コズミック・イラ のコンスコン!   作:おゆ

49 / 52
第四十九話 終結への鍵

 

 

 そしてナタルは現状を打開するため、一つの案をまとめる。

 

 エターナルに通信を入れ、ドミニオンの目の前へ布陣してもらう。

 もちろんこうなるとエターナルはザフト艦の砲撃を回避できなくなる。避けたらエターナルは良いが、ドミニオンに直撃してしまうからだ。

 しかしエターナルは了承した。

 エターナルのエネルギーを全て装甲強化に回し、短時間凌いでもらえばいいということだからだ。逆に攻撃の方はドミニオンが担う。

 

 ただし、この態勢ではエターナルが邪魔でドミニオンのローエングリンが撃てるはずがない。

 どうやって攻撃するのか。

 エターナルがスラスターを使って動き、ドミニオンのローエングリンの射線を空けようにも遅すぎるだろう。

 

 

 

 何と、ナタル・バジルールは奇策を使った!

 

 ドミニオンから四機のストライクダガーを発進させて、エターナルの艦体に取り付かせたのだ

 それらは元々ドミニオンに積まれていたのだが、MSパイロットがいないため死蔵されていた。もちろん今も訓練されたパイロットではなく整備兵が乗っている。

 だが今は戦闘をさせるわけではなく、整備兵でもできる仕事をさせる。それはエターナルを押すだけのことだ。つまりエターナルのスラスターに加え、それらMSの推力で俊敏にエターナルをどかせる。

 

「ローエングリン、発射!」

 

 タイミングよくエターナルを動かし、後方からドミニオンがローエングリンを撃つ。この方法でザフトの守備艦を大破させていく。ナタルの火器管制は確かであり、まず外れはない。

 それにザフト艦を撃滅しなくていい。艦列を乱れさせ、エターナルだけでも隙間からプラントへ行かせればいいのだ。

 頃合いを見てエターナルは一気に増速し、プラントを目指す。ローエングリンのような砲を持たず、火力に劣るエターナルは代わりに高速を出せる。ザフト艦をすり抜け、そのままプラント本国へ直進する。

 

 しかしドミニオンはそうはいかない。

 高速性能がないことも理由の一つだが、今、ザフト艦にエターナルを追わせてはならない。足止めとして働くのだ。

 

「行け、エターナル。戦争を止めてくれ!」

 

 エターナルを見送った後、ナタル・バジルールは粘りに粘り、ザフト艦相手にドミニオン単艦で戦いを続ける。しかしさすがに無理があり、損傷が重なっていく。艦の稼働率が下がっていく一方だ。

 ミサイルは使い尽くし、ヴァリアントなどの砲台も破壊され、満身創痍となる。それでもナタルは決して諦めたりしない。エターナルという希望を持っているからだ。

 

 正確に言えば、エターナルをプラントへ行かせようとしたサイ・アーガイルを信用している。

 

「ここまでやってやったんだ。私の期待を裏切ってくれるなよ、サイ・アーガイル!」

 

 

 

 

 エターナルはようやくプラント本国に接近し、そこに潜んでいるダコスタらクライン派に指示を出す。

 今は地下放送などやっている場合ではない。彼らに蜂起させ、プラントの正規放送局を占拠させるのだ。そこからでないと全域にメッセージを伝えることができない。

 プラントの全市民、ヤキン・ドゥーエ要塞、そればかりではない。地球表面のオーブや連合、つまりコーディネイターだろうがナチュラルだろうが区別なく、全ての人類に放送を届ける必要がある。それは艦からできるものではないのでこうして本国へ来たのだ。

 

 フリーダムとジャスティスが素早くプラントの抵抗を排除した。そしてアンドリュー・バルトフェルドの精密な操艦により、エターナルはプラント本国の宇宙港にやっとのことで強行突入できた。

 

 

 

 ここからが全ての仕上げになる。

 今、人類の歴史を変えるメッセージが発信されていく。

 

 コーディネイターであるプラントの一般市民に。

 地球表面に住んでいる多数のナチュラルに。

 また今現在、大破になってしまったドミニオンやザフト側にも。

 そして撃沈される寸前のクサナギ、攻撃しているレイらヤキン・ドゥーエ要塞にも。

 イズモにいるキラ・ヤマト、無理やり救助されたクルーゼらにも。

 

 

「プラントの皆様、そして地球にいる連合の皆様、ここに重大な発表を致します。わたくしラクス・クラインが歴史を変える案内役を務めるのは大変光栄に存じます。今からお伝えするのは純粋な科学のことなのですが、その影響は全てを塗り替えるでしょう。もちろん、現在も行われているザフトと連合との戦争も意味を無くします。この瞬間、まさに平和の到来を喜ぶ時なのです。前置きはそこまでとして、さっそく聞いて頂きましょう。それで充分理解されるはずです。今から流すのは先日録音された二人の会話なのですが、一人は連合艦アーク・エンジェルのクルーであるサイ・アーガイル、もう一人はプラントの議員、というより最高の遺伝学者であるギルバート・デュランダル博士です」

 

 驚くべきメッセージはラクス・クラインの声で始まった。

 その内容とは……たった二人の会話のようだ。それはいったいどういうものか、聞く者はみな訝しがる。

 

 

「デュランダル博士、遺伝学者というからには一つ意見を聞いていいか? 今現在ナチュラルとコーディネイターが戦争をしていることは知っているだろう。俺はその意味が分からない。どちらも人間にしか見えないしな。遺伝で何がどう違うんだ」

「サイ君と言ったか。正直でいいな。分からないのも当たり前、どっちも人間なのだから。それこそ遺伝学者からすればほんのわずかな差にしか過ぎず、それを理由にした戦争など話にならない。それこそ下らんと言い切って構わない。遺伝子を変えるといっても別にネズミや魚に変えたわけでもあるまいに」

「なるほどそうか…… 過去の人類は言葉や民族の違いで戦争をしたものだが、それと似ているな。ほんのわずかな違いを理由にした戦争か」

 

 会話はそこから始まっている。

 その中でギルバート・デュランダル博士はナチュラルとコーディネイターの差は些細なことだと切って捨てた。

 それが戦争の原因なのに。

 聞く者は戸惑うしかない。普通の市民の意見ならともかく、あの高名なデュランダル博士が言ったのだから。

 そして会話は始まったばかり、これから何を話されるのだろう。

 

 

「プラントの急進派はもとより穏健派も区別にこだわるところは同じで、滑稽だ。しかしサイ君はこだわりのない目を持っている。まだ若いからか」

「若い? まあ……体はな。それはともかく、単刀直入に聞くが戦争をどうにかできないのか。博士の、遺伝学者としての知恵があれば聞きたい」

「それは難しいというほかない。これほどお互いに憎しみが積もり重なったのだから、行き着くところは…… だが確かに戦争を止めなければ人類は破滅に至る。どちらもいなくては成り立たないというのに」

「それはどういう意味なのだろう。ナチュラルとコーディネイターのどちらも必要とは?」

「これから人類はどうしても宇宙開発を進めていかなくてはならないが、それにはコーディネイターの能力が必要不可欠になる。地球環境に適応しきったナチュラルのままでは無理があり、それは分かり切ったことだ。しかし逆にコーディネイターには重大な欠陥がある。子孫を残せない組み合わせができてしまう……いやそんな軽い言い方では深刻さが伝わらないか。数世代のうちに消滅が避けられないくらいその組み合わせは多い。せっかく宇宙開発をしても人がいなくなるという馬鹿げた結果になってしまうだろう。だから絶えずナチュラルの遺伝子も必要となり、多数のナチュラルに依存しなくてはならない」

 

 これが現状なのだ。

 プラントでも連合でも、この単純な事実に敢えて目を塞いでいる。戦争をしたがる連中にはコーディネイターとナチュラルの相互依存など都合の悪いワードでしかない。

 

「なるほど分かった。しかしまあコーディネイターの欠陥とは、どうしてそうなる?」

「遺伝子の傷がその理由になるのだ。コーディネイターはもちろん優秀な遺伝子を組み込んで作り出すものだが、それにより寸断されたり、弾き飛ばされた遺伝子が出るのは仕方がない。必要な分までそうなれば、欠陥と言わざるを得ない。コーディネイターは欠陥という言い方は好まないだろうがね」

「それはどうにかできない種類のものかな」

「そう、そこだサイ君。だから私は人間の遺伝子を徹底的に調べ上げ、それぞれの意味を突き止める研究に没頭している。すると恐ろしく大きなものが見えてきた。コーディネイターがナチュラルに依存しなくなるように? そんなことではない。遺伝子の意味が分かれば、それぞれの人間の遺伝子に合わせ、予め最も良い人生を定めておくことができる!」

 

 デュランダル博士はようやく自分の研究のことを話し出した。その目指すところと意義を熱っぽく語る。

 しかし会話はその方向ではなく、思いもよらない方へ向かう。

 

「…… 人生を予定するとは、なんだか怖いな。率直に言えば。しかし博士、話を戻すようだが遺伝子が分かってくればコーディネイターの遺伝子の傷を治せるのではないか」

「悲しいことに傷自体をどうこうはできない。付けられた傷は受け継がれ、元に返ることはない。大きく丸ごと入れ替えでもしなければ」

「大きく入れ替える……」

「それにはコーディネイターになる前の遺伝子情報が保存されていなければならない。しかもそんなことをすれば、コーディネイターとしての優秀な遺伝子も捨て去ることになる。せっかくコーディネイターになったのに元の木阿弥だ」

 

「な、何ッ!? 今何と言った! デュランダル博士!」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。