コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

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第四十話  欺瞞の光

 

 

 こっちの各艦はMSを発進させれば、もちろん砲撃戦の準備に入る。

 

「主砲、発射!」

 

 この言葉をイズモ、クサナギ、エターナルの三隻が同時に叫ぶ!

 絵に描いたような奇襲攻撃だ。

 

 それは当たり前だろう。アーク・エンジェルとドミニオンをとにかく追っている連合艦たちが索敵をやれるはずもなく、そもそもエンジンを切って潜伏しているものに気付けることはない。

 アーク・エンジェルらにもう少しで届くと思っていた連合艦たちは……突如として横から砲撃を食らってしまう。

 一撃では終わらない。第二撃、第三撃、これで連合艦は大混乱に陥る。

 

「アーク・エンジェル反転します。それが終わると同時に対艦ミサイルスレッジハマー発射、そしてローエングリンのチャージを開始して!」

 

 味方の攻勢が始まったのを見て、すかさずアーク・エンジェルとドミニオンも反転攻勢をかける。俺が命じるまでもなくラミアス艦長の好判断だ。

 

 これで多方向からの同時攻撃という罠が完成した!

 

 

 先発して追ってきた連合艦たちは十四隻、圧倒的戦力とはいえ、初手は完全にこちらの思惑通りになった。戦いの主導権をひとまず手に入れたといっていい。

 もちろん本気で立て直されてしまえばまずい。数の差というものは伊達ではないのだ。

 だからこそ矢継ぎ早の攻勢でそんな暇を与えない。

 今、この態勢ならそれが可能になる。多方面からの攻撃の良い点は、砲撃とミサイルを的確に使えば艦の回頭を惑わし、妨害できることにある。つるべ撃ちに撃ちかけ、効果的な防御の態勢を取らせない。

 

 それはもう一つ巨大な利点を生む。

 なぜなら艦が回避行動などで急速に動いていればMSを出せなくなる。MSの総数なら当たり前だが連合側はこちらの数倍以上ものMSを持っているだろう。しかし出せなければそんなものに意味はない。せいぜい無理して発進させても全部ではなく、結果的に五分五分程度の数にしかならない。

 するともちろん、続けて行われるMS戦では個々の性能が高く、入念に準備していた分だけこちらが優勢となる。

 

「先ずは一機!」

 

 ストライクルージュに乗ったカガリ少女が連合MSを撃ち墜とす。動きは軽快でビームの威力も高い。通常動力のMSとしてはかなりの完成度、さすがエリカ・シモンズの自信作だ。むろんカガリ少女のパイロット度胸があってこその性能である。

 おまけにただ戦っているのではなく、マユラ、ジュリ、アサギを含めたM1アストレイたちを庇っている。比較的弱い部分をイザークのデュエルと共同でカバーしているのだ。

 

 

「戦い方を見せてやるぞ。……おいおい先に行くな! そこ待ってるとこだろ」

 

 このセリフはアンドリュー・バルトフェルドのものだ。

 勇んでエターナルから最初に発艦したのだが、機体性能の差は如何ともしがたく、フリーダムとジャスティスにあっさり追い越されてしまった。

 

「済みません、バルトフェルド艦長」

「アスラン、冗談だよ冗談、半分だけな。いいから先に連合艦を叩いとけ。真打ちは後から登場といこうじゃないか」

 

 

 

 

 時間が経つにつれ、戦いの趨勢がはっきりしてくる。

 何とか主導権を維持し、連合艦十四隻のうちついに四隻を爆散に追い込めた。もちろんそれ以上の数の艦に損傷を負わせている。

 

 しかし…… 俺の目的はこれら釣り出した連合艦に勝つことではない。

 

 局地戦で多少叩いたところで意味がない。そんなことよりもっと重要なことが残されている。

 

「ラミアス艦長、頃合いだ。こっちのMSはたいそう頑張ってくれたが、それぞれの艦に撤収させよう。それが終わったらゆっくり後退してほしい。作戦を最終段階に進める」

「ええ、サイ君。勝ち過ぎる前にそうしないと危ないわ」

「そういうことだ。距離を確保すれば……あれを使う」

 

 そう、決して勝ち過ぎてはならない。

 このままいけば連合艦は核を使ってくるはずなのだ!

 

 もちろん連合艦としてはこんなつまらない艦隊戦に一発だって核を使わず、温存しておき、ザフト側のボアズ、ヤキンデゥーエといった要塞に使う算段をしているに決まっている。

 しかしここで艦隊が撃滅されたら何も意味がない。

 それよりは、今ここで核を我々に向かって投入する、必ずその決断をしてくる。

 こっちにとり、最初からこの戦いは綱渡りともいえる戦い、まさに薄氷を踏むようなものである。

 

 タイミングが全てなのだ。

 善戦しておきながら、しかし本当に核を使われる前に後退しなくては危険である。

 

 

 

 それ以上に難しいのが次に来る。

 今度は逆に連合側に核を撃たせるようわざと誘わねばならない。

 それこそが作戦の目的であり、そうならなければ意味がない。できればここで核を消費し尽くさせる。

 もちろんプラントへの核攻撃をさせないためだが、我々にとっても核を残されていてはこの先戦いようがないからである。

 

 そのために俺は仕掛けを用意した。

 ラミアス艦長にあれと言ったのはそのことだ。

 

「よし、距離は取った。ラミアス艦長、あれを放て!」

 

 アーク・エンジェルから三発の対艦ミサイルが放たれ、真っすぐ連合の艦隊へ向かっている。

 もちろん向こうもそれに気付き、撃ち落とすべく迎撃ミサイルを放つ。たった三発であることに疑念を持ちながら。

 迎撃ミサイルと接触する直前、三発の対艦ミサイルはセットされた距離で同時に自爆した!

 

 それは通常のミサイルとは全く違う。桁違いといえる眩い閃光を放ったのだ。

 

 仕掛けは簡単である。

 弾頭の威力なんか最初から無い。なぜならそこにデコイに使うフレア弾とチャフ弾を詰めるだけ大量に詰め込み、とにかく閃光ばかりを強くしている。

 しかも重要なオマケを付けてある。

 ある程度の放射性物質も仕込んであり、自爆と同時にそれが散らばり、連合艦はそれによる放射線もキャッチするだろう。

 

 何のためか。

 それは、こっちが核を使ったと連合艦に誤認させるためだ。おかしなミサイルの弾頭は見せかけの疑似核弾頭とでも言うべきものである。

 

 

 

「あれは何だ! 核じゃないのか!」「向こうも核を持っているなんて! 聞いてないぞ!」「そんな馬鹿な……助けてくれ!」

 

 たちまち連合艦たちはパニックに陥る!

 そして次々とミサイルを放つ。もちろん、連合のものは本物の核ミサイルに決まっている。

 

 

 

「冷静に考えたら、核爆発があの程度の閃光や放射線で収まるはずがないのだろうに。連合側で核ミサイルを持つ艦は、自分が核を持っているからこそ勘違いをしてくれる。つい相手も持ってるのではないかという疑心暗鬼が根底にあるからだ」

「サイ君、とにかく連合の核ミサイルを全て始末しないと」

「そうだな。フリーダムのアスラン君とジャスティスのシホ君を中心に片付けてもらおう」

 

 俺がフリーダムとジャスティスを指名したのには意味がある。

 MSの中でも特に核エンジンを内蔵しているフリーダムとジャスティスならば、パイロット防御のための放射線シールドもしっかりしていると思うからだ。

 核ミサイルは撃ち落としてもバラバラになるだけで、核爆発を引き起こすことはない。熱で簡単に誘爆するような代物ではない。しかし万が一の起爆ということも有り得なくはなく、その場合を考えている。

 

 キラ君のストライクと、ディアッカ君のバスターがひたすら遠距離からミサイルを狙撃している。

 フリーダムとジャスティスだけはミサイルに接近し、墜としていく。

 それでも通過させてしまった分は艦からの長射程砲で片付ける。

 

 そして…… 合計三十発もあったろうか。

 それらの核ミサイルは無事に消し去ることができた。懸念通り一発は不完全であっても核爆発を起こしてしまっているが、むろんフリーダムやジャスティス、艦にも被害はない。

 これで作戦は見事完了になる。

 

 

 

 

 ちょうどその時、連合艦の残りが戦場に到着した。

 むろん先発させた十四隻を除いた三十二隻のことであり、こちらの方にムルタ・アズラエルとダーレス少将がいる。

 

 そして見たのだ。

 

 先発させた十四隻がとっくにアーク・エンジェルとドミニオンを撃滅していると思っていたのに、逆に振り回されているではないか。戦力的に充分なはずなのに誤算も誤算だ。

 それだけならまだマシだ。

 念のためと付け加えていた核搭載艦が不様にも疑似核攻撃に惑わされ、虎の子の核ミサイルを撃たされてしまっている!

 せっかくの核が何の意味もなく浪費された。

 

 この状態を見てムルタ・アズラエルが苛立たないはずがない。

 

「何をしてるんだ! あんな閃光ばかりの爆発、少しでも考える頭があれば分かるでしょうが! 向こうが恐れるのは核、こっちは核があれば負けやしない。つまり絶対的に核がキーなんだ。だったら向こうが仕掛けを打つのは当たり前なのに!」

 

 自分ならばそんな欺瞞に引っかかるわけがないのに…… なぜそんなことが分からないのか。

 

「……しかしこれで手持ちの核は失われてしまったようですな。アズラエル理事、残念ですが」

「くそ、地表に残している分を急ぎ宇宙に運ぶか、ユーラシア連邦に渡しておいた分を頭を下げても分けてもらうしか…… ダーレス少将、とにかくプラントに直ぐ攻めかかるわけにいかない」

「確かに、核がなく、ここの大西洋連邦の戦力だけでは……ザフトの艦隊を叩けても、ボアズを抜くまでできるかどうか微妙なところです」

 

 ダーレス少将の見立てはだいたい合っている。

 アズラエルにすれば大きく計画が狂い、眩暈がする思いだ。

 

 だがしかし、絶対的に取り返しのつかない事態ではない。

 連合の生産力にはまだ余裕があり、核ミサイル自体は地表で今も製造中である。

 ただ単に大西洋連邦とブルーコスモスがユーラシア連邦に先駆けてプラントを撃滅できなくなったという話でしかない。

 

 

 もちろんアズラエルはこの状態に追い込んでくれた五隻の敵を睨む。

 大局に意味がないことは分かっていても、この五隻を叩かなければ気が治まらない。

 そして今、ムルタ・アズラエルの手には大きな戦力があり、また並の将では及びもつかない優れた戦術能力がある。

 

 

 

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