イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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雪原のプリンス

 

「うわ、一面真っ白……」

 

 ワープホールを抜けた先に待っていたのはどこまでも白が続く雪原、そこにポツンと小さな学校が建っていた。

 あれが白恋中かな?見たところは普通の学校みたいだけど。

 サッカーグラウンドもあるし間違いなさそうだ。

 …どうでもいいけど雪かきとか大変なんだろうな。

 

 まずはサッカー部を探そうと校門付近にいた生徒に聞いてみたら部室にいるはずとのことだったので私達はそこを目指して歩き出した。

 

「わぁ〜凄い!本物の雷門中だ!」

「テレビで見たのと同じ!サインちょうだい!」

 

 意外とすぐに見つかった部室を訪ねる。

 彼らは最初こそ警戒していたけど私達が雷門中だと気づくとテンションを上げて友好的に接してくれた。

 

「羽花様に会えるなんて感動…!あの、サイン貰えませんか!」

「う、羽花様……?」

「フィールドを縦横無尽に飛び回る、まさにフィールドの女王!かっこいい〜〜!」

 

 白い帽子を被ったまとろちゃんって言ったかな?がキラキラした眼差しを私に向けてくる。

 え?私そんな風には呼ばれてるの?かなり恥ずかしいんだけど。ていうか女王ってなに?

 

「良かったですね羽花様、こんなに喜んでくれるファンがいて……ププ」

「世間の評判と実際の人物像は必ずしも一致しないといういい見本ね」

 

 春奈ちゃんも夏美ちゃんも好き放題言ってくれちゃって……。こんな時は秋ちゃんに頼るのが一番だね。

 

「ちょっと秋ちゃん二人に何とか言って……秋ちゃん?」

 

 なんか壁を見つめながら小刻みに震えてるんだけど……。あ!今ちょっと笑った!

 

「もう!三人揃って面白がらないでよね!」

「だって……ねぇ?」

「とりあえずサイン書いてあげたらどう?」

「むぅ〜〜」

 

 別に断る理由もないからサインくらい書くけどさ……。

 でも初めて書くから色紙に私の名前を書いただけのサインとも呼べるか怪しいものになってしまった。

 それをまとろちゃんに渡すと彼女は大はしゃぎで私に感謝の気持ちを伝えてきた。

 いいのかなそれで……。

 

「おいおい、俺達の目的を忘れたのか?」

 

 そんな私を見かねてか風丸君が助け舟を出してくれた。彼は周りがよく見えていてこういう気配りもしてくれるので本当に助かる。

 

「吹雪士郎君はどこにいるのかしら?」

「ふ、吹雪君?……えっと」

「……?どうした?」

 

 和やかだった雰囲気が瞳子監督の口から吹雪士郎という言葉が出た瞬間、緊迫したものに変わってしまった。どうにもただ事ではなさそうだ。

 

「今は……特訓してると思う。いつもならそろそろ戻ってくると思うんだけど……」

 

 まとろちゃんがオドオドとそう言った直後、部屋の外からドサッと何かが倒れたような音が聞こえた。

 私達がその音に気づいた時には、白恋中サッカー部の面々は既に部屋から飛び出ていた。

 

「吹雪君!しっかりして!」

 

 その声に私達も外に出てみると、銀髪の小柄な男の子が息切らして蹲っていた。

 この人が吹雪士郎?とても凄いストライカーには見えないけど。

 

「おいお前、大丈夫か?」

「ごめんね、少し張り切って特訓しすぎちゃって。それより君達は?」

「あ、ああ。俺達は雷門中サッカー部、俺はキャプテンの円堂守だ」

 

 フラフラと壁にもたれかかりながら立ち上がる吹雪君。

 私はここに来る前にTMキャラバンで春奈ちゃんが調べてくれた情報を思い出していた。

 

『熊殺し』 『熊よりでかい』 『ブリザードの吹雪』

 

 そんな噂が流れていたけど、今目の前にいる彼はとてもそんな人だとは思えない。熊より大きくないのは一目瞭然として熊殺しなんて大層なこともできるようには見えないし。

 

「お前が熊殺しか!?」

 

 私と同じことを思ったようで染岡君が吹雪君に詰め寄った。それはいいんだけどもうちょっと優しくしてあげなよ…。吹雪君結構疲弊してるみたいだし。

 

「あはは…、噂を聞いて来た人達は僕を大男だと思っちゃうみたいなんだ。これが本当の吹雪士郎さ」

「へ、こんなになよなよした奴だとは思わなかったぜ」

「おい染岡……ごめんな、本当はいい奴なんだ」

 

 ぶっきらぼうな染岡君の態度に守君が謝罪する。吹雪君は少し戸惑った顔をしたけどすぐに微笑んだ。

 

「吹雪君、少し時間いいかしら?」

「……えぇっと」

「私は雷門中サッカー部の監督をしている吉良瞳子よ」

「雷門中サッカー部の……いいですよ、だけど少しだけ休ませて欲しいな」

 

 少しの休憩を挟んで、私達は外のグラウンドに移動した。吹雪君と監督、それに守君と春奈ちゃんはかまくらの中で話し合い。他のみんなは交流会ということで雪合戦で遊ぶことになった。

 チーム分けは私のチームに風丸君とフェイ、アフロくんに夏美ちゃん、相手の鬼道君チームに土門君や一之瀬君、塔子ちゃん。それにそれぞれ白恋のメンバーが半分ずつ加わった。

 

「絶対に勝ちなさい!これは理事長の言葉と思ってもらって構いません!」

「疾風スノーボール!!」

「ツインスノーボール!!」

 

 いつも冷静な鬼道君だけどやっぱり中学生らしいところもあるのでこういう遊びだと意外とはしゃぐ。風丸君とかもそうだね。夏美ちゃんは……うん、結構子供っぽいところあるからね。

 

「クソ、全然当たらないぞ!」

 

 なんて考えながら私は真っ白なスペースを飛び回って雪玉を避け続けた。縦横だけではなく空中も利用したこの回避についていける人はこの中にはいないだろうね。

 

「ちょこまかちょこまかと……」

「当てられるものなら当ててみて!」

 

 苦言を呈しながら雪玉を投げ続けてくる塔子ちゃんを挑発しながら私はそれをかわし続ける。気づくと相手チーム全員が私に向かって攻撃を仕掛けてきていた。

 それでも私に当てるにはまだ届かない。

 

「あはははは、そんなんじゃ日が暮れちゃうよ!……て、あれ?」

 

 着地する予定の地面を見るといつの間にかそこに雪だるまが置かれていた。空中で避けれるはずもなく私はそれに激突して派手に地面を転がった。

 これは……壁山君と目金君が作ってた雪だるま?でもさっきまでこんなところには……。

 

「着地地点さえわかれば動きを止めるのは容易い事だ」

「やっぱり鬼道君の作戦……あ」

 

 気づくと相手チームのみんなが雪玉を大量に抱えて私を囲んでいた。その目はまさに狩りに赴く獣のようには鋭く光っている。

 ダラダラと嫌な汗が身体中から流れてきた。

 

「「「今だ、やれぇぇぇぇ!!!」」」

 

「ちょ、ちょっと待って!!タイム!!タイムだってばぁ!!」

 

 まるでショットガンのように飛んでくる雪玉を私は地面をゴロゴロ転がってなんとか避ける。そしてアフロくんのところまで転がったところで体勢を立て直す。

 

「ぐぬぬ…、こうなったら……アフロくん!やっちゃって!」

「ああ、ヘブンズタイム!!」

 

 アフロくんが指を鳴らして次の瞬間には相手チーム全員に雪玉が直撃して雪合戦は終了した。

 もちろん私達の勝利で。

 

「ふう、手強かったけどなんとか勝てたね」

「……これは少し卑怯なんじゃないかな」

「いいのいいの。ルール違反はしてないしね」

「いやどう考えてもズルだろ!」

 

 すかさずツッコんでくる土門君。

 まぁ確かに時間止めるのはやりすぎたかも、反省反省。

 そこでかまくらの中から守君達が出てきた。どうやら話し合いは終わったみたいだ。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「監督、作戦は?」

「好きにしていいわよ、吹雪君の実力を見るだけだから」

 

 ユニフォームに着替えて試合の準備を完了した私達は試合開始の合図を待っていた。

 吹雪君の実力を図るための白恋中との練習試合。思えばここのところエルドラドやエイリア学園との試合ばかりで、楽しめたのはSPフィクサーズとエンシャントダークの時だけだった。

 だからこそ、今回は思いっきり楽しみたい。

 

「………」

「…フェイ?どうしたの?」

 

 話に参加せずにある一点をじっと見ていたフェイが気になり声をかける。その視線の先には他の選手とは違い赤ベストを着込んだ少年がいた。

 

「あんな人さっきまでいたっけ?あの人が気になるの?」

「うん、よくわからないんだけど少し」

 

 確かに只者じゃなさそうだ。

 上手く言葉で形容しずらいんだけどなんというか雰囲気が違うというか……。

 

「天川、フェイ!始まるぞ、ポジションにつけ!」

 

 その言葉で周りがもうポジションについているのに気づいて慌てて移動する。その間、相手コートを見ると私は驚愕した。

 

「吹雪君が……ディフェンスにいる?」

「吹雪はフォワードじゃなかったのか?」

「フォワードだよ。でも今はまだディフェンスなんだ」

 

 ……リベロってことかな?ディフェンスのポジションにいながら積極的に前に出て攻撃参加もするプレイヤー。見たことはないけどプロの試合だと結構いるらしい。

 でもさっきの口ぶりからしてフォワードであることは間違いなさそうだしリベロではないか……。

 

『さぁ雷門中対白恋中の練習試合!今始まりました!』

 

 角馬君の実況と同時に笛が鳴り試合が始まった。

 ……彼平然と北海道まで来てるけど気にしたら負けかな?

 というか私達ゴッドエデンからここまでワープしてきたから追いつけるはずないと思うんだけど……。

 実は角馬君って未来人か宇宙人だったりしない?

 私がそんなことを考えているうちに染岡君が猪のように白恋陣内に突っ込んで行った。それを迎え撃つ白恋の選手だけど染岡君のパワーに適わず弾き飛ばされる。

 

「そういう強引なプレー、嫌いじゃないよ」

 

 一気にゴール前の吹雪君に迫る。

 それを彼は流れるような動きで防いだ。

 

「真アイスグランド!!」

 

 スケート選手のように凍った地面を滑った吹雪君が地面を踏みつけるとそこから氷塊が連鎖的に現れあっという間に染岡君を凍てつかせた。

 弾かれたボールを吹雪君がイナバウワーのような華麗な動きで奪い取る。

 その光景に私は魅入ってしまった。

 華麗な動きも凄いけどあのスピード……。

 彼が優秀な選手であることは間違いなさそうだ。

 

『さぁ吹雪、パスを出してそのボールを喜多海が受ける。だが風丸あっさり奪い返した』

 

 ボールを奪った風丸君が染岡君にパス。

 シュート体勢に入る染岡君、だけどその前に再び吹雪君が立ち塞がった。

 

「防げるもんなら防いでみやがれ!」

 

 染岡君がボールを蹴り上げると地面からワイバーンが出現。口にエネルギーを蓄える。

 

「ワイバーンクラッシュ!!」

 

 染岡君がシュートすると同時にワイバーンが光線を発射。ゴール、そしてそのまま吹雪君に襲いかかる。

 しかし彼はその場で回転しシュートに足をぶつけ、軽々とワイバーンクラッシュを止めてしまった。

 

『な、なんと!吹雪がワイバーンクラッシュをも止めてしまったぁぁ!』

 

「そうか!吹雪はフォワードじゃなくて凄いディフェンダーだったんだ!」

「クソ、くらいやがれ!!」

 

 シュートを止められた悔しさからか、染岡君がボールを持った吹雪君に突っ込んでいく。走り込んだ勢いのまま、スライディングタックルでボールを奪おうとする。

 しかし弾かれたのは染岡君の方だった。

 

「なに!?」

 

 吹雪君がマフラーに触ったかと思うとその瞬間、彼の周囲をブリザードとも言うべき突風が襲った。

 それに吹き飛ばされた染岡君は地面を2回3回と転がる。

 突風が晴れた後、視界に入ってきたのは髪が逆立ち目付きが鋭くなった吹雪君の姿だった。

 

「まったく…しょぼい奴らだぜ。いいか、よく聞け!!」

 

 

「俺がエースストライカー!!吹雪士郎だ!!」

 

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