イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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化身

 

「凄いじゃないか皆! イプシロン相手に負けてないぞ!」

 

 前半が終わってハーフタイム。守君が士気を上げるように声をかけるが皆の表情には雲がかかっていた。点差だけ見れば同点だけど、やっぱりエターナルブリザードが止められたことが頭に残っているのだろう。確かにデザームのドリルスマッシャーという技からは凄い力を感じた、あれを破るのは簡単じゃないと思う。

 

「円堂の言うことにも一理ある。俺達はイプシロンの動きに対応出来ている、後は攻撃だ」

 

 鬼道君も守君の言葉を肯定した。確かに不意打ち以外ではイプシロンの攻撃は防ぎきれている。キャプテンで司令塔のデザームがキーパーの位置にいることも要因の一つだろう。

 

「聞いて、後半の作戦を伝えるわ。吹雪君、ディフェンスはもういいわ。後半はフォワードに入って攻め上がりなさい。前半で皆イプシロンの攻撃に慣れてきたでしょう? 後半は積極的に攻めるのよ」

 

「……!! 吹雪をディフェンスに配置したのはイプシロンの攻撃に目を慣らすためだったのか……」

 

 瞳子監督の説明に鬼道君は納得した様子で頷いた。吹雪君はシュートも凄いけどディフェンスも相当出来る。だから前半ディフェンスに置いて皆がイプシロンの動きに慣れるまでに点を取られないようにしていたってことね。

 

 ホイッスルが鳴り、後半が始まった。

 始めから凄まじい攻防が繰り広げられ、互いに一歩も譲らない。そんな中、私にボールが回ってきた。

 

「ビビッドステップ!!」

 

「この俺をかわした!?」

 

 巨漢のディフェンスを必殺技で抜き去った。目の前にはゴールにそびえ立つデザームのみ。ボールを宙に上げ、重なった月をそのままオーバーヘッドで地面に叩きつける。

 

「ムーンフォースラビットG5!!」

 

 月は光り輝く流星群へと変化し、地面を何度も跳躍してやがて一つの強力なシュートとなった。

 

「ドリルスマッシャー!!」

 

 ドリルがそのシュートの行く手を阻む。数秒の拮抗、しかしやがてドリルがシュートの威力を押し殺し、ボールは弾かれてしまった。

 

「な!?」

 

「ハハハ! いいぞ、この感覚! 最高だ!」

 

 自慢じゃないけれど私のムーンフォースラビットは1度たりとも止められたことがなかった。それをデザームは止めてしまった。その事に私は動揺を隠せない。

 彼は叫ぶように笑うとボールを手に掲げた。彼だけではなく、いつの間にかイプシロンの選手達にも自然と笑みが移っていた。

 

 ボールはデザームからファドラ、そしてマキュアへとパスが出された。

 

「次は僕が行く!」

 

 だけどそれをアフロくんがカットした。そのままフェイとのワンツーでディフェンスをかわし、天高く飛び上がる。

 

「真ゴッドノウズ・インパクト!!」

 

「ドリルスマッシャー!!」

 

 強烈な雷を纏ったアフロくんのシュート。だけどこれもドリルスマッシャーを破るには至らず、ボールはあっけなくデザームの手元へと落ちていく。

 

「この程度では物足りないぞ! もっと激しく、もっと強く叩き込んでこい!」

 

 一度地面に落としたボールをデザームが弧を描くように蹴り出した。それは前線のフォワードまで一気に到達し、ボールを受け取った三人は岩石を発生させ纏わせる。

 

『ガイアブレイク!!』

 

 岩を砕くようにシュートを放ち、エネルギーを帯びたシュートがゴールに迫る。

 

「正義の鉄拳!!」

 

 前半はあのシュートに守君は失点を許してしまった。だけどそれは正義の鉄拳の発動が間に合わなかったからだ。発動さえ出来れば、正義の鉄拳が負けることはない。

 

「おれにボールを寄越せ!」

 

「おう!」

 

 前線に飛び出た吹雪君に守君からのパスが通った。立ちはだかるディフェンスをそのスピードで抜き去り、デザームと1対1の状況を作り出す。

 

「さあ来い!」

 

「今度こそ吹き飛ばしてやる!」

 

 再び吹雪が舞い起こった。吹雪を利用して回転力を加えたシュートを、吹雪君がゴールに叩き込む。

 

「エターナルブリザード!!」

 

「ドリルスマッシャー!!」

 

 だけどこれもデザームには通用せず、弾かれたボールは宙を舞った。今度はイプシロンのカウンターだ。ファドラがボールを持って攻め上がってくる。

 

「ハァァァ! フレイムダンス!!」

 

 だけどこれは一之瀬君の必殺技によって阻まれる。ボールは一之瀬君から風丸君へ渡りる。

 

「疾風ダッシュ!!」

 

 風のごとし速さでディフェンスを抜き去り、風丸君はフェイにパスを出した。ボールを受け取ったフェイは身体に力を込めると、全身にオーラを纏った。

 

「ミキシトランス……ティラノ!!」

 

 古代の恐竜の力を加えたフェイは強引なドリブルで最終ラインを突破、そのままシュート体勢に入った。

 

「古代の牙!!」

 

 ティラノサウルスの咆哮と同時に強烈なシュートが放たれた。このシュートは私達が撃てるシュート技の中で最強と言っても過言ではない。これならもしかしてデザームのディフェンスも……

 

「ドリルスマッシャーV2!!」

 

「進化した!!?」

 

 だけど私達の期待は打ち砕かれ、進化したデザームの技によってフェイのシュートは弾かれてしまった。

 

「フハハハハ! いいぞいいぞ! この血が滾るような感覚! ギリギリの戦いでこそ、私の魂は熱く燃えたぎるのだ!」

 

「なんて奴……!?」

 

 まさかミキシマックスのシュートまでもが止められてしまうとは。本格的にやばくなってきた。あれ以上に強力なシュートを撃てる人は今の雷門にいないし、かといって新しい必殺技を試している時間もない。

 

 そこからは一進一退の攻防が続いた。総合的な実力では雷門はイプシロンを上回ってはいたけど、デザームの鉄壁の守りを打ち崩すことが出来ずに試合は膠着状態にもつれこんだ。

 

「ガニメデプロトン……ハァァァ!!」

 

「正義の鉄拳!!」

 

 イプシロンの強烈なシュートを守君はことごとく跳ね返す。

 

「皇帝ペンギン……!!」

 

『2号!!』

 

「ドリルスマッシャーV2!!」

 

 だけどこちらのシュートもデザームには通用しない。両チームのキーパーの守りをオフェンス陣は崩せない。

 

「どうする? もう残り時間は少ないよ」

 

「わかっている……だがあのデザームから点を取るのは至難の業だ……!」

 

 フェイの言葉に鬼道君ですらお手上げといった様子だった。それもそうだ、今問題なのは単純なシュート力不足。戦術面でどう頑張ったところで変わらないのだから。

 

「……!! あれなら……!」

 

 そこで私は一つのアイデアを思いついた。出来るかどうかはわからないし、失敗するの可能性の方が高いだろう。だけど、やるしかない。

 

「ねェフェイ! 私にも化身って出せるかな……!?」

 

「……化身!?」

 

 アルファやシュウ君が使っていた力、化身。あれならデザームからもゴールを奪えるかもしれない。

 

「……出来ないことはないかもしれないけど……可能性は低いと思う。化身は元々君達の時代よりも未来の技術だ。それを使いこなすには相当な訓練が必要になる。付け焼き刃で出来る程簡単な力じゃないんだよ」

 

「……そう上手くはいかないってことだね」

 

 フェイの返答に私は落胆する。だけど悩んでいる時間はない。どちらにしても今のままじゃ点は取れない。だったらやるだけやってみるだけだ。

 

『さぁファドラのスローインで試合再開! おっと! 土門いきなりのパスカットだ!』

 

 土門君がスローインをカットしてボールは鬼道君へ。彼はボールを地面に打ち付け、いくつもの分身を作り出す。

 

「イリュージョンボール改!!」

 

 複数のボールで敵を惑わせ、抜き去った。そしてボールは私に回ってくる。

 

「やってみせる! サッカーを守るためにも! ハァァァァァ!!」

 

「……!? あれは……!?」

 

 その時、身体中から力が湧き上がってくるのを感じた。全身にエネルギーを巡らせ続けているため少しでも気を抜けば倒れてしまいそうだ。だけど諦めない、その一心で湧き上がる力を一気に解放する。

 

「宵月の巫女フィリン!!」

 

 限界を超えた力を無理やり引き出した反動か、視界から色が奪われていく。だけど今はそんなこと気にしてる場合じゃない。感覚を研ぎ澄ませ! 目の前のボールに全ての神経を集中しろ! 

 

「だァァァァァァ!!」

 

 渾身の力を込めてボールを蹴り込む。だけど私はその瞬間、視界がぐにゃりと曲がる感覚を覚えて地面に膝をついた。失敗だ、化身を発動することは出来てもそれを維持する実力がまだ私にはなかった。

 それでもシュートはかなりの威力でゴールに突き進んでいく。そこらのキーパーなら容易に吹き飛ばすであろうそのシュートを見て、デザームは笑った。

 

「フハハハハ! なんだそれは!? 面白い、受けて立とう! ドリルスマッシャーV2!!」

 

 私のシュートとデザームのドリルが衝突する。私の放ったシュートはかなりの威力だ。だけどボールに全力を込めることが出来ず、結局ムーンフォースラビットとさほど変わらない程度の力となってしまった。それではデザームを突破することなど出来ない。

 ボールはドリルに弾かれて、デザームの手の上に収まった。

 

「大丈夫、羽花!?」

 

「平気、だけどまだ私には早かったみたい」

 

「化身を出せただけでもすごいよ! 後はその力をコントロール出来るようにするだけさ!」

 

 フェイはそう言って励ましてくれるけど化身も通用しないんじゃもう打つ手が……。私が考えている間にデザームのパントキックでボールは前線のゼルへ。そしてゼルからメトロンに渡った。

 

「行かせるかよ! ボルケイノカット!!」

 

 土門君が足を振るうと文字通り地面から火が吹きメトロンを弾いた。ボールはそのままラインを割って外へ。イプシロンのスローインから試合再開だ。

 

「うぉぉぉぉ! これは!!?」

 

 その時だ、ベンチからワンダバの叫び声が響いてきた。彼は何やらミキシマックス・ガンを見て興奮している。身体がピンクに染まるという謎の機能が発動していることからしても明らかだ。

 

「そうかあの時! よし、羽花! ミキシマックスだ!」

 

「え!? 私!? ていうか誰と!?」

 

「迷っている時間はない! 行くぞ!」

 

 ワンダバが誰もいないところに向かって引き金を引くと、そこに突如として人影が現れた。あれは……シュウ君!? どうしてシュウ君が? そんな疑問を抱く暇もなく、ワンダバは私に向かってもう一つの引き金を引いてきた。

 

「ぐ……はぁぁぁぁ……!!!」

 

「ミキシマックスコンプリート!!」

 

 ものすごい力が流れてくるのを感じて、私は思わず叫んだ。そしてミキシマックスで起こった煙が晴れると、視界の先に驚愕するみんなの姿が入ってきた。

 

「すごい……力がみなぎってくる」

 

「なんだ……何が起きた!?」

 

 私は姿が変わっているはずだけど、鏡なんてないから確認のしようがない。ただ一つだけ言えるのは、私はシュウ君の力を得てとんでもなくパワーアップしているということだ。

 

「シュウ君……力を借りるよ!」

 

 イプシロンのスローインで試合が再開された。メトロンが投げたボールがマキュアに到達するよりも速く、私はその軌道上に身を投げ出した。

 

「……速い!?」

 

 スローインをカットし、私は一直線にゴールへ進んでいく。自分でびっくりする程の速度にイプシロンのディフェンス陣は全く反応出来ていなかった。あっという間にゴール前へたどり着き、私は全身に力を込める。

 

「暗黒神……ダークエクソダス!!」

 

 シュウ君の化身、ダークエクソダスを発動しゴールを狙い定める。今度はシュウ君の力を得ているからかコントロール出来ていた。

 

「魔王の斧!!」

 

 暗黒のオーラを纏うボールをかかと落としで蹴り落とす。ダークエクソダスが追撃と言わんばかりに斧を振り下ろし、凄まじいパワーが込められたボールはデザームを強襲するように突き進んでいく。

 

「ドリルスマッシャーV3!!」

 

 デザームが更に進化したドリルを生み出し、このシュートに対抗しようとする。だけどミキシマックスと化身の同時使用を相手にするには力不足だったようだ。数秒拮抗した後、ドリルは粉々に砕け散りシュートはゴールに突き刺さった。

 

 

 




アンケートご協力ありがとうございました。割と僅差でしたが化身は登場させることにします。まあエイリア学園と戦っているうちはそこまで頻繁に出るわけではないと思います。

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