあ次は豪炎寺修也のインタラプト。彼が1年生の時のフットボールフロンティア決勝の日に行こう。夕香ちゃん、アーティファクトになにか心当たりはない?」

「それならこれが……」

 

 夕香ちゃんは胸元のペンダントを手に取った。私はそれに見覚えがあった。豪炎寺君がいつも持っていたものだ。

 

「それって……」

「私が決勝戦の前にお兄ちゃんにあげたものなんです。お兄ちゃん…サッカーに関するものを処分した後もこれだけは持ってて……」

 

 そっか……やっぱり豪炎寺君も本当はサッカーやりたかったんだろうな……少なくとも私の知る彼はそういう人だ。

 

「わかった…少し借りるよ。ワンダバ、お願い」

「おう、任せとけ」

 

 フェイがそれをセットすると、緑色のドームがペンダントを包んだ。そして私達はそれぞれ席に腰掛ける。

 そこで私の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。私達がこれからすべきなのは歴史を元に戻すこと。それはつまり夕香ちゃんが事故に遭って、豪炎寺君が雷門に転校する歴史ってことになる。てことは今ここにいる夕香ちゃんは………

 

「ねぇ夕香ちゃん、歴史の改変を元に戻したらあなたは事故に遭うんだよ?もしかしたらもうサッカーは……怖くないの?」

「怖くない……と言ったら嘘になります。だけどそれが正しい歴史なら受け入れます。受け入れて……乗り越えてみせる……それに、私はお兄ちゃんにサッカーを返してあげたい」

「……そっか」

 

 強いな夕香ちゃんは……もし私が彼女の立場ならそんな決断できないかもしれない。だけど、夕香ちゃんが覚悟を決めるなら私が迷ってるわけにはいかない…!

 

「さぁ、着いたぞ!フットボールフロンティア決勝…羽花の時代からちょうど1年前だ!」

 

 タイムマシンから降りると、そこはどこかの道路だった。その道路が伸びる先にはフットボールフロンティアスタジアムが見えている。

 

「……夕香ちゃんはどこかな?」

「…………ワンダバさん、お願いが」

「うん?なんだ?」

 

 私とフェイが夕香ちゃんを探している間、ワンダバと夕香ちゃんは何かを話していたようだ。内容まで聞こえなかったけど。

 

「うん…?羽花!あれ…!」

「え?…あ、夕香ちゃんだ!」

 

 今まさに道路を渡ろうとしているのは、私も見慣れた姿の夕香ちゃんだった。首からメガホンをぶら下げていて、まさに応援に行こうというところだ。

 

「……トラックが!?」

 

 信号が切り替わり横断歩道を渡ろうとした夕香ちゃんの目の前に、信号無視のトラックが突っ込んできた。しかしあわや激突…というところで世界が灰色に包まれトラックは停止した。いや、トラックだけじゃない。私達以外の全ての物の動きが止まっている。

 

「……!?アルファだ!」

 

 現れたアルファはトラックに向けてスフィアデバイスを蹴り出そうとする。なるほど、それでトラックの軌道を変えて事故を防ごうということか。

 

「待って!手を出さないで!」

 

 しかしアルファの前に夕香ちゃんが立ち塞がった。それに続いて私達も前に出る。

 

「また会ったね」

「…………なるほど、理解した。我々の障害になる者は排除する」

 

 口元のインカムが音を鳴らしたと思うと、彼はデバイスに足を置いた。大介さんの時も思ったけど、彼の口ぶりからしてまるで私達と初めて会うみたいな反応だ。これもパラレルワールドの影響ってことかな…?

 

『ムーヴモード』

 

 デバイスから放たれる青白い光に辺りは包まれる。思わず目を閉じて、次に開けた時にはやはりどこかのサッカー場だった。ここは……もしかして木戸川清修……!?以前豪炎寺君に写真を見せてもらったことがある。そこにそっくりだ、間違いない。

 

「お前達のサッカーが葬られる場所だ」

「受けて立つさ、そのために来たんだからね」

 

 フェイが指を鳴らしデュプリを作り出す。夕香ちゃんがいるのでキモロ以外の8人だ。フィールドの外には赤キャップのおじさんが現れる。やっぱり今回も連れてこられちゃったか…ホント同情する……

 

『さあ試合が始まった!天川が攻め込んでいく!』

 

 私がボールをキープして攻め上がる。するといきなりアルファが突っ込んできた。

 

「…実行する」

「く……マント!」

 

 マントにパスするもそれはカットされてしまった。するとその瞬間、プロトコル・オメガがディフェンス含め一斉に駆け上がってきた。

 

「……!?いきなり全員攻撃!?」

 

 試合開始直後の突然のキーパーを除く全員攻撃に私達は反応が遅れてしまった。その隙にボールはエイナム、レイザ、と流れていき、そして…

 

「リーダー!」

 

 アルファへと繋がった。

 …まずい……フリーでアルファにボールが渡ってしまった。

 

「天空の支配者鳳凰!!」

 

 彼はボールを持ったまま天空へと駆け上がる。足元には炎が燃え盛り、そして背後には鳳凰が現れる。

 

「シュートコマンドK01!!」

 

 爆炎が放たれ私達のゴールを強襲する。対峙するマッチョスは激しく空気を吸い込むと胸筋でシュートを防ごうとする。

 

「エクセレントブレスト!!」

 

 しかし一瞬で弾かれ、業火はゴールを貫いた。

 

『ゴォォォル!!プロトコル・オメガ、いきなりの速攻で先取点をもぎ取った!』

 

 ゴール。まさか初めから全員で攻めてくるなんて……向こうもそれだけ本気ってことかな…

 

『さぁアマカワーズのキックオフで試合再開です!』

 

「……!?これは」

 

 なんとプロトコル・オメガはここでポジションチェンジ。アルファ以外の全員がディフェンスエリアまで下がっている。

 

「…そうか!奴らにはパラレルワールドでの僕らとの戦いがインプットされたんだ!僕達は攻撃力はあるけど守りは薄い。だから……」

「試合開始早々先取点を取って…そこからは全力でディフェンス………ってことだね」

 

 なるほど……だから開始早々全員攻撃をしてきたのか。これは結構厳しそうだね。

 

『アマカワーズ、果敢に攻めるもプロトコル・オメガのディフェンスが崩せない!』

 

 試合が再開し、全力で攻め上がるも私、フェイ、夕香ちゃんは2人がかりでマークされていて動けない。…デュプリに得点力がないのはバレてるってことね……

 

「アグレッシブビート!!」

 

 必殺技で敵をかわすもすぐに次がやってくる。

 くそ、これじゃキリがない。

 

「ディフェンスコマンド03!」

 

 相手のディフェンス…メダムが手を地面に置いたかと思うと、私が持っていたボールに紫の電気のようなものがまとわりついた。するとボールは勝手に私の周りを竜巻を起こしながら回転し始め、私はそれに振り飛ばされた。

 勢い余って飛んでいったボールはラインを超えてフィールド外の奥へと消えていった。

 攻めれてはいる。だけどあともう一つ決め手が足りない。何か考えないと………その時

 

 ……ボールが勝手にフィールドに戻ってきた。

 怪訝に思った私達だがボールを拾おうとする。すると空から影がひとつ、ゆっくりと降りてきた。

 その影の正体は―――人。腰まで伸びた美しい金色の髪の毛、自信に溢れた瞳、神々しい白いユニフォーム、私はその人物を知っている。

 ―――そう、彼は紛れもない世宇子中のキャプテン。

 

「……アフロディ………?」

 

 再び私の前に現れた神は、まるで天使のような美しさで木戸川清修のグラウンドに降り立った。

 

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