イナイレ世界に転生したら女子だったんですが   作:マルメロ

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vs帝国学園

「皆、新監督だ!」

「響木正剛だ。よろしく頼む」

 

 フェイと出会った次の日の放課後、円堂が新監督を連れてきた。雷々軒の店主、響さんだ。

 練習にいないと思ったら昨日の今日でまた勧誘してたのか…それで成功しちゃうのが恐ろしいところだが。

 

「決勝戦は目前だ!お前ら全員鍛えてやる!」

「「「おう!!」」」

 

 そうしてイナビカリ修練場に向かう俺たち。すでに何回もあそこで練習してるが未だに慣れない。生命の危機を感じることは少なくなったが毎回ヘトヘトになってしまう。

 さて、今回は無事に出てこられるのやら…

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 日も完全に沈み、辺りを照らすのは街灯の明かりのみとなった。

 フェイは近くに設置してある時計に目をやる。現在時刻は21時、中学生ならばとっくに帰らなければならない時間だ。

 直後、鈍い音と共に河川敷のグラウンドに砂煙が巻き起こる。そこにはボロボロで倒れ伏す羽花の姿があった。

 

「羽花、今日はこの辺にしておこう。」

「でももう少し…もう少しでなにか掴めそうなんです…」

 

 彼女が練習しているのはフェイの必殺技、バウンサーラビット。すでに100回は挑戦しているが1度も成功していない。

 オマケに技の性質上、失敗すると高所から落下して全身を強打してしまう為体への負担は相当なものだ。

 ただ、挑戦する度に確かに精度は上がっている。さっきの1回もだいぶ成功に近づいているはずだ。

 この短時間でここまで、と驚くと共に関心する。

 フェイ自身もここまで早く形にはならなかった。いくらお手本がいるとはいえ、この速度は驚異的だ。

 尾狩斗戦でも、円堂との連携技を一発で成功させていたことを思い出す。

 

 

「バウンサーラビット!!」

 

 ボールと共に何度も跳躍する羽花、そして最高地点に到達すると月を背景にオーバーヘッドキック。勢いよく地面に叩きつけられたボールは何度もバウンドを繰り返しゴールに突き刺さった。

 

「できた…フェイ、どうですか?」

「ああ、完璧だよ。まさかこんなにもすぐに成功させるなんて…」

 

 その言葉を聞き地面に崩れる羽花。

 彼女に特訓して欲しいと言われ、特訓を始めてまだ3時間だ。それなのにも関わらず、もう成功させてしまった。凄まじい才能だ。

 無論、フェイが放つバウンサーラビットと比べると威力はかなり落ちるが、それでも十分通用するだろう。

 

(羽花、君はやっぱり…)

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 帝国学園との試合当日、俺たちは各々着替えを終え、アップに取り掛かっていた。

 皆気合い十分といった感じだ。

 ただ円堂だけはどこか浮かない顔をしている。

 一番楽しみにしていると思っていたので意外だった。

 他のメンバーは緊張こそしているものの大丈夫そうだ。宍戸に至っては壁山にイタズラなんかしている。呑気なものだ。

 宍戸のくすぐりに耐えきれなかった壁山が真上にボールを蹴りあげてしまった。するとガシャンと音が聞こえ、天井から宍戸の近くになにかが落ちてきた。

 

「…これ、ボルトじゃないか!」

「危ねぇな、宍戸に当たってたらどうすんだ。帝国はちゃんと整備してるのか?」

 

 悪態をつきながらも宍戸を起こす染岡。

 その横で円堂がボルトを拾い上げる。

 

「なんでこんなものが…」

 

 審判に促され、両チームが整列した。

 すると帝国のキャプテン、鬼道が円堂になにやら耳打ちをしているのが見えた。

 円堂は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに力強く頷いた。そしてポジションに着く前に俺たちに声をかけた。

 

「ホイッスルが鳴ったらすぐにセンターサークルから離れてくれ」

「な!?それじゃみすみす敵にチャンスをやるようなもんじゃねえか!」

「ああ、だけど俺は鬼道を信じる。だから頼む!」

「ち、わかったよ。お前がそこまで言うなら」

 

 反発した染岡だったが渋々了承した。それを皮切りに全員が納得したところでポジションにつく。

 センターサークルから離れる…意図はわからないが円堂が言うならきっと意味があるのだろう。

 

 FW 豪炎寺、染岡

 

 MF 少林寺、松野、羽花、半田

 

 DF 栗松、壁山、土門、風丸

 

 GK 円堂

 

 控え 眼鏡、影野、宍戸

 

 今日のポジションはこんな感じだ。

 

「ピィーーー」

 

 試合開始のホイッスルが鳴った。

 俺たちは全員言われた通りにセンターサークルから離れる。

 すると轟音と共に巨大な鉄骨がセンターサークルに落ちてきた。

 しかもそれに続いて何本もだ。当たっていれば重症になるのはもちろん、最悪死人が出ていただろう。

 驚きのあまり動くことができない両チームの選手達。そんな中唯一動いたのは、鬼道。彼は鉄骨が落下したのを見るとすぐにフィールドの外に出ていってしまった。その後を帝国の選手数名と円堂、響監督が追いかける。

 …というかほんとにびっくりした。思わず腰が抜けてしまいその場に座り込む。

 帝国の監督、影山のやり方は冬海の一件である程度理解していたつもりだったがまさかここまでやるとは思わなかった。

 

「大丈夫か?それにしてもすごかったな」

「ふぇ?」

「お前、あの鉄骨が降ってきた瞬間すごい勢いでこっちに飛んできたんだぞ」

 

 

 座り込んでいる俺を見かねて手を差し伸べてくれた風丸の言葉で周りを見る。

 俺が今いるところの隣には土門や壁山がいた。

 どうやらびっくりしすぎて無意識にディフェンスラインまでジャンプしてしまったらしい。

 顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。

 

「むしろよく平然としてられますよね」

「驚きはしたけどな」

 

 数分後、鬼道達が帰ってきた。首謀者である影山は鬼瓦という刑事に連れていかれたらしい。

 帝国側は試合を棄権すると申し出たそうだが円堂がこれを拒否。まぁこれはチーム全員わかっていたことなのでとやかく言う者はいない。

 そしてグラウンドの修復も終わり両チームが再びポジションについた。

 今度こそ試合開始だ。

 まず仕掛けたのは雷門。

 豪炎寺がドリブルで切り込んでいく。帝国のディフェンス2人のスライディングをかわして染岡にパス。

 

「ドラゴン…!!」

「トルネード!!」

 

 染岡と豪炎寺の連携シュートが放たれた。炎を纏った龍が帝国ゴールに迫る。

 しかし帝国のキーパー源田は余裕の表情だ。

 

「パワーシールド!!」

 

 源田が地面を叩きつけると同時にシールドが発生。ドラゴントルネードが弾かれてしまった。

 

「パワーシールドには、どんなシュートも通用しない!鬼道!」

 

 源田がボールを大きく蹴り上げ鬼道にパス。

 そしてあっという間にマークについた少林寺と松野をかわしてしまった。

 そこからボールを高く打ち上げた。

 

『すごいテクニックだ鬼道有人!そしてゴール前には佐久間、寺門、洞面。これはデスゾーンの体勢か!!』

 

「いけ!!」

「「デスゾーン!!」」

 

 空中で回転する3人の中心にあるボールに紫のオーラが込められ、同時にそれを蹴りだした。

 紫色のボールは凄まじい勢いでゴールに向かっていく。

 

「来い!ゴッドハンド!!」

 

 円堂の身体から気が放たれ、それは手の形へと変化する。だけど気のせいだろうか、いつもよりオーラが弱々しい気がする。

 ゴッドハンドとデスゾーンがぶつかり合う。最初は拮抗していた両者だが徐々にゴッドハンドにヒビが入り、そして完全に砕けてしまった。だが円堂は辛うじてそれを弾く。しかしその先には鬼道がいた、そしてそのままダイレクトシュート。体勢が崩れていた円堂は反応出来ず、そのままゴールに突き刺さった。

 

『ゴオォォル!円堂が弾いたボールに鬼道が食らいついた!帝国先取点です!』

 

 俺たちは目を見開いていた。点を取られたこともそうだがゴッドハンドが破られた。しかも以前は止められたシュートにだ。

 当の本人も何が起きたか理解できていないようだ。呆然としている。

 

 雷門ボールで試合再開。染岡からのパスを受けた俺が帝国ゴールに迫る。

 だが帝国の巨漢ディフェンス、大野に阻まれた。

 

「行かせるか!アースクエイク!」

 

 巨体から繰り出される衝撃波をジャンプで大野ごとかわし、そのままかかと落としで染岡にパス。

 

「ドラゴンクラッシュ!!」

「パワーシールド!!」

 

 染岡のシュート。だがこれも源田に弾かれてしまった。

 だがボールの行先にはすでに豪炎寺が走り込んでいる。

 

「ファイアトルネード!!」

「何度やっても同じだ!パワーシールド!!」

 

 不意をついた2連続シュート。しかしこれも通じなかった。

 ボールはタッチラインを割りフィールドの外へ、帝国スローインだ。と、ここで

 

 

「天川!豪炎寺!」

 

 豪炎寺と共に響監督に呼ばれた。急いでベンチに向かう。

 

「敵は豪炎寺と染岡を特に警戒している。マークが集中するだろう。豪炎寺、お前が囮になって天川に繋ぐんだ」

 

 なるほど、確かに現時点では俺に対するマークはそこまで厳しくない。少なくともフォワードの2人よりは動きやすいはずだ。だから豪炎寺を囮にし、空いたスペースを俺が使うというわけか。

 

 辺見のスローインで試合再開。ボールは鬼道に渡り、そして上空に蹴りあげる。さらにそこに寺門が合わせる。

 

「百裂ショット!!」

 

 両足交互に何度もボールに打ち付け、最後に蹴り落とす寺門。

 俺はそれを確認すると前線に走り出す。円堂ならあれくらい止められる。そこからカウンターを狙えば源田からも点を取れるかもしれない。

 

「熱血パンチ!!」

 

 がしかし予想に反し、円堂が弾き損なった。幸いにもボールはポストに当たり得点にはならなかった。やはりなにかおかしい。いつもの円堂なら止められていたはずだ。

 鬼道のコーナーキック、それに佐久間がヘディングで合わせる。だがこれは円堂の正面だ…が、キャッチし損ねて前に落としてしまった。風丸が慌ててそれを前線に蹴りあげる。なんとかピンチは凌いだか…

 だが今日の円堂はおかしい、いつもならあんなミスを連発するようなことはないのだが。

 考えているうちにボールは中盤の松野へそしてさらに前線に蹴りあげる。

 

「豪炎寺!」

 

 それに反応する豪炎寺。その直前、一瞬俺にアイコンタクト。なるほど、それなら…

 ファイアトルネードの体勢でボールまで飛び上がる豪炎寺。しかし帝国のマークがついている。すると彼はシュートするのではなくさらに上にボールを蹴りあげる。

 

『なんと、豪炎寺さらに上空にボールを蹴りあげた!これでは誰も…ああ!?天川がとった!なんという跳躍だ!』

 

 もはや誰も届かない高度まで上がってしまったボール、しかしこれに俺が一気に跳躍し食らいつく。そしてそのままゴール前に着地、帝国もこれはさすがに読めなかったのかディフェンスはいない。

 すかさずボールと共に跳躍し、月を背景にオーバーヘッド。

 

「バウンサーラビット!!」

「なに!?ッッパワーシールド!!」

 

 これにも反応してきた源田。だが咄嗟に使ったためシールドに込められたパワーが十分ではない。徐々にシールドがひび割れそしてついに完全に突き破った。

 

『ゴオォォォォルッッ!!天川のバウンサーラビットが決まった!!雷門同点です!』

 

 ふぅ…とりあえずこれで同点だ。後は円堂がシュートを止めてくれるかどうか。

 俺は試合再開に備えるために自分のポジションに戻っていった。

 

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