コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第十四話 オーブから

 

 

 その頃、アーク・エンジェルの艦橋に二人の者が連れてこられていた。

 捕虜になっているディアッカとイザークだ。

 

「何の真似だ? こんな場所に俺たちを」

「あなたたちに、兵の撤退支援をお願いしたい。デュエルとバスターの整備は終わっているわ。今は電磁波兵器にやられてOSは使えないけれど」

「はっ、お断りだ! 誰がお前たちなんかに。捕虜を協力させようってのが理解できないね。だいたいにしてOSがなけりゃMSが動かせるわけがない」

 

 マリュー・ラミアスは、キラがストライクを動かせるなら、コーディネイターであるディアッカとイザークも動かせるのではないかと思ったのだ。

 それをすげなくディアッカが断った。

 

「無理なのなら、仕方がないわ。キラ君が特別なのね」

「何だって!? じゃあ奴は、まさかOS無しで動けてんのか…… 参ったね。俺には全然無理な芸当だ。最初から協力する気もなかったが」

「本当なら捕虜虐待になるのかもしれない…… 捕虜を無理に協力させることは。でも、今は本当の緊急事態だった。これを見てもらえるかしら」

「何……」

 

 マリュー・ラミアスに言われ、ディアッカとイザークは見ることになった。

 

 ストライクから離れた戦場、そこではザフトが思うさま暴れていた。新兵器によって一気に有利になったのだから、当然そうなる。それは戦争だから何もおかしなことではない。

 だがしかし…… 堡塁や装甲車から出てきて、丸腰のまま逃げ惑う連合兵を撃ちまくっていたのだ!

 もう手を上げて、降伏しているのに。

 負けを認め、憐れみを乞うている兵を…… いや、撃つのならまだしも敢えて踏み潰していく。苦痛と断末魔の悲鳴が続く中、容赦なく命を刈り取っていく。

 

「こ、これは…… お前ら、止めろ!」

 

 ザフト兵にそんな声が聞こえるはずもないのにディアッカは叫んでしまう。逆にザフト兵たちが言う、「ナチュラルの捕虜なんざ、要らねえんだよ!」という声も聞こえてはいない。

 ディアッカはザフト兵らしくナチュラル差別主義だが、さすがに降伏している兵の虐殺は見かねたのだ。

 そしてイザークの方は無言である。またしても自分が避難民を殺したことを思いだしているのだろうか。

 

 

 

 

 陥落したパナマ基地を後にして、アーク・エンジェルは洋上を飛ぶ。

 

 行き先はオーブだ。

 艦長マリュー・ラミアスがそう決めた。

 

「アーク・エンジェルは中立国オーブにしばらくいることにするわ」

「…… 艦長、それはどういった必然性が? 確かにここから近い連合の基地はないのですが、それでも中立国に寄港するのは政治的に問題となります。いわば連合がオーブに借りを作ることにもなりますから」

「ナタル、あなたも分かっていると思うけど…… 連合の上層部のやり方は酷いものよ。アラスカ基地でそれが判明した」

「上層部批判はそれまでにした方がいいでしょう、艦長。アーク・エンジェルは連合の艦であり、そんな理由でオーブへ行くというなら問題になります」

 

 ナタル中尉はあくまで反対の構えを見せたが、それでもアーク・エンジェルはオーブへ向かった。

 

 

 

 しかしオーブの方がアーク・エンジェルを簡単には受け入れなかったのだ。

 思いがけず、洋上戦力を出してアーク・エンジェルを拒む態度を見せた。

 一時寄港であることを訴えても埒が明かなかったが、何とその通信へ割り込む者がいる。

 

「カガリ・ユラ・アスハだ! 私が乗っているんだぞ!」

 

 驚いたことにカガリ少女はオーブ首長の娘を名乗った! それでオーブの洋上戦力を牽制にかかったのだ。

 しかしまあこの少女が姫だとは…… どんな教育をしたらこうなるのだろう。

 別に悪い意味で言うのではないのだが。

 

 しかしながら俺が見るところ、状況はさほど深刻ではない。オーブ側が本気で戦闘をするような態勢には思えないからである。

 そういった機微は、数多くの艦隊戦をくぐってきた俺にはよく分かる。

 結局のところ中立国としての単なるポーズであって、アーク・エンジェルを本気で阻んでいるのではなく、事実ほどなくして入港できた。

 

 

 

 さて、俺はここオーブにおいて少なくとも当初は何もやることがない。

 気楽といえばそうだ。

 まあ、周りの人間は多少バタバタしていたのかもしれないが。

 

「サイ…… やっぱり僕はコーディネイターだから、仲間にはなれないのかなあ」

「ん? またそんな話か、キラ君」

「僕はパナマ基地で化け物だって言われたんだ」

 

 キラ君が俺のところに来てそう言う。

 パナマ基地でかなりショックだったのだろう。ストライクガンダムに乗り、連合の役に立つことで自分なりに打開策を求めていたのに…… しかしその結果は、かえって連合兵たちから化け物呼ばわりされたのだから気の毒だ。

 

「キラ君、一つ言っておこう。昔、俺の知っている中でニュータイプと呼ばれた者たちがいた。MSに乗って特別な戦果を挙げた者たちだ。それはもう凄い戦いぶりだった。だがな、ニュータイプだって実に人間らしかったんだ。失敗もしたし、勘違いも多かったし、色々ひどいものだ。戦いで凄いからといって何も変わることはなく、ただの人間だからそうなる。単に見る側が特別な目で見てしまっただけの話だ」

「……」

「コーディネイターとやらも同じだろう。どういう目で見られたとしても、人間であることには変わりがない。まさかキラ君は自分が人間じゃないとでも思っているのか? そして大事なことを言うが、見る側の問題までいちいち考える義務はない。ならば君がブレる必要はなく、堂々としていればいい」

「サイ、そうなんだね。見る側の問題まで背負うことはない……分かった気がする」

 

 話が通じないかもしれないが、俺はかつてニュータイプと呼ばれた人たち、特にシャア・アズナブルのことを考えながら言った。

 奴は能力が多少違うからといって排斥されることなど恐れてはいなかった。いやそれどころじゃない。むしろ奴は堂々とし過ぎていて、困るくらいだったじゃないか? 

 キラ君も周りのことなど気にしなくていい。

 

 

「あ! ここにいた。キラ! 思い詰めることはないぞ! お前は何も悪くない」

 

 またしてもカガリ少女がやってきて、いきなりキラ君を抱きとめる。

 そういう癖があるのか? たぶんキラ君の様子を見て心配になったのだろうけれど。

 これで大丈夫だ。

 俺の言葉のせいなのか、カガリ少女によしよしされたせいなのか、キラ君の瞳に光が戻っている。

 

 そして俺はふと気付いた。

 この様子を離れたところからあの赤髪の女が見ていたのだ。

 特にカガリ少女を見ている。憎らし気な目で。

 一つ思ったのだが、たぶんカガリ少女は何も考えていないからこそ簡単にキラ君に抱き付くのだ。そこに他意はない。まあ、俺にはそれを赤髪の女に説明する義理はないので放置するが。

 

 

 

 そういった個人事とは別の動きがある。

 オーブはアーク・エンジェルが寄港する見返りにストライクガンダムのデータ供与とキラ・ヤマトの開発協力を求めてきた。

 それにはキラだけではなく、欲張ってディアッカやイザークのデータまで欲しがっていた。オーブのモルゲンレーテ社からすれば棚からぼた餅の気分だろう。これで一気にオーブ独自MSの開発が進むのだから。

 

 そして…… 思わぬ再会があった。

 

「まさか…… おい、嘘だろ? どうしてニコルが、ここにいる!」

「ディアッカ! イザーク! そっちこそどうして! MIA認定されてるんだよ。二人が死ぬなんて思っていなかったけれど」

「ああ、それはジブラルタル基地のクソッタレのせいだ。置いてけぼりにされたからな。仕方なく足付きの捕虜になっちまったってわけさ。で、ニコルも捕虜か? ブリッツが負けたのか、足付き以外に」

 

 驚きは三人とも似たり寄ったりだ。

 オーブで再会するなど想像の範囲外である。しかし喜んではいられない。特にニコルは伝えなくてはならないことがある。

 

「僕は、敵にやられたんじゃない。クルーゼ隊長に墜とされた」

「隊長に!?」

 

「聞いてほしい。クルーゼ隊長はザフトを裏切っている。連合の協力者になってザフトの情報を流してる」

「おい! おかしなことを言うな。クルーゼ隊長はあんなに連合を叩いてるんだぞ。それがどうしてスパイのような真似を」

「でも本当なんだ。隊長は連合もザフトも潰したいとかよく分からないことを言ってたけど…… とにかくこれを早くアスランにも伝えなくちゃ」

 

 ニコルが話すのでなければとうてい信じなかったろう。

 しかしディアッカもイザークもニコルがそんなことを冗談で言ったりしないことを知っている。

 

 

「その坊やを信じてやるべきね。ブリッツはザフトのシグーに斬られてる。精査すれば科学者の目をごまかすことはできないわ」

 

 横からモルゲンレーテ社のエリカ・シモンズも言い添える。

 とにかくこの事実をディアッカとイザークはどう受け止めるべきか。

 

「ちょっと待ってくれ。世の中が一気に複雑になった気分だぜ」

 

 そしてどうすればいいかは自分で考えるしかない。

 

 

 

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