TMキャラバンから降り立ち、私達が最初に目にしたのは長い階段。京都にある漫遊寺中学校。名前の通りお寺のような学校で、少林寺くんが好きそうな感じだ。私達はサッカー部を探すために階段を登り本校舎へと進んでいく。
「⋯⋯なんかのんびりしてるよな」
「襲撃予告なんて全く気にしてない感じ⋯⋯」
道行く生徒達は動揺している様子などなく、普通に見えた。少なくともこれからエイリア学園が襲撃してくるとは思えなかった。
「もしかしてエイリア学園が来ること知らないやんね?」
「確かに⋯⋯これまでと違いダイヤモンドダストは俺達にだけ漫遊寺を襲うと宣言してきた。ここには襲撃予告など送っていないのかもしれない」
黄名子ちゃんが言うと、鬼道くんも顎に手を当ててそれに同意した。確かに襲撃予告があったようには見えないし、ダイヤモンドダストは純粋に私達にだけ焦点を当ててるのかもしれない。
「とにかく、サッカー部を探そうぜ」
「サッカー部なら奥の道場みたいだよ」
ここで考えていてもわからないので守くんがとにかくサッカー部を探そうと言った時、後ろから吹雪くんが続けるように言った。隣にはいつの間にか漫遊寺の制服を着た女子が2人いて、吹雪くんはお礼を言った後彼女らに微笑んだ。
「またなにかあったらよろしくね」
『はーい!』
⋯⋯吹雪くんってもしかしなくてもモテる? いや確かに顔は整ってると思うし、雪国育ちだからか肌も透き通っている。モテても不思議じゃないけど。
「もしかして吹雪って結構チャラ男やんね?」
「⋯⋯私の苦手なタイプだ」
ああいうナンパしてくるような男苦手なんだよね、私。別に吹雪くんが嫌いってわけじゃないけど。
とにかく私達は教えてもらった道場を目指して校舎の奥に進んだ。ちょっと歩いたら蹴球道場と書いてある看板が見えてきた。どうやらあそこみたいだ。
「⋯⋯ん?」
「どうしたんだ、羽花?」
「ううん⋯⋯なんだか視線を感じるような⋯⋯」
校舎の横にある茂み、そこから何か視線のようなものを感じて私は立ち止まる。視線というか気配? とにかく言葉にしずらいけどそういうのを感じる。誰かが私達の後をつけてる? 漫遊寺の生徒とは思えないし、それになんだか少しだけ悪意? のようなものを含んでいる気がする。
⋯⋯まさかエイリア学園、もしくはエルドラドの追っ手? 考えられないことは無い、私達はイプシロンを倒したし、エルドラドに関してもここのところ干渉してこない。⋯⋯試してみるか。
「守くん、ボール貸して」
「お、おう」
私は守くんからボールを受け取って茂みに向かってシュートを撃った。もし敵のスパイかなにかなら、必ずリアクションを起こすはずだ。
「ぶべッ!?」
「⋯⋯へ?」
茂みに入ったボールは何かに当たって跳ね返り、それと同時に男の子が出てきた。栗松くんや少林寺くんくらい小柄な子で、ボールが当たったらしい箇所を痛そうに押さえていた。
「ご、ごめんね!! えっと⋯⋯怪我はない?」
「ふざけんなよお前! なんだっていきなりボールなんて蹴ってくんだよ!?」
私が謝ると、彼はボールを投げて怒りを顕にした。そりゃそうだよね、いきなりボールを当てられたら誰でも怒る。申し訳ないことをしちゃったな……。
「木暮〜〜!!」
「げっ……!?」
そんな時、奥の建物の方から叫び声が聞こえてきた。それを聞いた男の子は一目散に逃げていってしまった。一体なんだったんだろう?
「全く……しょうがない奴だ。お客人、あの者が何か失礼なことを?」
「い、いえ……別に。ただあの子が茂みに隠れてたものだからボールをぶつけちゃって」
「申し訳ない……恐らく、また何かイタズラを企んでいたのでしょう」
あの男の子を追ってきたバンダナの人は、こちらを見るなり礼儀正しく手を合わせてきた。さすがは漫遊寺の生徒っていうところなのかな?
「私は漫遊寺中サッカー部キャプテン、垣田と申します。さっきの者は小暮といい……あれでも一応、サッカー部の部員なのです」
「な……!? アイツもサッカー部なのか!?」
「ええまぁ……あまりにも問題行動が多いので、今はボールには触れさせずに心を鍛えさせているのですが」
あの子もサッカー部なんだ……同じ部員でも垣田さんとは大違い、多分あの小暮くんという子が特殊なんだろうけど。
そうして私達は垣田さんの案内で漫遊寺中サッカー部と話し合いの場を設けてもらった。だけど漫遊寺はサッカーをするのはあくまで心と体を鍛えるため、争うためではないとエイリア学園との戦いを拒否した。考えはわからなくはないけど、アイツらに話し合いが通じるとはとても思えない。一旦その場は解散して、私達は漫遊寺中横の空き地で作戦会議を始めた。
「これからどうする?」
「どうするったって、アイツらがあの調子じゃな」
漫遊寺の考えに風丸くんと染岡くんは頭を悩ませている。漫遊寺が戦う気がないのに、私達が率先して戦う訳にもいかない。せめて試合を私達に任せてもらえればいいんだけど……
「悩んでたってしょうがない! 俺達は俺達にできることをしよう!」
「できること?」
「特訓だよ! ダイヤモンド・ダストに勝つためのさ!」
守くんの言う通りだ。悩んで何もしないより、身体を動かしてた方がいい。私達は近くの河川敷で早速特訓を開始した。
「お前には絶対負けねぇ!」
「やれるもんならやってみな!」
染岡くんは相変わらず吹雪くんに突っかかっている。でも吹雪くんの動きについて行こうとして染岡くんの動きは良くなってるし、吹雪くんも同じだ。黄名子ちゃんの言う通り、案外悪くないペアなのかも。
「お〜い羽花! いくやんね〜!」
「……! うん!」
で、私は黄名子ちゃんと連携必殺技の特訓をしてる。といっても今はまだ技の形すら見えてないし、完成するまでには時間がかかりそう。
「……」
春奈ちゃん、さっきから何か思い詰めた様子だ。木暮くんのことかな? そういえば春奈ちゃんと鬼道くんは幼い頃に両親を亡くしてるって聞いたことがある。同じく幼い頃に親に捨てられた木暮くんに何か思うことがあるのかな?
そして次の日、皆よりも早く目が覚めてしまった私は漫遊寺のグラウンドを借りて特訓をしていた。シュウくんの力を借りなくても化身をコントロールできるようにするために、時間はいくらあっても足りないくらいだ。
「あ、羽花さん! おはようございます!」
「春奈ちゃん……おはよう、こんなに早くどうした……の?」
30分くらいしたところで春奈ちゃんが声をかけてきた。こんな早くに珍しいと思ったら、横にはなんと木暮くんがいた。
「お願いします! 木暮くんを特訓してくれませんか!」
「へ?」
話を聞くとどうやら木暮くんはサッカー部の人達に仕返しをするために罠を仕掛けていたそうだ。それを春奈ちゃんが見つけて、流れでサッカーの特訓を見てあげることになったらしい。
「なるほどね……私でよければいくらでも手伝うよ」
「ありがとうございます! よかったね、木暮くん!」
「よりによってコイツかよ……」
木暮くん、私がボールをぶつけたことまだ根に持ってるのかなる向こうもイタズラしようとして隠れてたわけだし、お互い様ってことにしたいんだけどな。
「それじゃあ行くよ!」
「へ、すぐにボールを奪ってやる」
木暮くんは私からボールを奪おうとがむしゃらに突っ込んでくる。動きは悪くない、だけれど考えなしに突撃してくるものだから私にかわされて倒れてしまった。これじゃ私からボールを奪うのは夢のまた夢だ。
「クソッ……! 今度こそ!」
それから木暮くんは何度も挑戦してきた。その度に私はボールを少し動かして彼をかわしてみせる。そんなやり取りを何度もしているうちに、気づけば2時間も経っていた。
(この子……ほとんど休憩してないのに疲れるどころか動きがよくやってる?)
そこで私は気づく。2時間も動き回っているというのに、木暮くんは疲れて動きが悪くなるということがなかった。自分で言うのもなんだけど、私についてくるだけで精一杯だというのに。
「ねぇ木暮くん、必殺技の特訓してみない?」
「必殺技?」
「うん。木暮くん動きはめちゃくちゃだけど基礎体力はできてるみたいだし、ここは思い切って必殺技を使えるようになった方がいいと思うんだ」
木暮くんは心を鍛えるために雑用ばかりやらされていたらしいけど、それが彼の基礎体力の向上に繋がってるみたい。だったら私達が思ってたより木暮くんはやれるのかもしれない、そんな考えが私の中に浮かんだ。
「はい、これ飲んで頑張ってね」
「……余計なお世話」
春奈ちゃんがくれたドリンクを飲んで少し休憩、そして必殺技の特訓だ。そろそろみんな起きてくる頃だろうし、手伝ってもらおうかな。
「なんですか、この霧……?」
「これは……!?」
その時、辺りを霧が包んだ。一瞬何が起こったのかわからなかったけど、これはエイリア学園が現れる時の霧だ。ということは……!
「しっぽを巻いて逃げなかったのは褒めてあげよう、雷門中」
「ガゼル……!」
やっぱり霧の中からあの時のガゼルっていう男が現れた。その後ろにはチームメイトらしき宇宙人がいる。あれがマスターランクチーム、ダイヤモンドダスト……
「お前達の好きにはさせないぞ、エイリア学園!」
「ふっ……円堂守、君達に凍てつく闇の冷たさを教えてあげよう」
「熱いとか冷たいとか関係ない! サッカーを破壊の道具にするお前達を俺は絶対に許さない!」
異変に気づいてみんなが集まってきた。守くんがガゼルに向けて宣戦布告、いつ戦いが始まってもおかしくない雰囲気だ。
「お待ちください……私達に戦う意思はありません。どうかお引取りを」
「君達のような雑魚に用はない……ただし、邪魔をするなら……」
漫遊寺がガゼルに語りかける。だけど宇宙人に交渉が通じるはずもなく、ガゼルは黒いサッカーボールを校舎に向かって蹴りつけた。轟音と共に歴史のありそうな校舎は跡形もなく崩れ落ちた。
「なんてことを……!?」
「これでわかっただろ? 我々の望みは雷門中との試合のみだ」
「……ッッ! …………雷門中の皆さん、勝手な頼みで申し訳ありませんが……我らの漫遊寺中をどうかお守りください」
「ああ、もちろんだ! なぁみんな!」
『おお!』
こうして私達雷門中とダイヤモンドダストの試合が始まる。フォーメーションはこんな感じで、新しく黄名子ちゃんが加わってる。
「相手の実力は未知数よ。前半は吹雪くんを中心に守って相手の出方を探りなさい」
「頼んだぜ吹雪!」
「うん」
マスターランクチームということは、イプシロンよりも実力は上のはず。そのイプシロンには何とか勝てたけど、ダイヤモンドダスト相手にどこまでやれるか。
『お待たせしました!! 今回も私、角間が実況を務めさせていただきます!!』
角間くんはホントにどこにでも現れるなぁ……北海道から京都まで遠かっただろうに。
「さぁみんな! 気合い入れていくぞ!」
「マスターランクだかなんだか知らねぇが、俺達に試合を挑んだことを後悔させてやるぜ!」
『雷門中VSエイリア学園、ダイヤモンドダスト!! 今キックオフです!!』
ホイッスルの合図で試合が始まった。フェイからボールをもらった染岡くんが攻めようとするけど……
「何……!?」
なんとダイヤモンドダストはゴールまでのコースを自ら開けてきた。これは……何かの作戦? それとも挑発してきてる?
「舐めやがって……!」
「撃ってこいと言うのならば、望み通りにしてやればいいさ」
「鬼道……」
怒る染岡くんを窘める鬼道くん。すると彼はこっちにアイコンタクトをしてきた。なるほど、アレをやるつもりだね。
「行くぞ! 皇帝ペンギン……!」
『2号!!』
鬼道が呼び出したペンギンと共にボールを蹴り、更にそれを私と染岡くんが左右から同時に蹴る。帝国の編み出した強烈なシュートがダイヤモンドダストのゴールに向かっていく。
「この程度か……」
「な……止めやがった!?」
「馬鹿な!?」
だけどそのシュートはガゼルに止められてしまった。そのまま彼は雷門ゴール目掛けて攻めてくる。速い……!?
『なんというスピードだガゼル! DFを抜き去り、あっという間にゴール前だ!』
「見せてやる、絶対零度の闇を!」
「来い!」
「ノーザン……インパクト!!」
あっという間にゴール前に抜け出したガゼルが冷気を纏ったシュートを放った。それに対して守くんは大介さんの究極奥義で迎え撃つ。
「正義の鉄拳!!」
シュートと拳がぶつかりあった。最初は拮抗していたボールと拳。だけど段々と拳の方が凍っていき、ついには砕かれてしまった。
「うわぁ!!」
「守くん!!」
『ゴ──ルッッ!! なんということでしょう!? 試合開始早々、ダイヤモンドダストが先制!!』
なんてシュートだろう。イプシロンのより更に上を行くパワーだ。正義の鉄拳を打ち砕くなんて……!
「大丈夫やんね?」
「ああ……平気だ」
黄名子ちゃんが守くんに駆け寄ってくれた。よかった、ダメージ自体はそれ程大したことなさそうだけど。だけどあんなの何度もくらったらさすがの守くんでも……
「次は君の番だ、天川羽花」
「……ッ!」
通り過ぎ様にそんな言葉を呟いたガゼル。彼を止めて点を決めなければ私達に勝ち目は無い。だからといって諦めるなんてありえない。未知の強敵の前に、私は頬を叩いて気合いを入れ直した。
化身は出した方がいい?
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出した方がいい
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出さない方がいい