コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第二話  砂漠の戦術

 

 

 俺はマリュー・ラミアス艦長に助けられ、艦橋を出る。

 

 そして考え込んでしまう。この世界でも戦争があるのだが…… まあ人類に戦争があるのはことさら不思議ではないのだが、問題はその原因なのだ。

 

 戦争はナチュラルとコーディネイターという二つの陣営で行われている。その他に小さな中立国オーブというものがあるが、これは俺の知るサイド6のようなものなのか。

 ナチュラルはほぼ地球に、コーディネイターはほぼ宇宙のプラントと呼ばれるコロニーに住んでいる。というより宇宙時代に合わせて遺伝子を改変したものがコーディネイターだ。

 

 コーディネイター…… 俺は思い返す。

 確かプルプルーと言っていた十二人の少女たちもその部類に入るものではなかっただろうか。遺伝子を組み替えて誕生したということも、同じである。

 その少女たちの成長を近くで見ていたが性格は別に普通だったはずではないか。確かに力が強いとかいろいろな特徴はあったのだが、それだけのことである。コーディネイターだろうと人間は人間、当たり前の話だ。

 

 

 この世界ではナチュラルとコーディネイターが戦争をしているようだが、それは地球連邦とジオン公国で行われたあの戦争と構図は似ている。

 ただしその内容は大違いなのだ。

 記録を見て俺は気付いたのだが、戦いには戦術などを考えている形跡がない。

 これは相手を憎み、殺す、それだけを考えてやっているせいであり、正確に言えば戦争でもなんでもない。

 

 ただの殺し合いだ。

 

 そして戦争初期には核攻撃まで行われている。

 かつてジオンのギレン・ザビ総帥も大量殺戮を伴う作戦を実行したが、これは超短期決戦でなければ国力的にジオンの勝利がない、連邦を屈服させられない、そういう戦略的理由があった。

 だがここでは純粋に相手の命を奪い絶滅させる意図がある。

 

 こんな殺し合いなど認めることはできない。

 いや、認めない!

 俺はコンスコン。平和と命を守るものだ。

 この戦争を止めなくてはならない。そのためにできることは何なのだろう……

 

 

 

 

 そんなことを考えて歩いていたら、誰かとぶつかりそうになった。

 

「あ、サイ」

「いや悪かった。考え事をしていたものでな」

「考え事って、まさか僕のこと…… 僕とアスランが……」

「全然違うぞ」

「この艦で、僕はコーディネイターだから、信用されないのは分かってる」

「だからそうじゃないと言ってるんだ。ん? 君がコーディネイター?」

 

 ここで俺は茶色髪をした少年の話を聞く。

 この少年の名はキラ・ヤマト。純粋そうな性格で、何やら悩みを抱えている。それが大きすぎるせいで、俺の中身がサイ・アーガイルでないことにも気が付かない。

 

「僕はコーディネイターだけど、この艦を守りたい。守らなきゃいけない人がいる。戦って……そうしたいんだ」

「いいじゃないかキラ君! 何が問題なんだ」

 

 そして俺は一つだけ当たり前のことを付け足した。

 

「ちょっと聞きたいが、君はナチュラルかコーディネイターか、選んで生まれてきたのかね」

「いや、まさかそんな……」

「だったら何の問題もない。ナチュラルかコーディネイターかということは全く君の責任じゃない。自分がどの陣営にいるかは自分で決めるものであって、生まれで決められてしまう方がおかしい。そして守るために戦うとは、なかなかいい心がけじゃないか」

 

「でも僕はコーディネイターで、それはどうにもできないことだから」

「悩むということは人間だからだ。だったら君はナチュラルでもコーディネイターでもない、一人の人間だ。そう宣言してしまえ。それ以外に言いようがない」

「サイ……」

 

 何か俺はいいことを言ったんだろうか。

 この少年の瞳に光が戻ってきたような気がする。

 あれ、このキラキラ感は…… まるでかつてのガトーのようじゃないか?

 

 

 

「ありがとうサイ。そう言ってもらえて嬉しかった。でも、何だかおかしいな。サイがいつものサイじゃなくて、別の人みたいだ」

「え、それは気のせいだぞ。俺の名はサイというものらしいからな!」

「…………」

 

 おまけにサイという二等兵だ。

 階級にこだわるわけじゃないが、さすがに俺は二等兵になったことはない。士官学校を出た時には准尉だったからだ。

 そして二等兵の立場ではやれることの幅がだいぶ狭いかもしれないな。

 

「でも本当にサイは大人だね」

「はは、そうか。では名前も変えて、コンスコンとでも呼んでくれ」

「何それ」

 

 そしてちょっと元気の出たらしい少年と別れる。

 キラ・ヤマト、君も純粋だから悪い人に騙されないようにな!

 

 

 

 

 そしてアーク・エンジェルが軍艦であるからには、やっぱり戦いに出くわす。

 しかもそれは夜半だった。

 

「全艦緊急警報発令! 第一級戦闘配備!」

 

 いやあ懐かしい、とばかり言ってもいられない。やっぱり戦いとなれば緊張が伴うのが当たり前だ。今から命のやり取りをするのだから。

 

 俺は慌てて走り艦橋に入る。また昇って自分のシートに就くが、さて問題がある。CICというものがさっぱり分からない! そんな訓練なんか受けたことないからな!

 ただし背中合わせに座っているもう一人の要員がこなしてくれているようで、これは助かる。

 

「キラ・ヤマト、ストライク発進せよ!」

「ストライク、出ます!」

 

 うわあ、俺が見ているものは何だ!?

 ここでガンダムを見てしまうとは! 見事なほどにガンダムの形をしたMSが艦から出ていく。これ味方、味方だよな?

 俺のメンタルに悪すぎる。トラウマをぐいぐい突いてこられるじゃないか。

 驚いたことにパイロットはさっきの純粋な少年だった。なるほど、貴重なMS戦力をあの少年が担い、この艦を守っているというわけだな。

 

 ここに座っていると戦いの様子がよく分かる。

 ガンダムがガンダムであるからには、その圧倒的強さで戦いは簡単に終わるのかと思いきやそうはなっていない。

 相手のMSは何と犬のような形をしている! その機動力の高さがガンダムを上回っているのだ。犬のような四つ足を使うから砂漠の砂でもうまく反発力を使い、接地と同時に動きを変えることができる。

 

「何あのMS…… ザフトはこんなものまで…… やはりザフトはMSの開発で一歩も二歩も先を行っている」

 

 艦長もそう言っているからには、たぶん初めて出くわしたタイプなんだろうな。

 

 

 

 そして戦闘命令は主にナタル・バジルール中尉が行っている。副長兼火器管制官なのだろう。

 

「敵MSをこれ以上アーク・エンジェルに寄せるな! それが難しければ……止むを得ない。対艦ミサイル、スレッジハマー用意!」

「ナタル、それではキラ君に当たる可能性があります」

「しかし戦況は押されつつあり、ここは使用許可を、艦長!」

 

 うむむ、なるほど敵MSを排除するため、艦からの武器で一掃しようという考えか。しかし味方のMSを巻き込むのはいかにもまずいし、しかも対艦ミサイルなど敵MSに当てられるだろうか。それができるくらいなら最初から苦労しない。

 第一、戦況がそんなに悪いのか?

 

「それはもう少し待って…… 敵部隊の後続はいるの? サイ君」

 

 ここで艦長が俺の方を向いて聞いてきた。まあ今の俺の役割は索敵や航行管制のようだから当然だ。

 しかし、斜め上の回答を返してやろう。

 俺はコンスコンなのだ!

 

 

「そんなことをする必要はない。()()()()()()()()、マリュー・ラミアス艦長」

「な、何を言ってるの」

 

 そして俺は驚いて固まる艦長を置いて、ナタル中尉の方を向く。

 

「あの敵MSは砂漠の戦いに特化している。だが俺から言わせれば特化し過ぎだ。そこを突けばいい。ナタル中尉、バリアント発射用意!」

「素人が何を言う! 砲撃など当たるものか!」

「当然そうだ。当てるのではない。射軸は敵MSから50mほど前方にずらせ」

「口を出すな! サイ、貴様何の権限で」

「言い争う暇はないぞ中尉。撃て!」

 

 この様子を見ていた艦長は、俺の意図が何となく分かったようだ。

 

「ナタル、その通りにして。バリアント斉射!」

 

 そしてアーク・エンジェルから放たれた攻撃は敵MSには当たらず、というか当てず、砂漠に呑み込まれる。そこから柔らかい砂を激しく巻き上げる!

 これが俺の狙いだ。

 味方ガンダムに危険を与えることなく、先ずは砂塵によって相手の視野を妨げる。夜間の暗視装置は光と砂には弱かろう。これでひとまず動きを止める。

 

「この艦は新鋭艦らしく、武装が豊富で戦術ヴァリエーションが広く取れる。ナタル中尉、次はゴッドフリート発射用意! 敵MSの進行方向を薙ぐように砂に当てろ」

 

 今度はビームの出番だ。これで撫でてやれば、その高温で砂の表面は溶ける。犬型のMSは重心が低くて全体が砂地に接しているようなものだから、高温の砂地は辛いはずだ。帯状に作られた熱砂で行動が狭められてしまう。

 

 そこをすかさずキラ君のガンダムが仕留める。

 

 犬型MSを二機墜とすと、敵の母艦は砲撃を止め、増援のMSを出すこともなく撤退していった。

 

 

 

「単なる様子見で一当てに来たといったところだろうか。敵の指揮官は優秀だな」

「貴様はいったい……」

 

 思いが顔に出やすいのだろう、ナタル中尉は複雑な表情を見せる。

 俺はそこから目を離し、艦長に向く。

 

「武装というものは敵に当てるばかりが能ではない。もう一度言うが、()()()()()()()()

「サイ君、あなたは……」

 

 

 

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