どらごんれでぃい!!!〜捨てた魚が竜でしかも俺の事が大好きなんですが〜   作:囚人番号虚数番

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XXXXXX Lady

「………あぁ……暇だ」

 

俺、滝沢 拓海(たきざわ たくみ)は実家に帰省している。盆前に貯めたなけなしのバイト代と男友人とのバカ遊びを犠牲にしてまで帰省した。

 

「せめてまともな回線とプリペ買えるコンビニさえあればソシャゲでもしてるんだけ……どこのど田舎じゃそうも言ってられないよな」

 

俺の実家は電車に乗って1時間、乗り換えてクソ高いボロ私鉄に揺られそこから更に一日数本のバスに乗ったところにある山中のど田舎にある。自然豊かと言えば聞こえはいいがど田舎としか言いようがないほどに何も無い。有名な物は勿論無く、強いて言えば過疎って出来た廃墟目当ての物好きがたまにくる(らしい)くらい。

 

何故わざわざ嫌なのに帰ってきたのは去年のこの時期に帰省せず年末の帰省で小言を言われたからだ。

 

「……実家はど田舎、あのクソ親の為に帰ってきたっていうのに本人たち不在で来た意味はなくなる、バイトのシフト空ける為に飯を奢るのもパー……不幸だ」

 

「……ってこれ大学の時にも言ってたっけ。いつになっても言う事は変わらないな」

 

ーーー

 

就活に失敗した俺は就職に対して無気力なまま8年が経過した。ここ8年は町の方でバイトをしてはいるもののそれ以外はアニメ、漫画、ネトゲ、掲示板三昧の自堕落な生活を送っている。

 

人生設計に失敗したショックは思った以上に大きく一時期は荒れに荒れた時期もあったりはしたが最近落ち着いてきた。それに比例して親の目も痛くなってきた。このままでは親の知り合いの経営するブラック会社に収容されそうだ、だが資金的に縁を切るわけにもいかないし……。

 

「大学の頃は何してたっけ……」

 

辛うじて幸せと言えた懐かしい時を思い出す。サークルで酔い潰されて、クソ論文を仕上げて、腐れ縁の友達と連絡が取れなくなって……改めてみると大学時代もたいして幸せではなかった。

 

彼女と過ごした秋の1ヶ月を除いては。

 

「くそっ、またこの事か。……あいつはもう居ないってゆうのに……」

 

彼女は今、この世界にいない事になっている。あの後実家からの電話にドラコを心配する内容が消えた事に違和感を持って問いかけた。すると……

 

「………ああ、ごめん。そうだったな母さん。俺のほうがボケてた。俺に義妹なんていなかったよな」

 

正直驚いた。だって連絡もなしにいつの間にか親の再婚が無かったことになってたからある意味ホラーだった。それ以外にも小学校の名簿、メールアドレス、戸籍、全てから彼女が消えてしまった。初めから無かったかのように彼女の名前が消えていた。

 

唯一ドラコの事を知っている友人ナツメは……なぜか連絡がつかなくなった。あいつはいつでも不思議な奴だったがこんな時に連絡出来ないのは都合が悪い。あいつからは何故ドラコにあの資料を送ったのか、それも聞きたかった。

 

「……あの時は幸せだったな」

 

あの一ヶ月は人生で最も奇妙で幸せだった。拾った魚が竜で、妙に世話好きな彼女と過ごして、告白した。そして……

 

「……気持ち悪くなってきた」

 

時間が経った今や、あの場所を冷静に考えれば血と肉が散乱した悪い夢のような所。アドレナリンが出てない時に思い出したならば気分も悪くなるのも当たり前であった。

 

「……散歩でして風にあたってくるか」

 

ーーー

 

俺はここを田舎といったがこのご時世には珍しく時間経過で発展していた。新しい家が立ち並び、コンビニができて、大きなスーパーや野山に不釣り合いな飲食チェーン店も点在。今は新幹線の通過駅とデパートの基礎を作っているっぽい。とはいえ、それは家から数キロ先の話であって近所はあいも変わらずど田舎の辺境だ。

 

ここの発展ははっきり言って異常だ。ここに建設をしたバカはどこのどいつだ?請け負う方も請け負う方だ。工事中の看板に書かれた会社名には「水竜コーポレーション」と書かれている。

 

ああ、ここ数年で無名企業から財閥レベルまでに成長した変態企業か。ネジ一本から国家解体までなんでもできるやばいとしか形容できないところで、俺が内定した超大手企業を1週間で破産させた個人的な恨みのある企業だ。

 

「……くそっ」

 

看板を蹴ってその場から去る。勿論、向かう所は子供の時と変わらないあの神社だ。

 

「っとと?何だこれは……」

 

気に隠れていた神社が遠くの方に見え始めた時、俺は新築の家ができているのが見えた。酔狂な都会人はわざわざ人の少ない不便極まりない所に態々家を建てたがるのか、俺には気が知れない。

 

「それに態々オンボロの神社がある近くに建てる必要もないだろ。しかも背面に川も流れてるし禁足地の設定は何処行ったんだ」

 

 

 

その家を通り過ぎてすぐに神社へ続く石段を見つける。相変わらず人気の無い神社……

 

「(……!?)」

 

 

俺はその場で見上げる。生い茂る葉が空を黄色く塗りつぶして覆い隠していた。その後に石段を見て確信した。

 

石段の葉っぱが脇に避けてある。人が通るところには汚れた石段が見える、しかし少し横へ目をやると黄色い葉が苔むした石段の上に不自然な山を築いている。

 

「……あの家の奴か?」

 

しかも苔が剥げているとなると割と高頻度で来ている?……ますます不思議な奴が住み始めたものだ。それならば神社の掃除をするついでにこの廃材の山も何処かへ持っていってほしいものだ。

 

石段を上り神社の拝殿前へ来た。ここはあれから少しの年月がたっただけのはずなのに面影をなくしている。鳥居は倒れ、看板は錆びて穴が空いてしまっている。社はもう錆びた金属板と朽木の山であってかつてそれが社だった物とは到底思えない。

 

だから唯一綺麗になっている川への道が不自然だ。草が刈られず伸び放題なのは変わらない、ただ人が通るのに邪魔な木の枝だけは切られている……それも何故だが懐かしいような綺麗な切り口で。これをした奴はここを隠したりでもしたいのか。

 

「……まさかな。頭冷やすはずが頭痛くなってきた」

 

まただ。また勝手な希望を抱いてしまった。彼女などとうの昔に別れたというのに。

 

ーーー

 

「……ここは前と変わらないな」

 

数年ぶりにここへと訪れた。川の景色は何年経ってもここ以上に綺麗な所はなかった。細部、例えばより直線的な流れになっていたりこんどは水深が浅くなっていたり、の違いはあるものの特に変わらず彼女と初めてあった時のままだ。

 

 

 

 

あの時も彼女は、今いる先客のように俺を待っていたのだろう。人気が無い、静かでずっといたくなるようなこの川に1人で。

 

 

 

「(また先客か)」

 

そこに居たのは若い女性だった。見た目から20代くらいだろうか、解釈によっては高校生くらいにも見えなくはない程に若々しい。落ち着いた服装をしているので川に泳ぎにというわけでもないようで、単なる物好きみたいだ。水色に染められた髪というのも珍しく遠目からでも目を引いた。

 

女性もこちらに気が付いたようで俺が立てた足音に反応し彼女がこちらを向いた。不意に目が会いかけた。気まずくなる前にここから立ち去ろう。

 

「ま、待ってください!!」

 

女性が叫んで俺を引き止める。

 

「え、えっと……貴方もここに涼みに来たのですか?」

 

引き留めたことを申し訳無さそうにしながら彼女はそう問いかけた。

 

「……は、はい。そうです」

 

俺は俺でまさか引き止められるなんて思いもしなかったから返答の声が変に裏返りそうになった。

 

「ご迷惑でなければご一緒してよろしいでしょうか」

 

こんなヤバそうな女と一緒にいれるわけがないだろう、もちろん断るつもりだった。しかし返事をする前にふと、あの時の新たな出会いの事を思いだして口が勝手にこんな事を言い出した。

 

「あー、用事があるので5分したら帰ります。それまででしたら」

 

言ってしまった。それでも、これならひとまずこれで乗り気ではない趣旨は伝わっただろう。

 

ーーー

 

「貴方はなぜこんな所にいらしたのでしょうか」

 

河原に座り懐しい思い出を流れる水に重ねていたら女性が聞いてきた。

 

「ここらは諸事情で縁の多い土地なもので子供の頃ここでよく遊んでまして」

 

「それはいい子供時代でしたね。こんな綺麗なところで過ごされたなら楽しかったでしょう」

 

「ははは……あなたこそ何故ここへ?ここらは田舎もいい所です。お知り合いの方でもいるんですか?」

 

「……約束したんです」

 

約束……

 

「私事で話すと長くなりますが、ご興味ありますか?」

 

ふと、携帯の時計を見る、彼女にさそわれて既に3分周っていた。この程度なら話を断って去ってしまう口実にもできそうだ。

 

「……私も過去に似たような事をした覚えがあります。聞きますよ」

 

……だけどなぜだかその話を聞かなくてはならない気がした。根拠は無く合理的でない、俺にしては珍しい本能的な物に従っている自分が少し恥ずかしい。過去に囚われすぎだろ俺、自分でもそうだと心の中でツッコむ。

 

「ありがとうございます……私が子供の頃の話です。……8歳か9歳くらいの頃でしたっけ、好きな人がいたんです。当時大学生のお兄さんで、病弱で何も知らない私に色々教えてくれた優しい人でした」

 

「小学生と大学生……随分と危ないですね」

 

「ええ、今思えばたしかに。ですが彼は私に危ない事なんてしませんでした。それどころか服を買ってもらったり、色々な所に連れて行ってもらったり……本当に優しくしてくれた人でした」

 

……何処かで聞いた話だ。彼女が子供の頃に連れて行ってもらった所。俺は久しく掘り返されずにいたあの日に観覧車で見た夕焼けを想起した。

 

「連れて行ってもらったって、遊園地とかですか」

 

「遊園地……はい。そこで彼に告白したんです。彼と一緒にいてたら幼心に恋心というものが芽生えまして。あの時、病気で死にかけていて彼には心配されたくなかったんです。だから彼の代わりに全てができたらという願望を持っていましたから……その場の勢いで」

 

彼女は落ち着いた佇まいからは想像がつかないようなアグレッシブな子供だったようだ。彼女の事は知らない筈なのに、その少女の喧しい程に元気な声が聞こえてきた。

 

「遊園地での告白、彼はさぞ嬉しかったでしょうね。返事は……」

 

「それが……恥ずかしながら返事は貰ったものの、その後すぐに病気の治療の為に離ればなれになってしまいました。その時、二人でここで会えればいいなって……今でもたまに来ているんです」

 

「………それは勿体無いですね。でも良かったじゃないですか、その様子だといい返事だったんですね」

 

彼女から返事はない。向こうの川岸に生えた木々を見ながら黄昏れている。

 

 

「………実は、私も思い当たる節があります」

 

俺の脳裏に焼き付いた思い出が彼女と似ていた。だから彼女へ俺の過ごした事実を伝えてみたくなった。

 

「……彼女は、どんな人でした?」

 

「竜の女の子です。あなたみたいに青い髪で俺の事が大好きな強い子です」

 

「竜……」

 

「あっすいません。竜が好きな子で……」

 

ああ、長年ドラコで感覚が麻痺していた。世間では竜の存在なんて空想の産物でしかなかったのだ。焦りながらすぐに言葉を訂正しようとした。

 

「いいえ、信じてますよ。私も、かつて非現実な物を信じていた時がありました。何処か海の中とか地面の下に何かに不思議な物が隠れてたらってワクワクして……あっ」

 

何かに気づいたようで女性が携帯電話で時刻を確認した。俺も時間を確かめると話し始めて既に6分目に突入しかかっていた。

 

「そういえば、もう5分経ってしまいましたね。すみません、ありがとうございました。用事、早く済むといいですね。」

 

そう言って女性が立ち上がっは何処かへ去ろうとする。だか、最後にこれだけは聞かなければと立ち上がり大声で彼女を引き留めた。

 

「用事は!!……そうですね。あなたの名前を聞いてから向かいますか。私は滝沢拓海という者です」

 

彼女は足を止めて不思議そうな顔をしてゆっくりとこちらを振り返った。そして、怪しく微笑んでこういった。

 

「拓海……さんですか………水竜【水槍】。それが私の名前です」

 

「!!っじゃああなたは……お前は」

 

「久しぶり…………遅くなったよ、拓海。ドラコ、私だよ!!!」

 

ドラコが俺に抱きついてきた。俺も彼女を受け入れて抱擁した……が足場が悪くそのまま尻餅をついてしまった。

 

「あわわ……拓海平気?」

 

「ドラコ!!お前何でここに!?」

 

「それは……肉体の改造が終わったからと拓海へのサプライズのためだよ!!」

 

「終わった……?お前、前は数十年単位の時間がかかるって聞いてたから……」

 

「簡単だよ、竜辞めちゃった」

 

竜を辞めた、それはどういう事なんだ?。

 

「人間生活の為の諸器官以外切除したの。ブレスの為の水袋とかを外してから臓器とかを人サイズにまでカットして……ほら、角とか尻尾とか無いでしょ?」

 

改めて女性を成長したドラコとして見る。水色の髪はあの頃のドラコと何ら変わらない艶のある髪、しかし角が無くなった分だけ何処か物足りなさを感じる。

 

落ち着いた服装の彼女はワンピース、もしくはスク水の活発な印象から遠く離れた新鮮な姿。成長して大人な格好の今は成長した彼女の内面を反映しているのだろう。

 

彼女は「ほら、これが手術の証拠だよ」と自身の服をめくりお腹を見せてきた。一瞬だけ見えた白い肌に入った痛々しい何本もの傷がその壮絶さを物語る。

 

「肉体改造が物理すぎやしないか」

 

「うん、すごい痛かった。でも結果的に早く済んだし結果オーライだよ!!」

 

「もう陸上で生活してもいいんだよな?」

 

「うん!!食事の時の水分でかなり賄えるようになったから……」

 

ドラコの言葉の端切れが悪くなる。

 

「また、一緒に……」

 

「いいぞ。仕事がないから生活は悪いからおすすめできない……がどうせお前の事だ、許すまで何度も家に来られると困る」

 

立ち上がって尻の汚れを払いながらそう返す。

 

「それに、お前に行くところがあるのか?」

 

「うん。拓海の行く所ならどこでも」

 

「……それはいいことを聞いた」

 

俺はドラコに手を伸ばす。

 

「来い、家に行くぞ」

 

「……拓海!!!」

 

こうしてドラコと俺、二人新たな日常が始まる。

 

ーーー

 

……なんて、臭い終わり方にはならないのが彼女であった。

 

神社の石段を下りきり家に向かう道へ出た時、

 

「あ、拓海。ちょっとまってて」

 

「え?お前どこへ……へあぁっ!?」

 

ドラコが行った先は神社前のあの新築の家、鍵を開けて入っていった。あまりに予想外な事に思考ができず、あ然としていたら彼女がバッグを持って出てきた。

 

「おまたせ!!まさか拓海がいるとは思わなかったから色々おいてきてたよ。必要なものも取ってきたし行こう!!」

 

「待て待て待て待て。え?これ借家?借家にしては綺麗すぎ……」

 

「借家じゃないよ!!ちゃんと私が建てたの!!」

 

「………はぁ!?」

 

その家の表札には「水竜」の2字、そういえばあの時の彼女の戸籍はもう無いから……

 

「あれ?言ってなかったっけ、今の私の名字は水竜だよ、偽名だから安直だけどね。滝沢の姓は失踪したとき捨ててきたから変わっちゃって。でもまさか竜秘宝の拓海と会いたいって効果がこんな所にも波及して名字を修正する時間までなかったのは計算外だったね!!」

 

……ん?水竜……水竜?ふと、思い出の中にしまっておいたあの忌々しい名前と同じ苗字に嫌な予感がした。

 

「お前……もしかしてとんでもない金持ちだったりするのか?」

 

「うん!!水竜コーポレーションやってるからね!!」

 

「……社長?」

 

「うん!!正確にはあそこの創業者でしかもCEOだよ!!」

 

「……まじで?」

 

「拓海の為に金銭面でも工面したかったからやっちゃった」

 

「」

 

えぇ……。もう何も言えない。俺とドラコが別れてからのたった数年でこんな事になるとは……

 

「それ……本当に平気なのか?」

 

「あ、大丈夫!!名字なら戻す算段はあるから」

 

突っ込みたいところはそこではない。そう言う前に彼女はバッグから書類を一枚出して俺に見せた。そこには彼女の名前と姓の印が押された……て、待てこれ。

 

「戻す算段って婚姻届じゃねーか!!」

 

「あれ?拓海は乗り気じゃない?別性がいいなら必要な所に掛け合うけど」

 

「いやいやいや……これ……段階を飛ばしすぎ」

 

「告白なら昔したでしょ!!それなら後はへーきへーき。裏でお義母さんにも手を回してたしきっと誰も止めないし喜んでくれるよ」

 

母さん何してんの!?すぐに事情を聞こうと電話を手に取ろうとしたがその手をドラコに掴まれる。

 

「……おい、離してくれ」

 

「やだ。私、これからは拓海の為に動かないよ!!拓海じゃなくてこれからは私利私欲の為に動く。だから……素直に結婚しよ?」

 

「…………」

 

成長して落ち着いたと勘違いしていた。逆だ、より世話好きな性が悪化した挙げ句隠す術も学習していた。

 

「……就職先」

 

「何、拓海?」

 

「就職先を探すのを手伝ってくれ。そしたら結婚しよう」

 

「……拓海!!」

 

彼女はぱぁっと笑顔になり元気よく首を縦に振った。それから「早く行こうよ拓海!!」と俺の家へと小走りする。俺も彼女に遅れないよう追いかけなくては。

 

「……これからマジでどうなるんだろうな、ドラコ!!」

 

「そうだね!!楽しみにしててよね!!」

 

 

 

こうして、夏から続いた竜との生活は自身の人生全てをかけた物となった。




以上、どらごんれでぃい!!!でした。ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。もし良ければ作品への評価をよろしくおねがいします。

ところで、おまけ回は欲しいですか?簡単な話になりますがしばらくしたら追加で一話書きます。(正式な話としてはこの物語は終了です)

どのキャラが好きですか?

  • ドラコ
  • 拓海
  • ナツメ
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