コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第三十話  奇妙な客人

 

 

 フラガ少佐は無事にアーク・エンジェルに帰投していく。

 そのついでにアーク・エンジェルはギルバート・デュランダルという奇妙な客人を乗せることになった。

 

 むろんデュランダルはプラントの要人ではあるが、民間人だ。おまけに戦闘に巻き込んでしまっている。そこでアーク・エンジェルは最も近いザフト基地付近まで赴き、シャトルにて送り届けることにした。

 この件について実はエターナルからも頼まれていたのだ。ラクス・クラインが言うにはデュランダルは決して群れることを好まないが、分類すれば穏健派の議員とのことである。

 

 

 

 それにしても変わった人間だった。

 ナチュラルやコーディネイターというものに対する反応が驚くほど薄く、自然体なのである。

 その意味で確かに穏健派と言えなくもないが、むしろ意に介していないというのが本当のところだろう。遺伝学者だからそんなものなのだろうか。

 俺も少しは興味が惹かれた。

 この世界では、全員がナチュラルとコーディネイターの違いについて多かれ少なかれ意識している。それが排斥に働くか、意識して宥和しようとするかは別にして、必ず緊張というものがある。

 だから俺以外にそういう意識のない人間は初めてだ。というか俺がこの世界の生まれでないから分からないだけの話なのだが。

 

 そこでちょっとこのデュランダルという男に対し質問したくなった。

 

「デュランダル議員、いや博士、あの施設で研究をしていたそうだがそれは何だろうか」

「君は興味があるのか。少し難しい話になるが、より良い生き方を予め調べ、失敗のない人生を送らせるものだと言っておこう。ナチュラルも、コーディネイターも関係なく」

「なるほど…… 正直いって生き方を調べておくとは、話が壮大過ぎてどんなものか分からない。しかし、博士が本当に偏見というものを持っていないことは分かる。今、その二つで深刻な戦争をしていることが嘘のようだな」

 

「そもそもナチュラルとコーディネイターを分けて考えるのがおかしい。コーディネイターが宇宙移民に適していることは間違いない。しかしナチュラルより一方的に優れているということはなく、少なくとも出生率の低下といった副作用があるのも事実だ。パトリック・ザラは技術でそれを克服しようと思っているらしいが、まだ解決していない」

「ナチュラルとコーディネイター、どちらも良いところも悪いところもあるということか。現状では。それをどうする」

 

 俺はこのギルバート・デュランダルとしばらく話をして、おぼろげながら対立の構図を変えられるヒントを得たような気がした。

 

 

 

 

 それから二ヵ月ばかりは平穏な日が続いた。

 それもそのはず、クルーゼ隊のような特務隊を除けば、連合とザフトの主力同士が戦うことはない。

 

 連合にマス・ドライバーが無い限り、大艦隊を宇宙に上げることはできない。マス・ドライバーを使わず、ブースターによって少数の艦を上げるだけなら不可能ではないが、そんなことをしてもたちまち潰されてしまい、意味がない。

 ザフトの方でも地球表面に再度侵攻することは考えられない。今や連合は食料不足などにかまわず、ひたすら軍拡に走っている。膨大な数のストライクダガーを生産しているところにザフトが攻めて行っても無駄だ。

 

 だがしかし、そんな小康状態は長く続かない!

 いずれ宇宙に圧倒的戦力で侵攻すべく、連合は着々とマス・ドライバーを建設している。途中で邪魔されないよう、形ばかりのダミー工事を数か所並行して行い、的を絞らせないという徹底ぶりだ。

 連合もザフトも来るべき戦いに身構えている。

 

 

 

 この間、アーク・エンジェルはエターナル、クサナギと共にオーブのアメノミハシラに停泊している。

 さすがにここにいればザフトも手を出してこない。下手なことをして、オーブを敵に回したら戦略的にまずいという認識があるのだろう。オーブが小国とはいえ中立にしておく価値はあるのだ。

 

 オーブ本国でやっと修理を終えたイズモがこのアメノミハシラへ上がってきた。

 これで我々の艦隊戦力は四隻になる。

 また、そのイズモにはカガリ少女が待ち望んでいた最新MS、ストライクルージュが収められていたのだ。エリカ・シモンズ女史は約束通り間に合わせている。

 

 

 

「それ、それそれ! キラ、その程度か!」

「カガリ…… 模擬戦で危ないことをしない方がいいよ」

 

 元気だな!

 カガリ少女は早速ストライクルージュに乗って訓練を始めている。もちろんその相手はキラ君だ。傍から見ると性能のいいオモチャを振り回すようなカガリ少女をいなす構図になっている。パイロット技量としては明らかにキラ君の方が上なのだが、それでもカガリ少女は突っかかるのが面白いらしい。

 何のことはない。いつも二人でやっていたじゃれ合いをMSに乗って続けているだけの話だ。

 

 

「二人とも隙だらけだぞ!」

「いやアスラン、そう見えるのはフリーダムの機体性能のおかげだろ! 友達だと思っていたのに……」

「友達だと思うからこそ、弱点を見つけてやってるんだ」

「それ絶対今考えた屁理屈だから!」

 

 カガリ少女とキラ君の模擬戦にアスラン・ザラ君のフリーダムが加わる。

 さすがに核動力のフリーダムは段違いの性能で、キラ君のストライクといえども分が悪い。まあ、交わす会話はただの冗談だ。

 

 

 

「皆さん楽しそうですわ。ふふ、ハロたちの追いかけっこみたい」

 

 そんな様子をエターナルの艦橋から見ながら、ラクス・クラインが曇りのない笑顔で呟く。その例えが的確なのかズレているのかよく分からない。

 

 しかししばらくすると、じゃれ合いからようやく搭乗訓練らしいものに変わる。

 そうさせたのはアンドリュー・バルトフェルドだ。

 

「歌姫さん、ちょいと行ってくる」

 

 バルトフェルドはエターナルの艦長という職にありながら、いざという場合には自分もまたMSに乗って出撃するのをやめる気はないらしい。そして今、搭乗するのに格好の機体があった。

 アスランがフリーダムに搭乗するのに伴い、不要となったイージスガンダムである!

 バルトフェルドが目を付け、いち早く手を挙げ、イージスのパイロット登録を自分に変更させていたのだ。どのみちコーディネイターでパイロットでもあるのは残りがバルトフェルドくらいなものなので問題はない。

 

「ガキども、強くなりたきゃ俺の真似をしろ!」

「え……」「いや……」「でも……」

 

 

 

 

 …… そして俺は猛烈に後悔している。

 出来心だったんだ。

 

 前の世界で俺はMSに乗れなかった。いや、乗ろうと思ったこともなかった。

 ジオンでザクが開発された頃には、俺は既に中年で腹が出ていた。つまり体力的にMSパイロットなど最初から無理だったのだ。俺はドズル閣下のような体力お化けではない。

 しかし今ならどうだろうか?

 サイ君の若い体はもちろん腹など出てはおらず、これならMSに乗れるんじゃないか?

 

 もちろんコーディネイター用のMSには乗れないだろう。しかしナチュラル用のアストレイとかなら少しはやれるかも……

 

 俺の方からねだったわけではない。うかつにもそれを口に出したら、たまたまラミアス艦長に聞かれてしまった。

 そして何と試してみる許可をくれたのだ。普通なら艦の職種は厳密に守られるべきだが、今はブリッジ要員にあまり仕事がないから良しとしたらしい。

 

 俺は調子に乗ってしまい、一機のアストレイを貸してもらって搭乗し、アメノミハシラのゲートデッキから宇宙に出た。艦からの発進を選ばなかったのはカタパルト発進というハードルがあるからだ。

 

「あ、え、よっと」

 

 MSで宇宙を疾駆してさぞ気分が良かろう、なんて想像とは全く違う!

 どっちが上か下かも直ぐに分からなくなる。計器を見れば分かりそうなものだが、体感とズレが生じると本能的に計器の方を疑ってしまい、どうにも収まりが悪い。

 更にゆっくりスラスターをふかそうとするが…… 全く意図しない動きになってしまうじゃないか。修正もできやしない。だいたいにして二つの動作を同時にするということが致命的にできなかった。

 無理なものは無理、俺は現実という壁に当たったというわけだ。

 俺は戦術家であり、別にMSパイロットとして戦おうなんて思ってもいないのだが、可能性の段階で粉微塵に砕かれてしまった。

 

 まさにほうほうの体でアメノミハシラのデッキに戻る。

 どっかにすっ飛んで行って救助されないだけマシだと思おう。実際はわずか100mも離れるまで行かなかったわけだが。

 

 

 

 ……さて、ここからが大変だった。

 

 ゲートから中に戻ると、なぜか人が多いじゃないか!

 知った顔がほぼ全員だ!

 皆、俺の帰りを待っていたのか。悪い意味で。たぶん俺がMSで悪戦苦闘している様子を見ていたんだ。

 

 マリュー・ラミアス艦長が複雑な表情をしている。何も言わないが、これほど酷いとは思わなかった、と顔に書いてあるようだ。

 キラ君はあからさまに心配げな表情をしている。

 フラガ少佐はさすがに大人なだけあって、いつも通りのクールな……いや、微妙に口角が上がっているぞ。

 

 そしてディアッカ君は…… はっきり笑っている。大声を出さなきゃいいってもんじゃない。笑い転げる寸前だってことが一目で分かる。そしてニコル君がディアッカ君の口を押さえるべきかどうか迷っているじゃないか。

 

 

「みんな、笑うことはないだろう! サイ君も頑張ったんだ! ただ、才能が別のところにあるから仕方ないんだ!」

 

 ああ…… ここで言われてしまった。

 カガリ少女が善意でそう言ってくれるのは想定内なのだが、打撃になる。分かっていても言われたくない場合があるものだな。

 

「MSに乗れるかどうかは、関係ない! でもどうしても乗るならいい方法があるぞ。モルゲンレーテのシモンズ女史にサイ君専用のOSを一から開発してもらえばいい。難しいかもしれないが、そうすればきっと大丈夫だ!」

「…………」

 

 地味にとどめだな。

 もう諦めているから、そっとしてくれ。

 

 

 

 

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