緑谷出久と直死の魔眼 作:けし
気が向いたので書いてしまった。案の定の仕上がり。
この出久君はメンタルが強いし、視点が俯瞰気味なので子供離れした思考がありますが、やっぱり子供です()。
──勝ち目、なくない?
麗日さんとのペアで、かっちゃんと飯田くんを相手どる。単純な戦闘能力は向こうが上。パワーによるゴリ押しがルール上難しいのなら、どうしても連携が必要になるけど、会って数日の間柄で何ができるというのだろう。
「デ、デクくん、どうしたらいいかな?」
「…………、かっちゃん、もとい爆豪くんは多分我先にと突っ込んでくる。僕も麗日さんも相性悪いから、とにかく時間稼ぎ優先。隙を見て捕縛するか、撒いて核を目指すか」
後ろ向きな案だが、妥当とはいえる。何せこっちはヒーロー役な訳で。ずる賢く、卑怯卑劣万歳、とはいかないわけである。麗日さんは少し納得いかないようだけども、自分たちが確実に勝てる案などないとは分かっているらしい。
そうして、僕たちの戦闘訓練が始まった。
「なあ、緑谷の個性ってなんなんだ?」
切島がそう言った。緑谷と試験会場が同じだった障子が、その時の光景を思い出しながらそれに答えた。
「基本は増強系だと思う。パワーにスピード、瞬間的には砂藤以上かもしれない」
「爆豪ほどじゃないけど、結構鍛えられてたよな」
切島含め、全員納得はしている。
──緑谷出久の個性は増強系である。
それは正しい。緑谷出久の個性は正確には『ワン・フォー・オール』と銘打たれており、現出しているものは増強系である。
個性を『スキル』と呼ぶのなら、それは正しいだろう。
しかし、『アイデンティティ』と銘打って個々人を定義するものとするならば、緑谷出久の個性はそこにはない。
「でさ、爆豪の個性って、正面から戦うと俺でも割と不利だと思うんだけど」
切島が言葉を続ける。彼の個性は『硬化』であり、とにかく頑丈になるというもの。しかしそれでも、『爆破』を相手にするにはキツいという。
「緑谷、強くね?」
漢らしくねーけどさ、という切島が見上げるモニター越しには、爆破を躱し、とにかく時間稼ぎ、徹底的な耐久戦を広げる爆豪と緑谷の姿があった。
天才っていうのは必ずいる。どんな分野であれ。例えばそれはオールマイト。努力を積み上げてきたとはいえ、それもまた才能だ。
そして目の前の幼馴染もまた、そういった天才の類なんだ。
「クソが、ちょこまか逃げ回ってんじゃねェェ!!」
掌から分泌された液体が爆発し、周囲にダメージを与える。反動に耐えうる肉体も含め、それは僕にはない、天与の才能だ。
僕の
麗日さんは逃がした。飯田くんは恐らく狭い空間でも機動には慣れてないだろうから、手近な瓦礫も使うようアドバイスはした。
「かっちゃんが強いからこそ、だよ。今の僕じゃまともにやり合えないからね。当然だ、よ!」
かくいう僕も手近な瓦礫を投げつけるも、それが爆破で砕かれる。
集中を切らすことは許されない。自己暗示によって半ば無意識に維持出来るとは言え、それでも一瞬気を抜くだけでこっちがやられてしまう。
──当面の目標は、OFAを自己暗示なしで制御することかぁ。
などと、つい癖で内心で呟いてしまう。戦況が止まっているために隙にはならなかったし、何より今は僕に余裕がある。オールマイト相手なら考える時間すらも勿体ない。
OFAは10%程度の出力を脚部に回し、全身に3%程度。自己暗示下ならばこのくらいの制御が出来る。
逃げ回れば、当然頭に血が昇る。かっちゃんはそんなタイプだ。逃げ回ってることに加え、
まあ、実力があるので逆らうのも大変なんだけど。
こうしてストレスを溜めさせても、体が覚えているらしい個性制御は手綱を離さない。常人なら肩が外れるほどの反動を易々と受けながらも、空間を自由に駆っている。
──僕には出来ないや。さすが、かっちゃんだ。
オールマイトに並ぶ、一番身近な天才。僕が立っているスタートラインから、僕より遥か先にスタートを決めているんだ。
僕とかっちゃんは、持ってる才能のジャンルが違う。かっちゃんはヒーローになるずば抜けた才能があるし、でもそれは僕にも雀の涙くらいはあるものだ。
僕の才能は、今は縛っている
雄英は当然、ヒーローの才を求める。
僕はみんなに力で勝てない。才能はない。全ては自己満足。
だから、今は心と知恵で戦う。殺人衝動を雁字搦めに押さえ込んで。
「無力で雑魚、僕はそんな感じに見える?」
「あァ!!?」
とりあえず煽る。攻撃が単調になれば御の字、消耗してくれるならそれもまたありだ。
「そう簡単には、やられるデクじゃないよ」
「っ、待てやゴラァァ!!」
逃げる。背を向ける。スタミナは一丁前につけてあるんだ、そう簡単に止まったりはしない。下手に大爆破ができないからには、足を使って追いかけるしかあるまい。
いや、まあ作戦がいるって話。それを立てる時間が欲しい。このまま麗日さんを追うのもありだが、いずれ見つかるのは分かってる。そうすれば挟み撃ちになってゲームオーバー。時間切れになってもこっちの負け。どうにかかっちゃんを倒して、
拙い頭を回して、作戦とも呼べない作戦を立てる。やるのは僕だ、穴があれば自分で埋める。
──さあ、やろうか。
──んー、隙がない。
さて、展開は圧倒的に不利。麗日さんが飯田くんに追い詰められかけている。フロアは真上。かっちゃんを撒いて行くには距離が足りない。
正面戦闘が最善手、か。
「なァんで個性を使わねーんだ、クソナード」
使ってるんですがね。まあ、それはどうでもいい。そもがど派手だと思われがちな個性だから。
「作戦の内、って言っても聞かないよね」
「ナメてんのか、あ"ァ"!?」
そういうとかっちゃんは、両手についた手榴弾風の装備から出てきたピンに手をかけた。
ニトロが溜まってるんだって。
──それはマズいやつだよ!?
爆破を殺すのは簡単だ。だけど、縛っているからにはそれは無理。
ならば、相殺か躱すかの二択。でも、飛んでかわせば格好の的になっちゃう!
ええい、相殺しか手がない!!
「OFA、
空気を殴りつける! このまま風圧でかき消すしかない!
「ぉぉらァァァァッ!」
空気の壁が、かっちゃんの炎を飲み込んで消えた。その先には風圧に煽られて間抜けな顔を晒したかっちゃん!
──チャンス!!
脚部集中、間合いを詰めて。捕縛テープで腕ごと巻き込む。
「なっ、」
『爆豪少年、確保!!』
オールマイトの声が響き、かっちゃんを捕らえたことを認めた。かっちゃんは呪詛じみた呟きと、人を殺せそうな目で僕を睨め付けている。
「ふぅ」
「テメェ! 騙してイイ気にでもなってたのかよ、クソナード!!」
「冗談じゃない。ただ話してなかっただけだって。それより、あの爆破はやり過ぎだよかっちゃん。建物壊れてるし、僕のメガネも壊れるとこだったんだから」
「テメェのメガネなんぞ知るか!」
「これワンオフ物なんだけど。幾らかは知らないけどさ」
酷い言いようである。ヒーロー……? ヒーローって何だっけ……。
ちなみにこのメガネは言うまでもなく『魔眼殺し』のメガネだ。僕は眼を制御出来ていないので、これがないと脳がオーバーフローしかねないのだ。大事なアイテムなので壊すのはやめてほしい。
さて、時間もないのでさっさと終わらせる。予定通り数的有利は得られた。一気呵成に畳み掛ける!
『ヒーローチーム、WIN!!』
魔眼なしだと、まだこのくらいか。まあ魔眼ありだとしても殺しは不可能なわけで。それに自己暗示も綻んでいたようで、制御が緩んでいた。右腕痛い。反省だ。
うわ、コスチュームもボロボロだぁ。ごめんなさい、お母さん。
次回、『救助訓練と直死の魔眼』