コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第二十一話 織りなす色

 

 

 やっと宇宙に来たな!

 俺はそれを万感の思いで言ってみる。

 

 宇宙は闇だ。むろん空気は存在せず、代わりに危険な放射線があり、当たり前だが人間に決して優しくない。それでも俺には故郷に感じられてしまう。やっぱり俺はサイド3出身の生粋のスペースノイドなのだ。

 

 なんてことを思いながらアーク・エンジェルの食堂でジュースを飲んでいる。

 決して紅茶ではないぞ。いや別に嫌いなことはないのだが、なんとなく。

 

 

「キラ、私は政治家に向いてると思うか? この前も思い知った。理想論では誰も何も動かすことができなかった」

「この前の会議のことを言ってるの? カガリ。でもいいんじゃないかな。会議では結局プトレマイオス基地の救援をすることになったし」

「そんなことを言ってるんじゃない! 分かってるだろ!」

 

 おっ? ここでカガリ少女とキラ君が話しているのか。

 いつになくカガリ少女が難しい顔をしているな。聞こえてきた会話の内容も……政治家としての資質とはなかなか厄介な問題だ。

 

「あはは、なら今度は僕がカガリに大丈夫だと言ってあげるよ。いつもいつもカガリに僕の方がそう言われてるから、今度はお返しだ」

「何だそれは……根拠もないくせに」

「その方がなんだか妹みたいでいいな」

「バカにするな! だいたいキラと私は、たしか同い年だったはずじゃないか!」

 

 見ていると言い争いさえ微笑ましいと思う。

 この少年少女はザフトと連合の戦争さえなければ、こうやって楽しく会話を続けられたのだろう。

 

 しかしま、このカガリ少女の言う事に対し、俺も年寄りじみたことを言ってやろうかな。

 

「ちょっといいかな、カガリ君」

「お前、いやサイ、君?」

「さっきの会話を聞いていたが、理想主義と政治家の問題でいいんだろうか」

「そ、そうだ。私は全然皆を動かせず、サイ君の戦術という具体的なものがなければ、今回の救出作戦も始められなかった」

「君は理想を語ったんだな。いいじゃないか。政治家としてそれだけではいけないのだが、しかし理想の無い政治家はもっと有り得ない。いや、いてはならない」

 

 俺はドズル閣下から聞いたことがある。

 あの偉大な政治家キシリア閣下も若い時は理想主義者であり、それに走りがちだったと。

 サイド3が次第に階級社会に陥り、支配層が固定化していくのを打開しようとしたらしい。まあ、結局はキシリア閣下の政治家としての芽はギレン総帥に押さえつけられてしまった。

 しかしギレン総帥がいなくなった後、キシリア閣下は見事に政治家としての能力を開花させた。

 しかもそれだけではない!

 初めに描いた理想の青写真を大切に持ち続け、粘り強く歩み、ついには成し遂げたんだ。

 

 理想は大事だ。決して時局がそぐわないからといって投げ捨てるものではない。理想を捨てない者こそ政治家たるべきだ。

 だからカガリ君は良い道にいる。

 

「カガリ君、理想主義、大いに結構だ。政治家としての第一関門は突破だな。あとは勉強して視野を広げた方がいいが、まだ焦ることはない」

「そうか! それを聞けてなんだか嬉しいな。よし、勉強をしよう。じゃあな、サイ君、キラも」

 

 俺は焦るなというのに動きの早い少女だな。

 話が終わるともう駆けていった。

 残されたキラ君も唖然としているようだが、むろん良かったという安堵が感じられる。

 

 

 

 

 宇宙の一方では、まさにその理想主義のゆえにとんでもないことになりつつある。

 

「誰かの悪意を感じざるを得ない。勝手に料理され、皿に載せられた嫌な気分だ。きっと悪意の塊クルーゼあたりの仕業だな」

「そうだとしても、機会であることは確かだ」

 

 初めの発言は、アンドリュー・バルトフェルドのものだった!

 

 ザフトの上層部は砂漠の虎の隊長バルトフェルドを宇宙に呼び戻していたのだ。

 そこに誰かの思惑が隠されているのかもしれないが、れっきとした名目が存在する。日増しに高まる連合の物量という圧力に耐えかね、ザフトはついにヴィクトリア基地をマス・ドライバーごと破壊することに決めたのだ。以後、地球表面のザフト勢力はカーペンタリア基地と、その近傍にあってマス・ドライバーを持つカオシュン基地に集約していく。長いことザフトの主要基地であったジブラルタル基地でさえ放棄する。

 そんな情勢ならアフリカの砂漠の虎も用済みになってくる。

 ならば数々の功績をあげたその隊長を宇宙に呼び戻し、新たな任につかせるのは何もおかしいことではない。

 ただし、バルトフェルドとその恋人であり優れた砲撃手でもあるアイシャが、何と新造艦エターナルに配備されたとは!

 

 むろん、バルトフェルドの洞察は正しい。

 裏でやはりラウ・ル・クルーゼが糸を引いていたのだ。クルーゼはザフトに批判的な者を調べ上げ、バルトフェルドに目を付けた。

 それを陰謀の最後の一手として使う。

 エターナルに乗せればプラントの穏健派が接触し、まとまってザフトを脱走するだろうというお膳立てだ。

 

 そして今、バルトフェルドと話しているのはまさにそのシーゲル・クラインである。

 

「ラクスもエターナルに乗せる。それを既にダコスタに頼んである。後は、よろしく頼む」

「お嬢様までザフトを脱走するとなれば、そりゃ大ごとだ。急進派がこれを利用し、ただで済ますはずはない。なら一緒にどうですか。親子でエターナルへ」

「ありがたい申し出だが私は残らねばならない。私が責任を取り、処罰されねば、残された穏健派のカナーバ君たちに累が及ぶ」

 

 シーゲル・クラインはもはや通常の方法ではパトリック・ザラを止められないのが分かっている。

 今、プラントの最高評議会はパトリック・ザラや、それを信奉するエザリア・ジュールらの意のままになり、全てが決められていく。

 連合との戦いは果てしなく続くだろう。

 核兵器を消滅させることでやがて和平に至るという自分の選択は無駄になった。

 やむを得ず今、クラインは非合法の手段をとることを決断した。むろんそれにより自分は処罰されるだろうが、どのみち何もしなくとも排除されることは明らかだ。その前にザフトに懐疑的な者をエターナルに乗せ、ザフトから造反させる。穏健派も独自の戦力を持つために。

 

 おまけにこれは唯一のチャンスである。

 少数でもできるだけ高い戦力を持たせるため、新造戦艦と新規開発MSを奪取すべきなのである。

 そして…… 都合が良いことにアスラン・ザラもいるのだ。

 つい先日アスランは父パトリックと会い、完全に手切れになったと聞いている。それなら穏健派に賛同し、エターナルに乗ってくれるだろう。

 しかし、シーゲル・クライン本人は残ることに決めている。

 

「その覚悟は、きれいなんですがねえ」

 

 バルトフェルドは皮肉っぽく締めくくったが、シーゲル・クラインの決意を変えるには至らない。

 

 

 

 そしてエターナルは勝手に出港する。フリーダムとジャスティスを乗せて。

 そのまま行方をくらませてしまった。

 パトリック・ザラはこれを穏健派による裏切り行為と断定し、直ちにシーゲル・クラインの捕縛を命じた。むろん、シーゲル・クラインは従容としてそれを受け入れる。

 

 同時にパトリックはザフトを動員し、エターナルの追跡を図るのも当たり前である。

 その任務に、何とクルーゼ隊を充てたのだ!

 むろん脱走兵を立て続けに出したクルーゼ隊に対する懲罰という意味合いもある。

 しかしながら、圧倒的多数で袋叩きにする以外にフリーダムとジャスティスを討てるMSといえば性能的にプロヴィデンスくらいしか考えられないが、このパイロットとしてラウ・ル・クルーゼが登録されている以上、クルーゼを出すのが妥当といえる。

 

 今、追手となったクルーゼ隊のヴェサリウスがプロヴィデンスを積んで発進する。

 ラウ・ル・クルーゼは仮面の裏側で笑みをこぼす。

 

「自分でも思うが、なかなか強運の下にいるようだ。これで宇宙を自由に航行できる。ニュートロンジャマーキャンセラーの情報を手に入れたとしても、プラントにいるのでは連合に渡しようもないだろうと困っていたところだ。これで思うタイミングで渡せるようになった。それにエターナルを見つけても直ぐに戦闘をする必要はない。命じられたのはその所在確認と呼びかけだけで、つまりパトリック・ザラもプラント一の人気歌姫を問答無用で殺す気はないらしい」

 

 

 

 

 宇宙は様々な思惑が同時進行している。それが織りなす色は何色だろうか。

 

 アーク・エンジェルでもまた、会議が開かれていた。むろん輸送船団の護衛についてである。

 その席上、マリュー・ラミアス艦長が驚きの声を上げていたのだ!

 

「な!? サイ君、そのやり方って! まさか逆襲撃……」

「そうだラミアス艦長。このまま囲んで守るのは下策だ。そこで罠をかけ、先手を取る」

 

 

 

 

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