「ハァハァ……同点…」
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、身体の力が抜けてしまって私はその場に倒れ込んだ。他のみんなも同じように肩で息をしながら地面に膝を着いたり寝転んだりしている。
「……羽花」
「シュウ君…」
シュウ君がフラフラとおぼつかない足取りで私の前にやってきた。
「ごめんね……僕、サッカーは人の価値を測るものだと決めつけてた。でも君達のおかげで気づけたよ。サッカーは楽しいものだって!」
申し訳なさそうな顔をしていたシュウ君の顔が笑顔に変わった。それを見て私も思わず笑みを零した。
「こちらこそ楽しかったよ!それにシュウ君のおかげで強くなれた!ありがとう!」
私が手を差し出すとシュウ君はそれを固く握りしめた。
「ふふ、やっぱり君は面白いね」
「前もそれ言ってたけど私のどこが面白いのさ」
「わからない、わからないけど面白い」
「もう……わけわかんないよ」
シュウ君が愉快そうに笑う。
まったく、私のどこがそんなに面白いんだか。
そんな他愛もない会話をしていると、瞳子監督がパンパンと手を叩いた。
「次の目的地が決まったわ。北海道の白恋中学よ」
「北海道?」
「そこのエースストライカーである吹雪士郎をチームに引き入れろと、響木さんから連絡があったわ。準備が整い次第、すぐに出発します」
「もう行っちゃうんだね……」
隣のシュウ君からそんな寂しそうな声が聞こえてきた。確かに名残惜しいけど、私達はエイリア学園やエルドラドを倒すためにこの島に来たんだ。立ち止まる訳にはいかない。
「また特訓がしたくなったらこの島においでよ、君達なら大歓迎だからさ」
「うん!また必ず来るね」
「お前とのサッカー、忘れないぜ!」
みんなそれぞれシュウ君へとお別れの言葉を告げて出発の準備を始めた。すぐに準備は完了して、後はTMキャラバンに乗り込むだけになった。
「これ、出会いの証に受け取って欲しいんだ」
「ミサンガ?」
シュウ君が差し出したのは少し古くなったミサンガ、手に取ってみるとなんだか不思議な温かさを感じた。
「それと、これは選別だ」
シュウ君はそう言うと手をワンダバの方へとかざした。するとシュウ君の手から紫色のオーラが流れ出てワンダバが背負っていたミキシマックスガンに吸い込まれていった。
「うぉぉ!?何をしたんだ!?」
「そのうちわかるさ。……羽花、君達なら必ずサッカーを守れる。僕は信じてるよ」
「……!?うん!任せて、絶対サッカーを守ってみせる!」
ガッツポーズを作って宣言する。そしてシュウ君の顔を一瞬見据えて私はTMキャラバンに乗り込んだ。この島での特訓と楽しいサッカーの記憶を胸にしまって。
「全員乗ったな?出発するぞ」
「あれ?古株さんが運転席にいる」
いつもならワンダバがいるはずの席に古株さんが座っていた。不思議に思ってつい口に出してしまった。
「ふっふっふ…何を隠そうこのワンダバ様が!彼に操縦方法を伝授したのだ!!」
「いやぁイナズマキャラバンがお役御免になってしまったからな。せめてこのTMキャラバンの運転くらいは覚えようと」
へぇ、私達が特訓してる間にそんなことしてたんだ。というか古株さんすごいな。逆にできないことを見つける方が大変そう。
「でもそうなるとワンダバはなにをするのさ?」
「あ、確かに。運転係取られたらワンダバニートになっちゃうね」
「誰がニートだ!!私には大監督としての役割があるのだ!今は監督の座を譲っているが、いざとなればこの私が瞳子監督の代わりに―――」
「必要ないわ」
「ダバァ!?」
あ、死んだ。あんまりショックだったのか魂抜けてセミの抜け殻みたいになってる。さすがに可哀想だからちょっとフォローしてあげようかな。
「でもほら…えっと……あ!ワンダバにはミキシマックスっていう大事な役割があるでしょ!」
「…おお!!そうか!!そうだとも!!諸君、この私のミキシマックスガンが必要になった時はいつでも頼るといい!!」
単純すぎるよこのクマ……。
まぁ立ち直ったならいいか。
宙に上がっていくキャラバンの窓から改めてゴッドエデンを見下ろした。半壊した森や崖は変わらないのに何故か今日はすごく美しく見える。
「え?」
その時、眼下の小さくなったグラウンド。
シュウ君がいた場所が突然光った気がした。目を擦ってもう一度確認すると光は見えなくなっていた。
……気のせいかな?
(ありがとう羽花、楽しかったよ)
その声は誰にも聞こえることなく、無人の島に消えていった。
♦♦♦♦♦
「研崎君、イプシロンの様子はどうですか?」
「支援者Xのもたらした技術によって、エイリア石による人間の身体能力強化技術は格段に進歩しました。以前の彼らとはまるで別物です」
「そうですか、それは素晴らしい」
紫色に光る石巨大な空間を中心に形成された円形の空間にて怪しげに語り合う二人の男がいた。一人はスーツ姿の秘書風の男、もう一人は和風な着物に身を包んだ男だ。
「イプシロンが強くなればなるほど、彼らを相手に訓練するマスターランクチームの実力も上がっていく。まさに一石二鳥ですね」
「そしてその3人の中で最強の座を求め争う。ふふふ…結構なことです」
「さぁお前達、ここへ」
研崎が暗闇の空間に声をかける。するとそこから赤髪の少年と白髪の少年がそれぞれ姿を現した。
「エイリア学園『プロミネンス』キャプテン バーン、お呼びですか?父さん」
「同じく『ダイヤモンド』キャプテン ガゼル」
「…グランはどうした?」
その場にいるはずのもう一人がいないことに気付いた研崎が二人に問いかける。その質問にガゼルが若干バツの悪そうに答えた。
「それが……」
「…また勝手に出かけたのか」
「あんな奴いなくても俺が父さんの望みを叶えるよ」
「いいえ、グランが戻るのを待ちましょう。それまで下がっていなさい」
それを聞いたバーンとガゼルはしぶしぶと踵を返していく。そして誰にも聞かれないと判断できたところでバーンが声を荒らげた。
「クソ、なんで父さんはグランの奴ばかり贔屓するんだ!」
「このままでは『ジェネシス』の称号はグランの『ガイア』に渡ってしまうだろう」
「じゃあどうすんだよ!」
「…少し落ち着けバーン。今エイリア学園にとって脅威となり得る戦力は二つだ、わかるか?」
「ああ?…一つは雷門だろ、もう一つは……ジェミニをやったあのザナークとかいう奴か」
「その通りだ、そして彼らはイプシロンの手に余る存在かもしれない」
ここまで聞いたところでバーンはガゼルの言わんとしていることを理解した。
「つまり…そいつらをグランよりも早く仕留めれば」
「ああ、父さんも我々をお認めになってくださるかもしれない」
向き合ってニヤリと笑う二人。
しばらくの沈黙の後、バーンが口を開く。
「で、お前どっちに行くよ」
「そうだな……ジェミニを一人で倒した男にも興味はあるが……やはりセカンドステージチルドレンの候補者である天川羽花がいる雷門にするか」
「なんだよお前もか……まぁいい、なら俺はザナークとかいう奴をぶっ潰しに行くぜ。中々やりがいがありそうだしな」
そう言うとバーンは暗闇の中へと消えていった。その様子を見て短気な奴だ、と零したガゼルもまた目的達成のために動き出した。
今回短いです。まぁ最近長いのが続いてるから帳尻合わせってことで
化身は出した方がいい?
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出した方がいい
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出さない方がいい