私は2日間目を覚まさなかったらしい。目を開けたら不安そうにこちらを見つめてくる夏美ちゃんが視界に入ってきて、あまりに心配してくれるものだから逆にこっちが気を使ってしまった。
結局私がなんで倒れてしまったかはわからなかった。白恋中の監督さんが町からお医者さんを呼んでくれたらしいんだけど、身体に特に以上は見つからなかったそうだ。
夏美ちゃんから聞いた話によると、私が倒れている間にイプシロンから襲撃予告があってそれに向けて皆で吹雪君の元特訓を続けたそうだ。彼もチームに加入してくれて、迎え撃つ準備は万端だ。
──まぁ1つ文句があるとするならば。
「私も特訓したかったなぁ……」
そう、私も吹雪君の特訓とやらを体験してみたかった。フェイの話だとスノボを使うみたいなんだけど、スピードの感覚を掴めるのだとか。なんだか面白そうだしやってみたかったと零すと、隣を歩く秋ちゃんが薄く笑いを見せた。
「羽花ちゃん、なんだか円堂君みたい」
「そうかな? サッカープレイヤーなら誰でもそう思うよ、多分」
朝、目を覚ました私は心配する夏美ちゃんに大丈夫だからと無理やり納得させてテントに戻ってもらった。だって夜通し寝ずに私の看病してたんだよ? 凄くありがたいけど向こうが身体を壊してしまったら元も子もない。
ということで夏美ちゃんを帰して暇だったから散歩でもしようと白恋中の校舎の前を歩いていたらバッタリ秋ちゃんに会った訳だ。
「……! あれ、守君?」
「お、羽花! 目が覚めたのか! よかった!」
サッカーボールを抱えてどこかへ走っていく守君を見つけて声をかける。私を見るや否や、彼は嬉しそうに駆け寄ってきてくれた、なんだか嬉しいな。
「もう動いて平気なのか?」
「うん、この通りピンピンしてるよ」
「そうか、でもこんな朝早くにどうしたんだ?」
「円堂君こそ、早起きなんて珍しいね」
「いやぁ、イプシロンとの試合の事考えてたらいてもたってもいられなくてさ!」
秋ちゃんが聞くと守君はなんとも彼らしい理由を口にした。確かにイプシロン戦は今日だから少しでも特訓をしたい気持ちはわかる。
その時、木の影から視線を感じて私はそちらに振り向いた。
「……誰かいるの?」
「まいったな……バレるとは思ってなかったよ」
木の裏側から出てきたのは赤髪の少年。彼は困ったように頭を掻きながら私達に近づいてきた。
「ごめんね、別に盗み聞きをするつもりはなかったんだ。ただ、君達を一目見ておきたくてさ」
「君は?」
「基山ヒロト。君達、フットボールフロンティアで優勝した雷門中サッカー部だろ? 俺、ファンなんだよね」
「俺は円堂守、よろしくなヒロト」
ヒロトと名乗った少年と握手する守君。雷門中サッカー部のファンだと言うがどうもきな臭いというか怪しいというか……
「そっちは天川羽花さんだよね? 決勝戦での君のプレー、見事だったよ」
「あ、どうもありがとう」
基山君が私にも握手を求めてきたので、一応返しておく。別にちょっと怪しいだけで害がある訳でもない。
「そうだ、ヒロトも一緒にやろうぜ!」
「ふふ、ありがたいけど今日は遠慮させてもらうよ。それじゃあね」
そう言って彼は去ってしまった。結局私達を見ていた目的もわからずじまいで、私と秋ちゃんは首を捻るのだった。
♦♦♦♦♦
イプシロンが現れたのはお昼前のことだった。奴らがいつ来てもいいようにグラウンドで準備を整えていると突然赤黒い光がどこからともなく周囲を照らして、気づけばエイリア学園の選手達が私達を見下すように見つめていた。
「デザーム!!」
先頭に立つ長身の男の名前を守君が叫んだ。それを聞くとデザームはニヤリと笑い、こちらに向けて挑発的に話しかけてきた。
「雷門イレブンよ。ジェミニストームを倒したからといい気になるな。我々イプシロンは奴らとは全てにおいて格が違う」
「だからってお前達の破壊を見過ごす訳にはいかない! 勝負だ、イプシロン!」
「……いいだろう、我々エイリア学園の真の恐ろしさを教えてやる」
守君とデザーム、両チームのキャプテンが了承し試合の準備が始まった。瞳子監督がベンチでポジションを書いたボードを見せてくる。
「吹雪君、あなたはディフェンスに下がって」
「ええ!? でも、エターナルブリザードはどうするんスか?」
「敵の実力は未知数よ。前半は相手の動きを見極めることに専念しなさい。いいわね、吹雪君?」
「はい、任せてください」
壁山君の質問に答えると吹雪君に確認する。確かに相手の力も戦術もわからない以上前半は守りを固めた方がいいのかもしれない。それには吹雪君が適任だ。
FW 染岡、フェイ
MF 一之瀬、鬼道、羽花、アフロディ
DF 風丸、吹雪、壁山、土門
GK 円堂
『さぁ始まります! 雷門中VSエイリア学園ファーストランクチームイプシロンの1戦! 実況は私、角馬がお送りします!』
みんながポジションについたところでおなじみ角馬君が実況を始めた。もう彼が実況することにも慣れたよ、だからいちいち反応するのはよそう。
『イプシロンのキックオフで試合開始! 攻め上がるのは……えぇと……ゼル! そこからメトロン、ファドラへと華麗なパス回しだ!』
……ちょっと待った! なんでイプシロンの選手の名前を知ってるのさ!? どこから仕入れてきたのその情報!?
……いけない、今は試合に集中しないと。
ファドラ? と呼ばれた選手が凄いスピードで攻めてくる。確かにジェミニストーム以上だ、ファーストランクチームの名は伊達じゃないらしい。だけど──
「左だよ!」
「うん! 真アイスグランド!!」
吹雪君の華麗なプレーに氷漬けにされたファドラからこぼれたボールをアフロくんが取った。そして迫り来るディフェンスを見て指を鳴らす。
「ヘブンズタイム!!」
時を止めて相手を突破するアフロくんの神業。ジェミニストームには破られてしまったけど特訓のかいあってイプシロン相手でも問題なく通用するようだ。そしてボールはアフロくんから染岡君へ。
彼はそのままボールを蹴りあげると翼の生えた龍を呼び出し、落ちてきたボールをシュートする。
「ワイバーンクラッシュ!!」
龍の咆哮と共にシュートはデザームに直進していく。それに対し彼は、不敵な笑みを浮かべたままだった。
「ワームホール」
染岡君のシュートはデザームの前で消え去り、そして彼の目の前に落下してきた。シュートを打った染岡君はその光景に目を見開いて驚いている。
「俺のワイバーンクラッシュが!?」
「……なんだ、今の感覚は?」
……?
シュートを止められた染岡君が驚くのはわかるけど、何故かデザームも自分の手をまじまじと見つめて不思議そうにしている。なんだろう? 舐めてた相手のシュートが思ったより強くて驚いているのかな?
『ボールはデザームからケイソン、マキュアヘ!』
「反撃せよ! 戦術時間2.5秒!」
『ラジャー!』
デザームから指示を受けたらしいイプシロンが巧みな連携で攻めてくる。なるほど、確かに身体能力もジェミニストームを遥かに凌いでいるけどイプシロンの本領は計算された連携プレー。そしてその中核を担っているのがあのデザームってことだね。
「メテオシャワー!!」
「ぐぁぁ……!」
マキュアが降らせた隕石が一之瀬君を吹き飛ばした。そしてボールはフォワードのゼルへ渡った。
「ガニメデプロトン!! はぁ!!」
一見ハンドに見えるけどボールには触れてないからセーフなのかな? ともかくゼルの手から放たれたシュートがビーム状になって雷門のゴールに迫る。それに対して守君は正義の鉄拳の構えを見せる。
「正義の鉄拳!!」
守君の拳は問題なくゼルのシュートを弾き返した。まさか止められると思っていなかったのかゼルは冷や汗をかいている。
私は正義の鉄拳によって空中に放り出されたボールをジャンプして確保し、地上の様子に目を配る。
「フェイ!」
地上を走るフェイにパスを出す。空中を起点にしたパスにさすがのイプシロンも反応出来ない。ボールを受け取ったフェイはそのままシュート体勢に入る。
「バウンサーラビット!!」
「ワームホール!!」
兎のごとく地面を跳ねるシュートがデザームを襲うが、これも彼の生み出したワープホールに防がれてしまった。さすがにファーストランクを名乗るチームのキーパーなだけあって実力は相当なものだ。豪炎寺君がいない今、あれを破るのは簡単じゃない。可能性があるのは私のムーンフォースラビットかフェイの古代の牙、もしくは──
「俺にボールを寄越せ!」
「……吹雪君!?」
ディフェンスにいたはずの吹雪君が前線に上がってきていた。白恋との試合の時のように雰囲気が変わっている。瞳子監督は吹雪君はディフェンスに専念するように指示していたはずだけど……この際しょうがないね。
「ヴァーミリオンドロップ!!」
「なに!?」
「吹雪君!」
デザームからボールを受け取っていたメトロンからボールを奪い、前線に駆け上がる吹雪君にパスを出す。彼はボールを受け取ると目にも止まらぬ速さでゴール前まで迫っていった。
「吹き荒れろ! エターナル……!! ブリザード!!」
荒れ狂う豪雪の弾丸が放たれた。それを見たデザームは一瞬目を見開き、そして防御の姿勢に入った。
「ワームホール!!」
三度ゴール前にワープホールが現れた。だけど今回はシュートは吸い込まれるなく拮抗して、手をかざし気を送っているデザームはジリジリと後ろに押し込まれている。
「いけぇぇぇ!!」
吹雪君の掛け声でシュートの勢いが増し、ついには投網を破るようにワープホールを突き破りゴールネットに突き刺さった。
『ゴォォォル!! 吹雪のエターナルブリザードがデザームのワームホールを打ち破った! 雷門先制です!』
「やったぜ吹雪!」
ゴールを決めた吹雪君の周りに皆が集まる。瞳子監督を見るとやれやれと言った様子で澄ましているけど、まあ点を決めたのだから大丈夫だろう。
「フハハハハハハ!!」
「!!? なんだ!?」
「デザーム様……?」
皆が得点を決めたことに盛り上がっている中、突如デザームが笑い声を上げた。点を決められたというのに彼は嬉しそうに笑っている。その様子に私達はもちろん、イプシロンの面々も困惑しているようだ。
「いいぞ……! この私のワームホールを破るとは……! 面白い!」
彼はなおも笑い、そして吹雪君を指さした。
「次は止めてみせる! 更に強力なシュートを叩き込んでみろ!」
「言ってくれるじゃねェか……!」
そう宣言してデザームはポジションへと戻っていった。あの感じ、まだなにかありそうだね。先制したからといって油断は出来そうにない。
イプシロンのキックオフで試合再開。マキュアがボールを持って攻め上がるけど、すぐに吹雪君がカットした。
「どけ!」
「……!? マキュアあいつ嫌い!」
吹雪君は一気に駆け上がり、ミッドフィールダーを抜き去ったところでディフェンス三人に囲まれた。あれじゃさすがに前へ進めない。私は吹雪君のフォローをするために動く。
「撃たせろ!」
「!!?」
だけどデザームの声でディフェンスは吹雪君を止めるのをやめ、自ら進路を開けた。その隙を見逃すはずもなく、吹雪君は一気にゴール前へ。
「吹き飛べ! エターナル……!! ブリザード!!」
二度目のエターナルブリザード。しかも威力はさっきより上がっている。これなら二点目も間違いない、誰もがそう確信した。だけどデザームはそのシュートを見てなお笑い、腕を上空に突き出した。
「ドリルスマッシャー!!」
「!!?」
デザームが出したのはワープホールではなく、巨大なドリル。それを迫り来るエターナルブリザードにぶつけると、けたたましい音と共に衝撃がこちらまで飛んできた。しばらくぶつかり合っていたシュートとドリル、やがてシュートの方が勢いを落とし、弾かれてしまった。
「なに!?」
エターナルブリザードが止められた!? シュートを撃った吹雪君だけでなく、誰もがその光景に目を見開いた。あのシュートを止めた……それにあの技、まだあんな奥の手を隠していたなんて……
「この私にドリルスマッシャーまで使わせるとはな……お前達は最高だ! だが!!」
デザームがボールを前線に蹴り出した。それはシュートと言われても遜色ない威力でぐんぐんゴール前へと迫っていく。
「しまった!? 皆戻れ!!」
鬼道くんの号令で皆が戻ろうとするけど、エターナルブリザードが止められた衝撃で一歩遅れてしまった。これじゃ間に合わない……!
『ガイアブレイク!!』
ゼル、メトロン、マキュアの三人が岩でボールをコーティングしそれを同時にシュート。強烈なエネルギーを纏ったシュートは誰にも邪魔されることなく守君へ迫る。
「正義の……!!」
「ダメだ円堂! 間に合わん!」
「ッッ……! 爆裂パンチ!!」
正義鉄拳を繰り出そうとする守君。しかしシュートの方の速度が上、間に合わないと見るや爆裂パンチに切り替えるけどシュートの威力を殺すことは出来ずにゴールに押し込まれた。
『き、決まってしまったァァ! イプシロンの強力なシュートが雷門ゴールに突き刺さる!』
「そんな……」
エターナルブリザードが止められ同点に追いつかれた。その事実に私達はただそう呟くだけだった。
一つ変更しようか迷っていることがありまして、やはり化身を登場させようか迷ってます。エイリア学園との戦いはいいですがエルドラドやセカンドステージチルドレン達は化身やアームドがあった方が盛り上がるかと思いまして。そこでアンケートを取りたいと思います。皆さんのご意見をお聞かせください。仮に化身を登場させるとなればこれまでの話だとアルファとシュウの描写を変更しようと思ってます。
化身は出した方がいい?
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出した方がいい
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出さない方がいい