イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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正しい歴史

「あ、アフロディ!?」

 

 突然の乱入者に私は度肝を抜かれた。

 アフロディ――世宇子中のキャプテンでフットボールフロンティア決勝で雷門と戦った相手だ。彼らは影山の下で神のアクアを使い超人的な力を得ていた。そんな人がどうしてここに……

 

「……なにしに来たの?」

「もちろん、戦うためさ。君達と―――共にね」

「そんなこと…………へ?」

「これ以上、エルドラドによる歴史の改変を許すわけにはいかない!」

「……!?君はエルドラドを知ってるの?」

 

 私は警戒し突き刺すような視線を彼に向ける。だけど彼の返答を聞いた時、思わず間抜けな声が出てしまった。それほど意外な返答だったからだ。

 

「フェイ君だね?君のことは聞いているよ。天川さんと共にサッカーを守るために戦ってくれているとね」

 

 そう言うと彼は右手をこちらにかざした。そこには見覚えのあるブレスレットがつけられていた。

 

「それは……タイムブレスレット!?ということは君も……」

「そう、あそこにいる豪炎寺夕香ちゃんと同じ……支援者Xと名乗る人物に貰ったんだ。これで君達を助けて欲しいとね」

 

 彼は私の方を向いて、ここに来た理由を語りだした。

 

「君達との戦いで僕は思い知ったんだ。諦めないことの大切さを。人は立ち上がるたびに強くなれる。僕はもう神のアクアに頼るような愚かなことは二度としないと誓った。君達雷門…そしてサッカーが僕に大切なことを教えてくれたんだ。そんな時に君達が戦ってることを知った。僕を信じられなくても無理はない。だけど信じて欲しい。僕もサッカーを守るために戦いたいんだ」

 

 私に頭を下げてくるアフロディ。あんなにプライドが高かった人がそこまでしてサッカーを守るために……正直、彼らのしたことは許されることではないと思う。でも……そんな彼をも変えたのは守君の、雷門のサッカーだ。だったら答えは決まってる。

 

「羽花、判断は君に任せるよ」

「…………わかった!一緒に戦おう!」

「……!?信じてくれるのかい?」

「あなたの目を見ればわかるよ。本当にサッカーを守りたいって気持ちが。……って守君なら言うだろうな」

「…ありがとう!」

 

 守君や大介さんに似ちゃったのかな?彼の目を見てると信じてもいい…そんな気がする。私が手を差し出すと彼もそれを握り返してきた。そして試合が再開される。デュプリのチビットが抜けてその位置にアフロディが入った。

 

『アマカワーズはなんと世宇子中キャプテンアフロディがチームに加わった!果たして反撃は見られるのか!』

 

 プロトコル・オメガのスローインで試合が再開された。

 でもそれは私の目の前。すぐさまボールを奪おうと跳躍する。

 

「ヴァーミリオンドロップ!!」

 

 月の発光に目を眩ませた隙にボールを奪い取る。するとそれを見るやアフロディは空いたスペースは素早く切り込んできた。あの速度……決勝戦の時より速くなってる……!

 

「アフロディ!」

 

 アフロディにパスが繋がった。パスを受け取った彼は一瞬静止した後、敵ゴール目掛けて駆け上がる。

 そして次の瞬間には彼の神業が炸裂した。

 

「ヘブンズタイム!!」

 

 そこからはまさに一瞬にも満たない間の出来事。彼が指を鳴らしたかと思うと次の瞬間にはディフェンスの背後に移動していた。そして突風が発生、ディフェンスを吹き飛ばした。

 ……相変わらず強力な技だね。初見じゃ何が起こったかすらわからないだろう。敵だったら脅威だけど味方になるとこんなに頼もしいなんて。

 

 ボールはアフロディから夕香ちゃんへ。アフロディが加わって攻撃のバリエーションが増えたことで一人一人のマークが手薄になっている。…チャンスだ。

 

「ヒートタックル!!……アフロディさん!」

 

 炎を纏った突進でディフェンスを蹴散らす。そしてボールは再びアフロディへ。それを受け取った彼はボールを蹴り上げ自らも飛び上がる。その背中には黄金の羽が羽ばたいていた。

 

「真ゴッドノウズ・インパクト!!」

 

 眩い光を放つボールをアフロディが蹴り落とした。周囲に落雷が発生し、ビリビリと衝撃が伝わってくる。その威力は決勝戦の時の比じゃない。対するザノウは必殺技で食い止めようとするけど全く歯が立たずにボールごとゴールにねじ込まれた。

 

『ゴォォォル!!アフロディの強烈なシュートが炸裂!アマカワーズ追いついた!そしてここで前半終了です!』

 

「これが生まれ変わった僕の力さ」

「凄いよアフロくん!神のアクア無しであんなに強いシュートを撃てるなんて!」

「………別にどう呼んでくれても構わないけど、せめてディまで呼んでくれるかな?」

「うんわかった!アフロくん!」

「……もう好きに呼んでくれ」

 

 そんな風に彼をからかっていると、空からタイムマシンが現れた。出てきたのは当然ワンダバだ。

 

「ワンダバ、どこ行ってたの?」

「そもそもいなかったんだね…気づかなかった」

「この大監督に対しなんたる言い草!?……まぁいい、それより夕香ちゃん。頼まれたものを取ってきたぞ」

 

 だって今までワンダバがろくに指示出してくれたことなかったし……やったことといえばベンチで騒いでるだけ。タイムマシンの運転とかしてくれるからそっち方面では助かってるんだけど。そんなことより気になるのは……

 

「夕香ちゃん、ワンダバになにか頼んでたの?」

「お兄ちゃんのオーラを取ってきてもらったんです。多分私にとってこれが最後のサッカーだから……お兄ちゃんと一緒に戦いたくて」

「頃合いを見て私が指示を出す。それがミキシマックスの合図だ」

 

 夕香ちゃんと豪炎寺君のミキシマックスか……きっと豪炎寺君もサッカーを守るために戦えて喜んでると思う。

 ハーフタイム終了の笛がなった。

 それぞれコートを入れ替えてポジションについたところで試合が再開される。

 

 序盤の展開は前半とほとんど変わらなかった。プロトコル・オメガはディフェンスに全ての力を注いでいる。いくらアフロディがいてもそれを破るのは簡単ではない。私達が攻めあぐねている間に刻一刻と時間は過ぎていく。

 

「仕上げに入る」

「……ッッ!!ストロウ!スマイル!」

「必殺タクティクス!AX3!」

 

 後半も残り時間僅かというところでアルファが突っ込んできた。それに対処するようにフェイがデュプリに指示を出すがプロトコル・オメガのパス回しによって動きを止められてしまった。あれは……必殺タクティクス!?初めて見た……ってそんなことはどうでもよくて……

 

「アフロくん!」

「ああ、わかってる!」

 

 アルファのシュートはマッチョスでは止められない。あれを撃たれたら追加点を許してしまうだろう。だからこそ私達はアマカワーズゴールに向かって走り出した。

 

「天空の支配者鳳凰!!アームド!!」

 

「エクセレントブレスト!!」

 

 アームドしたアルファによって放たれたシュートはマッチョスの必死のセーブをいとも簡単に打ち破りゴールを目指す。しかし必殺技で少なからず威力は衰えているはずだ。そこに私とアフロくんが同時に蹴りを加えれば……!

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 私達の足がシュートと激突した。必死に踏ん張るも、シュートの勢いは思っていたよりも残っていて私達は徐々に押し込まれてしまっている。

 

「くっ………!負けて……たまるかぁぁぁぁ!!」

 

 アフロくんの咆哮と共に彼の蹴る力が強くなった。これなら……いける!その声に答えるように私も更に力を振り絞る。

 ようやく弾かれたボールは真上に飛ぶと私の足元に収まった。

 なんとかセーブできた……でももう時間がない。

 

「羽花、こっちだ!」

「フェイ!任せたよ!」

 

 ゴール前から前線のフェイにロングパス。私とアフロくんはここからじゃ攻撃参加できない。フェイと夕香ちゃんに頑張ってもらうしかない。

 

「ミキシトランス…ティラノ!!」

 

 パワフルなドリブルでぐんぐん敵ゴールへ迫っていく。その勢いはまさに熾烈を極めている。

 

「今だ夕香ちゃん!ミキシマックスだ!」

 

 ワンダバが叫んだと思うとフィールドの外に豪炎寺君が現れる。いや、正確に言えば豪炎寺君のオーラだ。そしてワンダバが銃口を夕香ちゃんに向けて発射しオーラを送り込む。

 

「ぐ………はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 夕香ちゃんと豪炎寺君の咆哮が重なる。

 彼女を覆っていたオーラが晴れると、そこには髪が豪炎寺君のように白く逆立つように変化した夕香ちゃんの姿があった。

 

「ミキシマックス……コンプリート!」

 

 夕香ちゃんは自分の手を見つめぎゅっと握りしめると微笑を浮かべた。

 

「行くよ……お兄ちゃん!!」

 

 そう言って彼女は走り出す。その背中にはまるで豪炎寺君のような頼もしさがあった。思わず笑みが零れる。あなたの妹は強いね………豪炎寺君!

 

「夕香ちゃん!」

 

 フェイから夕香ちゃんにボールが渡る。そのまま駆け上がっていくが敵ディフェンスが立ち塞がる。

 

「羽花さん!」

 

 夕香ちゃんがヒールのバックパスで私にボールを預ける。全力ダッシュでなんとか追いついたけどさっきのブロックと合わせてもう体力が残ってない。でもこのボールだけは渡すわけにはいかない……!

 

「デコイリリース!!夕香ちゃん、ラストチャンスだよ!」

 

 指を鳴らし分身を作り出し、相手を抜き去る。そして夕香ちゃんにパス。

 

「決めるよ……お兄ちゃん!」

 

 空中で構えた夕香ちゃんの背中から炎が湧き出てきた。そしてそれはみるみる人の形に……いやあれは………魔神!?

 守君や大介さんのとはまた違った炎の魔神が出現し、夕香ちゃんを拳で殴るようにして空中に放り投げる。その勢いを利用して回転した夕香ちゃんが炎を纏ってボールを蹴り出すと、魔神もそれを手助けするようにボールを押し出した。

 

「爆熱……ストォォォムッッッ!!」

 

 これだけ離れていても火傷してしまいそうな程の熱量を伴ったシュートが放たれた。まさに爆熱と言うべきシュートだ。

 

「キーパーコマンド03!!」

 

 圧倒的な熱量の前に衝撃波など意味は無い。ザノウは燃え盛るボールごとゴールに押し込まれた。ゴール前は煙幕に包まれ、プスプスと焦げ臭い匂いが漂っている。

 

『ゴォォォル!!豪炎寺夕香の爆熱ストームが決まったぁぁ!ここで試合終了!アマカワーズの勝利だぁぁ!』

 

「敗北……信じ難い結果だ。……………イエス、撤退する」

 

 撤退命令が出たのか彼らはスフィアデバイスで帰還しようとする。消える瞬間、アルファの口元が歪んだ気がした。だけどそれがなんだったのから私には知る術はない。

 次の瞬間には彼らの姿はどこにもなかったから。

 

「ミッションコンプリートだね」

「これで歴史は元に戻ったの?」

「うん、本当の雷門サッカー部を取り戻したはずさ」

「本当の雷門サッカー部……か」

 

 それはつまりお別れを意味している。私達は夕香ちゃんと向き合った。いつの間に夕方になっていたのか彼女の顔は夕日で赤く染まっていた。

 

「私の役目はここまでですね……羽花さん、お兄ちゃんをこれからもお願いします」

「夕香ちゃん………!?身体が……!」

 

 突然、彼女の身体から眩い光が放たれた。キラキラと光るそれは夕香ちゃんの全身を覆うと、彼女の身体が足の方から徐々に光の粒子のようなものになり消えていく。

 

「正しい時間の流れにインタラプトが修正された。彼女は存在した歴史と共に消滅するんだ」

「……時間みたいですね……。最後にお願いがあります。もしそっちの私が元気になったら………サッカーを教えてあげてください」

「………うん、必ず」

 

 彼女はそれを聞くと満足そうな顔をして―――そして消えてしまった………。

 私達はその光が消えていくのを最後まで見届けた。

 

「……ありがとう、夕香ちゃん………」

「さぁ、戻ろうか。君の知るサッカー部が待ってるはずだよ」

「…………そうだね」

「大丈夫かい?」

「……うん、ありがとう」

 

 タイムマシンに乗り込み、私達は元の時代に戻った。こうして、時を越える私達の戦いは、一旦幕を閉じた。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「本当に行かなくていいの?アフロくん?」

「ああ、僕がしたことは許されることではないからね」

 

 現代に戻ってきた私は雷門サッカー部が帰ってきているか確認するために雷門中に向かおうとしていた。アフロくんも誘ったんだけどまだ罪悪感が残っているのか断られてしまった。守君達はそんなこと気にしないと思うけどな。

 

「僕達はここで待ってるよ。もしまだ正しい歴史に戻ってなかったらすぐに飛べるようにね」

 

 フェイとワンダバも残ることになった。まぁワンダバは当然だけど。こんなのが突然現れたらみんなびっくりしちゃうから。

 

「もしまだ戻ってなかったらどうしよう……」

 

 雷門に向かう道中、そんなマイナスな思考が頭をよぎった。プロトコル・オメガは確かに倒した。だけど万が一のことがあったら………

 頬を叩いてそれを否定する。弱気になってちゃダメだ……夕香ちゃんのためにも……

 そんなことを考えているといつの間に雷門に着いていた。

 

 ―――だけど私の視界に入ってきたのは想像を絶するような予想だにしない風景だった。

 

「………………は?」

 

 ―――そこには跡形もなく破壊された雷門中の姿があった。

 

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