緑谷出久と直死の魔眼   作:けし

1 / 3
というわけで始まりました。またこんな感じのクロスオーバーです。
息抜きなので更新は期待薄です。

本質は変わりませんが、デク君は少し歪んでるかも。ありだと思う人はどうぞ。


入学試験と直死の魔眼

 とぼとぼと、普通の世界を歩いていく。

 眼鏡越しにだけども、当たり前のこと。

 

「はぁ……」

 

 母さんに送り出されて、それでも憂鬱な気分が抜けない。背負った竹刀袋には、代わりに木刀が仕舞われている。あの日からずっと振り回して、やっと使いこなせてきたもの。

 

「デカすぎるよ、雄英」

 

 世界が変わったあの日。全てが加速したあの日。能無しの僕が、ヒーローとして歩き出した。幼馴染みには爆破されかけるスリリングな日々だったけど、そのおかげか、危機察知能力と逃げる能力は上がったし、それをあの人に聞かれてスパルタが加速したのも思い出だ。……震えが止まらないや。

 

「ま、やるだけやってこいってね」

 

 そう言って一歩踏み出せば、なぜか足が絡まって。気を抜いていたから、手をつこうにも間に合いそうになく。

 けど、固い地面とキスすることはなかった。

 

「大丈夫?」

 

 浮いてる? これは無重力ってことなのかだとしたら彼女が僕に使ってて……、ってそんなことは置いといて。

 

「大丈夫、いや、ありがとね」

 

 多少の緊張と多大な憂鬱のせいで、多分お堅い笑顔だった気がするけど、とりあえず礼は言わなきゃ。

 

「にしても、さっきのは君の?」

「そそ、私の個性。ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね!」

「いーや、その通りだよ。運とか縁起とかは、僕でも()()()()し」

「んー、よく分からんけど、お互いに頑張ろう!」

「おー」

 

 彼女も緊張していたのだろう。たったかたーと去っていく様子は、少々浮き足立っているように見えた。

 

「ま、運が良かったってことか」

 

 頭を掻いて、改めて校舎を見上げた。

 絡まる死は、やっぱり解けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 プレゼント・マイクのバカでかい声には、案の定誰の反応もない。特筆すべきところは特になく、ただの注意事項説明で終わり。

 この中のどれほどが、恵まれた個性を持っているのだろうか。などという意味のないことを考えた。

 

「それでは皆、『良い受難を』……!!」

 

 受難……ね。

 垣間見た死の世界と、継承した個性が過ぎる。

 そんなことをよそに、動きやすい服装──普通に中学のジャージに着替え、その上から黒い革ジャンを羽織った。もはや癖ともいえるし、本気でやる時は無いと逆に落ち着かない。

 空の右手に獲物があるイメージのまま、全身に意識を巡らせる。残念ながら木刀は持ち込めなかった。まあ試験概要読み飛ばした僕のせいだな。

 あの人にたった1つ教わったよくわからない力──『自己暗示』。

 そしてNo.1より受け継いだ『ワン・フォー・オール』。

 自身に自己暗示を施し、ワン・フォー・オールの制御を握り、それと同時にざわつく精神を宥める。

 

『はいスタートォォ!』

 

 瞬間、僕は無意識だった。OFAを脚部に回す。殺すことに力はいらないのだから、不要な強化は疲れるだけなのだ。

 この眼に頼り続けることは出来ないのだろうが、それでも僕に出来ることは壊すことが大半なのだから、効率求めて何が悪い。

 すでに眼鏡は外してある。あとは視て、なぞるだけ。

 視界に表れたロボに、死が上塗りされていく。

 後方で騒めく音がするが、切り捨てて走る。

 

「死ね」

 

 貫手を赤黒い点に突き刺す。途端、ロボが機能することをやめて沈黙した。ああ、ちゃんと殺せた。当然の結果に安堵しつつ、次に向く。

 ここまで体感で2〜3秒ほどだろうか。あと一体を適当に潰してとりあえず離脱した。登ったビルから見下ろせば、案の定、受験生でもみくちゃになっていた。

 まあこれだけ広ければ、空いてる場所くらいあるよね。

 

「さて、と」

 

 革ジャンをはためかせて、再びOFAを使って跳ぶ。

 途中で崩れた建物から鉄筋を拝借。そのまま獲物にした。

 斬って、殺して、壊して、殺して。飽き飽きするほどに繰り返した。

 そういえば、僕の眼も、個性も、かっちゃんには何も言ってないな。

 一瞬動きを止めたとき、猛烈な悪寒が走った。

 

「うお、っ!?」

 

 脆すぎる世界を揺さぶる地震。もうもうと上がる土煙。

 なるほど、あれが。

 ビルの上を駆けてその方向へ向かえば、やはり。

 

「0Pヴィラン……!」

 

 いい加減にしろ雄英。暇人か。

 僕らしくない悪態だけど、言ってなきゃやってらんないよ。

 昔なら、きっと腰抜かしてたんだろうな。みっともなく震えて、汗かいて。

 響く騒がしさに下を見れば、我先にと逃げ出す受験生たち。当然の反応であり、咎めるものなどいやしない。呆然と突っ立ってるよりかはマシですらあるだろう。

 巨大ロボが、メカメカしい拳を思い切り振り下ろした。

 地面は大きく凹み、瓦礫が散乱する。天災かと言わんばかりだ。あれとまともにタイマン張れるのは、オールマイトか、Mt.レディくらいか。

 

「さて、どうしよう」

 

 煙が晴れると、見覚えのある人物が瓦礫に挟まっているのが見えた。いい加減オーバーヒートしそうな眼だが、捉えた姿は間違えようがなかった。

 僕はその時、考える事もなく、立っていたビルから飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女はやはり、瓦礫から抜け出せなかったらしい。どこか顔色も悪い。

 

「うわ、大丈夫?」

「あ、君は! 真っ先に飛び出した人!!」

「や、そっちなの? 間違ってないけどさ!」

 

 まあ、そうなるよね。

 それはともかく、である。

 

「抜け出せそう?」

「大丈夫! けどちょっと吐きそう……」

「それはどうしようもないよ」

 

 個性のデメリットだろう。それは殺すではなく乗り越えるものだし。

 

「さて」

「何してるの! 逃げなきゃ!!」

「ああ、逃げてくれ」

「何を!?」

 

 いつの間にか抜け出していた女子が、逃げようと急かす。周りの皆んなは安全圏からこのデカいヴィランを見上げている。

 

 

 ああ、逃げるのが正しい。当たり前で合理的。誰だってそうする、僕だってそうする。

 

 けど、僕は僕から逃げるわけにはいかない。

 

 

 どれだけ擦り切れていようと、緑谷出久の原点はヒーローへの憧憬だ。オールマイトという、平和の象徴への憧れだ。

 こんな時、彼ならどうする。彼ならどうした。

 ああ! 逃げてなんていられない!! 

 

「とりあえず、皆はもっと離れてくれ」

 

 OFA・15%。

 たった数%ですら、並の増強系を置き去りにする爆発力は、制御するに余りある力だった。それなりに鍛えた身体では、精々10%にも満たないくらいが限度であった。でも、時間をかけて鍛え直して20%。もともと剣道やってたのが幸を成したか、オールマイトとは違う活用法で戦える。

 スタートの時と同じ。脚力強化で駆け出し、ロボの腕を駆け上がっていく。

 

「あいつ、最初に飛び出したやつじゃねーか!?」

「なんか武器……あれ鉄パイプか!?」

「速い、増強系か!?」

 

 残念、鉄筋です。正解、増強系です。そんなことを考えながら、道中ちょこちょこ線をなぞっていき、腕の機能を止める。だらりと腕が垂れ下がる前に飛び上がり、ヴィランの頭上に飛び上がった。

 さて、インパクトのある1発がいるかな? 

 

 派手に、()そう。

 

「ワン・フォー・オール、100%(フルカウント)!」

 

 

 

 

 

「──SMAASH!!!」

 

 

 

 

 

 

 飛び上がり、拳を突き刺す! 

 ベコリと鉄塊が轟音を立てて凹む。衝撃が地面へ走り、ロボが沈んだ。ついでに空いた左手で鉄筋を頭部の点に投げ込み、重力に身を任せた。

 

「な、なんだよあれ!!?」

「なんてパワーだよ!!?」

 

 周囲が驚愕の目を向けるけど、僕はこの落下をどうするかで頭が一杯である。

 あと普通に痛い。滅茶苦茶痛い。鉄筋で殺せば良かった。

 さて、あと少しで地面と熱烈にハグをすることになる。ただし僕は瀕死になる。さっきので自己暗示途切れたからOFAの手綱を手放してる。

 赤黒いシミになりそう。一周回って焦りが消えているらしい。代わりにさっきヴィランを殴った右腕が痛みを訴えてくる。

 辞世の句でも、などと考えていると、覚えのある浮遊感があった。

 

「ちょ、君大丈夫なん!? 腕ヤバいくらい色変わってるしヤバいくらい腫れてるよ!?」

「いてて……、ああ、また助けてもらっちゃったね……」

「いやいや! ウチも助けて貰ったし、おあいこだって!」

 

 お人好しというか、優しいんだと分かる人だ。

 とりあえず、腫れ上がった右腕はどうしようもない。痛みの原因は内出血やら筋繊維断裂やら骨折やら様々なので、痛みを殺すのは無理だ。というか目の前で傷だらけの腕に、追い討ちをかけるがごとく鉄筋ぶっ刺すなんてやったら流石にマズイ。

 

「あー、僕のことはいいから君は──」

 

 プレゼント・マイクのよく響く声が、試験の終了を知らせた。

 まあ、悲観すらようなものでもないかな。やれることはやったし、インパクトくらいは残せただろうし。

 

「さて、終わった終わった。帰ろうか」

「え? いや、それお医者さんにみせなきゃ!?」

 

 心配してくれてるのはありがたいけど、まあこれくらいで済むことが分かっただけ儲けものだろう。今の僕が出せるのは、精々25%ってところかな。

 ああ、そういえば雄英にはリカバリーガールがいるんだっけ。これ、治せるのだろうか。

 

「まあ、怪我人は学校が対処するって。ほら、行くよ」

「あっ、ちょ!?」

 

 すっかり顔色が良くなってる女子が、チラチラと右腕に視線を向ける。

 そんなに痛そうかな。痛いけど。

 そんなことを思ってたら、ガシ、と腕を掴まれて連行された。

 

「言っても聞かんなら、無理矢理連れてくよ!」

「ちょ、いてて!?」

「問答無用!」

 

 なんか締まらないなぁ。

 僕は途中更衣室で回収した眼鏡をかけて、リカバリーガールのもとへ連行された。

 

 あと、めっちゃ怒られました。こわかったです。

 

 

 

 

 




緑谷出久
個性『ワン・フォー・オール』
オールマイトより継承された個性。極めれば天候すら拳一つで変えられるほどの強大なパワーを持つ超増強系個性。段階的な操作も可能だが、その10分の1ですらも並の増強系に匹敵する力を秘める。部分的な強化も可能。その強力過ぎるパワーは、やり過ぎれば自身の身体に反動が返ってくる諸刃の剣でもある。

『直死の魔眼』
個性にカウントされていない超能力。事実上の個性ではあるが、本人、および「ワン・フォー・オール」はこれを個性であると認識していない。幼い頃の事故をきっかけに発現した、文字通り「死を視る眼」である。
有機無機問わず、活きているものの「死」の要因を読み取り、干渉可能な現象として視覚化する。時間や空間といった概念の死をも視覚化出来るが、その場合は使用者に過剰な負担を強いる。発動時には眼球の色が変化する。また、この眼を直視した者に対する精神威圧効果や、使用者の精神干渉耐性が副次的な効果として発現している。
緑谷は普段、赤髪の女性が手がけた「魔眼殺し」と呼ばれる眼鏡をかけて制御している。

『自己暗示』
赤髪の女性が教えた技能。自己を埋没させ、力の制御や強化を行う。火事場の馬鹿力を意図的に引き出すことが可能。自身にかけられた思考や筋力のリミッターを解除できるようになるが、その場合は自身にも反動が返ってくる。高出力のワン・フォー・オールの制御は基本的にこの形態で行う。なお、他人の声が聞こえなくなるわけではない。
緑谷は元々自分の世界に入りやすい思考回路を持っており、自己暗示習得にはそう時間はかからなかった。



自己暗示は技能。直死の魔眼は個性因子に起因しない身体機能なので個性ではありません。なおもし無理矢理個性に分類するなら『自己暗示』は『精神干渉系個性』、『直死の魔眼』は『常時発動の異形型個性』になるでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。