イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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菜花黄名子

 

 

 闇に包まれたシュートがゴールに突き刺さり、その数秒後に試合終了を告げる長いホイッスルがフィールドに鳴り響いた。

 得点板に目をやれば、2ー1で私達雷門の勝利。私は数秒間放心状態だったけれど、段々と実感が湧いてきて両手をあげて喜ぼうとした。

 

「すげぇぜ羽花!!」

 

「うわぁぁ!!?」

 

 だけどその直前にいつの間にか走ってきた守君に後ろから抱きつかれてそのまま前に転倒してしまった。私の上に覆い被さる守君を払い除けて、私は声を荒らげる。

 

「重いってば!! もう、嬉しいのはわかるけどいちいち抱きついてこないでよね!!」

 

「ごめんごめん。でも凄かったぜ、さっきのシュート!! 俺の所までビリビリ気迫が伝わってきた!!」

 

「……私だけの力じゃないよ。シュウ君が力を貸してくれたから」

 

 今だに力がみなぎってくるのを実感して、私は自分の手のひらを見つめた。勝てたのは間違いなくシュウ君のおかげだ。私だけではデザームの守りを破ることは出来なかった。確かに嬉しいことではあるけど、悔しさも少しだけ胸に残っている。

 

「フフフフフ……ハハハハハ!!」

 

「!!?」

 

 私達が勝利の喜びを噛み締めている中、突然デザームが叫ぶように笑い出した。皆が困惑の表情を浮かべていると、彼は私と守君の方に指差し、そして宣言してきた。

 

「素晴らしい!! ここまで楽しめるとは正直思っていなかったぞ!! 天川羽花!! 次に合間見えた時は貴様のシュート、必ず止めてみせる!! その時には我らの真の力を見せてやろう!!」

 

 それだけ一方的にまくし立てると、デザームを中心にイプシロンのメンバーを現れた時と同じように黒い光が包み、消えてしまった。

 

「なんか……デザームって守君に似てるね」

 

「ええ!? 俺はあんなに身長高くないぞ……」

 

「見た目の話じゃなくってさ、なんというか……雰囲気が」

 

 デザームの様子を見ていると、思わずそんなことを口にした。彼らのしていることは許せないけど、少なくともデザームはさっきの試合でサッカーを楽しんでいた。そこに宇宙人と地球人はないのかもしれない。シュウ君達と分かり合えたように、いつかエイリア学園……それにエルドラドとも……

 そんなことを考えていると、吹雪くんが私の前に歩いてきた。

 

「……次は負けねぇからな」

 

「……え?」

 

 シュートを撃つ時と同じように鋭い眼光を向けてくる彼に、私は戸惑って間抜けな声を出してしまった。

 

「ううん、なんでもないよ。さっきの君のシュート、凄かったね」

 

「あ、うん……ありがとう」

 

 と思ったら彼の雰囲気はいつもの穏やかなものに戻り、私にそんな言葉をかけるとベンチに戻っていった。……なんだったんだろう? 試合中に雰囲気が変わるのは白恋との練習試合やさっきの試合でもわかっていたけど、試合の外でもあんな感じになるんだ。

 

「どうしたんだ? 吹雪……」

 

「……さあ?」

 

 私と守君はお互いに顔を見合わせて、首を傾げるしかなかった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「着いたぞ、稲妻町だ!」

 

 古株さんの声で皆が一斉にTMキャラバンから顔を出した。眼下には見慣れた街の風景が広がっていて、帰ってきたんだと実感させてくれる。

 

「なんだか……久しぶりに帰ってきた気がするっス」

 

「無理もないさ、この短期間であれだけ濃い体験をしたんだからね」

 

 壁山君の言葉に一之瀬君が同意した。声には出さなかったけど、皆同じ気持ちだろう。

 イプシロンを倒した私達は、一度稲妻町へと戻ることになった。デザームの発言から考えてイプシロンがまた現れるのは確実だし、口ぶりからしてまだ本気を出していなかったようだ。負け惜しみとも思えない、次試合する時も必ず勝てるようにレベルアップしないと。

 

 キャラバンは雷門中ではなく、河川敷に着陸した。まだ雷門中は瓦礫だらけだろうし、となれば練習するなら河川敷のグラウンドが一番だと思う。

 

「ん? あれは……」

 

 キャラバンから降りると、守君が河川敷のグラウンドに目をやった。そこには3人の男女がいて、どうやらサッカーをしているようだった。

 

「あの2人、雷門のジャージを着てないか?」

 

「……あ、本当だ!」

 

 風丸君の言う通り、その男女のうち2人は見慣れた雷門中のジャージを着ていた。その中の灰色の髪をした少年が、ボールと共に飛び上がった。

 

「ダークトルネード!!」

 

 あのシュート、ファイアトルネードに似てる……!? それもかなりの威力だ。回転を加えて放たれたシュートは黒い炎を纏い、ゴールへと迫っていく。するとその前に、雷門のジャージを着た女の子が立ちはだかった。

 

「もちもち黄粉餅!!」

 

「……へ?」

 

 なんとその女の子はどこからか巨大な黄粉餅を出現させて、シュートを止めてしまった。可愛らしい見た目なのに あのシュートを止めるなんて、かなりの強さの技みたいだ。

 

「すっげぇ!! お〜い杉森!!」

 

「……!! おお、円堂!!」

 

 守君がグラウンドの外で攻防を眺めていた長身の少年の方に声をかけた。杉森、という名前には聞き覚えがある。確か私が雷門に転校する前にフットボールフロンティアの地区予選で戦った御影専農のキャプテンだったはずだ。

 

「帰ってきてたのか!?」

 

「ああ、今から雷門中に戻るところなんだ!! ……その2人は?」

 

「こいつは闇野カゲト、皆シャドウって呼んでる……そして」

 

「ちぃ〜っす!! うち、菜花黄名子!! よろしくお願いするやんね!! 円堂キャプテン!!」

 

 杉森君が灰色の髪の少年、闇野君ことシャドウを紹介して茶髪の女の子を紹介しようとした瞬間、それを遮るように少女は菜花黄名子と名乗った。ず……随分元気な子だなぁ……うん? 円堂キャプテン? 

 

「キャプテンってどういうことだ? それに雷門のジャージを……」

 

「2人とも雷門の転校生だそうだ」

 

『転校生!!?』

 

 杉森君の言葉に一同から驚きの声が上がった。話を聞くところによると、2人ともエイリア学園が最初に雷門に現れた日に転校してきたらしい。だけど私達はその直後に旅立ってしまったので、すれ違いになってしまったそうだ。そこで声をかけたのが杉森君、彼は対エイリア学園のバックアップチームなるものを設立していて、そこにシャドウ君と菜花さんをスカウトしたらしい。

 それを聞いた守君は涙ながらに歓喜していた。確かにサッカーを好きな仲間が集まって私達をサポートしてくれていたなんて、そんなに嬉しい話はないよね。

 

「俺のシュートはまだ未完成だ、エイリア学園には通用しない。完成したその時、チームに加えてもらいたい」

 

「その代わり、うちがチームに入るやんね!! うちこう見えて結構器用だから、どのポジションでも役に立てると思うやんね!!」

 

「シャドウ……菜花……ありがとう!! いいですよね、監督!!」

 

「ええ、菜花さんの守備力はさっき見せてもらったし、エイリア学園相手でも不足はないわ」

 

 シャドウ君はまだ実力を磨きたいということで残り、菜花さんがチームに加わった。監督が二つ返事で許可したことからも彼女の実力はかなり高い。エイリア学園との戦いでも活躍してくれるはずだ。

 

「よろしくね、菜花さん」

 

「そんな固くならなくても、黄名子でいいやんね。うちも羽花って呼ぶから」

 

「うん……それじゃあよろしく、黄名子ちゃん」

 

 随分フレンドリーな子だな……まぁ私初対面の人だとちょっと緊張しちゃうから向こうから来てくれるのは嬉しいけど。

 見れば黄名子ちゃんは既に私の前からいなくなっていて雷門の皆に挨拶をしていた。私もあれくらいのコミュ力が欲しいな、なんてくだらないことを考えているとフェイとワンダバの話が耳に入ってきた。

 

「菜花黄名子……またタイムパラドックスが起こってる……」

 

「う〜む……エルドラドが仕掛けた罠という可能性もありえるな」

 

「どういうこと?」

 

「菜花黄名子なんて人物は本来この時代には存在しないんだ。少なくとも、僕達がこの時代に来る前に調べた限りでは……」

 

「アルノ博士に調べてもらう必要がありそうだ」

 

 どうやら黄名子ちゃんは本来この時代にはいない人物らしい。誰かに意図的に送られたのか、エルドラドの歴史改変の影響なのかはわからないけど、今はアルノ博士の連絡待ちだそうだ。

 私達の中に不穏な空気が流れ始めたその時、河川敷グラウンドの中心に青白い光が発光した。

 

「これは……まさか……!!」

 

 鬼道君がとある可能性を考えて、まさかと口にする。多分皆も同じことを考えてたのだろう、身構えて警戒していた。いい加減に覚えたよ、これはエイリア学園の……!! 

 

「私はエイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダストのガゼル」

 

「マスターランクチーム!?」

 

 現れたのは銀色の髪をした男。彼は髪を掻き分ける仕草をすると冷徹な視線をこちらに向け、淡々と話しかけてくる。

 

「雷門イレブン、君達はイプシロンを倒した。その実力を讃え、我々ダイヤモンドダストがお前達の相手をしてやろう。日時は1週間後、我々は京都の漫遊寺中学を破壊する。阻止したくば私達を倒すことだ」

 

 ガゼルと名乗った男は一方的に要件を告げると再び光の中へと消えていった。時間にすればほんの1分にも満たない出来事だ。だけど私達は動揺を隠しきれず、言葉を失っていた。

 

「マスターランク……イプシロンよりも上のチームがいたのか」

 

「イプシロンを倒せば終わりじゃなかったッスか……」

 

 周囲から驚きと落胆の声が聞こえてくる。まぁそれも当然だよね、こうなってくるとあのダイヤモンドダストってチームを倒したとしても更に上のチームが出てきても不思議じゃない。この戦いは一体いつになったら終わるんだろう? 

 

「どうした皆! おれ達はあのイプシロンにだって勝てたじゃないか! ダイヤモンドダストにだって絶対勝てるさ! そのためにも特訓だ!」

 

「守君……!!」

 

「ああ、やってやるぜ!!」

 

 だけどいつものように守君が皆を鼓舞し、チームに活気が戻ってきた。こういう時、守君は本当に頼もしいんだよね。

 

「各自準備を整えたら漫遊寺中に向かうわ。2時間後に雷門中に集合よ」

 

『はい!!!』

 

 そして各々が準備を整えてキャラバンに乗り込んだ。私は守君と一緒に家に帰り、軽い身支度と温子さんに挨拶だけして後は河川敷で特訓をしていた。本当は雷門中のグラウンドを使いたかったんだけど、まだ瓦礫の撤去が済んでいないみたいだからしょうがない。

 

「だから!! ここは雷門だ!! お前もうちのチームに入ったんなら少しは合わせろ!!」

 

「そう言われても……僕ずっとああやってたし。それにそういう汗臭いのは苦手だなぁ……」

 

「誰が臭いって!! 誰が!!」

 

 後ろの席で吹雪君と染岡君が口論していた。出発前に彼らも特訓をしていたらしいんだけど、吹雪君のプレースタイルが染岡君は気に食わないらしい。吹雪君を主体として周りがサポートする白恋とチームプレーの雷門だと反りが合わないのも当然なのかもしれない。

 

「はぁ……少しは静かにして欲しいわ」

 

「あはは……まぁ元気なのはいいことだし……多分」

 

 私の隣に座っている夏美ちゃんがため息混じりに文句を言った。黄名子ちゃんの加入で改めて席の組み合わせをクジ引きで決めたんだけど……どうやら失敗だったみたいだ。

 

「まあまあ、染岡も吹雪も落ち着くやんね。喧嘩するほど仲がいいっていうし、仲良しの証拠やんね!」

 

「へ、こんな奴と仲良くするなんて死んでも御免だ」

 

「僕は別に仲良くしてもいいけどなぁ」

 

 黄名子ちゃん凄いな……あの剣幕の染岡君の間に入れるのは守君か鬼道君だけだと思ってた。それでも一応は収まったみたいだから良かった。これから一緒のチームでプレーするのは不安しかないけど。

 

「ねえ、羽花。今から行く漫遊寺って学校はやっぱりサッカー強いの?」

 

「う〜ん、私も噂程度でしか知らないけど……一部では帝国に匹敵するって言われてるらしいよ。公式戦を殆どしないからあくまで噂らしいけど」

 

「漫遊寺のことなら俺も知っている。帝国を優勝校とするならば、漫遊寺が裏の優勝校と言う者もいるくらいだ」

 

「へえ、すごく強いチームなんだね」

 

 前の席から身を乗り出して聞いてきたフェイの問いに、私とフェイの隣に座っている鬼道君が答えた。漫遊寺のことを調べたことはあるけど、公式戦をやらないから正直よく分からないんだよね。強いってことは確かだけど、鬼道君も本当のところはわからないらしいし。

 

「さあ、出発するわよ。全員座りなさい」

 

 と、そんな話をしている間に全員が揃ったらしくTMキャラバンが空へと飛び立った。私達は新たな敵との戦いに若干緊張しながらも、漫遊寺中へと向かうのだった。

 




おまたせしておりました。またちょこちょこ書いていきます。

補足

フェイと黄名子は2年生設定です。羽花と同い年ですね。染岡と吹雪を呼び捨てにするの違和感すごいけど原作でも剣城とか太陽を呼び捨てにしてたんで同級生相手だったらこれでいいはず、多分。

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