コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第三十三話 激闘! 大天使vs主天使

 

 

 ナタルのドミニオンを含む連合先遣艦隊九隻がアメノミハシラに接近していく。

 艦隊形としてはドミニオンがやや前に出る雁行陣の形をとっている。

 

 この艦隊を察知し、アメノミハシラでも守備戦力を繰り出す。オーブ本国に引き続き、またも連合が侵攻の意図を持っているのは明らかである。

 迎撃に出る艦隊はむろんアーク・エンジェル、クサナギ、イズモ、エターナルの四隻だ。こちらはやや距離を狭めた横陣であり、まとまることで互いの弾幕を重ね、先ずは防御に適した隊形にしている。

 アーク・エンジェルのクルーたちは緊張を隠せない。

 迎撃といっても普通に考えたら連合艦九隻の前に劣勢は明らかだからだ。

 しかも連合の艦隊にはアーク・エンジェル級二番艦、ドミニオンがいる! その建造計画があることは知っていたが、もう竣工し、ここで対峙することになるとは。

 

 

 

 そして驚いたことに戦いに先立って通信が入ってきた。

 オーブと連合は既に戦争状態である以上、わざわざ通告は必要ないはずである。

 

「地球連合所属強襲揚陸艦ドミニオンからアメノミハシラ及びその艦隊に申し上げる。速やかに降伏されたし。特にアーク・エンジェルは連合からの脱走艦ならばこそ、戦いに入ることなく、連合に復帰することを切に望む」

「ナタル!」

 

 アーク・エンジェル艦橋の全員が等しく絶句する。

 内容のことはさておき、通信の声はまさしくナタル・バジルール中尉のものだったからだ!

 

 

「…… お久しぶりです。ラミアス艦長。小官は少佐になり、このドミニオンの艦長を拝命しております。決してこんな形で再会したくはありませんでした。艦長、繰り返しますが、今のうちに原隊復帰をお勧めします。微力ながら小官も弁護に尽力いたしますので」

「それはできない、ナタル。いえドミニオン艦長。私たちアーク・エンジェルはただ逃げたのではないのよ。はっきり言うけど、連合の在り方に疑問を感じてるの」

 

「とても残念です。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、艦長」

「……それは同型艦だから、性能は互角ね」

 

 通信はそれで終わった。

 アーク・エンジェルの原隊復帰など無理だし、そうする気もない。拒否は当然だ。

 するとドミニオンとの戦闘は不可避となる。

 

「ナタルと戦うのね…… できれば、そんなことはしたくなかった」

 

 マリュー・ラミアス艦長がとても残念そうに言うが、素直な心情だろう。

 ナタル・バジルールは厳格で、いつも衝突していたが、その内面は優しさと正義感に溢れている。それが分かり切っている以上、戦いたいわけがない。

 

 だがしかし、俺は全く別のことを考えていたのだ!

 

「なるほどな。そういうことか。ナタル・バジルール中尉も戦っているのだ。自分の心と、周りの環境に」

「え? サイ君、それはどういう意味なのかしら。何か気付いたの?」

「簡単なことだ。しかしラミアス艦長、今それを説明している暇はない。敵は動き出したぞ!」

 

 

 

 

 一方のドミニオン艦橋では通信を終えてもナタルに表情の変化はない。アーク・エンジェルが原隊復帰など望みえないことは分かっている。

 

「気が済んだかい、ナタル艦長。堂々の通告だなんてご苦労さん。どうせ意味ないのに」

「アズラエル理事、この戦いは戦力差に意味はなく、戦術で劣った方が負けます。そして向こうの戦術能力は生半可なものではありません。よほどの覚悟が必要と予め申し上げておきます」

「分かった分かった。じゃ、さっそく戦ってよ」

「ではドミニオン第一戦闘速度! 対艦ミサイルスレッジハマー全門装填! 各艦、それに倣いミサイル攻撃用意!」

 

 

 

 戦闘が始まった!

 先手を取ったのは連合先遣艦隊である。

 突進をかけつつ、接敵直前に左方向へややカーブする。

 

 それと同時に次々とミサイルを撃ちかけていく。

 合計すれば百を超える数のミサイルの群れが飛んでいくが、それらは単純にアーク・エンジェルらに向かって放たれたものではない。

 まるでアーク・エンジェルの進路を遮り、頭を抑えるコースへと扇状に撃たれているのだ。

 

 

「回避! 減速しながら右舷三十度回頭!」

 

 当然、マリュー・ラミアス艦長が回避を命じる。

 イーゲルシュテルンによる弾幕では撃ち漏らしが出てしまうと判断した。おそらく連合先遣艦隊は牽制と進路妨害を図ってきたのだろうが、ミサイル群は予想よりはるかに濃密なものだ。回避し、いったんやり過ごす指示を出す。

 

 普通ならそれでいいのだろう。

 だがしかし、俺はそんな対処では不充分だと見切った。

 

 想像が正しければ、ナタル・バジルールの戦術は単純なものではない!

 

「ラミアス艦長、まずい! それではやられるぞ!」

「え!? 何?」

「あのミサイル群は単なる牽制ではない! 直ちに全力で逆噴射しながら急速回頭だ。できるだけミサイルから距離を取れ!」

「わ、分かったわ、サイ君。アーク・エンジェル急速回頭! 他の艦にもそう連絡して!」

 

 ラミアス艦長は俺の言う事に理由も聞かずに従ってくれた。今は一秒でも無駄な時間はなく、そうするのが正しい。

 そして理由などは……間もなく判明する。

 

「あっ! ミサイル群が急に曲がって……こっちへ! デコイは間に合わない。防空弾幕最大!」

 

 扇状に撃たれたミサイルのうち、何割かが急にコースを変えてアーク・エンジェルの方へ向かってきたではないか!

 

 これは誘導ミサイルの動きだ。

 

 だがしかし、俺の指示により各艦はミサイルから急ぎ距離を取っていたため、ほぼ迎撃することができた。これがギリギリで回避しようとしていたら防げなかったに違いない。

 結果アーク・エンジェルとエターナルは無事、イズモとクサナギは運悪く被弾してしまったが、どちらも小破程度の被害に収めている。

 

「サイ君、これは……」

「ナタル中尉、いや少佐はなかなかどうして戦術も上手い!」

「つまりナタルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「その通りだ。ラミアス艦長、そういう戦術だろう。ミサイルを扇形に撃つことにより、直進するタイプだとこちらに誤認させる心理作戦だ。そして油断を誘い、回避を必要最小限にさせるつもりだった」

「もしも、こちらがそうしていれば……」

「仕込まれた誘導ミサイルがいきなり近距離から襲い掛かり、仕留められてしまっただろうな。簡単だが嵌れば必殺の策だった」

 

 面白がってもいるわけではないが、俺はナタル少佐が味な戦術を使ってきたことに対して敬意を払わずにいられない。判断を誤れば、こっちはたった四隻の艦隊、壊滅していたかもしれないのだ。

 マリュー・ラミアス艦長は驚きから回復し切れていない。

 その様子を見て俺はラミアス艦長に言っておく。ラミアス艦長は技術畑にいたのだから、戦術でナタル少佐に及ばなくても仕方がないし、本人のせいではない。

 

「そんな戦術を打ってくるのも不思議ではない。俺は艦隊戦を指揮した経験など山ほどあるが、ナタル少佐だってずっとブリッジクルーの第一線にいたのだ。戦いというものを知っているだろう」

「……」

 

 

 

 

「いやいやナタル艦長、凄かったねえ。あなたもやればできるじゃない」

「恐縮です、アズラエル理事。しかし褒めて頂くほどのものではなく……ここからの艦隊行動が勝負になります」

 

 一方、こちらはドミニオンの艦内だ。

 手を叩いて喜ぶアズラエルに対し、ナタル・バジルールは固い表情を崩さない。

 初手の結果はこんなものになった。

 あのサイ・アーガイルを騙せないと思っていたが……やはり通じなかったとは。戦いは厳しくなる。

 

 

 

 そして今度はアーク・エンジェルから仕掛ける。お返しだ。

 

「マリュー・ラミアス艦長、古来より少数が多数を撃破するパターンは幾つかある。おびき出して罠に嵌める、補給を断って自滅させる、奇襲で中心部を叩く、といったものが挙げられるだろうか。さて今回は最もシンプルなやり方がいいだろうな。分断を行い、各個撃破に持って行こう」

「そ、そうね。しかしサイ君、どうすれば」

「向こうは九隻といえどカーブしながらのミサイル攻撃を終えたばかり、隊列は伸びている。こちらがまとまったまま横合いから突進すれば分断が可能だ」

 

 それに従い、アーク・エンジェルらは一気に増速しつつ、連合先遣艦隊の横合いから突っかかる。

 これにより丁度半分に切り分け、しかも混乱を招いたはずだが……

 

 俺の方が結果に驚いてしまう。

 

「む…… これはしまった! 分断をしたのではなくさせられた。もっと熾烈な主砲の撃ち合いがあってしかるべきなのに、手応えが無さ過ぎる」

 

 俺としたことが、読まれていたのだ!

 

 ナタル少佐はこっちが積極戦術をとり、分断を図ってくると予期していたのだろう。

 連合先遣艦隊は何も慌てたりしない。無理に抵抗することもない。その代わりに分断されてもすぐさま回頭し、艦首を向けてくるではないか。

 するとどうだ。アーク・エンジェルらはまるで挟撃されている態勢となった。

 

 

 

 俺は正直に認めねばなるまい。無意識に侮っていたのかもしれないことを。

 その結果足を掬われ、二方向から狙われるという艦隊戦では極めて不利な立場に立たされた。

 

「やるな、ナタル少佐。こちらの動きを逆手にとったのか。一杯食わされた」

「サイ君、それでは……」

「慌てるな、ラミアス艦長。見方を変えれば実はチャンスとも言えるのだ。MS戦に移行するには都合が良く、砲撃戦が始まる前にMSを出せば押し切って勝てる。ラミアス艦長、ここはキラ君たちにお願いしよう」

「分かったわ。ストライク、アストレイ、緊急発進!」

 

 本気でやるしかない。

 スピード勝負だ。一気にMS戦に移行させる。

 なぜなら今、敵味方の艦が狭い範囲で近接している、MS戦には願ってもない条件なのだ。何よりもMS戦では艦隊がまとまって防空できる方が有利で、包囲や挟撃をしている側がかえってやりにくい。

 

「ストライク、出ます!」

 

 アーク・エンジェルの誇るストライクガンダムが飛び立つ。

 そしてエターナルからはフリーダム、ジャスティスが出る。クサナギからはブリッツ、バスター、デュエル、むろんアストレイらも出る。

 少数ながらこれは充分に信頼できるMS戦力である。

 

 

 

 

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