コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第十七話 オノゴロ島の死闘 後編

 

 

 ここからはオーブ側の守勢に移る。

 

 吐き出されていく大量の連合MSストライクダガーがオノゴロ島に取り付き始めた。

 これらを一旦は止めなくてはならない。

 ミサイルを投げて身軽になったキラ君たちは降下方向を曲げて海岸に降り、直ちに向かう。

 そしてストライクダガーと戦闘に入るのだが……キラ君は当然としても、意外にディアッカ君、イザーク君も強いじゃないか! 意外と言っては失礼なのか? ザフトではエリートらしいから……ともあれ数多いストライクダガーに負けていない。

 頼むぞ。ここで踏ん張り、もっともっと連合のストライクダガーを引き付けてくれ。

 

 ただ…… 俺は最も見たくないものを見てしまった!

 

 連合のMSはストライクダガーだけではなかった。

 ガンダムだ!

 連合にも新たなガンダムがいるぞ。しかも三機、もう俺は具合が悪くなりそうだ……

 そしてやはりガンダムは強く、オーブの装甲車両を蹴散らし、堡塁を破壊し、どんどん進んで行くではないか。

 通常戦力ではとうてい相手にならない。

 

 

 

「必殺ゥ! 邪魔するなァ!」

「ちッ、うるせえなクロトは。しょうがねえ」

 

 この様子を見て危険だと思ったのか、そこへオーブのMSアストレイ三機が駆けつけてきたのだが……

 これはまずい! たぶん連合側の新しいガンダム三機にかなわず、やられてしまうだろう。

 

「はァン? 何なの、敵のMS? なら死になよ」

「シャニ、そいつらは僕がやる!」

「命令なんか……しないでくれるかなあ!」

 

 動きがまるで違う。常識外なほど戦意に溢れた連合のガンダムがオーブのアストレイに襲い掛かる!

 立ち向かおうとしたアストレイたちはその速さと火力に戸惑うばかりだ。

 

 ついにアストレイ一機がビームを肩に受け、動きを止めてしまったところ、更に脚を撃たれる。もはや倒れるしかない。

 コックピット直撃でなかったのは幸いだ。そのはずだったのだが……大破したアストレイに対し、連合のガンダムは何と止めを刺しに来ている!

 たまらずもう一機のアストレイが間に入り、阻止に動いた。

 だが、それもまた斬り払われて直ぐに大破だ。

 

 

 そこで応援が来た!

 デュエルと呼ばれるガンダムだ。キラ君のストライクやバスターは多数の連合MSと戦っており、動ける余裕がない。

 

「こいつ滅殺ゥ! 旧型のくせに! たった一機で!」

 

 しかしながらデュエルは退かない。

 一機だけで相手取るのだから損傷は避けられないが、それでもアストレイたちを庇いつつ、攻撃をいなし続ける。これは見事としか言いようがない。

 

 

 

 オノゴロ島の陸上戦は佳境に入った。

 連合のMSは数にものを言わせて戦いを優位に進めている。逆に言えば、揚陸艦からMSが出尽くしたということでもある。

 

 この時、もはや勝負はついたのだ。

 俺の戦術は連合の艦隊を破る。それが確定した。

 

「ラミアス艦長、次はあれを出す。連絡をお願いする」

「分かったわサイ君。オーブ国防軍第一護衛艦隊に連絡! 出撃を!」

 

 すると島陰からオーブの護衛艦が六隻ほど姿を現した。

 今まで地形を利用して隠れていたのだ。

 そして全速をもって真っすぐに連合の艦隊へ突進していく!

 

 これには連合の方も一瞬驚いたようだが、別に不思議な魔術というものではない。いつかはオーブだって水上戦力を出してくる、ホームならではの奇襲といえども予想外ということには値しない。

 連合は直ちに艦対艦ミサイルにより迎撃を始める。加えて砲撃や雷撃が続く。ある意味MSがない時代の水上戦そのものだ。

 むしろ連合の艦隊にとっては本懐ともいうべき戦い方なのだろう。

 これに対し、オーブの護衛艦は沈黙を保っている。そのまま速力を緩めることなく突進だけを続けているのだ。

 

 だが、連合の熾烈な攻撃の前に一隻また一隻と足が止まり、やがて轟沈していく。

 

「連合からすれば無謀な特攻に見えるだろうな。破れかぶれの自殺志願だと」

「そうねサイ君。無人艦だけど……」

「多少もったいないとも思うが、どのみち護衛艦の使いようはなく、目くらましに使えればいい。この撃沈で海中は何も探査が効かなくなっただろう」

 

 そう、これだけの激しい攻撃と撃沈なのだ。海は泡立ち、ソナーも何も使いようがない。

 

 そこで俺の決め手が牙を剥いた!

 

 海中に潜んでいたブリッツと呼ばれるガンダム、そしてアストレイたちが今、浮上しつつ連合の強襲揚陸艦を狙う!

 

 俺は以前アーク・エンジェルが海中のザフトMSと戦うのを見ている。その時、驚いたことにキラ君のストライクガンダムは海中で動けていた! 俺の記憶では、ジオンのザクなんかは全く海中で使えず、そのためにズゴックというような水中用MSが開発されていたものだが。ここのガンダムは違うらしい。

 だったら…… こういった戦術も使える。どのみちオーブの浅い海では水圧も大したことはなく、MSは宇宙戦が本領なのだから酸素なども全く問題ない。

 

「これで縦軸戦術の完成となる。連合の艦隊は撤退以外の選択肢はない」

「本当に恐ろしいわサイ君。高空からの攻撃と海底からの攻撃のコンビネーションなんて」

「これが戦術なのだ。ラミアス艦長、ゆっくりと学べばいい」

 

 今回の戦いに当たって俺のとった戦術は縦軸戦術だった。

 といっても数多くの宇宙戦を戦ってきた俺にすれば、三次元的思考をするのはむしろ普通であり、最初から水面に囚われることはない。

 

 

 

 たちまち連合の強襲揚陸艦が沈み始める。近距離からのビーム、あるいは艦底を斬られたら当然そうなる。

 これには連合の方も大慌てだ。

 

「ダーレス少将、何を無様な!」

「これはMSの攻撃…… アズラエル理事、オーブがこんな手を」

「いいから早く反撃を! 駆逐艦がいるんだから爆雷でも何でもあるでしょう!」

 

 そして連合は海中へ反撃を試みるが……全く無駄だった。

 充分な防御と戦艦のような火力、このコンセプトで生まれたのがMSなのだ。爆雷では直撃でもしない限り問題ない。ましてやミサイルよりはるかに鈍足な魚雷など何の脅威にもならない。

 

「全然ダメ! ならば砲撃です!」

「アズラエル理事、斜め方向から撃つのでは、砲弾が海面で弾かれますが」

「もっと頭使ったらどうなの! ビームで撃てば届くはず、早く!」

 

 連合の方は思い切ったことをしてきた。

 本来対空用のビームを海中に撃ち込んでくるとは。浅い海ではMSの場所もうっすら分かるから、それもまた良い手だろう。

 だがしかし、そんなことを俺が考えていないはずがない。

 俺はコンスコンだ。

 

 

 

 連合が雨あられと撃つビームは、しかしちっとも当たらない!

 

「当然そうなるな。ラミアス艦長」

「連合がビームを使っているのに、全然当たってない…… 不思議だわ、サイ君」

「屈折だ。ビームは海面で曲がる。しかもMSが目で見えていればなおさら厄介になるんだ。見える光とビームでは屈折の形が違うからな。余計に当たらなくなる。つまりMSを何とかするにはやはりMSしかなく、連合が今さらそれに気が付いても、MSを陸から戻す前に揚陸艦は全て失われている」

 

 マリュー・ラミアスは感嘆の表情だ。

 これで勝った。勝ってしまったというべきか。

 全てのピースがはまり、予定されていた勝利を掴むことができた。

 

 

 一方で連合は敗北を認められず、未だ艦隊をジグザク航行させている。

 

「オーブは揚陸艦ばかりを…… 旗艦も危ない! 空母に移らせて頂く。あの三人も空母へ」

「アズラエル理事、あのMSたちを空母へ!? しかし航空機用の空母にMSを収容する設備はないはず」

 

 このダーレス少将の言葉にムルタ・アズラエルは苛立ちを隠せない。アズラエルは決して馬鹿ではなく、決断力もある。

 

「だからそういう思い込みをするから軍人さんはダメなんです! とりあえず載せて運べればいいでしょう。邪魔な飛行機なんか蹴り落とさせます。どうせ使いようもないんだから。ああ、空母の医療設備にあの三人用のグリフェプタンがあることだけ確認しといて下さい」

 

 連合はガンダムたちだけを先に空母へ戻させる。そのうちに無事な強襲揚陸艦はなくなり、他のストライクダガーという量産MSはどこにも戻る場所をなくしてしまう。

 それでもしばらく陸上戦で戦っていたが、どのみち無駄なのだ。オーブ側が弾薬を消耗させる持久戦に切り替えたら、もはや降伏は時間の問題ということが誰にでも分かる。

 むろんMSという攻め手を欠くことになった連合の艦隊もどうしようもない。

 ようやく負けを認め、順次ストライクダガーを海中のオーブ側MSの牽制に使っては、乗員だけ救助して使い捨てる。それでようやく艦隊も撤退する。

 

 

 

 こうしてオーブ防衛戦は終わった。

 

 俺は帰還してくる者たちを出迎える。むろんそこには激闘を終え、高揚したキラ君たちがいる。

 他にも…… 俺は面白いものを見た。

 

「ほら、お礼言いなさいよ、マユラ」

「分かったわよアサギ。あんたもでしょ」

 

 アストレイというMSのパイロットらしい少女三人が、遅れて帰還してくるデュエルガンダムを出迎える。そしてデュエルから出てきた銀髪のパイロットに言うのだ。

 

「あの、助けてくれて、ありがとうございます!」「凄く強いんですね! 私も守ってもらいました!」

 

 すると、それを見た銀髪のパイロットは一瞬きょとんとしたようだった。

 

「俺が守った? あ、ああ、無事だったか」

 

 少女たちが顔を赤らめ、それぞれ礼を言った後に走り去る。銀髪のパイロットの方は立ち止ったままだ。

 

「俺が守った…… 俺が」

 

 

 それを見ていた俺が声をかける。

 

「君は確か、イザーク君だったかな。どうした不思議そうな顔をして。誰かを守って戦ったことはなかったのか」

「…………」

「素晴らしい戦いぶりだったぞ。未熟なパイロットたちをとにかく庇っていた」

「いや、俺はただ…… しかし途中から力が湧いてきて」

「守って戦うのはいいものだろう。君は本来、そうして戦いたがっているのではないかな」

 

 

 あとは戦いつつ、自分で答えを見出してくれイザーク君。

 偉大なパイロットというのはそうやって成長していくものだ。

 

 

 

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