「あ、天川羽花です!よろしくお願いしまひゅ!」
…はい噛みました。転校初日で遅刻からの自己紹介失敗のコンボを決めてしまった…
これで自己紹介1勝2敗、先が思いやられますよまったく…
「ふふ、それでは天川さんはあそこの空いてる席に座ってください」
先生に指定された席に着席する。というか今笑ったよね?
「お、隣の席か!よろしくな!」
幸か不幸か俺は円堂と同じクラスになった。そして席も隣だ。運命的な何かを感じますねこれは。
ちなみに同じクラスには豪炎寺や木野もいる。少なくともボッチは回避できそうだ。
そしてホームルームが終わり、俺はそそくさと教室から退散しようとするが即座に他の生徒に囲まれてしまった。
こうなることをあらかじめ予想していたので避難しようとしたのだが、しょうがないので甘んじて受け入れよう…質問責めという名の拷問を。
「なぁ天川、入部届けまだ出してないよな?出しに行こうぜ!」
神様かあなたは!先程円堂と同じクラスになったのは幸か不幸かと言ったが訂正しよう。100%幸である。
さすがキャプテン、頼りになる!
と、心の中で勝手に一喜一憂しつつ円堂と共に入部届けを出しに行く。
職員室にいた顧問の冬海先生に入部届けを差し出すと少し気だるそうな顔をしたものの受け取ってもらえた。
この顧問はどうにもやる気が感じられない。どっかの誰かとは大違いだ。
まあ俺としてはそっちの方が助かる。これで顧問まで陽キャだったら部活内の空気に耐えられないだろう。
挨拶をし、職員室を出る。今から戻れば授業時間ギリギリなので捕まることはないだろう。
♦♦♦♦♦
・・・甘かった、天川だけに。
1限目が終わるや否や女子を中心に俺の席に集まってきた。それはもうたくさん。そして前の学校はどこなのか、好きなものはあるのか、男連中に至っては彼氏はいるのかとこれでもかと質問を浴びせてきた。 それも授業が終わる度に毎回だ。
途中円堂と木野がフォローに入ってくれなかったら完全にお陀仏だった…
そして今は昼休み、教室で俺、円堂、豪炎寺、木野で机をくっつけ弁当を食べている。俺のは当然、円堂と同じ温子さんお手製のだ。
「あー早く練習してー」
「まだ5、6限があるのにこの調子で大丈夫なんですか?」
「円堂君はいつもこんな感じだから…」
「次の授業は体育だ、少しは発散になるだろ」
円堂はずっとこんな調子なのだが日常茶飯事なのか2人は慣れている様子だった。ほんとにサッカーしか頭にないのか…
「そういえば円堂君と羽花ちゃんお弁当箱一緒だね」
「よく見たら中身も同じじゃないか?」
「ん?言ってなかったか?天川、昨日から俺ん家に住んでんだよ」
「「「え!?」」」
なんでサラッと暴露してんのこの人…俺まで一緒に驚いてしまった。
別に隠したかった訳ではないのでいいのだが。
「一緒に住んでるってこと?」
「おう、今日は天川が朝起こしてくれなかったら危なくってさ!」
「だから今朝2人揃って遅刻してきたのか…」
寄り道さえしなければ間に合っていたのだが黙っておこう。話がさらにややこしくなってしまう。
というか自分の寝坊話をよく自慢げに話せるよね…
その日の放課後、俺は初めての部活に参加していた。
と言っても練習ではなくミーティングだ。フットボールフロンティア地区予選準決勝の相手が決まったようなのだ。
「準決勝の相手は尾刈斗中に決まりました。なんでも対戦相手の秋葉名戸学園を7-0でくだしたみたいです」
「結構な点差だな。相手の秋葉名戸学園ってのはどんなチームなんだ?」
「フットボールフロンティア出場校のうち、最弱のチームと言われてるみたいです」
尾刈斗中…以前雷門が練習試合をしたチームだ。その時は雷門が勝利したのだが。
「ま、尾刈斗には勝ってるし大丈夫だろ」
「大量得点といっても相手は最弱のチームでやんスしね」
勝利したことのある相手だけに楽観的な声が上がるが油断はできない。
いくら最弱のチーム相手とはいえ7点もの差をつけるのは難しい。それだけ尾刈斗中がパワーアップしているということだ。それに…
「だけど、今回は豪炎寺がいないんだ」
そう、円堂が言ったように今回は豪炎寺が出られない。前回の試合で負った怪我がまだ治っていないからだ。
今の雷門の攻撃の要は間違いなく豪炎寺だ。その彼が不在となると点を取るのは難しいだろう。
「へ、だったら俺のドラゴンクラッシュで点を取るまでだ。いつまでも豪炎寺に頼ってばかりじゃいられないぜ!」
前回の試合では染岡のシュートは止められていたはず。そのリベンジも兼ねてだろう、やる気満々のようだ。
「染岡の言う通りだ!豪炎寺がいなくたって勝てるってことを証明してやろうぜ!」
「「「おう!!」」」
「よし、早速イナビカリ修練場で特訓だ!」
♦♦♦♦♦
あれからいったいどれ程の時間が経っただろう。
実際にはせいぜい2、3時間くらいだとは思うが、体感には無限とも思える時間が流れた。
自身から発せられる言葉にならない嗚咽はどこからともなく聞こえてくる皆の悲鳴によってかき消さる。
感覚はとうの昔に薄れていた。
何度も心が折れそうになったが足を止めることはしなかった。いや、正確にはできなかった。足を止めてしまったら死が訪れるとわかっていたからだ。
「ビィーーー」
終わりを告げるブザーが鳴り響き、皆がいっせいに足を止めその場で膝から崩れ落ちるように倒れる。
「はぁ、はぁ、おわった…」
地面に倒れ伏せ、肩で息をする。
ホントにシャレにならない。少しでも油断したら余裕で死ねる。
「大丈夫か?初めてでいきなり無茶しすぎたな」
「え、円堂くん…毎日こんな特訓してるんですか?」
「この前夏美がここを見つけてくれて、それから毎日やってるぜ」
さすがの円堂でもきついらしい、息が乱れている。それでも立って歩けるだけの力が残ってるのはさすがだ。
というかこれ毎日やってるのか…
「ほら、部室戻ろうぜ!後は俺たちだけだぞ」
周りを見渡すと皆はすでに部室に戻ったのか残っているのは俺と円堂だけだった。
立ち上がろうと体を起こそうとしたが足に力が入らずそのまま転んでしまう。
ヤバい、思った以上に疲弊しているようだ。
「なんだ立てないのか?しょうがないな、よっと」
「え!?ちょ、円堂くん!?」
いきなり体を抱えられ、そのままおんぶされた。
さすがにこれは恥ずかしい。中学生にもなっておんぶとは…
「立てないんだろ?嫌かもしれないけどちょっと我慢しくれよ」
「い、嫌とかじゃなくて恥ずかしくて…それに私重いですよ?」
「大丈夫だって、部室に着く前に降ろすからさ。ていうか全然重くないぞ?」
しょうがない、どうせ動けないのは事実なのだから潔くおぶられることにした。
外に出ると夕日で空は赤く染っていた。
彼が1歩踏み出す度に生じる揺れが、疲れた体には心地よくてついウトウトしてしまう。
次第に瞼が重くなり、俺はそのまま眠りに落ちてしまった。
♦♦♦♦♦
「…川、天川!」
その声にパチリと目が覚める。
体を起こすと円堂が立っていた。ん?寝ぼけて意識がはっきりしない。
「円堂くん?あれ…ここは?」
「お前の部屋だぞ?それより晩ごはんできたってさ。早く降りてこいよ!」
そう言って部屋を出ていった円堂をボーッと見送り、辺りを見渡すと確かに俺の部屋だった。
…そうか、円堂におぶられたまま寝ちゃってたのか。
家まで運んでもらうなんて申し訳ないことをしてしまった。
あれ?てことはつまり…
…やめておこう、家までずっとおぶられてたなんて想像しただけでだいぶ恥ずかしい。
羞恥心を押し殺し着替えを済ませてリビングに向かう。すでに晩ごはんの準備は整っており、後は食べるだけといった様子だ。
「あの、円堂くん。一応聞くんですけどもしかして私ずっとおんぶしてもらってました?」
「ああ、気持ちよさそうに寝てたから起こすのも悪いと思ってさ。天川の荷物は部屋に置いといたから」
やっぱりか…おそらくサッカー部の皆にも見られてるだろう。明日どんな顔して行けばいいのかな。
白米を口に頬張りながら思考を巡らす。いっそ何食わぬ顔で行った方がいいのだろうか?
「というか…」
そんなくだらないことを考えていると温子さんが口を開いた。
「あなた達まだ苗字で呼びあってるの?せっかく一緒に住んでるんだから名前で呼んだらいいのに」
「あ、確かにそうか…よし、これからは羽花って呼んでいいか?」
…何が起こった?呼び方ってこんな簡単に変えれるものなの?
「あ、うん。じゃあよろしくお願いします。ま、守くん」
何とか返答するがこれではまるで恋する乙女だ。いくら女子に転生したとはいえ、男として最低限のものは捨てたくない。
「よし、じゃあ食うぞ羽花!尾刈斗戦にむけて明日もイナビカリ修練場で特訓だからな!力をつけておけよ!」
そんな俺の葛藤を他所に円堂は目の前の食事を一気に胃袋に掻き込むのであった。
♦♦♦♦♦
尾刈斗中のとの試合当日、俺たちは試合会場の尾刈斗中学校の前に来ていた。
門から見える校内には何故か霧が立ち込めており、不気味な雰囲気を醸し出している。
「な、なんか気味が悪いっスね。ほんとにここで試合するんスか?」
「いかにも、て感じだね」
グラウンドの方に目をやるとすでに尾刈斗の選手達は準備を開始していた。
こちらも遅れないようにアップを開始する。
『フットボールフロンティア地区予選準決勝、雷門中対尾刈斗中!もうまもなく始まろうとしています!』
今回のフォーメーションはこのような形だ
FW 染岡、松野
MF 半田、少林寺、宍戸、風丸
DF 土門、壁山、影野、栗松
GK 円堂
控え 豪炎寺、眼鏡、羽花
普段DFの風丸が中盤まで上がり、松野が豪炎寺のポジションに入っている。
豪炎寺がいない分、速攻で攻めるために風丸を中盤まで上げる作戦だ。
ちなみに俺はベンチ、後半に流れを変えるための秘密兵器扱いなのだが自分にそこまでの力があるとは思えない。
キックオフは相手からだ。
ひとまずボールを奪って流れを作りたいところだが。
「ピィーーーーー」
審判の笛が鳴り響き、試合が始まった。尾刈斗がキャプテン幽谷を中心に速攻で上がってくる。
「君たち雷門に敗北してから、俺たちはゴーストロックに頼らない戦術を考えた!そして、これがその答えだ!」
DFを残した全員で攻めてくる尾刈斗。前回とは打って変わって攻撃的なスタイルに対応出来ず、裏をつかれ抜かれてしまった。
『尾刈斗いきなりの速攻!雷門対応できない!幽谷、キーパーの円堂と1対1だ!』
「来い!ゴールは割らせない!」
「くらえ、これが俺のマボロシショットだ!!」
ボールに霊魂のようなものが集まり、青白く光りだす。幽谷がそれを蹴りこみ、シュートとなって円堂に襲いかかる。
「止める!熱血パンチ!!」
円堂が気合いを込めた拳でシュートを防ごうとするがボールは何故か円堂の拳に触れることなくそのまま雷門ゴールに突き刺さった。
というわけで準決勝の相手は尾刈斗になりました。
秋葉名戸がゴーストロックを破れるのかとずっと思ってたので変えてみました!ちなみに幽谷の使ったマボロシショットはGOでまほろが使うチートシュートです。
ゴーストロックのタネを知ってる雷門がそのままの尾刈斗に苦戦するわけないので。他にも本来使わない技を使う選手がいるかもです。まぁそれは次回に期待ということで。それでは閲覧ありがとうございました!
化身は出した方がいい?
-
出した方がいい
-
出さない方がいい