コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第二十五話 コンスコン vs クルーゼ 前編

 

 

 イズモが十二隻の改造避難船と共にオーブへ向けて旅立った。

 

 予定通り避難民たちは初めにオーブへ降り立ち、そこからそれぞれの故郷へと散っていく。むろん中にはオーブに留まる人たちもいるはずだ。これらの措置についてカガリは父であるウズミ首長も同意してくれる確信があったが、通信でその通りであることを知り安堵している。

 

 ほどなくしてクサナギもまたプトレマイオス基地を去る。こちらの方はアメノミハシラへ向かう。先の戦いで無傷というわけではない以上、いったん修理と整備をそこで行うためだ。

 

 それら二隻と異なり、アーク・エンジェルは直ぐにプトレマイオス基地を動かず、密かに修理を受けている。やはり連合艦は連合基地の方が都合がいい。そしてプトレマイオス基地の方では連合から見捨てられたという意識が強く、その反発もあってアーク・エンジェルの修理には協力的だった。

 いずれアーク・エンジェルはイズモ、クサナギと再び合流し、宇宙からザフトと連合の動きを監視する予定だ。しかし次の作戦行動が差し迫っているわけではない。そのため三隻は一端バラバラになったのである。

 

 

 

 そんな時だ。

 オーブを通してアーク・エンジェルに重大な情報が入ってきた!

 

「艦長、オーブ本国から秘匿回線を使って入電!」

「何? どんな内容なの? この艦のクルーは連合を脱走した仲間のようなものだわ。そのまま読み上げて構わない」

「で、では、……まさか、そんな!」

 

 その内容に驚く他ない。

 何と、ザフトの最新鋭戦艦エターナルが脱走したという話だった!

 

 更にエターナルの指揮官は軍人ではなく、プラントの穏健派トップであるシーゲル・クラインの娘であり、プラント一番の人気歌姫でもあるラクス・クラインだ。

 艦長はあの砂漠の虎のアンドリュー・バルトフェルドである。

 何もかも驚きの連続で、どうしてそうなったのか想像もできない。

 

 おまけにエターナルはザフトの新型MSの運用のために造られた艦であり、今もそのMSを二機載せているとのことである。

 

「信じられない…… 自分たちが連合を脱しておいて言うのもなんだけど、今度はザフトから脱走艦が出るなんて、何があったの。でも、いいことかも知れないわね」

 

 ラミアス艦長の言う通り、これは吉報なのだろう。

 やはりザフトはザフトで戦争に疑問を持っている者が少なからずいたのだ。それが図らずも証明された。

 

 入電には続きがある。

 単なるニュースではなく、その次が大事なことだった。

 そのエターナルが、中立国オーブとの提携を申し入れている。

 また、連合軍を脱し、そればかりか連合と戦っているアーク・エンジェルと共闘したいということだ!

 この申し入れの方が重要なのだろう。しかしエターナルにとってアーク・エンジェルの位置が分からない以上、通信を取るためにはオーブを経由しなくてはならなかった。

 

 アーク・エンジェルの方としては願ったりかなったり、むろん歓迎したい。

 

 これからの方向性を考える上で、共闘できる味方は一隻でも多い方がいい。

 これまで同様ひたすらオーブを防衛したり、人道的な支援をするのもいいが、それにも意味があるとはいえ限界がある。抜本的な解決を目指すにはやはり戦争をどうにかしなくてはならない。

 こうして味方が増えていけば、やがては連合にもザフトにも影響を与えられる第三勢力になれる。

 ちなみにエターナルへの信頼については問題ない。

 罠という可能性はない。一時期ラクス・クラインを乗せたこともあるアーク・エンジェルは、彼女の人となりをよく知っている。その平和志向も度胸も。またアンドリュー・バルトフェルドについても、これはキラ君の報告では、単純な軍人ではなくその先を考えるタイプらしい。

 

 

 通信文ではエターナルがアーク・エンジェルとなるべく早く合流を望むということで締めくくられていた。

 また、エターナルの方は既に一つの場所に向かっているということだ。もうザフトから補給を受けられないので、それができる地点へ。

 その唯一の場所とは、かつて破壊され、戦争の引き金となった農業プラントユニウスセブンだ。現在、その残骸がプラント本国から見て月の反対側のラグランジュポイントに漂っている。むろん無人のままで。

 そこなら少なくとも水や資材を手に入れられる。

 

「アーク・エンジェルもユニウスセブンへ向かいます。エターナルと会見し、その意思や戦力を再確認しましょう」

 

 こうしてアーク・エンジェルはプトレマイオス基地を発った。

 結果的にタイミングとして最悪に近かったのかもしれない。アーク・エンジェル単艦で行動してしまったという意味では。

 せめてイズモかクサナギが一緒ならば、だいぶ違っていただろうに。

 

 

 アーク・エンジェルはもちろんエターナルも知らず、ザフトからの追手が既に忍び寄っていたのだ!

 むろん、ラウ・ル・クルーゼの一隊である。

 

 

 

 

「では改めまして、アーク・エンジェル艦長マリュー・ラミアスです。階級は連合を脱走したので、もはやありません」

「ふふ、初対面ではありませんがこちらも改めまして、ラクス・クラインですわ」

 

 アーク・エンジェルとエターナルの合流はスムースにいった。

 ユニウスセブンの場所は分かっている。その周辺宙域に到達し、通信封鎖を解いて最小出力で呼びかけを行うとエターナルから直ぐに反応が返ってきた。

 合流が済むと、エターナルの乗員数名がアーク・エンジェルに移乗し、先ずはそんな堅い挨拶が交わされる。

 

 その横では万感の思いが交錯していた。

 

「………… キラ」

「…… アスラン……」

 

 ようやくなのだ。

 今、二人の少年は敵同士ではない。

 同じ陣営の者として共に戦える。ザフトでも連合でもなく、今、二人の守るべきものが同じものとなった。

 もうMSで辛い思いをしながら戦うことはない。キラとアスランはかつて親友として過ごした時に戻れるのだ。

 

 それ以上の言葉は要らない。

 

 まるで二人の感情を表すかのように、周りをトリィが舞い、ラクスが一つだけ持ってきたピンクのハロが跳ねている。

 

 

 

「それでアーク・エンジェルの艦長さん、これからどうする。エターナルの方は安全な補給基地を確保したい。ユニウスセブンではやはり足りないものがある」

 

 アンドリュー・バルトフェルドがそう言った。

 お互いに脱走艦であり、ザフトでも連合でもない立場で共闘し、平和を求めることで合意した。その甘いムードに酔うことなく、直ぐに実務に入るのはいかにも歴戦の闘士バルトフェルドらしい。

 

「アーク・エンジェルだけならプトレマイオス基地と良好な関係を保てますが、エターナルは元はザフト艦、流石に無理でしょう。ここはまとまってオーブの宇宙ステーションアメノミハシラに厄介になるべきです」

「なるほどアメノミハシラか、それがいい。こっちはいざとなれば連合が放棄したアルテミス要塞を奪って立て籠る気だったが、確かに人がいないので整備もなにもありゃしない」

 

 アーク・エンジェルとエターナルはとりあえずアメノミハシラへ行き、そこでクサナギとも合流することに決めた。

 

 

 

 しかし、二隻がそろって進発しようとした矢先、特大の凶報が舞い込んだ!

 

「ラミアス艦長、前方宙域に艦影あり!」

「敵!? 早く解析して!」

「ザフトのナスカ級が三隻です! 急速に接近しつつあり! あ、一隻の艦影照合出ました、ザフトのヴェサリウス! あれはクルーゼ隊です!」

「偶然……ということは有り得ない。アーク・エンジェルかエターナルを追ってきていたんだわ。クルーゼ隊なら強敵ね」

 

 こんなところでクルーゼ隊と戦うのは想定外だ。

 

 だがこの時点ではまだラミアス艦長を始めとして、クルーたちにわずかゆとりがあった。

 なぜならクルーゼ隊に追われて幾度も戦ってきたが、その都度苦戦はするものの逃げることができていたからだ。ならば今度も厳しい戦いになっても逃げるだけなら可能だろう、と。

 おまけにクルーゼ隊の力は四機のガンダムタイプMSによるところが大きく、母艦のヴェサリウスが直接砲撃戦に参加することはあまりなかった。

 しかしもうガンダムタイプMSはいないはずだ。アスラン、ニコル、イザーク、ディアッカ全てが離れた。ならばクルーゼ隊といえども戦闘力は以前ほどではないと考えられる。

 

 しかし逆にいえばクルーゼ隊は今までヴェサリウス単艦で行動することも多く、せいぜいローラシア級小型艦を伴うだけだった。しかし今度はナスカ級大型艦三隻で編隊を組んでいるようだ。MS戦力の弱体化をそれでカバーするのだろうか。

 その形は、やや左右に距離を空けて二隻が先行し、その中間に一隻が遅れて続く、いわゆる凹形陣になっている。

 

「MS発進! それによって牽制をかけながら、アーク・エンジェルは左舷にわずか回頭、敵艦隊の横をすり抜け、そのまま戦闘宙域を脱出します」

 

 ラミアス艦長がそう命じる。カーブを描きながら敵艦隊から逃げる構えだ。戦闘を最小限にするにはそれが順当なのだろう。阿吽の呼吸なのか、エターナルもまた同様の行動を始めた。

 

 

 だがしかし、俺の目は違うものを見ている。

 ラミアス艦長は逃げ切れると思い込んでいるが、それは違う。

 いや、それどころではない! アーク・エンジェルはもはや詰んでいるといってもいいくらいな危機的状況にあるのだ。

 

「ダメだ! 艦長、それをすれば確実にこの艦は沈むぞ」

「え? ど、どうして、サイ君」

「俺には分かる。この態勢は絶体絶命の危機にある。相手はかなりの戦術家だ。嬉しいくらいにな」

 

 

 

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