孤独な少女の望むモノ   作:g_c

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しょっぱなから暗い展開が続きますが作者の趣味です。

ビターを言っておきながら別に苦くないのはこれいかに。




グレアム家の一員
終わりと始まり その1


「お母さん…!、お母さん!!」

 

銀の髪を振り乱して、少女が病床に伏す女性を必死に呼びかける。可愛らしい顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、今まさにこの世から旅立とうとしている母親を、必死に引き留めようとする。

 

過労、幼い少女は知らなかったが、その母親は元来丈夫なヒトではなかったという。

彼女を身籠り、家を守るなか『ある事故』で夫を亡くし、女手一つで育ち盛りの娘を育てるのに…その身体はあまりに儚かった。

 

愛娘の前で優しくて強い母を演じ、彼女のしたいことをできる限りさせてあげた。

精神は肉体を凌駕する…彼女は確かに限界を超え、理想の母親に到達した。その代償が、今まさに跳ね返ってきている。

 

「私を、一人に…しないでぇぇ!もうワガママ言わない!お手伝いもいっぱいする!だから…!だからぁ……!!」

 

母親に最期のワガママをする少女…「カタリーナ・ウィリアムス」は呼吸器で何とか生かされてる母親…「ソフィア」に必死に呼びかける。その声は無情にも、母の耳に届かない。しかし生きている。さまざまな計器が示す数値の大半を読み取る事はできないが、心音が微かにうごいている。それだけは理解できた。それだけが…最期の希望だった。

 

「ソフィアさん!聞こえますか!?娘さんの声が!」

 

少女の嘆願を現実にさせて見せる。医師からはそんな気概を感じる。何か有ればすぐに対処できるよう、構えている。その何かは……

 

ピーーーーーー………。

 

周囲の言葉を押し潰して静かに響いた。

 

「お母さん!!」

 

「危ないから離れて!」

 

看護師に腕を引かれ、後方に引きずられるなか、カタリーナの頭が真っ白に塗りつぶされる。

医師と看護師が必死に何かをする。

大仰な装置を使うと、母親の体が大きく跳ねる。医師らの必死の対応も虚しく1分が経過する。2分…3分…命の揺めきは止まっている。

 

そのまま、10分が経過した。

 

大人たちは悔しさに身を震わせて、母親から計器を外していく。カタリーナにはそれの意味がわからなかった。

 

「おじさん……?どうして…外しちゃうの…?」

 

「…………。」

 

「お母さんは、ね…?…眠ってる…だけだよ…?直ぐに起きるの…!」

 

少女も本当はわかっている。しかし彼女の感情はそれを認めないのだ。

白衣の裾を引っ張り、母親から呼吸器を外す手を止めない。

 

「ごめんよ、お嬢ちゃん…。」

 

救えなかった命に対して医者はどんな想いでその言葉を吐いたのか、看護師達を連れて、静かに病室を去っていく。

 

「ァ…ぁぁ…あああァァぁぁぁ!!!」

 

言葉にならない絶叫。病室を飛び越えフロアの隅々にすら聞こえるのではないかと思しき慟哭。『病院では静かに』

 

そんなお題目を彼女に言い聞かせる大人は、誰もいなかった。

 

ーーーーーーーーーー

 

お母さんが、死んだ。

そのあとの事は、よく覚えていない。

大人の人が何人か逢いに来たけど、誰も彼もの言葉が薄っぺらく感じた。

 

「お悔やみ申し上げます」「辛かったね」「こんなに小さいのに」「父親もいないんだってね」「行くところはあるのかい」「挨拶もまともにできないのか。」「まあまあ、母親が死んだあとなんだ。」…………

 

親族を名乗る人達は酷く他人事だった。

まるで私の身に起こったことを、テレビのドキュメンタリーか何かの様に扱う。

 

母さんの死から立ち上がれなかった事もあって、そんな大人たちには無言を貫いた。話すことなんてない、話したいことなんて、ない。

本当にロクな大人が訪ねてこなかったと記憶している。

 

そんな中、親族以外のお客様が久しぶりに尋ねてきた。

ギル・グレアムさん。お父さんの上司で、管理局の凄く偉い人だってお母さんが言っていた。

 

凄く優しい人で、お母さんとも親しげだったから来てくれるだろうとは思ってた。ううん、来て欲しい、そう思ってた。

流石に、失礼をしてはいけないと思い、お母さんの真似事をして頑張ってお茶を用意する。

…こんなことなら、もっとお手伝いをしておくんだった。

 

そう思うと、二度とお母さんに会えないことを思い出して、また涙が溢れ出て、グレアムさんにバレない様に涙が止まるのを待つ。

袖で涙を拭って、お茶を淹れ、グレアムさんのところへ運んで行く。

 

「…えと、どうぞ。」

 

カップに触れたグレアムさんの手が一瞬止まる。

すごく、悲しそうな顔をした。泣いてたのがバレたみたい。

 

「ありがとう。…そうだ、お菓子があるから、これをお茶請けにしようか。」

 

誤魔化してくれて居る、気を遣ってくれている。それくらいは分かった。お土産にと用意されたお茶菓子、それに手をつけないまま気不味い沈黙が流れる。

沈黙を破ったのはグレアムさんからだった。

 

「非常に残念だ。彼女はとても良い母親だった。私がもっと、君たちに気を掛けて居れば…避けられたかもしれない。」

 

まるで私に謝って居るかのようだ、でもおじさんは悪くない。悪いのは…お母さんに甘え過ぎた私が悪いんだ。

でも、なんて返していいのかが、私にはわからない。

お母さんなら、きっと上手に慰められたのに…。

 

「ソフィアくんの件もあるけど、今日は君に提案があって来たんだ。」

 

「提……案…?」

 

「聞いたところ、君の親権はまた死んだお母さんにあると聞いた。だからカータ、私達と一緒に住まないか?」

 

思いもやらない人から思いがけない提案。

聞いたことの意味が一瞬理解できなくて、反応が出来なかった。

 

「ソフィア君から聞いているよ、親戚付き合いはあまりしてこなかったと、だから見ず知らずの他人より…私の方が君としても気が楽なんじゃないかと思うんだ。」

 

どうしよう、なんて答えればいいのかな…?

グレアムさんの提案は嬉しい、でも実感が湧かない。この人が私のおとうさんになってくれると言う実感が。

 

「私としても君の様な小さな子が、ここで独りで暮らすのは心苦しい。それも、死んだ部下の忘れ形見なら尚更だ。…返事は今すぐで無くてもいい。今日はそれが話したくてきたんだ。突然すまなかったね。」

 

そこまで言うと、おじさんは荷物をまとめ始めた。

私の態度が帰れと言っていたのか、お仕事の都合なのかは、分からない。でも……

 

「もう、帰っちゃうん、ですか…?」

 

寂しい。

 

あれこれ考えるより早く、出た言葉。

何をやってるんだ、そう言うことの積み重ねが、お母さんを殺したというのに。

 

「あの…その、ごめんなさい。忙しい、もんね。また、連絡します。」

 

慌てて誤魔化してももう遅い。吐いた言葉は飲み込めない。もう、グレアムさんの耳に届いてしまった。

立ち上がったグレアムさんは、私のそばに近寄る。凄く、優しい笑顔だった。

 

「今日は私の家で過ごさないか?」

 

私は、その言葉に静かに頷いた。

 

これが始まり、私とお父様が親子になる第一歩だった。




カタリーナちゃん、7歳児
ロリの癖に地の文が賢いだって?
リリカルなのはの世界のロリは賢いのさ(7歳児なのはを見ながら)


書きだめが溜まるまで非公開にしてたのに、いつの間にか公開に変わってた。解せぬ。(犯行時刻 2021/06/25 16:40)

お気に入り登録、ありがとうございます。
完結まで頑張ります。
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